「……ん?」
朝のランニングの最中に何か違和感がある。紅葉は後ろを振り向いた。誰もいない。誰かいた気がしたのだけど、気のせいのようだ。
紅葉はランニングをつづける。誰もすれ違わない。まだ朝早いから当然といえば当然なことだ。
そのせいで、ちょっとした違和感があると、それがとても気になる。
まただ、視線を感じる。なのに誰も後ろにはいない。少し不気味だ。
紅葉の精神値が少し下がった。
「……」
気味が悪くなった紅葉は全力で走り出した。大洗は彼女にとって庭も同然である。曲がり角を曲がって視線から逃れようとした。
次の曲がり角を曲がって寮に戻ろうとしたとき、誰かが曲がり角から現れた。
みほさんだ。
「あ、おはよう」
「う、うん。おはよう」
危うくぶつかりそうなところを何とか避けることができた自分を褒めてやりたい。みほさんは運動着に着替えており、おそらくこれからランニングをするところなんだろう。
「その猫どうしたの?」
「……猫?」
紅葉は何のことだろうと首を傾げると、後ろからあの視線を感じる。紅葉は振り向くと、誰もいなかったが、足元に猫がいたことに気づいた。視線の正体はこの猫のようだ。
どうやら不審者とかではなかったらしい。紅葉は安堵する。
「可愛いね」
みほさんが猫と戯れている。
「猫好きなの?」
「うん。猫だけじゃなくて犬も好きだよ」
「へぇ」
視線のことなどすっかり忘れて、紅葉はみほさんと一緒にランニングを再開した後一緒に登校した。何かみほさんがたまにくっついてきたりもしてきたのが、少し気になった。
※
はい、よーいスタート。
前回のつづきからやっていきましょう。えー、前回は逸見殿が幼馴染みだということが判明しました。これは以前ほもちゃんにかかってきた電話に、幼馴染みを選択してしまったことが原因です。本来ならそこらへんのNPCが選ばれるのですが、ごくごくわずかな確率でネームドキャラが選ばれる可能性があります。会話が増えるしイベントも増えるしデメリットばかりですが、一応メリットもあります。
>戦車道の時間だ。抽選会があった日から少し時間が経つ。みんな次の試合に勝つために必死に練習している。
特にみほさんが必死な気がする。前よりも積極的に練習の指示を出しているし、作戦会議も、カエサルさんから聞いた話だけど、前の聖グロの時とは違ってかなり発言しているらしい。
河嶋先輩がその変わりように驚いていたが、私は無視した。
何にせよいつもより実りのある練習をすることが出来た。
紅葉は操縦手として、成長を実感できた!
これは嬉しい誤算です。西住殿がやる気を出しています。各キャラには、やる気があって練習や、ランダムイベントで上下します。私は何も関与してないので、ランダムイベントで勝手にやる気を出してくれたんでしょう。
おそらくこの時期だと、限定品のボコでも手にいれたんじゃないですかね。
>……誰かの視線を感じる。後ろを振り向くが誰もいない。でも確かに誰かに見られた感じがあった。
1つ良いことがあったら、1つ悪いことが起きる気がします。視線の正体は2通り考えられます。1つは、好感度が高すぎてしまったキャラが暴走して、ほもちゃんをストーキングしてしまうことがあります。これは、関係ないでしょう。
となると、どこかの学校が練習を偵察に来てるんでしょう。大洗は無名校ですが、前回聖グロを倒しているので、たまに偵察する学校が現れます。サンダースだと面倒きわまりないですが、大体の確率でヨーグルト学園だったりワッフル学院で、試合しない学校なので、そうなるよう祈ります。
「今日もよろしく」
「よろしくお願いします!」
>最近は阪口さんと一緒に練習するのが多くなった。彼女の熱心な姿はとても素晴らしいと思う。
練習を通して少しずつ仲良くなってきていると思う。彼女の趣味のアニメの話を休憩中に聞いた。アニメは見てないので話についていけなかったが。
今まで後輩が出来たことがなかったせいもあるのか、彼女と過ごすのは私としてもとても楽しみになっている。
「紅葉さん、ちょっと今大丈夫ですか?」
>みほさんだ。休憩中声をかけてくるとは珍しい。どうしたんだろうか。
私は阪口さんと別れ、みほさんのところに向かう。
「ごめんなさい。休憩中に」
「いいよ。どうしたの?」
「実は次の練習の件について……」
>紅葉はみほさんと練習について語り合った。今は休憩中だから後でもいいんじゃないかとも思ったが、みほさんもきっと忙しいのだろう。
「あと、居残り練習についてなんですけど、私達も一緒に参加してもいいですか?」
別に断る理由がないので、了承します。
「もちろん」
「よかった。それと」
>会話は盛り上がり、気づいたら休憩が終わってあまり休めなかった。みほさんは申し訳無さそうな顔をしていたが、私としても楽しかったから気にしないでほしい。
居残り練習で、他のチームの人達とやるのは初めてだ。少しワクワクしている。
「一緒にクタクタになるまで頑張ろう」
>私がそう言うと冷泉さんにすごい嫌な顔をされて、少しショックだった。このショックは寝るまでつづきそう……
……うーん。やっぱり西住殿の好感度が少し高い気がします。でも、ほもちゃんの行動の妨害はしてこないし。それに今の時期頃から気持ちも落ち着いて、好感度がすごい上がるとかはないので。バグかな。
>今日は何だかみんなそわそわしてる気がする。何かあったっけ。
武部さんがすごいそわそわしてるので聞いてみた。
「今日って何かあったっけ」
「えぇ、本城さん忘れたの?今日は寸法を測る日だよ」
>あぁ、たしかそんなことをするって聞いた記憶がある。今日だったか。道理でみんなウエストがー、とか言ってるわけだ。
「いいなぁー。本城さんスレンダーで」
>武部さんが羨ましそうに言う。
「じゃあ、一緒に走ろう」
「ごめん。それはいいや」
>断られてしまった。このショックは明日まで持ち越すだろう。
身体を測った。ウエストは前より細くなっていた。バストの成長は中学の時から諦めていた。
今回はここまでです。ありがとうございました。
※
ビデオを眺めている。ビデオには大洗女子学園の生徒達の練習風景が撮られていた。彼女はそれを眺めている。彼女は時には早送りにしたりスロー再生したりしている。
彼女の目には常に1人の少女が写っていた。
長い黒髪のロングポニーテールの少女。
何かにとりつかれたかのように、少女は紅葉を観察し続けていた。
「本城紅葉」
少女は彼女の名前を口に出す。もう一度名前を口に出す。噛み締めるように。
まとめてあるレポートに目を通す。そこには彼女が何度も何度も何度も何度もビデオを見て確認したことや報告書で知った彼女のことについて気づいた癖などをまとめてある。
「これだけじゃ足りない。……やはり、直接見に行かなくては」
言葉とは裏腹に実に楽しそうな様子だ。
「本城、紅葉」
ビデオに写っている少女を見ると、あの時のことを思い出す。彼女と少女が初めて顔を合わせたあの時。あれ以来彼女の心に少女の存在が深く刻み込まれた。
思わず笑みを浮かべる。
「次のサンダースとの試合、楽しみでしかたがないわ」
彼女のことをもっと知ることができるのだから。
紅茶を一口、優雅に飲む。
感想、評価、お気に入りありがとうございました。
誤字報告ありがとうございました
感想でヤンみほと言われ困惑してます。あくまで私としてはちょっと重い子ぐらいの認識で書いてます