ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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オハラに流れ着く者

『強く…強く生きるんだよ!』

尻尾の生えた女性はカプセルの中にいる子供に涙を流しながら言葉をかける。

 

 

_____お母さん……

 

 

『お前はこの『ラセット』の息子だ。絶対に最強の戦士になれるだろう』

 

お父さん……

 

父親らしき男性は涙は流していないもののとても辛い表情をしていた。

 

 

『発射マデ5……4……__』

 

「ビテロ…危ねぇから離れるぞ……」

「うぅ…うん…」

ビテロと呼ばれた女性は静かにカプセルから離れる。

 

 

『…3……2……1……

0という言葉を数えず、そのカプセルは煙を噴射しながら勢いよく宙に浮かぶ。

 

そして そのカプセルは更に勢いよく煙を噴射すると空の彼方へと消えていった。

 

 

「……」

「大丈夫だ。『ニソラ』はきっと強い戦士に育つ」

涙を流す女性を男性は肩に抱き寄せる。

 

二人はしばらくの間 そのカプセルが向かっていった方向を見守っていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

どれくらい宇宙を進んでいただろうか。

 

子供一人を乗せたカプセルは悠々と宇宙を突き進んでいた。

 

ピピ……『目的地二到着シマス』

 

その機械音と共にそのカプセルは水が多い星へと向かっていった。

 

 

そこはもう辺りが海 海 海

 

大陸というものはなく、言うならば『島』ばかりであった。

 

 

その中の一つに少年を乗せたカプセルは墜落する。

 

ーーーーーーーー

 

いつも本を読んでいる彼女を村の子供達は変な目で見ていた。

 

切り株に座りながら本を読む彼女は、一見はただの少女。だが、まだ精神年齢が幼い子供達からすれば不気味に感じ取れるだろう。

今日も子供達はその少女へ石をぶつける。

 

 

「や〜い!!ようかい!」

「捨て子〜!どっかいっちまえー!!!」

「…」

彼女の額からは血が。少女はムスッとした。

 

 

「お前ら、ロビンに何やってんだ?」

すると、林の中から突然 小柄な少年が飛び出し、その子供達全員へ拳骨を喰らわす。

 

ゴチン!

「いってぇぇ!!!」

「うわぁぁぁん!ママぁぁ!!」

 

その子供達は先程の強気はどこへやら、すぐさま涙を流しながら走り去っていった。

 

「大丈夫か?ロビン」

「…うん。ありがとう。『ニソラ』」

その少年が現れると少女は少し笑顔になる。

 

「血が出てるな」

「平気だよ。これくらい」

ロビンと呼ばれた少女は傷口に手を当てる。

 

ーーーーーーー

 

少年との出会いは一月前に遡る。

 

村の子供達にいじめられ、一人で砂浜に座っていた。海を眺めず、近くの岩に腰を掛け、本のページを一枚一枚めくる。

 

ふと、海を眺めようと首を海に向けた時

 

「……!?」

何やら浮かんでいた。

人だろうか?いや、人だ。しかも自身とまだ変わらないぐらいの子供だった。

 

その浮かんでいる子供の位置は

小さい彼女でも足がつく浅い場所だったのでその子供を早く引き上げる事ができた。

 

「はぁ……はぁ…」

だが、自身もまだ子供なので、運びおわると息切れを起こす。

服を絞りながら引き揚げた子供を見ると、不思議に思う。

 

……見たこともない服を着ていた。

 

それは肩に突き出たパットのような物が特徴的で、腰にも同じ形状の物がついていた。

そして全身には黒いタイツを着用していた。

 

しばらく見つめていると…

 

「……ん」

目を覚ました。

 

「どこだここ?」

「!?」

目覚めて辺りを見回している。しばらく見つめているとすぐに目が合った。

 

「お前…ここってどんな場所だ?」

「え……?オハラ……」

細々とロビンは答える。するとその少年は立ち上がった。

 

見る限りとても幼い顔立ち。髪はフサフサで腰まで伸びていた。

 

「おはら?……」

少年は首を傾げる。

 

「えっと…君はどこの島から来たの?」

質問すると少年は首を傾げる。

 

「うぅ……分からない。名前だけ…しか…」

「え!?」

ロビンは驚く。これは俗に聞く一種の記憶障害だ。脳に大きな刺激を与えた時 以前の記憶を忘れる事があるという。

 

「じゃ…じゃあ名前は…?」

「んん…『ニソラ』」

 

すると、少年の腰から何やら細長いものがうねりだした。

 

「尻尾…!?」

人間にはない尻尾を持っている事にロビンは驚く。ニソラはそう言われて腰に手を回すと初めて見たかのような目をする。

 

「え…?あ、尻尾だ」

 

これが少女と少年の出会いであった。

 

「えっと…私『ニコ・ロビン』…よろしく…」

「え?あぁ」

 

 

ーーーーー

 

その日から、二人はよくつるむようになった。

 

「これは何だ?」

「それは蟹」

ニソラはロビンから見つけ続ける生物の名前を教えられる。

時には様々な言葉をロビンから教わり、また時には

 

「ここは『西の海』で、海をずっと向こうまで進むと『偉大なる航路』があるの。これが地形図だよ」

借りてきた地図などでこの世界の構造を教えてもらった。

 

「へぇ。こんな風になってるのか」

「うん」

 

本や地図を用いて話す中 だんだんとロビンは彼との時間が楽しくなってきていた。

 

他の子供達は自分を見るとすぐに気味悪がるが、ニソラは違った。

 

嘲笑う事がない。興味を持ち、次々と話しかけてきてくれた。同じ歳で自身と対等に接してきてくれる。それだけでもロビンは嬉しかった。

 

故にロビンは自身の夢を語った。ポーネグリフという空白の歴史を突き止めたいという事。

 

「へぇ。一から調べ上げるって事だろ?凄いなぁ…」

 

一方でニソラも自身の事を話す。ここにいる以前の記憶が名前以外無いことを。

 

「思い出せないの?お父さんの名前もお母さんの名前も」

「あぁ。何でここにいるのか、どこで生まれたのか。何で尻尾がついてるのか。全然分からん。そして、どうしてこんな怪力なのかも」

そう言いニソラは近くにある自身よりも一回り大きい岩を持ち上げる。

 

そんな感じで二人はいつも通りに話していた。そんなある日にロビンはある事を打ち明ける。

 

「ねぇ…ニソラ…私と…友達になってくれないかな…」

 

友達が欲しい事を。自分には友達はいない事を告白し、ニソラに友達になってくれないかと頼んだ。

一方でニソラは何も考えずに即答する。

 

「いいぞ。お前と話すの、結構楽しいし」

ニソラの答えを聞くとロビンは笑顔になる。

それから友達となった二人は本だけでなく、遊ぶようにもなる。

 

「ニソラ!魚焼けたよ!」

「よし!食おう!」

時には一緒に魚をつまんだり。

 

「ほうほう!ニソラというのか!世界の地形をもっと知りたいならこれを見るとよいぞ!」

ロビンを通じて博士と知り合いになり、共に本を読む事が多くなったりした。

 

だが、

「そろそろ帰らないと…」

「そうか。じゃあな」

「うん」

帰る時になるとロビンは顔が暗くなる。

 

「何かあったのか?」

「いや…何でもない」

なぜなのか。ニソラには分からなかった。

 

何も知らないニソラは手を振りながら彼女を見送った。

 

だが、二人は知らなかった。このオハラに“終わりの時”が近づいている事を

 

 

 

 

 




『ラセット』
主人公の父親。由来はじゃがいもの『ラセットバーバンク』(マックのポテトの芋らしい)
サイヤ人の数少ないエリート戦士であり、ベジータ王の部下。性格は好戦的だが、他の者より程は残虐な心を持ってはいない。アッチの方は下級戦士並らしい。

『ビテロ』
主人公の母親。由来は紫色のじゃがいもの『ビテロッテ』
ラセットと同じく穏やかな心を持つ数少ないサイヤ人。因みにプロポーズ はラセットからされたらしい。



『ニソラ』
主人公。名前の由来はじゃがいもの毒の『ソラニン』 ロビンと同い年
着地する際に頭を機内にぶつけて自身の記憶の一部を失った。
流れ着いたオハラでロビンと出会い、色々と教えてもらう。
幼い頃から化け物じみた強さで海に潜っては巨大魚を捕まえて食べているらしい。因みに殆どが危険な肉食魚類
尻尾が邪魔だから引き抜こうとしてるらしい。

現在は浜辺にある岩の上で生活している。

設定追加
サイヤ人であるが、髪の色が白髪、肌が薄い褐色という特異個体。
故にベジータ王からはあまり良いイメージを持たれていない。


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