ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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ニソラの怒り

カクを撃破したニソラは立ち上がり、入り口の方を見た。ニソラはその時に初めてゾロとそげキングが繋がっている事を知り、その光景を見た瞬間に呆れる。

 

「はぁ…お前ら何やってんだよ。恥ずかしくないのか?」

「うるせぇ!コイツの所為でこうなったんだよ!俺だって手錠されてなきゃとっくに参戦してたわ!」

「ぎぃぃ…ま…誠に申し訳ない…」

そう言いゾロは横にいるそげキングの頬を拳でグリグリと彫る。

 

「じゃあどうするんだ?その手錠」

 

「あぁ、さっきチョッパーとフランキーが来て、鍵を取りに行った」

 

「その時に一緒に行かなかったのか?」

 

「行こうとしたんだよ!…そしたら…」

 

『今のお前らは いたらいたで邪魔だ!おとなしく待ってろ!!』

 

「…て言われたんだよ!!」

血の涙を流しながらゾロは説明する。お荷物という事をモロに言われた事でゾロはゾロでプライドが傷ついており、そげキングもショックなのか目から血が流れていた。

 

 

「はぁ…。なら外すのにまだ時間はかかりそうだな。とりあえず手に入れたのは『1』『4』『5』…クソ…どれがロビンの手錠の鍵だよ……」

手に入れた鍵は5種類のうち3種類。どれがどれだかニソラにも分からなかった。残る2つも取りに行くとなるとめんどくさい。

 

「…ん?待てよ…」

何かを思いついたニソラはそげキングへ顔を向ける。

 

「お前…その手錠どこで見つけた…?」

「へ…?それは…廊下の…あそこの金庫だけどよ…」

ウソップは廊下に出るとその階の端にある金庫を指差す。そこには3つの手錠が解除されている状態で置かれていた。

 

「…!!まさか…!」

すぐさまニソラは金庫に走る。

 

見ると金庫にはそれぞれ左から順に『1』『3』『4』と彫られていた。

 

「おい。お前らの手錠の番号は?」

「2番だよ!2番!」

そげキングに言われるともう一度ニソラは確認する。

 

「…!やっぱりだ…!!」

5つの取手にかかっている筈の手錠が『2』と『5』を抜かしているのだ。そしてその紛失している2つのうち1つはゾロとそげキング。

ならばもう答えは分かった。

 

「ロビンの手錠は5番だ!」

自身の手の中にあるカクから貰った鍵を見る。

 

「だとしたらもう残りには用はない…!」

そう言い鍵を握り締めるとすぐさま塔の隙間から外へと出ようとした。

 

その時だった。

 

 

 

ジジ…

 

司法の塔に設置されてある電伝虫が作動した。その直後にスパンダムの悲鳴が響き渡る。

 

『しまった!!こっちだった小電伝虫!!!なんて事だ!?よりによって!!“バスターコール”を掛けちまったぁぁぁ!!!』

 

『!?』

その放送を聞いた瞬間 ニソラは驚愕する。

この場所だけではない。その放送はエニエスロビー全土へと響いていた。そして、ロビンの声も入ってくる。

 

『なんて事を…!今すぐ取り消しなさい!!』

『はぁ!?取り消しなさいだぁ!?誰に向かって言ってんだぁテメェは!?ハハ…!そうだ!よくよく考えればいいじゃねぇか!俺はCP9長官。貴様を無事に政府に届ける為に発令した!それでいいんじゃねぇか!!何が起きようと最終的に海賊共を確実に皆殺しにできるんだ!』

 

『馬鹿な事を…!言ったハズよ!!それだけでは済まされない!!あの攻撃に人の感情なんてないわ!このエニエスロビーにある全てのものを焼き尽くすのよ!人も物も!島そのものも!何かもを犠牲にして目的を達成する悪魔のような集中砲火!!それが“バスターコール”よ!!20年前…オハラで何が起きたのか…あなたは知らないから…!!』

 

ロビンはバスターコールの恐ろしさを叫ぶ。だが、スパンダムはそれを受け入れようとはしない。

 

『結構だよ!そんだけ政府にとってはヤマだって事さ!カティ・フラムが設計図を燃やしちまった以上残る手掛かりはお前だけだ…!国がひっくり返る程の軍事力が掛かってるんだ…!!そのお前を奪い去ろうとするバカどもをより確実に葬り去るならば仕方のねぇ犠牲といえる!!何より……俺の出世が掛かってるんだからなぁ〜!!!』

 

「…!!」

辺りに響き渡る 人に不快感を与える声。自身の事しか考えていない自己中心的な態度。それは疲労しているニソラを刺激し、怒りを湧き上がらせた。

 

「あの……ゴミがぁぁ…」

 

そして何より、20年前 自身とロビンから全てを奪い去ったあの忌まわしき攻撃がこんなふざけた形で発動された事にも怒りが湧く。

ニソラは唸り声を上げ、手を握り締める。

 

 

続け様に会話は放送された。

 

『人の命を何だと思っているの!!』

 

『ハッ!侵入した海賊共を止める事すらできねぇ能無し兵士共は死んだ方がマシなんだよ!』

 

『…!!今の会話…その電伝虫に…」

『のわ!?放送されてたのか!?…………えぇと………』

 

「……!!ギィ…」

ふざけた放送にニソラは歯を軋ませる。

 

『全員島を離れて!エニエスロビーにバスターコールが掛かった!島にいては助からないわ!!』

すると、ロビンの声が入り、島中にいる者達に避難を促した。

 

 

『余計な事言ってんじゃねぇ!!』

バンッ!

スパンダムがロビンを殴り飛ばしたのか、脆い音が響き、その場で通信が途絶えた。

 

プッ………

 

 

ニソラは細々と聞き取りにくい声で呟いた。

 

「………あの…こ……う」

 

 

「ん…?おい!どうした!?」

後ろで見ていたゾロはニソラの異変に気づき声を掛ける。

 

 

 

 

「あの小僧……絶対に許さねぇ…ッ!!!あのガキがぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」

 

『!?』

 

とてつもない轟音がその場に響き渡った。その声は一瞬で辺りに強烈な殺気を漂わせると同時に空気を振動させ、ガラスの窓を割るどころか司法の塔全体を揺らした。

そしてその声を離れていたとはいえ近くで聞いたゾロとウソップは冷や汗を流す。中でも戦闘経験の多いゾロはその威圧感の威力を正確に感じ取っていた。

 

「(な…なんだよこの威圧感!?CP9の豹の奴でもここまでは感じなかったぞ…!?)」

ゾロはウォーターセブンのアイスバーグの屋敷で自身を一瞬で片付けたルッチの威圧感を思い出した。あの時と比べるが、全く別物だった。ルッチ程の巨大な体格でないにも関わらず、その威圧感は性質、範囲共にそれを遥かに超えていた。

 

 

「お…おい!?どうしたんだい!?ニソラ君!!」

そげキングは汗を流しながらもニソラに呼びかける。すると、ニソラは突然起き上がると先ほどの部屋へと戻り、塔のズレた隙間から外へと飛び出していった。

 

「うぉ!?アイツなにしてんだ!?」

「まさか海に飛び込んで泳いで行く気じゃ…」

「嘘だろ!?んな事できる訳ねぇだろ!?」

そげキングとゾロはその行動に驚きすぐさまそのズレた隙間に手を掛けると顔を出す。

 

 

そこには 巨大な正義の門と共にその扉と扉の真ん中に続く橋があった、見るとそこに向かって飛ぶニソラの姿があった。

 

 

「……さっきも飛んでたよな…普通に」

「あぁ…。二度目になるけど…全く不思議だね…」

その光景は先程の突入する際にも見たが、二度見るにしても驚きは隠せない。

 

 

その時 後ろから誰かが階段を登ってくる足音がし、振り返ると皆がこちらに向かってきた。

 

「ゾロ!うそ……ソゲップ!!」

「お前ら!!」

「おぅ!君達…てソゲップってなんだ!?」

それはサンジとナミだった。チョッパーも一緒だ。

 

 

「おう。そっちも終わったみてぇだな」

「ええ!はい2番の鍵!」

ナミはゾロに手錠の鍵を渡す。渡された鍵を使いゾロはすぐに手錠を外した。

 

「お前らも鍵は奪えたのか?」

「………それなんだがよ…」

サンジの質問に対しゾロは、ニソラがCP9を2人倒し、その内の1人の鍵がロビンの鍵と判明した事、そしてその鍵をニソラが持っている事を話し、その本人が飛んでいってしまった事を話した。

 

「はぁ!?嘘だろ!?あの野郎が2人まとめてぶっ飛ばした!?」

サンジは驚きの声を上げる。他のものも同じだ。それもそうだ。1人だけでも苦戦するCP9を2人まとめて倒す事など、ほぼ不可能に等しい。 

 

「…で?それをお前らは見ていたと…フッ」

「何ちょっとほくそ笑んでんだゴラァッ!!??テメェもテメェで敵にやられて途中からリタイアしたみたいじゃねぇか!!」

「あぁ!?こっちはこっちで闘ってリタイアしたんだよ!!闘ってもいないどこぞのマリモに言われたかねぇな!!」

 

サンジの一言にゾロはキレて言い返すが、それに釣られてサンジもキレ、とうとう口喧嘩が勃発してしまった。

そんな中、ナミは身体を震わせると手をグーにして2人に近づく。

 

「うるっさいわっ!!!」

 

ゴンッ!!ゴンッ!!

 

ナミが怒りの声を上げて2人を静止させるために拳骨を放つ。2人は後頭部に巨大なタンコブを作り上げてぶっ倒れる。

 

「とにかく早く橋に向かうわよ!チムニーが通り道を知ってるらしいわ!」

「そういや、フランキーの奴はどうした?」

「ロビンの方が心配だからそっちを優先するように頼んだわ!もう追いついてる筈よ!」

ゾロの質問にナミは答える。

皆はナミの案内の元、すぐにロビンの元へと向かう。

 

ーーーーーーー

一方で ロビンを連れていたスパンダムは外へと出る。

 

目の前には開いた正義の門。そして、その先に続く通り道である“ためらいの橋”が彼らが通るのを待っていた。

 

 

「わはは…!!正義の門が開いている!!笑いが止まらねェ…!!おい門兵共!英雄スパンダム様のお通りだぞ!さっさと出迎えて敬礼しろ!!」

『はい!直ちに!』

 

横暴な命令を出しながらもスパンダムは自身の出世を予想してニヤけていた。

そして、自身の横にいるロビンに目を向けると ためらいの橋のその先に見える小さな門を指差す。

 

「見ろニコ・ロビン!!あの小さな門こそが実質の入り口だ!あれを通過する一歩こそが、お前にとっての天国と地獄の境界線!!そして俺が歴史に名を刻む瞬間なのた!!」

 

虚な瞳で門を見つめるロビン。もはや体力も限界に近い。身体の傷も目立ち始め、既に何箇所からも出血していた。

 

「…!」

「な!?」

だが、生きようと決めたロビンは決して諦めず、“死にたくない”と心に訴える。そして、体力を振り絞り、スパンダムの掴む腕を無理やり身体を回す事で振り解く。

 

「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」

少しでも門から遠くへ。そう思いすぐに来た道を引き返す。

だが、スパンダムはすぐに追いつき、ロビンの髪の毛を掴む。

 

「おっとっと!今更どこへ逃げようとしてんだよ!!同情ぐらいしてやってるんだぜ?__だが仕方ねぇだろ?お前にはもう生きてる価値はねぇんだ…!!」

 

そう言い無理やりに連れ戻そうと力を入れて引っ張ってくる。だが、ロビンは絶対に戻らないという意思を持ち、髪の毛を引っ張られながらも力を入れてスパンダムを振り切る。

 

「うぉ!?」

髪の毛が何本か千切れたが、気に留めず、ロビンは走りだした。

 

「あのアマぁッ!!」

 

「!?」

ガンッ!!

 

スパンダムはロビンの頭を掴み、地面に押しつける。

 

「うぐぅぅ…!」

「テメェいい加減に…!!ん!?何だ!?離れねぇ!!」

 

スパンダムはロビンを連れて行こうと無理やり引っ張る。だが、ロビンの顔が石橋から離れない。

 

見るとその石橋から血が滴っていた。ロビンは石橋に噛み付いていたのだ。

 

「コイツ…!石橋に食らいついてやがる!何て往生際の悪ィ女だ!!忌々しい!」

そう言いスパンダムはロビンの後頭部を掴み、無理矢理にでも剥がそうとする。だが、ロビンは離そうとしない。絶対に。

 

「(“死”がこんなにも怖く感じる………死にたくない!!)」

血が次々と出始め、口内にも痛みが広がってこようとも、ロビンは堪える。

 

「(ここは動かない!!皆が必ず助けにきてくれるから…!!)」

 

そう強く心に訴えかける。何度も引っ張られるが、強く石橋を噛む。

 

「何度言わせる!!もうお前に希望などねぇんだよ!!」

そう言いスパンダムの手がロビンに再び迫ってきた。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

「ガバァ!!?」

 

スパンダムの身体が吹っ飛ぶ。

 

「長官!!」

「大丈夫ですか!?」

 

到着した門兵達がスパンダムに駆け寄る。一方で、ロビンは石橋から口を離すとゆっくりと自身の後ろに立つ影を見つめる。

 

「…!!」

 

その姿を見た瞬間 大粒の涙が次々と溢れ出てきた。

 

「ロビン…遅くなって悪かったな…」

 

白くたなびく髪。薄い褐色の肌、そして、小柄な身体。

 

その影はスパンダム達を緑色の目で睨み付けると、ロビンを守るかのように前に出る。

 

「後は俺に任せろ」

 

ニソラ ためらいの橋に到着

 

 

 


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