ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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下される罰。そして友との再会

子供の頃は…いつだってそうだった。

私がいじめられている時 貴方はいつだって私を助けにきてくれた。

 

 

『や〜い妖怪!!』

 

『とっととこの島から出てけ〜!!』

 

『おい!ロビンに何やってんだ!』

数人の子供達が1人の少女に石を投げつけていると、1人の少年が少女の前に現れ、少女に石を投げつける数人の少年達を拳骨で殴ると紐で縛り付けて他人の家の木に逆さまで吊り下げる。

 

『ったく。毎日毎日飽きねぇもんだな』

少年は手の埃を払うと一仕事終えたように息をつく。木の上から泣き喚く声が聞こえてくるが、少年は無視するかのように、少女に振り向く。

 

『大丈夫か?ロビン』

『…うん。ありがとう!ニソラ!』

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「後は…俺に任せろ…」

 

「ニソラ…!!」

ためらいの橋へと到着したニソラは傷ついたロビンを守るかのように前に出る。

 

吹き飛ばされたスパンダムは駆けつけた門兵に身体を支えられながらも起き上がった。

 

「て…テメェは…さっき俺に石をぶん投げた奴だな!?」

 

「知るか。忘れたよ。ンな昔の話」

 

「はぁぁ!!??」

自身に屈辱を味合わせた行為を忘れた事に腹を立てたスパンダムはすぐさま門兵へと指示を出した。

 

「おい!兵士共!!このガキを今すぐ撃ち殺せ!ニコ・ロビンには当てんなよ!!」

 

そう指示を出した瞬間 

 

「うぉ!?何だ!?……」

 

強風が吹き荒れた。その強風に驚いたスパンダムは一瞬ながらも腕で顔を覆った。

 

それから風が止み、スパンダムが目を開けると、そこには先程まで姿があったニソラが消えていたのだ。だが、それと同時に先程まで感じていなかった威圧感が背中から感じ始めた。

 

 

「邪魔だよ。お前ら」

 

「!?」

 

その声を聞いた瞬間 振り返る。見るとそこには先ほどまで20人はいた兵士達が身体から多大なる量の血を流しながら倒れており、その兵士達の中心で腕を血で染めたニソラが立っていた。

 

「さて、これで邪魔なやつはいなくなったな」

 

「…ひ…ヒィ!!??」

スパンダムはその血を浴びているニソラの姿に恐れ、恐怖のあまりに腰を抜かしながら退く。

 

「何を怯えているんだ?」

その姿をとらえたニソラはゆっくりと振り向くと一歩一歩近づいてくる。

 

「逃げるんじゃねぇよ。お前…長官だろ?」

一歩一歩進むたびにスパンダムとの距離は縮まり、遂には自身の目の前に迫ってきていた。

スパンダムはすぐに腰に掛けてある剣に手を伸ばす。

 

「や…やれ!!“象剣”ファンクフリー…「おせぇ」

 

向けようとした瞬間 手から剣が突き放される。ニソラの蹴りが強引にスパンダムの腕から引き離したのだ。蹴り飛ばされた剣は数メートル離れた場所に転がる。

 

「な…!」

武器を手放し丸腰の状態となったスパンダムは剣に向かって叫ぶ。

 

「おいファンクフリード!今すぐコイツを殺せ!」

 

「…」

返事はない。いや、見ると少し震えていた。その上全身という全身から汗が出ており、動物によくある『警戒』という態勢ではなく、完全に恐れていた。

ファンクフリードでも、ニソラの威圧感の前ではいくら長い付き合いのある『相棒』と呼ぶに相応しいスパンダムの命令であろうと聞くことができなかった。

 

「あの剣から若干だが意思を感じる。いい子だ。そのまま大人しくしてろ」

 

ニソラは再びスパンダムの方へと振り向くと脚を振り上げた。

 

その瞬間  

 

「ゲバァ!?」

鈍い音と共にニソラの足が振り上げられ。スパンダムの顔を歪ませながら蹴り飛ばした。

 

「うぁぁ!!!痛ぇ!!痛ぇぞ!!ちくしょぉぉぉ!!」

骨が軋むほどの痛み、そして歯が折れた事でスパンダムはゴキブリのように足をジタバタさせながらのたうちまわる。

 

だが、ニソラは手を緩めない。

「これで終わりと思うなよ?」

 

一瞬でスパンダムの目の前に移動すると顔を掴み、持ち上げる。体重が自身よりも重いスパンダムを片手で軽々と持ち上げたニソラはもう一方の拳を握り締めると、ジタバタするスパンダムの身体へ向けて構える。

 

 

「ゲボェ…!?」

そして、鳩尾に向けてその握りしめた拳を放った。放たれた拳は胸骨と胸骨の中間地点を上手く突き刺し、大きく胃を揺らす衝撃を与えた。

 

それだけでは終わらない。

 

「ヒヒヒ…!!」

 

ニソラは殺意丸出しの笑みを浮かべると、そこから連続で拳を放つ。その1発1発がスパンダムの腹 鳩尾 胸 両肩 顔という5つの部位を的確に狙い、次々と苦痛を浴びせた。

 

「ガァ…!!ガバァ…!!グボヘェ…!?」

 

その合計は僅か20発。けれども、一般人並みの力しか持たないスパンダムを苦しませるのには充分だった。

 

 

「…?ほぅ。耐えるか。まぁその方が好都合だ」

 

連打を叩き込まれてなおも、意識を保っているスパンダムを見て称賛すると、手を離す。

 

「い…痛ぇ!!痛ぇよー!!!!!」

その途切れる事のない痛覚にスパンダムは絶叫しながらゴキブリのようにのたうちまわる。だが、ニソラは表情を変化させる。

それは今まで溜まっていた“怒り”が放出されたかのような憤怒の表情であった。

 

「喚くなよ。耳障りだ…!!」

痛みの訴えを掻き消すような冷徹な声が響き、スパンダムの腹の中心へとニソラの脚が押しつけられる。

 

「弱いものいじめは趣味じゃねぇ。けど、お前のような奴は別だ。まだくたばるなよ?少しずつ痛みを与えて地獄を味わわせてやる。この害虫が」

 

「…!!ふざけんじゃねぇ!!」

スパンダムの叫びが響き渡る。

 

「俺達世界政府は何千何百との市民の命を救う為にやってんだぞ!?今回のニコ・ロビンの件もそうだ!!アイツが生きてれば多くの市民が死亡する可能性がある!!だから連行されてるんだ!!そんな正義を掲げている俺たちが何故お前のようなクソガキに害虫呼ばわりされなければならないんだ!!」

 

立て続けに放たれるスパンダムの訴えにニソラは表情を変化させる事なく答えた。

 

「自分の地位目的が主旨だろ?変な奴だな。市民を救うとか、狂ってやがる」

 

「そうだ!それの何が悪い!?」

 

ニソラの返しにスパンダムは叫んだ。

 

「地位への欲望は誰しもが必ず持っている!!狂っているのはお前だ!!なぜニコ・ロビンを救う!?アイツが道端で歩くだけでもその街が滅びる!生きてれば必ず世間を不幸にする!!そんだけ存在価値がねぇんだよ!!奴はこのままこの世から跡形もなく消し去らなければならねぇ奴なんだよ!!そんな価値のない奴を助けて何になるんだよ!!」

 

そう言いスパンダムは次々とロビンを侮辱し存在を否定する言葉を吐き出していく。

 

それを聞くたびに後ろで座り込んでいたロビンの表情は暗くなっていった。

 

 

 

そんな中であった。

 

「……一つ聞く…、お前…俺が来る間…ロビンに何をした?」

 

「…は?」

突然の質問にスパンダムは驚く。ニソラの目線の先には引き抜かれたロビンの髪、そして鉄の橋に付着しているロビンの血があった。

 

すると、次第にニソラの腕に筋が沸き立ち、スパンダムの首を掴む腕の握力が高まった。

 

「んぐ!?テメェ…!離しやが…」

 

「ロビンに何をしたぁッ!!!」

 

その場にとてつもない怒声が響き渡る。至近距離で発せられたスパンダムは汗を垂れ流しながらも叫んだ。

 

「に…逃げようとしたから制裁を加えてやったんだよ!!髪を引き抜いたからなんだ!?あんな醜い女の髪の毛一本や二本!!ましてや身体なんて『生ゴミ』に等しいんだよッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

スパンダムが放ったその一言はロビンをさらに絶望へと陥れる。だが、それと同時にニソラの怒りを買ってしまった。

 

 

ピキッ

 

ニソラの瞳の周りから毛細血管が次々と沸き立ち、その目は怒りに満ちた。

それと同時に首や細い右腕に筋が湧き立つ。

 

 

 

 

「分かった。じゃあ…『死ね』」

ニソラは掴んでいた首に力を入れると鉄の橋の足場に叩きつけた。

 

「んがぁ…!?」

 

後頭部から伝わってくる痛みに脳を揺さぶられ、スパンダムは目を回す。

 

一方で、ニソラは大の字に倒れ臥すスパンダムの右の二の腕に脚を押し付け、そこから腕を掴み出した。

 

「…!?お…!おい!何する気だ!?」

その姿勢から何をしようとするのか。スパンダムは分からず、焦りだし、ニソラに問う。だが、スパンダムの問い掛けにニソラは応じる事は無かった。

 

 

ニソラのやる事はただ一つだけ。

 

 

 

“コイツに地獄以上の苦しみを与えること”…!!!

 

 

 

 

その時、その場に肉が千切れる音がする。

 

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

それと同時にスパンダムはこれまで聞いた事が無いほどの悲鳴を上げた。

 

 

見るとスパンダムの二の腕から先の腕がもぎ取られていた。

強引に引っ張った為、切り口は紙を破いたかのように不規則な形をしており、その上、引き抜かれた腕の骨が突き出ていた。

 

 

「いてぇぇぇ!!!!いてぇよぉぉぉ!!!!!」

血が大量に流れ出る右腕の“付け根”を左腕で掴みながら絶叫する。だが、血はスパンダムの指と指の間から次々に流れ落ちていった。涙が次々に出て、視界を覆い尽くす中、スパンダムは失った右腕がニソラの手に握られているのが見えた。

 

そして、血が流れる中、その右腕に手を伸ばす。

 

「か…返せ…!!俺の腕…!!!」

スパンダムの聞き入れをニソラは達観するかのように述べる。

 

「お前がロビンにした事はよく分かった」

ニソラはその場から脚を進めると石橋の端へと進み、海に向けて手を振りかぶる。

 

「殺すのはやめた。もっと苦しむ方法が思いついたからな…!!」

 

「お…おい!何をする気だ!?やめろ!!」

後ろからスパンダムは痛みがありながらも這いながら静止をかけるが、ニソラは止める素振りを見せない。

 

「おい!頼むやめろ!!やめてくれ!!!」

 

脚を掴み涙を流しながら懇願してくるスパンダムの声が耳に届いていないのか、ニソラは見向きもしなかった。

 

そして、

 

 

 

ニソラはゆっくりと海に向かってスパンダムの右腕を投げ捨てた。

 

 

 

 

その腕は空中で弧を描き、血を軌道上に残しながら荒れ狂う海の中へと消えていった。

 

 

 

「……!!」

スパンダムは自身の右腕が落ちた場所を見つめていた。その時、強引に首を掴まれ、ニソラの目の前に引っ張り出される。

鋭く血走った緑色の眼光を向けながらニソラは静かに言い放った。

 

 

「いいか…?二度と俺やロビンの前に現れるな。今度現れたら…

 

 

 

        “これじゃ済まねぇぞ”ッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あああ…!!」

 

目の前にいるのはただの子供ではない。スパンダムの目の前には鋭い歯を剥き出しにし、白い眼光を向けている“邪な者”が映し出されていた。

 

ドサッ

 

その気迫に飲み込まれたスパンダムは泡を吐き出しながら、ゆっくりと白目を剥き、首を後ろへもたれつかせながら意識を失った。

 

「ロビンを傷つけた罰だ。一生 利き腕が無い体で生きるんだな」

その光景をロビンは遠くから静かに見つめていた。

 

ーーーーーーーー

 

 

ガチャ

 

鍵によって手錠は解除されロビンの手から離れた。

自身の手をロビンは見つめるとニソラの方へと顔を向ける。ニソラの顔は何事も無かったかのように笑顔だった。

 

「よし。大丈夫か?ロビ…ん?」

 

ニソラがロビンの安否を確認しようとした瞬間

 

_____ロビンは涙を流しながらニソラの首に手を回し抱き締めた。

 

「どうした?」

ニソラは突然 身を寄せてきたロビンに理解ができずにいた。そんな中 ロビンは震える声で細々と呟いた。

 

「ニソラ……」

振り解こうとしたが、抱きしめる腕の力はとても強かった。次第に強くなる抱擁をニソラはニッコリと笑いながら受け止め、幼少期の時の様に頭を撫でた。

 

「無事で良かった」

次第に強くなるロビンの涙。その涙は次々と頬から零れ落ちていき、ニソラの服へと降りかかる。

 

「…髪…大丈夫か?それに口も」

ニソラはロビンの乱れた髪を撫でる。スパンダムに千切られた事で所々の髪が少し抜けていた。そして、口元も、ニソラは袖を出すと、ロビンの口元の血を拭う。

 

「えぇ。ありがとう」

口元から血を拭き取る。すると、一度流し終えた涙がまた流れ始め、ロビンは再びニソラを抱き締めた。

 

「本当に…ニソラなのね…!貴方も無事で…本当によかった…!!」

 

たった1人の同じ故郷の人、たった1人の話を分かち合える人、そして何より___たった1人の『友達』が生きていた事に、ロビンは心の底から嬉しさのあまり今まで押し殺していた感情を曝け出し、泣いていた。

 

「おいおい…泣きすぎだろ?そんなんじゃこれから来る仲間に合わせる顔がねぇだろ」

 

ニソラはその抱擁を受け入れながら、もう一度、服の袖でロビンの涙を拭き取る。すると、涙が止んだロビンは再び満面の笑みを見せた。

 

「ええ…そうね!」

その笑顔にニソラも返すように笑う。ニソラに支えられながらロビンはゆっくりと立ち上がる。

 

「……お前…随分と大きくなったな」

「そうかしら?」

ロビンは最後に会った幼少期の頃から、急激に成長を遂げており、ニソラの身長が、ロビンの肩までという程だ。

ロビンが188それに対してニソラは165。その差は何と23という驚異的な数値であった。

 

「昔はあなたよりも小さかったけど、今では私の方が大きいわね」

「あぁ……て、頭を撫でんな」

ロビンはニソラのその小柄な体躯に可愛らしさを感じ、不意に頭を撫でる。そんな談笑をしていると、突然、後方からとてつもない大爆音が響いた。

 

「「!?」」

 

突然の爆発音に2人は一瞬で現実に戻る。見るとためらいの橋の入り口から煙が吹き上がっていたのだ。

 

「何だ?あれは」

不審に思っていると、その時 誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえた。その音は靴の音ではなく、素肌と地面が接触する音、つまり、裸足で走ってくる音だった。

 

「おい!お前ら!!」

その声は次第に近くなり、みるみると姿が鮮明になってきていた。フランキーだ。だが何故かボロボロの姿でコチラに走ってきた。

 

「お!?どうやらニコ・ロビンを解放できたようだな」

 

「あぁ。さてと…もうここには用はないな。帰るぞ」

「!?」

すると突然ニソラはロビンを抱える。膝の裏と背中に手を掛けて抱えている俗に言う『お姫様抱っこ』を突然されたロビンは赤面するが、ニソラはそれを気にも留めずに、すぐさま飛び立とうとする。

 

「ほら、ロボット。お前も掴まれ」

「待て待て待て!!!」

「ん?」

フランキーはすぐさまニソラを止める。

 

「お前どんだけ薄情なんだよ!?麦わら達まだ来てねぇだろぅが!」

「え?あぁそうか」

ニソラはロビンの事で頭がいっぱいであった為に、一緒にいるルフィ達の退路の事を考えていなかった。

 

「確かあのバカがバスターコール発動したんだっけな。だとしたら…どうする?」

ロビンをおろすと皆の退路を確保するための方法をフランキーに聞く。すると、フランキーはためらいの橋の正義の門を指差した。

 

「確か向こう側に本来俺達を乗せるために用意された護送船が停泊させてある筈だ。だが、やはり海兵も何人か潜んで……おっと、予想通りだ」

「…?」

フランキーの指差す方向へロビンとニソラは目を移す。みると、誰か連絡をしたのか、護送船に待機していた兵士達が再びロビンとフランキーを奪還するためにこちらに向かってくるのが見えた。

 

「成る程、ルフィ達も連れて避難するには船が必要って訳か。だったら…運動がてら……にと」

そう言いニソラは一人で行こうとしているのか、フランキーとロビンの前に出る。

 

「ちょ…おいおい!兄ちゃん!お前連続でCP9の野郎とやりあったんだろ!?だったら少し休んで俺らに任しとけ!」

フランキーの静止は若干だが、的を得ていた。今のニソラはCP9との戦闘での傷は浅い。だが、限界の空腹状態であり、残りの活動時間も僅かと迫ってきていたのだ。

だが、その辛さを表面に出す事なく、笑いながら返す。

 

「俺一人で十分だ…!」

そう言い向かってくる敵軍に向けて一気に駆け出した。

後に残されたフランキーはその様子を見ながらロビンに聞く。

 

「アイツが…お前が言っていた“友達”か?」

「えぇ。私の…大切な……たった一人の…ね」

そう言いロビンは口元の血を拭う。

 

「私達も行きましょう。ニソラだけに任せられないわ!」

「よし」

二人もニソラに続く。

 

ーーーーーーーーーー

 

ロビンを護送する為に集められた兵士。その数は通常の軍艦に乗るよりも数は大幅に多かった。それもそうだ。世界政府はロビンを危険人物とみなしているので護送する際の警備も万全でなくてはならない。

数百人の兵士達は銃火器を手に持ちすぐさまためらいの橋に降り、ロビンを捕らえに向かう。

 

その時だった。前方からこちらに向かってくる人影が視界に映ってきた。

 

「来たぞ!!撃てぇぇ!!!」

 

部隊長らしき海兵の指示と共に構えられた何十人もの銃撃が一斉に放たれる。1発だけでは終わらない。装填した玉が半分になるまで何発も放つ。

 

放たれた何百もの銃弾は走ってくるその人影の脳天目掛けて一気に突き抜けていき、その黒い影の頭を見事に捕らえた。

 

だが、妙だ。撃ち抜いた時の肉体と弾丸の擦れる音が聞こえない。見る限り未だに進撃は止まる様子を見せなかった。

 

「!?何だ!?確実に脳天に当たった筈だぞ!?」

「恐らく能力者だ!!銃撃隊下がれ!!」

その合図と共に膝をついていた銃撃部隊は立ち上がる。

 

その時だった。

 

肉体と弾丸の擦れる音が自身の後ろから聞こえた。

 

「な…なんだ…!?」

 

振り返ると後方に控えていた兵士約数十名の全身に黒い穴ができており、そこから血が流れ出ていた。

 

「…!?」

「ぎゃぁぁぁ!!」

辺りの兵士達があまりにもの酷い惨状に絶叫する。

 

「!?まさか…奴も武器を持っているのか…!?」

部隊長がそう予想する。が、持っていたとしたら必ず発砲音が聞こえる。発砲音が聞こえる様子は無かった。ならばどうやって撃った…?

 

「…!!まさか!!」

その部隊長の予想は当たっていた。

 

見ると砂煙が晴れ、向かってくる人物像がハッキリとしてきた。その正体は一人の少年だった。目を凝らしてよく見るとその少年は走りながら手を振りかぶっていた。

 

「避けろッ!!!」

 

すぐさま前衛に指示を出した。だが、時は既に遅い。

 

その少年から、次々と先程放たれた弾丸が跳ね返ってくるように放たれ、前衛の兵士達全てを蜂の巣にした。

 

「気をつけろ!!妙な技を使ってく………る…!?」

 

 

その時 部隊長の真横に黒い影が降り立った。

 

 

 

「ゴフゥ…!?」

 

その瞬間 背中から鳩尾へと衝撃が走ると同時に口から血が吹き出た。

 

「い…つのま……に……」

 

ドサッ

 

「ふぅ…。さて…体力が尽きるまでざっと30分ってところか…」

部隊長を戦闘不能に追いやった少年『ニソラ』は残る約100名程の海兵を見渡すとすぐさま腰を低くし、戦闘態勢を取る。

 

 

「早く掃除を済ませるか…!!」

 

ロビン奪還完了。残りは皆の到達かつ、退路の確保のみ

 

 


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