ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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放流される戦士

「………」

その場にいた一同は目の前に広がる光景に唖然としていた。

天井が消え、外の景色が丸見えとなっている冷凍室。先程まで映っていた超巨体のオーズの姿はどこにもない。影を入れて5分も経たずして砕け散ってしまったのだ。

辺りには粉々となったオーズの肉片が散らばっていた。

 

モリアは唐突に起きた現象に理解が追いつかず、口を開けながら唖然としていた。

 

「嘘……だろ…?あのオーズが爆発しちまったぞおい…」

ゾンビ科学者兼外科医のホグバックも同じだ。オーズが動く日を待ち遠していたにも関わらず、突然の破裂。理解が追いつかなかった。

 

「おいおい…あの巨体を爆発させちまうなんて…どんな力持ってんだよあのガキは…!」

 

ホグバックは何もかもが抜け落ちた抜け殻のような声でつぶやいた。こんな現象はスリラーバークに移り住んでから見た事がない。

それはモリアも同じだ。

 

「オーズが…!俺のオーズが…!」

 

その時だ。崩れたオーズの身体のから影が現れた。影は尚も健在であり、唸っていた。

 

「ぐぅぅ…!!ふざけんじゃねぇぇ!!!」

最高傑作のゾンビが破壊されたことにより、モリアは怒り狂い歯を食いしばりながらも出てきた影を片手で鷲掴みする。

 

「コイツの力はどうなってやがる!?オーズのデカブツでも収まらねぇってのか!?」

 

影を入れれば確かに力は手に入る。だが、影に見合う容量が容器に存在しなければ力は手に入るどころか内部でパンパンに溜め込まれ、遂には影の力が取り込みきれず内側から破れてしまう。

 

簡単に言い表せば一本の2リットルのペットボトルへ25メートル級プールの水を無理矢理注ぐ事と同様である。

 

今回の事例は正にそれである。ニソラの力があまりにも強大すぎる為にオーズの身体がその力に対応しきれず爆発してしまったのだ。 

 

モリアは自身の最高傑作が破壊された事により怒り心頭に達していた。だが、貴重な素材であるニソラの影へと八つ当たりをする程までには至ってはいない。そこまでの平常心は持ち合わせていた。

 

「コイツの影は消すには惜しい…。それによく考えりゃこの力を持つ本体も二日もすりゃ目を覚ましちまうな。おい!アイツを小舟に乗せて海に流しちまえ!」

 

「で…ですがモリア様!地下牢にぶち込んで置いた方が…」

 

「馬鹿野郎!何かの拍子に城が崩れて死んじまったらどうする!ここら辺は魔の三角海域だ!海王類もいねぇから小舟に流しちまえば一生暗い海の上なんだよ!つべこべ言わずとっととやれ!!」

 

「承知しました!!」

怒り心頭のモリアに手下のゾンビ達は震えながら敬礼すると、即座にこの場から離れていった。

 

「モリア様…ソイツに見合う入れ物なんてありませんぜ?」

今もなおニソラの影を掴むモリアにホグバックは言葉を掛ける。だが、モリアは諦めてなどいなかった。

 

「まだだ…!コイツに見合う入れ物を必ず見つけてやる!!」

 

その目からはとてつもない執念が宿っていた。

 

◇◇◇◇◇◇

命令を受けたゾンビ達は先程の部屋に戻ると部屋の隅で鎖に繋いでいたニソラの小柄な身体を持ち上げ、素早い動きで入江に向かう。

そして、簡易的な帆のない小舟の上に乗せると鎖を解き、ゆらりゆらりと波打つ霧深い海へと放流した。

 

「も…もし戻ってきたらどうなるんだろ…」

 

「オーズが破裂するほどの力を持ってるんだぜ…?下手すりゃ俺達は島ごと消されるんじゃねぇか…?」

 

「こ…怖いこと言うなよ!海に離せば飛ばねぇ限り戻ってこれねぇんだからよ!!」

 

「そうだよな!」

 

船を見送ったゾンビ達は恐ろしい未来を予想し汗を流しながらも笑って誤魔化し、すぐさま城へと戻っていった。

放流された船はどんどんスリラーバークを離れていき、暗い暗い霧の向こうへと消えていった。

 

 


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