ONE PIECE サイヤ人の変異体 作:きょうこつ
ニソラ達が侵入したスリラーバーク中央に佇む古城。
その内部は現在、大パニックに陥っていた。
「ひぃ!?なんだコイツ!?」
「攻撃しても全部受け流されちまうじゃねぇか!」
ニソラを取り囲んでいたゾンビ達は次々と武器を捨て負け犬の如く逃げていく。
その理由は簡単だが、信じ難き事だった。何度武器をつけ付けようと、振り下ろそうと、全て砕かれ、又は“受け流され”ていたのだ。
ゾンビ曰く、武器を受け流された時の感覚はまるで“川に流されているかの様”な感覚らしい。
その奇妙な戦術にゾンビ達は成す術を失い、逃走またはヤケクソという2択しか残されていなかった。
ヤケクソという選択肢を選び突っ込んでいったゾンビ達はアッサリとその武術の餌食となり、鎧を来ているにも関わらずその身体を蜂の巣にされ撃沈。
更に逃げ遅れたゾンビ達も背後から襲いかかって来るニソラの拳の餌食となり、次々と堅固な鎧を砕かれていった。
一方で
「カッカッカッ…!!」
不気味な笑い声を溢しながらもニソラは手を止めない。水の様に一切のブレのない滑らかな動きで振り回されながら放たれるその拳はゾンビ達を激流に飲み込むかの様にその身体を砕き、貫いていった。
ニソラの扱う見たこともない武術をロビンは不思議に思いながら見つめていた。
「……不思議ね…。CP9の六式とはまったく違う動きだわ」
そう言いロビンは能力を発動しゾンビを拘束しながら背中を預けているフランキーに問い掛ける。
「フランキー…貴方さっきニソラの構えを知っている様な口ぶりだったけど…何か知っているの?」
「あぁ」
フランキーは頷くと自身の師から聞いた話を語り出した。
「トムさんが海賊王の船を作った直後の事だ。1人の髭を生やした中年親父が客船に乗りながらウォーターセブンに訪れ、トムさんを尋ねてきたらしい。話によるとそのおっさんは武術家で自分の武術を極める為に武者修行の旅をしていたらしい。
それに対してトムさんはアッサリと5人程度が乗れる中型船を提供した。その時におっさんは金と一緒にその武術を見せてくれたらしい」
フランキーは今もなお暴れるニソラへと目を向けながら話を続けた。
「青い水の様な色のオーラが手を包み込んだかと思うと、そこから次々と滑らかな動きで前へ前へと拳を突き出していた。その動きは滑らかすぎてまるで『流れる川』の様に見えていたようだ。その武術の名前は知らねぇが…おっさんが言うには『攻撃も防御も可能な攻防一体の拳』らしい」
「…その武術をニソラが…?」
「あぁ。手に青いオーラを纏ってるから間違いねぇ。まさか実物を拝めるとはな…」
そう言いフランキーは今もなお、暴れるニソラを見ていた。
そんな中、ロビンはある違和感を感じた。
「…ルフィは…?それに2人もいないわ…」
先程まで戦っていたルフィ、そしてゾロ、サンジが姿を消していたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇
一方で、ニソラは未だに攻撃を止めなかった。
「ふん…ッ!!」
腕が振り回される。それによって目の前に立っている3メートルを超えるゾンビの鎧が粉々に砕け散っていった。
未だに進撃を止めないニソラに対して現れたゾンビ達は遂に逃げ出していた。
「なんなんだよコイツ!!全然攻撃効かねえじゃねぇか!」
「ペローナ様を呼ぶんだ!あの人ならコイツに勝て…ごば!?」
援軍を呼ぼうとしたゾンビの頭がニソラの拳によって貫かれる。
「こうなったら俺…がぼげ!?」
止めようとした超大型のゾンビでさえも一瞬にしてその図体を破壊される。辺りへと散っていく肉片を目にしたゾンビ達は遂には悲鳴をあげ始めた。
だが、ニソラは逃す程甘くはない。
「…!!」
目が黄緑色に輝くと“構えが変化”し、獣の様に手を広げると一瞬にして逃げ惑うゾンビ達に追いつき平らげるかの如くゾンビ達の身体を切り裂いていった。
「ガバ…クソ…」
「なんなんだよ…コイツ…妙な拳法 使いやがって…」
次々と身体が崩れ地面に倒れていくゾンビ達。見ればニソラを取り囲んでいた鎧の軍勢は殆どが地面に倒れ、遂にはあと1人となっていた。
「さて、お前で最後だ」
「ヒィ!?」
ニソラは壁に追い詰められたゾンビにとどめを刺すべく手を振り上げる。
その時だ。
ゴシャァァァンッ!!!!
後方から巨大な爆発音と共に岩が砕け崩れ落ちる音が聞こえた。それはロビンの気が感じる場所と一致していた。
「…!ロビン!!」
ニソラは手を下ろすと、即座にその方向へと駆け出した。
渡り廊下の付け根あたりにはロビン達に群がっていた鎧の軍勢の残りが、その様子を見つめていた。
「邪魔だぁッ!!」
「「「ギャァァァァ!!!!」」」
ニソラは手を振り上げると、埃を払うかの様に振り払いゾンビ達を一掃し、その場から飛び出す。
空中へと飛び出したニソラはそのままロビンを捜索する。
「ロビン!どこだ!?」
すると
「ニソラ!ここよ!」
自身が飛び立った場所から声が聞こえ、見ればそこには既にロビンと、その瓦礫の足場を掴んでいるフランキーの姿があった。
「ロビン!」
ロビンの姿を見つけたニソラは安心すると、浮遊しながらロビンのいる足場についた。
それと同時に
「……ん?」
空から何かが降ちてくる気配を感じた。
「なんだ?」
空から次第に近づいてくる気にニソラはロビンから目を離し、上を見上げた。
その気はどんどんと近づいてきており、見れば細身の人影が空中から落下してきていた。
「ヨホホホ〜!!!」
「…ん?この声…」
聞き覚えのある声にニソラが耳を傾けたその瞬間__。
「骨だけに____
_____ボーーンッ!!!!」
地面に何かが直撃した。