ONE PIECE サイヤ人の変異体 作:きょうこつ
突然と空から落下してきた黒い影。それは地面へと直撃すると人型のクレーターを形成していた。
そのクレーターをニソラは見つめていた。
「今の奴…確かボロ船の…ん?」
その時。ニソラは背後から何者かが忍び寄る気配を感じ取った。
それと同時に自身らが立っている渡り廊下から見える城の外壁に白く巨大な粘着物が付着し、地面からその糸を伝いながら身体が女郎蜘蛛、顔が猿の恐ろしい姿をしたゾンビが登ってきた。
「へいへ〜い!時間を稼いだつもりだろうが、俺からは逃げられないぜ〜モンキーモンキー♪」
そのゾンビは不気味な口調で笑うと、手の平から次々と糸を放出し、辺りに張り巡らせていく。それは遂に崩れたはずの渡り廊下を向こう側まで届く様に補強してしまった。
「ロビン、なんだ?これ」
「…さっき渡り廊下にいたゾンビよ。登ってくるとは予想外だったわ」
そう言いロビンは手を交差し、能力を発動させる。
すると、隣で立っていたフランキーは何かを考えついたのか、懐から妙に大きなヌンチャクを取り出した。
「おいニコ・ロビン、仮面の兄ちゃん。少し時間稼ぎを頼む」
「何をする気だ?」
「ちょいと、いい武器作ってくる。すぐに終わるからな」
それだけ言うとフランキーはヌンチャクをブンブンと振り回しながら後方へと下がっていった。
「…?」
それに対して不思議に思いながらもロビンは再び手を交差させて能力を発動する。
一方で、後方に向かっていくフランキーを見送ったニソラはロビンの肩に手を置いた。
「いいよロビン。俺がやるから」
「え?」
そう言いニソラは前に歩いていく。だが、ロビンは今まで激しい戦闘を続けていた姿を見ていた為にそれを止めた。
「流石に貴方も疲れているでしょ?少しは休んだほうが良いと思うわよ」
「別に大丈夫」
ロビンの配慮にニソラは適当に流す様にして答えると、一呼吸すると共に前に力を込めながら脚を踏み締め、猿顔のゾンビ目掛けて飛び立つ。
「消えろ」
「モンキ〜モンキ〜♪お前の様なチビが俺を倒せるわけ………は!?お前は2日前の___ブベラァ!?」
言葉を言い終わる前にニソラの蹴りが顔面へと陥没するかの様に直撃し、その際に発生した衝撃によって巨大な図体は木っ端微塵に粉砕された。
粉砕されたゾンビの肉片は辺りに飛び散っていき、それによってロビンやフランキーの背後から近づいていた小型のゾンビ達もそそくさに退散していく。
「……」
ニソラがゾンビを粉砕する様子を後ろから見ていたロビンはもう慣れたのか、ただ無言のまま能力を解除した。
先程まで目の前に佇んでいた巨大な図体がニソラの蹴りたった1発でバラバラに砕け散るという今まで見てきたことがない奇想天外な場面を目の当たりにしても、『ニソラだから』と納得してしまったのだろう。
「よっと」
すると、一仕事終えたかの様にニソラはロビンの目の前に着地した。
「あなた一体どんな生活してきたの…?」
「いろいろと」
そんな会話をしていると、後ろから崩れた柱に突き刺したヌンチャクを背負いながらフランキーが戻ってきた。
「なんだよ。もう終わっちまったのか?」
「あぁ。粉々にしてやっからもう追ってはこないだろ。それよりもなんだそれ?」
「これか?」
ニソラに尋ねられたフランキーはヌンチャクの両側をそれぞれ持ちながら何度も腕に鳴らすかの様に掴むと答えた。
「なぁに。特に何の変哲もないヌンチャクに崩れた鉄柱を差し込んだだけ。デカイ奴にはデカイ武器と思ってな」
「成る程。目には目をって奴か。ちょっとそれ貸してくれよ。振り回してこの城 叩き壊すから」
「貸す訳ねぇだろ!?どんだけこの城ぶっ壊したいんだよ!」
そんな時だった。
「ヨホホホ〜!」
「…ん?」
陽気な声と共に数日前にニソラが見つけた骸骨男『ブルック』がなんと下から跳躍しながら現れた。
「お前は…」
「どうも!お久しぶりで…おぉ…!」
ブルックの身体は骨だけという特徴的な身体であるためにニソラは覚えており、久しぶりにその姿を見たので驚いていた。
一方で、ブルックもニソラの事を覚えていたのか、その姿を目?にすると頭のハットを持ち上げた。
「誰かと思えば数日前にお会いした旅の方ではありませんか!これはこれはお久しぶりです。先程の飛び蹴り…実にお見事でした!あまりの迫力にもう目が飛び出してしまいそうになって…私、目ないんですけどね…ヨホホホ!!スカルジョ〜ク〜!!」
「「「………」」」
「おや?皆さんどうしました?そんな死んだ魚の様な目をして。まぁ私は肉体ごと死んでますけどね。ヨホホホ!」
1人楽しそうに笑っている様子を見ていた3人は言葉を失ってしまう。
「なぁロビン。コイツ一発殴っていいか?なんか無性に腹立つ」
「奇遇だな。俺も一発ぶちかましたくなってきた所だ」
「やめなさい2人とも」
ブルックをしばこうとした2人をロビンは何とか止める。
「ゴホン。それよりも、皆さん…やはりこの島に入ってきてしまった様ですね…」
その様子を自身が原因であると悟ったのか、雰囲気を察したブルックは元の調子へと戻ると、深刻な表情を浮かべた。
「そうなればお話ししましょう。私が知るこの島のことを全て___」
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それからニソラ達はブルックから多くの事を聞いた。この島は巨大な船である事と、ゾンビは塩が弱点であり、塩を口内に入れるとすぐに影を抜き取れる事。更に消えた仲間達は既にモリアから影を切り取られ、船に戻されている事を。
それに対してフランキーは首を傾げる。
「…ん?なんで船に戻されるんだ?影取ったらそのままぶっ殺せばいいだろ?」
「確かにそう思うでしょう。ところがです。影は肉体と一心同体の様なもの。肉体が死ねば、影も同様に死ぬ…即ち消滅してしまうのです。それはモリア達にとっては都合の悪いものでしょう。なので影を取られた者達はそのまま船に乗せられ、戻ってこられない様に海へ放流するのです」
ブルックの説明を聞いていたニソラはようやく自身が目覚めた時にサニー号にいた事を理解する。あの時、自身は戻ってこられない様に海へと放流されたのだ。
「成る程。だから俺も海に放流されたのか」
「えぇ。ニソラさんの場合は飛べるので何も言えませんが、仮に飛べなかったとしたら本当に運が良いと言う他ありません。本来ならば、この海域は潮の流れも不規則な為に一度離れたりすれば、もう一度辿り着くのは困難となります。下手をすれば…この島を見つけられず私の様に数年もこの海域を彷徨う事となるでしょう」
そう言うと、ブルックは再度、警告するかの様にニソラ達に向けて言った。
「なので、早く船にお戻りを」
それからブルックは皆の横を通り過ぎると城の方へと歩いていく。
すると フランキーは呼び止めた。
「おい。ちょいとまちな。お前、さっき、話の中で『大事な約束』があるって言ったよな。なんだそれは?」
「……」
◇◇◇◇◇◇
それからブルックと別れたニソラ達はすぐさま船に戻るべく、来た道を引き返していた。
「確認程度なら、俺が飛んですぐに済ましてやるぞ?」
「確かにいい考えかもしれないけど…ここに残るのも危険な気がするの。だから一緒に戻りましょう」
「ロビンが言うならそうする」
「助かるわ。それに…この調子だと先に上陸したナミ達も心配ね」
そのままロビンと並びながら走っていたニソラ、そしてフランキーはサニー号へと戻るべく、もと来た道である長い階段を駆け降りていく。
その時だ。
「うわぁぁぁ!!!!」
「助けてぇぇぇ!!!!」
「「!?」」
前方から二つの絶叫する声が聞こえてきた。その声を聞いたロビンとフランキーは前へと目を向ける。
そこには長い鼻の狙撃手である『ウソップ』と二足歩行のトナカイであり、ニソラを治療した『チョッパー』が何十人ものゾンビに取り囲まれ、拘束されていた。
「チョッパー…!ウソップ…!」
「おいおい!襲われてるじゃねぇか!?おいニコ・ロビン!早速骸骨から貰った塩を使うぞ!」
「……」
走りながらフランキーは懐から塩の入った麻袋を取り出す。別れる際にブルックから渡されたのである。因みに塩はゾンビの唯一の弱点であり、口の中にひとつまみ入れれば強制的に影を切り離すことが可能なのだ。
だが、ロビンは少し悩んでいた。これからルフィ達の影を取り戻すために少しでも多くの塩が必要になってくる。こんなところで使ってしまえば肝心な時に底を突いてしまう可能性がある。
けれども、ここで使わなければあの大量のゾンビ達の中を掻い潜りながら二人を救出する羽目となるだろう。それは困難となる。
「…!」
そんな時、ロビンは思い出した。
“とてつもない友達”がいる事に。
それについて気づいたロビンはニソラに分かりやすいように特徴を含めながら頼んだ。
「ニソラ!捕まっている長鼻君とトナカイ君を助けてあげて!」
「ん」
横を走っていたニソラはアッサリと承諾。
走っていた足を一気に踏み締め、両手に水色のオーラを纏うとそこから飛ぶようにしてゾンビの大群に向かっていく。
「邪魔だ」
その瞬間 ニソラの両手が次々と水色の軌道を残しながら振り回されていく。それによって拘束されていたウソップとチョッパーを取り囲んでいたゾンビ達が破裂する風船の如くバラバラとなり辺りへと四散していった。
「ぎゃぁぁぁ!?」
「腐れやべぇぇ!!!」
「そんなぁぁぁぁ!!!」
そしてすぐさま床に拘束されていたウソップを肩に担ぎ、チョッパーを脇に抱えると再び走り始めた。
「お〜いロビン。助けたぞ。このまま船に運べばいいのか?」
「えぇ!お願い!」
そのままニソラは先陣を切り、船へと続く道を駆け抜けていった。途中、何度もゾンビに遭遇するもニソラは両脚を器用に扱い次々と蹴散らしていった。
「うぉぉぉ!?ゾンビ達が次々と!?やっぱお前すげぇぇ!!!」
「すっげぇ〜!!っ…ておい!?お前動いて大丈夫なのか!?」
「黙ってろ狸。舌噛むぞ」
「俺はトナカイだ!」
そのまま一同は霧がまだたち込める森の中を木々を突き飛ばしながら進んでいき、サニー号へと戻った。
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戻った時にはブルックの言う通り、姿を消していたルフィ、ゾロ、サンジ達が椅子に縛り付けられると共に落書きや鼻に洗濯バサミを挟まれるなど無残な姿となって戻されていた。
「完全にゾンビ共にデコレートされてんな…」
「無残ね」
その様子をロビン達が呆れながら見ている中、後ろで顎に手を当てながら何かを考えていたニソラはある事をロビンに尋ねた。
「ロビン」
「なにかしら?」
「モリアーティってそんなに強いのか?」
「モリアよ…。七武海の1人だから。それはもう相当強い筈。噂だけど、昔は四皇の1人と渡り合ったと聞いているわ」
「よよよよ四皇!?」
ロビンの言葉を聞いたウソップは身体をブルブルと震わせる。四皇とは、偉大なる航路の後半『新世界』を支配する四人の海賊の総称である。その強さは正に天災であり、四皇同士の刃が触れ合うだけでも天を割り海を引き裂き大地を砕くと言われている。
モリアという男はその超常的な力を持つ海賊の内の1人と渡り合っていたと言うこととなる。
それについて聞いた瞬間 ニソラの内に眠る闘争心に火が灯された。
「そうか」
話を聞いたニソラは一瞬ながら笑みを浮かべると頷き、扉を開けて外に出ると屈伸やら背伸びやら準備体操をし始めた。
「ちょっと待って。貴方……なにを…」
「ソイツ相当強いんだろ?なら、闘ってみたい。ちょっと行ってくる」
「え!?待ちなさ___」
ロビンが止めるよりも早く、ニソラは闘争心に身を任せてサニー号を飛び出し再び城の方へと飛び去っていった。
◇◇◇◇◇◇
そしてその直後のスリラーバーク古城の城内にて。修復を完全に終え、奪ったルフィの影を注入し目覚めたオーズと遊んでいたモリアの元へと数匹の動物ゾンビ達が駆け込んできた。
「モリア様ぁぁぁ!!!大変です!!影を取り戻した仮面がこちらに向かって来ている模様!!」
「はぁぁぁ!?」
その知らせを聞いたモリアは再び目玉を飛び出す程まで驚愕した。
ニソラが再び迫って来ている事を知ったモリアは歯を軋ませると、部下である『ホグバック』『ペローナ』へと目を向けた。
「お前ら!奴をもう一度捕らえろ!無理なら殺してもいい!」
それに対してペローナとホグバックは頷くと、身体を浮遊させて向かっていく。
「あ…でしたらモリア様…2体ほどゾンビの指揮権を私に…」
「いいだろう」
モリアから特定のゾンビの指揮権を譲渡されたホグバックは走っていく。
「ふぅ…ペローナとホグバックの指揮がありゃ心配ねぇな」
その姿を見届けたモリアはそのラッキョの様な不安定な体型で腰を下ろすと再び食料を食らい続けるオーズへと目を向けた。
「なぁ。モリアーティってお前か?」
「へ……?」