ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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再び来る怒り

「お〜!でっけ〜!なんだこりゃぁ!?」

 

モリアの元から去り外へと出たオーズは城の天辺まで登り詰めると、そこからスリラーバーク全体を見回す。

 

「ん?」

 

ふと、オーズはその近くにある巨大な滑車とそこに吊るされている鎖に目を向けた。

 

「うぉ〜!?なんだこれ!?引いてみよ!」

 

すると 巨大な錨が海から引き上げられると共に今まで佇んでいたスリラーバークがゆっくりと波に乗り動き始めた。

 

それと共に__

 

「よぅし!この船で俺は海賊王に!海賊王に…海賊王……に……」

 

影のに刻み込まれた記憶が段々と失われ始めていった。海賊王になるという持ち主の願望さえもゆっくりと溶けて消えていく。

 

「モリア様…の…所……に…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

オーズの眠っていた部屋にて、ニソラの目の前には壁に叩きつけられ血反吐を吐きながら倒れるモリアの姿があった。

 

まだ意識があるのか、白目を剥きながらも息をしていた。その様子を見ていたニソラは一仕事終えたかのように背伸びをする。それを後ろから見ていたルフィはすぐに駆け寄った。

 

「なんだ今の!?すげぇな!?それにお前あんなに速かったのか!?」

 

「あぁ。反応速度と身体能力には自信があるんだよ。それよりも」

 

ニソラは倒れるモリアへと目を向ける。

 

「取り敢えずコイツを早く始末するか。確か能力ってコイツの息の根を止めねぇといけなかったんだっけか?」

 

「いや、多分気絶だけで良いと思うぞ」

 

「そうか」

 

ルフィからアドバイスをもらったニソラは虫の息になりかけているモリアへと歩いていく。

 

 

その時だった。

 

 

「「!?」」

 

 

突然 城が大きく揺れ始めた。

 

「な…なんだ!?」

 

「地震か…?いや、違うな…」

 

 

「キシシシシ…」

すると、倒れていたモリアは不敵な笑みをルフィに向けて浮かべ始めた。

 

「変な海流にでも乗ったんだろ。まぁ、テメェのゾンビの仕業だろうがな。そうなればじきにこの島も日の下に出る。お前が焼け焦げるのも時間の問題だろうなぁ…!」

 

「なんだとぉ!?」

 

「なら、早くトドメを刺すか」

死へのカウントダウンが始まったことを宣告されたルフィは拳を構え、その横ではニソラは手にオーラを纏い、モリアへ向けてトドメを刺そうとした。

 

「キシシシシ!俺を倒したとしてもゾンビは支配者を失うだけで元には戻らねぇぞ?お前らの要求を可能とするにはただ一つだけ。俺の口から『元の場所へ戻れ』と言わせるだけだ」

 

「へぇ。めんどくせぇから胃の中に海水流し込んでやるよ閣下」

 

「誰が閣下だぁ!!!それに…さっきからお前…俺を簡単に倒せると思ってるらしいな」

 

「だからなんだ?」

 

「キ〜シシシ!!色々と甘ぇんだよクソチビが!雑談せずにさっさとトドメを刺しとけばよかったものをよぉ!軽く話してる内にこっちはとっくに反撃の準備は整っちまったぞ!」

 

「ん?なんの話だ?」

 

モリアの言葉にニソラは理解できず首を傾げる。

 

 

その時だった。

 

 

ズン___。ズン___。

 

巨大な地響きが聞こえ城を揺らし始めた。その地響きは次第に大きくなっていき、まるで“巨大な何か”がこちらに向かってきている様だった。外壁の間からは砂が零れ落ちていき、崩れかけた外壁がその振動によって下に落ちていく。

 

「キシシシシ…かつては俺も自身に満ちていた。新世界で暴れまくってな。だが途中で挫折した。その時に理解したんだ。優秀な部下の重要性をな」

 

「また何の話だよ。過去語りか?」

ニソラが尋ねるもモリアは続ける。その一方で、外からは地響きが聞こえてきた。

 

「俺は他人の力で海賊王になる男だ!そこらのポッと出の若造程度にやられる訳にはいかねぇんだよ!」

 

その叫びと共に地響きが更に近づいてくる。そして、モリアは再び叫んだ。

 

「やれオーズ…!!コイツを殺せぇ!!!!」

 

 

すると 先程まで聞こえていた地響きが突然と止まった。

 

 

 

その瞬間 

 

「!?」

 

壁が崩れると共に何かが飛び出し、ニソラの身体を掴んだ。

 

「ニソラぁ!!!」

 

叫ぶルフィの目の前にはやや薄い桃色の腕。それはオーズの発達した剛腕だった。ニソラが掴まれている光景を見ていたモリアはオーズへ向けて叫ぶ。

 

「オーズ!完全に支配下になったようだなぁ!遠慮はいらねぇ!そのチビを粉々にしてやれぇ!!」

 

「はい…ご主人様ぁ!」

 

その言葉を聞き入れたオーズは巨大な腕を引っ込めると、ニソラを攫う。それを見たルフィは額に筋を浮かべ、モリアに激怒する。

 

「お前ぇぇ!!!!」

 

「キシシシシ!分かったか麦わら!これが俺のやり方だ!優秀な奴の影を奪い忠実なゾンビに仕立て上げる!俺はこの力で再び新世界にいくぜ!仮面の野郎はその前菜だぁ!!」

 

そう言うとモリアは立ち上がり、その場から下の階へと飛び降りる。

 

「そうだオーズ!ソイツを片付けたらついでに麦わらの仲間も倒しておけ!ただしソイツらは殺すなよ!」

 

「お前!俺の友達だけじゃなく仲間にまで…ッ!!!」

 

「キシシシシ!お前らの仲間は中々の強者ぞろいだからな!強力な騎士ゾンビには持ってこいだ!特にニコ・ロビンの奴はゾンビにしてもマリオネットにしても充分使えるぜ!アイツの頭脳さえあれば軍師を取ったも同然だ!」

 

「待ちやがれぇええ!!!」

 

そう言いモリアは鼻血を垂らしながらも走っていき、ルフィも激怒しながら後を追っていった。

 

 

 

だが、後にモリアは後悔することとなるだろう。自身の放った言葉によってとんでもない“地雷”を踏んでしまった事を__。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

ニソラを掴んだオーズはモリアの命令を実行するべく、腕を振り上げると、地面に向けて地面に向けて掴んでいたニソラを本気で投げ落とした。

 

「ウォオラァアッ!!!」

 

投げ落とされた瞬間 辺りへと突風と共に巨大な衝撃波が発生し、スリラーバークを揺るがす。そしてその衝撃によって城の外壁が次々と崩れ落ちていき、叩きつけられたニソラを埋め尽くしていった。

 

だが、それでもオーズは止まらない。

 

 

「ペシャンコにしてやる〜!!!」

 

辺りへとその図太い声を響かせるとニソラの埋まった瓦礫の中心地へその巨大な拳を振り上げ一気に振り下ろした。

 

「オラァッ!!!」

 

放たれた巨大な拳は巨大な破壊音を轟かせながら地面に深く突き刺さると辺りへ地割れを発生させた。

 

だが、それでもオーズは止まる様子がなかった。そこから両手を構え、ルフィのガトリングの如く乱舞を繰り出した。

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ___

 

 

次々と放たれるオーズの巨大な図体に見合う程まで発達した双腕による乱舞。それはその一点のみを集中し、放たれていた。次々と拳が放たれていくその地面は地盤が砕け散っていき、辺りへと瓦礫を四散させていった。それによって辺りに佇んでいたゾンビ達も巻き添えを喰らい、ミンチにされていく。

 

 

そして 乱舞が止まると、オーズは大きく振り上げた右腕をトドメと言わんばかりの勢いで振り下ろした。

 

 

 

_____オラァッ!!!!」

 

 

 

 

 

そして 振り下ろされた腕は巨大な剣の如く大地に深く突き刺さると島全体を揺らすと共に巨大な衝撃波を再び発生させた。

 

巨人族さえも子供に見える程の巨体から繰り出された何十発もの乱舞。それは元の地形の原型を跡形もなく消し去り粉々に破壊していた。乱舞の放たれていたその中心部にはまるで穴に埋まるかのように大量の瓦礫が転がっていた。

 

 

「ふ〜。お〜わった。さてと、次は、麦わらの一味っと___ん?」

 

ニソラを片付けたオーズはその場から拳を引き上げ、ロビン達へとターゲットを定めようとしたが、何か違和感を感じた。

 

「ん?___んん!?なんだぁ!?抜けねぇぞ!?」

 

地面へと深く突き刺さっていた腕が抜けなかったのだ。まるで先端部分が何かに挟まっているかのように。

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

「____え?」

 

 

オーズの地面へと突き刺された右腕の地面に埋まっている拳から三筋の螺旋状の亀裂が走り出した。

 

 

 

 

旋風鉄斬拳__ッ!!!

 

 

「んがぁぁ!?」

 

その瞬間、腕に走った亀裂が一瞬だけ輝くと、その亀裂に沿うかのようにオーズの肉が切り落とされた。

 

「んぁぁぁ!?なんだこりゃぁぁ!?」

 

オーズの驚きの叫びが響き渡る。亀裂の走った腕は骨ごと切断されており、重力に従い、オーズの胴体から零れ落ちていく。

 

「俺の腕がぁぁぁ!?」

 

オーズがパニックに陥る中、瓦礫の中心が盛り上がるとそこから黄緑色のオーラを纏ったニソラが浮かび上がってきた。

 

「楽しむのはもう止めだ。そのデカい身体を粉々にしてやる。そしてお前を片付けたら____」

 

 

「お…お前〜!よくも俺の腕……を……を!?」

 

目の前に浮いてきたニソラの表情を見たオーズは一瞬、言葉を詰まらせると、その直後に巨大な図体を震わせた。

 

「を……を…!」

 

ゾンビが恐怖心を抱く相手は影に準ずる。故にルフィが恐れる者にはオーズも同じく恐れる。

だが、ルフィが恐れる相手なぞ、極めて限られてくる。せいぜい自身の祖父である海軍の英雄『ガープ』はたまた最高戦略の大将であろう。

 

それ程の胆力を持つ影を入れられたオーズの身体が今まで以上に震えていた。

 

「あ…あ…!!」

 

その表情を見ていたオーズは恐怖に煽られながらゆっくりと後ずさる。

 

モリアにロビンを手に掛ける事を宣言された事により、ニソラの表情は今まで以上に激怒に達していた。発生した高密度の黄緑色のオーラによって、髪は逆立ち、目元からは筋が湧き立っていた。

 

「アイツはもう“粉々”にしてやる…ッ!」

 

 

その瞬間 ニソラの気が膨れ上がりスリラーバーク__いや、魔の三角海域全体を包み込む高密度の霧を一瞬にして吹き飛ばした。

 


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