ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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鉄壁の拳

「無駄だぁ?」

 

「そうだ」

 

ニソラの放った言葉にモリアは歯を剥き出しにしながら不敵な笑みを浮かべ始める。

 

「キシシシシ!コイツは傑作ダァ!!んな小せぇ身体で何ができるってんだぁ!?見たところ覇気も纏ってねぇ様だしよぉ!」

 

次々と瓦礫が崩れていくとスリラーバーク全体にモリアの正気を失った奇声が轟く。

 

「じゃア無駄かドウカ確かメテみるカぁ!?この俺の超巨大な拳でナァ〜!!」

 

その言葉と共にモリアの拳がメキメキと音を立てながら巨大化していく。モリアは拳を持ち上げ、ニソラに向けて照準を合わせていった。巨大な拳がニソラのいる地点を影で覆い尽くす。

 

 

「ふん。もう一度言ってやる」

それに対してニソラは逃げることも怖気付くこともなく、その場で両腕に水色のオーラを纏うと構えた。

 

「無駄なんだよ無駄。お前の攻撃がいくら強かろうと爺様の編み出したこの流水岩砕拳の前には全て無力だ」

 

「キシシシシッ!!ペシャンコになる前フリとしちゃ最高じゃねぇか!コレでも躱せるっつうのかァッ!?」

 

 

 

 

そして巨大な彗星の如き拳がニソラに向けて放たれた。

 

 

 

 

『絶島崩壊パンチ』__ッ!!!!!!

 

 

 

「島ごと木っ端微塵になれぇぇッ!!!!」

 

放たれた巨大な拳は空気を突き抜けながらニソラヘと迫っていく。その巨大な流星と見える程の大きさの拳が地面へと衝突すれば間違いなく島を割るだろう。

 

 

それに対してニソラは取り乱す事なく冷静に構えを固めた。

 

 

 

 

「コォオオオ…」

 

モリアの拳が風を切り抜け迫り来る中、ニソラはゆっくりと息を吸い肺に空気を溜め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______ 流水岩砕拳__ッ!!!

 

 

 

 

「グベラァ…!?」

 

その瞬間 モリアの拳がニソラの青いオーラを纏った右手に流される様にして弾かれると、その巨大な拳は川を流れていくかの様にモリア自身の顔面へと撃ち込まれた。

 

ニソラへ襲いかかって来ていた拳がニソラの振り回す手に当たった瞬間、まるで川に流されていくかの様に不自然なく軌道を変えそのまま撃ち込まれていった。

 

 

一方でその攻撃を捌いたニソラは歯を剥き出し不気味な笑みを浮かべながら両手の構えを変形させる。

 

「…!!」

 

「ゲボォエ…!?」

 

見えない拳の連撃がモリアの超巨大な身体へ向けて次々と放たれ身体を歪ませていく。歯がへし折れ、鼻が折れ、腕が折れ、角が折れていく。オーズを超える巨体をもつモリアの身体がニソラの怒涛の連撃によって鈍い音と共に次々と歪んでいく。

 

「ソラァ…ッ!!」

 

「がぼぉ…!?」

 

腹に拳が撃ち込まれモリアの身体が曲がると共に影が数体吐き出される。それに続いてニソラは次々と拳を打ち込んでいった。一発。また一発。重たい拳が次々とモリアの身体へと撃ち込まれていき、その巨大な図体が一歩ずつ後ろに引いていく。

 

 

「フンッ!!」

 

「がばぁ…!!!」

 

そして その一発が遂に決め手となった。その拳が撃ち込まれたことによってモリアは限界に達し、口を大きく開けながら後ろの古城にもたれかかる様に倒れた。

 

 

すると

モリアの口から次々と影が飛びだし、空へと飛んでいった。その影は四方の空へと飛び散っていく。恐らく持ち主の影の場所へと戻っていくのだろう。影を奪われた者はもう太陽に怯える事なく元の生活に戻る事ができるだろう。

 

 

だが、ニソラにそんな事は関係なかった。ニソラはその場から一瞬にして元の大きさに戻ったモリアの元へと移動すると、その首を掴み出す。

 

「おい…モリア…お前さっき…何か言ってたよな?」

 

「…!!」

 

辛うじて意識の残っていたモリアは戦慄する。自身の目の前にあったニソラの目。

 

「_____ロビンをどうするって?」

 

 

「…!!!」

 

その目が今まで見た事がない程まで血走っていた。血管が辺りから沸き立ち中心にある瞳はただモリアだけを捕らえていた。

 

その顔を見た瞬間 命を奪う脅しさえも通じる事がなかったモリアの顔が恐怖に染まっていった。

 

「(こ…コイツ…!!)」

 

目の前の相手から感じる計り知れないその威圧感は昔といえども自身が激しく争い合った現四皇カイドウさえも赤子に見えてしまう程であった。

 

 

「爺様達の旋風鉄斬拳は全てを斬り刻む。そして流水岩砕拳は全てを砕く。この距離で打てば瓦礫でも海楼石でも微塵切りまたは粉々だ。だがお前には____

 

 

__二つまとめて撃ち込んでやる」

 

 

 

「ぐぅ…!?」

 

その瞬間 ニソラの手がモリアから離され、両腕が変化した。

 

 

右手は流水岩砕拳__。左手は旋風鉄斬拳__。

 

 

そして 対となった2本の手が混ざり合うかの様に青と赤のオーラの軌跡を残しながら円を描いていく。

 

円を描く手が進むたびに辺りには巨大な殺気と威圧感が放たれ軌道上にいる者全てを硬直させる。

 

 

 

そして 遂にその拳は融合を終え両手には赤と青の混じり合ったオーラが纏われていた。

ニソラはその両腕の拳を握り締める。

 

 

「粉微塵にしてやる。旋風流____

 

 

 

 

 

 

 

___うぅ!?」

 

その時だった。

突然とニソラは苦痛の声を漏らしながら構えを解き大地に手をついた。その様子を地面に降ろされたモリアは驚きながら見つめていた。

 

「あ…はぁ…はぁ…!!」

全身から湧き上がる汗と疲れているかの様な掠れた声。それを見たモリアは不気味な笑みを浮かべた。

 

「…キシシシシ…!!惜しかったな…!あと一歩のところだったのによぉ?」

 

モリアは身体をフラフラにさせながらもゆっくりと立ち上がった。モリアの影が次々と巨大化し、ニソラを覆っていく。

 

「あれほど激しい動きを続ければいつかエネルギー切れになるだろうと見計らっていたが…キシシシシ!ついてねぇなぁ〜!!」

 

「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」

 

モリアの嘲笑う声が響く中、ニソラは必死に呼吸を繰り返していた。それを見たモリアはゆっくりと手を伸ばしその身体を掴み上げる。

 

「残念だがお前はここでリタイアだ。影を切り離したら海の底に沈めてやる!ジックリと呼吸のできない空間で苦しみ気づいた時にはもうあの世だ!死んだジジイ共に会えるといいなぁ!!」

 

そう言いモリアの手が抵抗する事のないニソラの影を掴むと、ゆっくりと剥がしていった。

 

 

 

 

だが、この時モリアはある事を忘れていた。それは___

 

 

「ロケットォォオオオオオ!!!!」

 

____後方からルフィが猛スピードで接近していた事だ。

 

 

 

 

「ぎゃふん!?」

 

ニソラに気を取られており、予想打にもしない方向からルフィが飛び出し、激突した事によってモリアの身体は鈍い音を響かせながらニソラを手から離すと数十メートル先までバウンドしながら吹っ飛んでいった。

 

その際にニソラの身体は空中へと放り出される。

 

「ニソラ!」

 

ルフィの後に続く様に駆けつけたロビンが跳躍し空中へと放り出されたニソラを抱き留め地面に着地した。

 

吹き飛ぶ中、ロビンの声を耳にしたニソラはロビンの方へと顔を向けた。

 

「ロ…ロビン…」

 

誰かの温もりとロビンの声に反応するかの様に薄れゆく意識の中 ニソラはロビンを見つめた。

 

「ニソラ!しっかりして!ニソラ!」

 

起こすかの様に何度も何度もロビンの声が呼び掛けてくると共に身体を揺さぶられる。だが、それに答える程まで体力が無かった。

 

 

 

 

「ロ…ビ………」

 

ニソラは掠れた声でありながらもロビンの名前を言い終える事なくゆっくりとその目を閉じた。

 

 

「…ニソラ…!!」

 

「おい!ソイツ大丈夫か!?」

 

「意識はあるんだよな!?」

ロビンの目から涙が溢れ出てくる。後方から駆けつけたチョッパーやウソップの声も聞こえてくるが、ロビンはそれに応える事が出来なかった。

 

「ニソラ…!お願い!目を開けて!ニソラ!」

 

ロビンは必死に何度も身体を揺する。何度も何度も。

 

 

 

 

 

 

 

すると___

 

 

 

 

 

____ギュルルルルルルル〜!!!!!!

 

 

 

 

『『『え?』』』

 

 

突如として聞こえた音に辺りから集まったロビン達や森から現れた謎の集団達は腑抜けた声を漏らす。

見れば閉じられた目がパッチリと開いていた。

 

 

「腹減った」

 

『『『ええええええええええ!?』』』

 

◇◇◇◇◇◇

 

それからニソラはロビンに手を借り、今は横になっていた。

 

「ニソラ…貴方ったら…」

 

「悪い。数日間 何も食べてないから」

 

ロビンは呆れながらニソラの頬を撫でる。すると、先程まで気になっていた謎の海賊集団が先程現れた『大怪我した年寄り』と共にニソラ達の前に並んだ。

 

「アンタ達!礼が遅れたわね!私達の影を取り戻してくれた事…心より感謝するわ!」

 

そう言い現れた海賊達の中の1人。めちゃくちゃ存在感のある女性海賊が地面に両手をつき、それに続く様に現れた海賊達も次々と両手をつき、頭を下げた。

 

「我らスリラーバーク被害者の会…この恩は一生忘れないわッ!!!」

 

それに続く様に次々とお礼の言葉が飛び交っていく。

 

「えっと、誰?コイツら」

 

「さっきここへ来る途中に会った海賊さんよ。彼らもモリアに影を取られていたみたいなの」

 

「そうか」

 

感謝をされようともニソラはただモリアに腹を立てていたまでであり、仮りを作るつもりはなかった為に適当に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

「……おい。そこにいる奴は誰だ?」

 

『『『『!?』』』』

 

ニソラのふと漏らした声に皆は反応し彼が指を指す方向へと目を向けた。そこには1人の巨漢が崩れた古城の瓦礫に腰を下ろしながら電々虫を手に持ちこちら側を見つめていた。

 

「あ…忘れてた…!」

 

その場にいたナミが何かを思い出したのか震えた声をあげる。

 

「この島には…もう1人七武海がいたんだ…!!」

 

すると その巨大な大男の持つ電々虫から声が聞こえ出した。

 

『まだ微かに息はあるのか?』

 

「さぁな…仮面は見る限り疲労状態だ」

 

『丁度いい。モリアは生きてさえいれば回復を待ち続投を願いたい所だ。措置についてはその後だ。七武海が易々と落とされては威厳を失う』

 

それに続き次々と複数の老人の声が聞こえてきた。

 

『この情報は世間に流すべきではない』

 

『全く困った奴らだ…』

 

向こうでは何が話されているのか、誰にも分からないがただ一つだけ理解できる。決して無事では済まないという事を。

 

『私の言っている意味が分かるな?モリア敗北は誰にも知られてはならない。世界政府より特命を下す。麦わらの一味と瀕死の仮面を含めその島にいる者全員を

 

 

____抹殺せよ』

 

 

その言葉が聞こえた瞬間 もう1人の七武海『バーソロミュー・くま』の何の感情も読み取れない白い目がこちらへと向けられた。

 

「了解だ」

 

 

影を取り戻した直後にもう1人の七武海の到来。

一難去ってまた一難。ルフィ達は体力はあるにしろ七武海を相手にするには厳しすぎる。たとえ彼女らでも得体の知れない七武海に立ち向かえるかどうかも難しい。

 

「このやろう!」

 

「コイツらには手出しさせねぇぜ!!」

それでも海賊達は恩人であるニソラ達を守るべく恐怖に怯える事なく前へと出た。

それはルフィ達も同じだ。

 

「おいお前!ニソラには手出しさせねぇぞ!!」

 

「丁度いい。ここで借りをまとめて返すとするか…!!」

 

「ロビンちゃんに介抱されてるのが気に入らねぇが…アイツには何かと借りがあるんでな…!!」

 

ルフィとゾロ、サンジはそれぞれ拳を、三刀流を、脚を構え戦闘態勢を取る。

それに続くかの様にロビンやナミ、チョッパー達も前へと出た。

 

その状況が電々虫を通して向こう側に伝わっているのか、電々虫からは蔑むかの様な声が聞こえてくる。

 

 

『フン。所詮は疲れ切った烏合の衆。蹴散らしてしまえ__』

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____おい」

 

「ん?」

 

緊迫した空気の中 突然とくまの至近距離から声が聞こえた。そこには先程までロビンの傍で横になっていた空腹状態のニソラが宙に浮きながらくまを見つめていた。

 

「___いま…世界政府…って言ったよなぁ…?」

 

その目は鋭くクマの持つ電々虫を見つめていた。

 

 


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