ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

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今回は番外編です。


番外編 広まる仮面の真実

時は遡る事数日前。ニソラがスリラーバークに到着した時である。

 

場所はスリラーバークから遠く離れ、流れが激しく不規則な海流の中に聳え立つ巨大な要塞『海軍本部』

 

「…」

 

海軍本部の最上階にある元帥の公務室にて、報告書を机の上に並べながら目を歪ませる男の姿があった。

 

「これが此度のバスターコールの結果か…」

 

彼の名は『センゴク』海軍本部総大将『元帥』の役職に就いている男である。

 

目の前に出されたのはかつては世界最大の裁判所といわれたエニエスロビー。だが、写真に映るその景色は完全なる廃墟と化していた。

 

センゴクは頭を抱えながらも目の前にて同じく冷や汗を流しながら直立している報告係の兵に尋ねる。

 

「MASK MANによる損害はこれが全てか?」

 

「はい…。駆けつけた中将5人が重傷。現在は療養中で命に別状はありません。ただ、軍艦に搭乗していた大佐の過半数が奴に殺害されました。その内の殆どの遺体がまだ見つかっておりません。CP9長官である『スパンダム』氏はあの大爆発の中、何とか生き残りましたが片腕と片足を失い中将と同じく療養中…とのことです」

 

国家戦争級の戦力がとてつもなく悲惨な状況として返ってきた。海軍本部における中将は大将には遠く及ばないものの、一介の海賊を遥かに凌ぐ力と技量を持ち合わせている。

それが五人となれば、半端な船団や億越えの海賊団など確実に潰してしまうだろう。

 

だが、派遣された五人全員がたった1人によって重傷を負わされてしまったのだ。

罪人の奪還どころかバスターコールの失敗。それは完全なる前代未聞であった。

 

「報告を続けます……」

報告係の兵は動揺しながらも報告を進める。その報告の内容には今回のバスターコールの責任者である青雉からの報告も記されていた。その内容は今まで謎に包まれていたMASK MANの本名と素顔そして素性。

接触した際に得た情報と写真も紙にまとめて提出されていた。

 

報告された内容とそれが細かく記された書類を目に通したセンゴクはマスクマンの隠された凶悪な面を知ると共に額に手を当てる。 

 

「……ロックスを思い出してしまうな…。いや…奴ほどでもないか…」

 

センゴクはニソラの情報を目にした事で数十年前の史上最悪の海賊『ロックス・D・ジーベック』を思い返す。彼もまた世の人々を恐怖で陥れる程 凶悪な人物であった。ニソラの行為は世の人々に対しての害はそれ程でもないが、単体でエニエスロビーにおける大佐の大量殺害と軍艦10隻の内の6隻の破壊という凶悪な残虐性を感じさせるモノであった。

 

 

「ですが…民衆や一定の国からは英雄として崇められているとの事らしいです…」

 

そう言い過去にマスクマンの起こした事件の資料を用意すると読み返した。

 

 

「シャボンディ諸島に訪れた際はヒューマンショッ……職業案定所を襲撃し全ての人間を解放。また紛争地帯に降り立っては両国の軍隊を全て制圧し強制的に終結させて多くの難民達を救出。天竜人の船を過去3度襲撃し、その際に搭乗していた者達を解放…など上がっております…」

 

「奴め…一体何が目的なんだ…」

 

 

 

そんな時だった。

 

「あの小僧がエニエス・ロビーにおったとはのぅ…」

 

その場にドスを効かせた低く迫力のある声が聞こえた。その声がした方向へとセンゴクは目を向け、報告係の兵は敬礼をする。

 

「こ…これは赤犬さん!」

 

そこに立っていたのは赤いスーツに身を包み胸に白い薔薇の様な飾りを付けている大男だった。屈強ながらも逞しいその体型と3メートルを超える身長から強大な威圧感を放っていた。

 

彼の名は『サカズキ』又の名を【赤犬】

海軍が誇る最高戦力である3大将の一角である。

 

現れた赤犬はソファーに座りながら帽子の鍔に手を伸ばし被り直すと手に持っていた新聞を広げる。

 

「サカズキか。お前ならマスクマンの強さをよく知っているだろうな」

 

「…そりゃもう忘れもせんですよ。すばしっこい上に妙な武術も使っておった。わしのマグマを覇気もなしに防ぐどころか捌いておりましたのぅ…」

 

赤犬は眉を潜め過去の失態を思い出したのか、手袋を纏う腕を握り締めた。

 

「あの小僧…天竜人のアホ共から命令が出る前に見つけたら今度こそ消しちゃる…ッ!!」

 

すると その腕がまるで赤熱したマグマの様に赤と黒の混じった禍々しい色に変色すると掴んでいた新聞が煙を上げながら燃え始めた。

 

 

「…」

センゴク自身は赤犬の苛烈な正義に対して疑問を抱きながらも何事にも全力を尽くす姿勢と強さは認めていた。

どんな相手であろうとも油断せず全力で向かっていく彼の実力は覇気の精度もさることながら能力の制御も3大将の中では最も高いと言えるだろう。

 

だが、そんな彼に加えて精鋭部隊、そして軍艦10隻というバスターコールの倍のある戦力でさえもマスクマンもといニソラを仕留め切る事が出来なかったのだ。

 

「たとえ民衆から崇められていようと…今回の惨劇から奴は我々にとって…いずれは大きな脅威となるだろう」

 

ニソラの過去の民衆へ行った救済行為に対して疑問を抱きながらも今回のエニエスロビーにおける結果と報告書内に記されていたニコ・ロビンとの関係性からセンゴクは報告係へと目を向ける。

 

「奴の手配書を更新して公表しろ…!」

 

「り…了解しました…」

 

それから麦わらの一味に続いてニソラの新しい手配書が作成された。

 

天竜人を殴り飛ばし、その際に駆けつけた大将『赤犬』に加えて軍艦10隻を撃沈。更に此度の事件にて麦わらのルフィに加担してニコ・ロビン奪還に手を貸した仮面の男の正体。

 

それは記者によって麦わらの一味によるエニエスロビー壊滅の文面と共に掲載され、瞬く間に全世界に知らされていった。

 

その一枚は最悪の世代とされる超新星達の元へ。

 

「船長〜!何読んでんですか〜?」

 

「見ろペポ。コイツが仮面屋の素顔だ」

 

脅威的な医療技術と剣術に加えて明晰な頭脳と特殊な能力を併せ持つ海賊

【死の外科医】『トラファル・ガー・ロー』

 

 

また、ある一枚は政府に属する強豪な海賊『王下七武海』の元へ。

 

「フフフ…。コイツはスゲェ。ここまでヤベぇ奴となるとさしもの世界政府のバカ共も勧誘なんて馬鹿な真似はしねぇだろうな」

 

王下七武海の中でも最も危険な男

 

 【天夜叉】ドンキホーテ・ドフラミンゴ

 

「若様。お茶ですよ」

 

「気が効くじゃねぇかモネ。ほらコイツを見てみろ。今まで不明だったイカレた男『マスクマン』の正体らしいぜ」

 

ドフラミンゴから新聞を投げ渡された女性は瓶底メガネを外すとその新聞の内容に目を向けた。

 

「…!!」

 

その新聞の一面に掲載されているマスクマンの素顔を見た女性は驚きの表情を浮かべた。

 

「(こ…この子は…!)」

 

 

そして、またある一枚は新世界を支配する四皇の元へ。

「…ッ」

 

「どうしたんすか?カイドウさん。さっきから黙々と新聞なんか読んだかと思えばすぐに破り捨てて」

 

「仮面野郎の記事を読んでただけだ。ふん。大将に勝ったぐれぇでつけ上がりやがってこのガキ」

 

史上最強の生物『百獣のカイドウ』

 

長年不明だった仮面の男『MASK MAN』の正体と顕となった素性は瞬く間に全世界の人々の注目を集め話題となっていった。

 

仮面の男『ニソラ』懸賞金 8億5000万B

 

 

 


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