ONE PIECE サイヤ人の変異体 作:きょうこつ
降り立つ浮遊の島【メルヴィユ】
スリラーバークを飛び去ってから数時間。ニソラは海の上を飛んでいた。途中に立ち寄った島で購入した黒で塗りつぶされた仮面を被りながら飛んでいたニソラは夢の中で出会った2人の事を今も思い浮かべていた。
「……」
あの2人は一体何者なのか、何故自身の名前を知っているのか。その上2人の顔が今もなお頭の中に残っており、気になって仕方がなかった。
「はぁ……」
思考を巡らせる中、腹を空かしたニソラは栄養補給するべく食材の入った麻袋へと手を伸ばす。
だが、
「あ、ない」
もう食料が底をついていたのだ。あるのはただの麻袋の底のみ。
「ッ…。もっと買っとくんだったな…まぁいいか」
ニソラは食料の尽きた袋を縛り小さくまとめるとポケットに入れる。食料が無ければエニエスロビーの時と同様にいざという時に倒れてしまう。補給は大事だ。
故にニソラは辺りを見回し、島がないか探した。
「う〜ん……」
だが、いくら探しても何も見えない。
そんな時だった。
自身のすぐ足元の位置にある青い海の水面下に巨大な黒い影が映り込んできた。それは見る限り軽く数十メートルは越えるだろう。
その影はゆっくりと動き出すと水面から姿を現した。
___ザバァァン…
水飛沫をあげながら姿を現したのはなんと巨大な蛇型の超巨大海棲生物【海王類】であった。その海王類は頭部だけでもロビン達が乗っていたサニー号でさえ小振りに見える程であり、ましてやニソラにとっては一つの島の様なものであった。
現れた海王類はその巨大な頭部を辺りに向けると、再び海の中へと潜ろうとしていた。
「(丁度いい…!!)」
正に絶好のタイミングで現れた海王類。それをニソラは決して逃がさなかった。
その場から海底に向けて飛び立つと右腕で手刀を構え潜っていく海王類の首元に向けて振り下ろした。
その手刀は巨大な水飛沫を上げながら潜っていく海王類の首元に向けて入り込むと、まるで薪の様にその柔らかな外皮から内部の肉を一刀両断した。
一瞬にして命を刈り取られた海王類は悲鳴を上げる事なくそのまま身体の体重に任せて横たわり水面に浮上する。
そして海王類を一刀両断したニソラは水中から飛び上がると浮かんでいる死骸の上に着地した。
「ふぅ。久しぶりのご馳走だな。あとは島さえ見つかれば…」
食料が調達できたと共にニソラは焼き場を確保するべく島を探し始めた。だが、辺りにあるのは海ばかり。島など一つも見当たらない。ましてや小島もだ。
そんな時だった。ニソラの視界に“あるもの”が映り込んできた。
「…あ!」
それは遥か遠くに位置する海の上に浮かんでいるいくつもの点だ。ニソラは目を凝らし、よく見てみるとそれは複数の島であった。
「よし…!」
ようやく焼き場である島を見つけたニソラは両断した海王類の頭と身体を両手で掴み、容易く持ち上げると、その島に向けて飛んだ。
◇◇◇◇◇◇
辿り着いた場所に降り立ったニソラは辺りを見回すとその景観に目を奪われた。
「凄いな…ここは…」
そこは緑生い茂る大地や桜の満開する土地。更には湖や火山のある大地が空に浮いている不思議な群島であった。
「(島が浮いてるなんて…空島しか聞いた事ねぇぞ…)」
本で読んだ事のある島を思い浮かべながらニソラは木々を集めると、火を起こし、先程 海の中で捕まえた数百メートルを超える海王類の肉に串を刺し焼いた。
辺りに肉の焼ける香ばしい匂いが漂う中、ニソラは辺りを見回す。見れば古代の遺跡のような物もあった。
それに周囲の地からは人の気配も感じる。無人島ではない事は確かだろう。
「(……ここなら何か古い本があるかもしれねぇな)」
古い建物を見つけたニソラは先人達が遺した文献や本があるかもしれないと考え、しばらくここに留まる事に決めた。
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ーーーーー
ーー
それから肉を食べ終えたニソラは初めに人の気配のする方向に向けて一気に駆け出した。
「ギャァオオオ!!!」
「邪魔」
深い深い森を突き進み、通る場所に偶然にも立ち塞がった異形な生物をニソラは拳一発で吹き飛ばしながら進んでいく。
すると、数十秒程度で立ち塞がる森の木々がなくなり、照りつける日の光が当たる場所へと出た。目の前には広大な村が広がっていた。
「ようやく見つけた……何か臭ぇな」
村へと近づこうとしたニソラは突然と鼻に感じた刺激臭に眉を挟める。見ると村の辺りには太い幹を持つ木が規則正しく並んでいたのだ。
まるで村を守る砦のように。
だが、臭いはキツくとも鼻を摘めば問題はなかったのでそのままニソラは仮面を外すと村へ入っていった。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
村へと入ったニソラは辺りに立ち並ぶ家を見ながら歩いていく。住人らしき人々は見えるものの、全てが歳を取っている女性や女子供ばかりであった。
「……変だな…」
その光景を不思議に思いながらもニソラは村の敷地内にある湖にて衣服を洗濯板で洗っている1人の女性に声を掛けた。
「ちょっといいか」
「んん?おや、見かけない顔だね。どっから来たんだい?」
「外から来た者なんだが、ここら辺に書物とかないか?古文書とか文献でもいい」
それについて尋ねると女性は申し訳なさそうに首を振る。
「悪いねぇ。この村にはそんな古い本はないよ。まぁ…“王宮”ならあるかもしれんけど」
「“王宮”?」
「………」
すると、女性の目が変わり辺りを見回すと誰にも聞こえないように小声で話し出した。
「この群島の中央にあるデカい島にね…シキっていう海賊の研究室があるんだよ…。科学者が集まるからアンタの探してる本もあると思うよ…」
その話し方にニソラは疑問に思いながらも頷くと、女性の指を指した方向にある島に目を向けた。
その指の先にあったのはここよりも巨大な島であり、巨大な建物が建てられていた。その島にはその建物以外は森や木々が生い茂るこの島に対して何も見当たらず、あるのは先程の村の周りに生えていた異様な臭いを放つ木のみである。
「成る程な。じゃ、行ってみるか」
「やめときな!今は留守にしてるけど直に帰ってくる!アイツらに見つかったら命はないよ…!若いんだから余計な事が起こる前に早くこの群島から出ていきな!」
「別に心配いらん。サッと見てくればいいだけだ」
女性の心配事に耳を貸す事なく、ニソラは気を解放するとその場から中央の島に向けて飛び立った。
「うそ…飛んでる…!?」
◇◇◇◇◇◇
女性の言う通りに中央の島に降り立ったニソラは目の前に広がる巨大な宮殿に目を向ける。
「ここか。本当に王宮だな」
屋根には動物の顔を模した天守閣があり、その横には全面ガラス張りの植物園の様な施設も隣接していた。恐らくあそこが女性の言っていた実験室なのだろう。
「さて……と…!!!」
ニソラは猪の如く前屈みになると、一気に脚を踏み込み駆け出し入り口らしき巨大な扉に向けて跳躍した。
「よ」
それに向けて狙いを定めたニソラはそのまま扉に向けて脚を突き出す。
バコォオオオオン!!!
巨大な破壊音と共に扉は木っ端微塵となり、辺りへと木片が散らばっていく。
だが、それによってセンサーが反応したのか、王宮中のサイレンがけたたましく鳴り響いた。
ゥウウーーーーン___
『侵入者だぁ!!』
『警備が破られてるぞ!?』
『早く親分に連絡を!!』
辺りから次々と鳴り響くサイレンと慌てる研究者達の声を耳に入れながらもニソラはそのまま駆け出し研究室へと向かう。
「おい貴様ぁ!研究室に無断で立ち入ろ…ボゲガァ!?」
「邪魔」
途中で立ち塞がった科学者らしき人物を殴り飛ばし、障害物も破壊し、向かってくる衛兵も羽虫の如く蹴散らしていく。
無限に続く回廊を駆け抜けていく中、巨大な扉を見つけたニソラは蹴り破る。そこにはフラスコやビーカーなどが置かれた台の他に大量の本が積み立てられている本棚があった。
「ここだな」
遂に目的地らしき場所へと到達したニソラはその中に入り、一番奥の本棚に向かうと、そこから『宇宙』『天体』または『歴史』関連の本を探し始める。
「これと……これ……」
とにかく歴史と天体、または宇宙系。多種族に関する事が記載されていそうなモノをありったけ見つけると、目を通していく。
「……」
だが、いくら目を通しても自身と同じ特徴が記された民族について書かれている文面が見つからなかった。
「(ジャンルが違うのか…?民族に関しては歴史…異星人なら天文学が相当すると思うんだが…)」
そう考えながらも次々と読み進めていった。外からは騒ぎや自身を探す声が聞こえてくるも、それすら耳に入らない程までニソラは集中していた。
それからどのくらい読み進めただろうか。既に30冊目の分厚い本を読み終える頃には既に警備の音も静まり返っていた。
「………これでもないな。はぁ…」
「何読んでるんだ?」
「いや、ちょっとした記事を……
__!?」
その声が聞こえた直後 ニソラの全神経が__
____とてつもない殺気を感知した。
その声が聞こえたと同時に即座に集中を断ち、声が掛けてきた方向に目を向ける事なくその場から跳躍し、背後にある台の上に飛び移った。
「…!!」
ニソラの額からは大量の冷や汗が流れていた。それはまるで久しぶりに死の危険を感じ取ったかのように。
それもその筈だ。声が聞こえてくるまで全く気が付かなかったのだ。
「ほぅ?素早いな。あと1秒遅れてれば気弾でぶっ飛ばしてやろうと思っていたが、流石は同族。いい反射神経だ」
額から汗を流したニソラは先程まで自身がいた場所へと目を向ける。そこには1人のフードを被った男が立っていた。その青年は自身に向けて称賛の言葉を述べながらこちらに目を向けてくる。
「けど、感知能力が随分に低いな。それになんだ?その仮面は。顔ぐらい見せろっての」
「…」
ニソラは警戒しながら男を見つめていた。得体の知れない男から感じられるのは自身と同じ質と量の気そして威圧感であった。
「お前…何者だ…?」
「あぁ。自己紹介が遅れたな。コイツは失礼」
恐る恐る名を尋ねるとその男は顔を覆っていたフードを脱ぎ素顔を晒した。
自身とは異なりルフィ達と同じ肌の色。後ろに逆立つようにして伸びている黒い髪。
そして
_____背後からうねり出す自身と同じ尻尾。
その男は自身に目を向けると口角を吊り上げ笑みを浮かべた。
「俺は『レビス』いずれサイヤ人の王となる男だ…!」
その男は自身に向けて手をかざした。
「さぁ…楽しもうぜぇ!!同族!!!」
「…!!」
その瞬間 王宮全体が光に包まれた。
レビス
外見:レジェンズのジブレット。目がベジータ。
ニソラよりも一回り大きな身長を持ち、その身を包む戦闘ジャケットの上にはフードのついた赤衣を纏っている。
実力、出生は不明