ONE PIECE サイヤ人の変異体   作:きょうこつ

6 / 52
突き進むロケットマン

「邪魔だ」

 

その一言で目の前の巨大な津波が一瞬で吹き飛び、ロケットマンは再び進み始める。その一部始終を見ていた皆は口を大きく開け唖然としていた。

 

「な…何したんだよアイツ…」

「いや…全く見えなかった」

 

ニソラは役目を果たすとその場にあぐらをかく。

 

「…このままここにいさせてもらう。次来た時に動くのが面倒だからな」

 

ーーーーーーー

 

一方で船内では皆が騒いでいた。

 

「うぉー!!すんげぇぇ!!アイツ何したんだ!?」

ルフィは完全に目をキラキラさせており、先程の現象に興味津々のようだ。

 

「ンガガガガ!いいねぇ!あの子がいればもう津波は心配いらないね!!」

ココロは能天気に酒をガブガブと飲む。その一方で、ナミとゾロは冷や汗を垂らしていた。

 

「まさか…能力者か?」

「多分だけど…それは当てはまる可能性が高いわ…」

2人はニソラが能力者ではないかと考える。確かにそうだ。あれ程の芸当は一般人では到底できない。

 

『おい!?どうしたナミさん!?』

 

「あ!ごめんごめん。ルフィ!サンジ君よ!」

「おぅ」

 

ーーーーーーー

 

 

甲版で座っているニソラは一人で海の先を見ていた。

 

この先にロビンがいる。だが、ニソラが感じているのはそれだけではない。

 

「(何故だろうな……何故か興奮してきたな)」

それは強者との闘いへの期待。彼本来の闘争本能が、ロビンを連行したCP9によって刺激されているのだ。

 

「(楽しませてくれよ…!!)」

 

 

そして、しばらく時間が経つ。

 

何十分も前を見つめていると

 

 

「……ん?」

目の前に何かが見えた。

 

それは2両の切り離されている車両だ。

 

「お前ら、何か車両が見えるんだが」

ルフィに報告すると皆は一気にテンションを上げる。

 

「おぉ!?まさかバッシング・トムか!?」

「パッフィング・トムよ!!けど…早過ぎないかしら?」

「ちょっと俺見てくる!」

「え!?」

ルフィはロビンを乗せた船かどうかを確かめるためにナミの静止を振り切り甲板に出た。

 

「いくぞぉぉ!!ゴムゴムの〜!!!“ロケット”!!!」

「お?」

近くにいるニソラを振り切りルフィの身体はゴムのように伸びてそこから目先の船を掴むと一気に引っ張られていった。

 

「ほぅ。アイツも能力者なのか」

 

「どうだ!?兄貴はいたのか!?」

続いてフランキー一家達も出てくる。すると、前車両から銃声が聞こえてきて、扉からルフィが銃弾を受けながら何かをジェスチャーで表していた。

 

「ふむ…あの動きはいないようだな」

「なに!?」

ニソラの観察に皆は驚く。いないなら用はない。だが、このままではぶつかってしまう。

 

 

「バーさん!ブレーキは!?」

「ンガガガガ!無理だね。ロケットマンは走り出したら止まらんヨォ!」

パウリーはブレーキをかけようとするものココロの言葉で諦める。

 

すると、前の車両からルフィが大声を出して同じく甲板にあるゾロへ指示を出す。

 

「斬れ。邪魔」

 

『ええぇ!?』

 

「あぁ」

 

『あぁって!!??』

軽くとんでもない事を言う二人に全員は驚愕する。ゾロはやる気満々だ。

 

「荒廃の世の自我。どいてろ」

「あぁ」

ニソラをどかし、自身の周りに誰もいない事を確認するとゾロは刀を二本抜く。

 

「二刀流“居合”羅生門ッ!!!!」

 

『!!??』

 

皆は目を飛び出す。ゾロの放った斬撃は車両を真っ二つにした。

 

ザパァァァン

 

「す…すげぇ…」

まさか本当にやるとは思っていなかったフランキー一家や船大工達は若干引いていた。

一方で近くで見ていたニソラは称賛する。

 

「やるな。おまえ」

「フン」

ゾロは鼻を鳴らすと刀を戻そうとする。だが、その動作を中断し腕に巻いてある黒い手拭いを頭に巻いた。

 

「どうした?」

「みろ」

目の前を目を向けると、巨大な影が見えた。それは真っ二つにされた海王類だった。

 

「うへぇぇぇ!!!??海王類!?この船の4倍はあるぞぉぉぉ!?」

その巨体にチョッパーは絶叫する。そしてゾロが警戒を怠らないのはこの先にこの海王類を斬った“何か”がいるからだ。

 

 

その正体は次第に近づいてくる。

 

 

だが、ニソラは既に気付いていた。長年の修行だけで得た気の感じ取りでこの先にいる正体を。

けれどもニソラはその正体に興味はない。人が少ない船内へと引き返した。

 

 

ーーーーーーーー

 

「くぐぅぅ…」

「この非常事態によく眠れるわね…」

「ンガガガガ!まぁソッとしといてやんな!」

ニソラが呑気に睡眠を取っている姿にナミは呆れる。ニソラにとってはこの状況はゆりかごのようなモノだろう。

 

それから意識を手放した。

 

ーーーーーーーー

 

「ッ!!」

ゾロは目を細める。そこに立っていたのは顔が骸のような男性だった。その姿を見た瞬間フランキー一家のリーダーが叫ぶ。

 

「ふ…船斬りだぁぁ!!」

「船斬り?」

「アイツは海軍本部の大佐『船斬りTボーン』!海賊船をステーキみてぇに斬りおろしちまう男だ!!何でここに!?」

リーダーが困惑していると仲間が砲撃の準備にとりかかった。

「待て!」

「何でっすか!?麦わらさん!このままじゃ真っ二つですよ!」

「お前 さっきの見てただろ。ゾロに任せろ」

皆はゾロへ目を向ける。ゾロは一歩手前に出るとTボーンに向かって叫んだ。

 

「一度だけ言う!!道を開けろ!!」

だが、

 

「否ッ!!ここは正義の起因へと続く道なり!!私は海軍本部大佐!生恥など晒さぬッ!!貴様らなぞ真っ二つにして止めてくれるわッ!!」

相手はその言葉を聞き入れない。その言葉の重みと、剣を抜いた姿から、ゾロは『強者』だと言う事を読み取る。

 

「そうもいかねぇ!!俺達の目指す場所は…お前のいるその先にあるからな…!」

そして、ゾロは列車の前路線に飛び降り、先程の2本と共に、もう1本の剣を抜き、口に加えた。

 

“三刀流”それは彼固有の戦闘スタイルだった。

対するTボーンも自身特注の直角に造られた剣を構える。

 

「三刀流…牛鬼……」

「曲がった太刀筋大嫌い……直角飛鳥……ボーン……」

 

二人が同時の間合いに入った時 刃が飛ぶ。

 

 

“勇爪”ッ!!!!

 

“大鳥”ッ!!!!

 

ガキィィィン!!!

 

巨大な金属音がその場に響き渡る。

 

そして皆が見たのは

 

 

Tボーンの剣が折れ、吹き飛ばされた姿だった。

 

 

「走って列車を追うのは天晴れだ。だが、俺たちも止まれねぇ」

 

“テメェの正義もさぞ重かろうがこっちも色々と背負ってんだよ”

 

その言葉と共にゾロは列車に飛び乗り手ぬぐいを解きながらTボーンを称賛した。

 

船斬りを撃破した事で皆は大歓声を上げた。

 

ーーーーーーーーーー

 

どれくらい寝ただろうか。少しだけ眠気が覚めた時、耳に声が入ってきた。

 

「……げぇぇ!!なぁ!!狙撃の島ってどこにあんだ!?」

 

「君たちの心の中さ…」

 

何やら一段と騒がしくなっており、その賑やかな雰囲気に目を覚ます。

 

「…ん?何だ?」

目を覚ますと何故か二人ほど増えていた。一人は自身と同じく仮面を被っている長鼻の男、もう一人は片目を髪で隠したグルグル眉毛の男。すると、ルフィが駆け寄ってきて自身の肩を掴み、起こそうとしてるのか揺らした。

 

「おいおい着いたぞ!!エニエスロビーだ!」

「!?」

その言葉を聞いた瞬間 眠気が覚める。立ち上がると目の前に巨大な建物がいくつも並ぶ島があり、その背後には数千メートルに及ぶ巨大な門が佇んでいた。

 

「へぇ…。ここか」

近くには巨大な柵が張り巡らされており、外部からの侵入を防がんとしていた。

すぐさま窓に脚をかけ飛び出そうとした。

 

「おいおい!!!まてまてまて!!」

「ん?」

突然肩を掴まれて止められる。止めたのはグルグル眉毛の男性『サンジ』だった。

 

ーーーーーー

 

「取り敢えずナミさん。そしてナミさん以外のクソ共。一つ言っておく。……

 

サンジはロビンを連行したCP9と一戦交えた事を話す。そして、その中でロビンがなぜ自身達を突き放したのかをも簡潔に話した。

 

「___と言うわけだ。ロビンちゃんはアイツらに何らかの『根っこ』を掴まれてるんだそうだ。俺達が助けたとしても…こっちに身を委ねてくれるかどうか分からねぇ」

その説明に皆はどうすればいいのか苦悩する。

が、ルフィは違う。

 

「うがぁぁ!!!ロビンのやつ絶対許さねぇぇぇ!!」

「何でよ!?ロビンは悪くないじゃない!」

「だってよ!何で助けに来るのを嫌がるんだ!?」

「助けられた後の一味の事を心配して苦しんでるのよ!!」

ナミはロビンがなぜ自身達を避けるのかを理解しており、それをルフィに言う。けれども、ルフィはそんな事などは受け付けなかった。

 

「んな事知るか!!ほっとけば殺されちまうだろ!!死にてぇわけねぇんだから助けるんだッ!!」

ルフィの発した言葉にナミはもう返さず、息をする。

 

その一方でニソラはサンジの言葉を軽く解釈する。

 

「グルグル眉毛。つまりそのCP9とかいうのを皆殺しにすればロビンは文句は言えずに戻ってくるって事か?」

「『サンジ』だ!!んん…まぁざっくり言えばそうかもしれねぇ…。だが、それが厳しんだ。アイツらは妙な技を使ってきやがるからな…」

「ふむ」

仮面越しで頷くと、パウリーが地図を広げた。

 

「お前ら、コイツを見とけ」

それはエニエスロビー全体の地図。複雑な形状をしていた。

 

「前にここに路線整備で来た事があってな。うろ覚えで描いたんだが、大体の地形だ」

その地形は、黒く巨大な円の中に一つの島。そしてそれぞれ黒い円と海らしき図が半々で閉める島が両サイドにある形となっていた。

 

「正義の門ってのは島の裏口にあって“司法の塔”からのみ行けるようだ」

そう言うと三つの島を一直線で指でなぞる。

 

「とにかく正門から正義の門まで一直線だ。『ニコ・ロビン』と『フランキー』を取り返さなければ俺たちの負けだ。とはいえ…全員で乗り込んでもCP9と出くわしたら確実に戦闘になる」

そう言うとパウリーはルフィ、ナミ、ゾロ、チョッパー、サンジ、長鼻の男そしてニソラを見る。

 

「実際に勝つ事ができるのはお前らだ。一緒に列車に乗ってきてその強さがよく分かった。だからお前らはここで五分待て。正門からこのロケットマンで本島まで突っ込んでこい!。俺達はそれまで先行して島で暴れて正門と本島城門をこじ開ける…!!」

 

パウリーの作戦はつまり陽動によって、司法の塔までロケットマンが通る為の道をつくり、一気に突破する作戦だ。

やはりCP9と戦う事を想定しているのか、五分待ち、ロケットマンで突撃するというのは体力の温存という事が読み取れる。

 

「こっちは60人で向こうはザッと2000人以上。麦わらさん達は無駄な闘いは避けてCP9だけを追ってくれ!」

 

「あぁ!分かった!!」

パウリーの作戦とフランキー一家リーダーの言葉にルフィは力強く頷く。他の皆も頷いた。

 

 

すると、船内に放送が入る。

 

「ンガガガガ!!オメェら!見えてきたよ!!あれが正義の門らぁ!!」

ココロの放送を聞いた皆はエニエスロビーの後ろにそびえ立つ門を見る。

 

「全開になる事はまずねぇ。罪人が通過する時にほんの少しだけ開く。扉の向こうは海王類の巣が広がって普通の船じゃ入り込めねぇ。つまり、タイムリミットは…正義の門を通過する前だ。グズグズしてる暇はないよぉ!!!」

 

ココロの説明を聞くと皆はテンションを上げるとともに気合を入れる。

「よし!そんじゃあ俺たちは作戦通りに門を開けてくるぜぇ!!」

 

「頑張りたまえ諸君!!」

「応援してるわよ!」

 

「おい、そこの二人はコッチだろ」

そんなやり取りをしている中 チョッパーはある人物が消えていることに気付いた。

 

「あれ?ルフィは?」

「そういえば……ってニソラもいねぇ!?」

先程までいたルフィとニソラが消え失せていたのだ。皆が所々に目をやると外を見ていたフランキー一家の一人が柵の上に何かを見つける。

 

「いた!!麦わらさんと仮面だ!!」

 

『『『えええぇ!!!??』』』

 

皆はそこへすぐさま目を向ける。そこには柵に掴まるルフィと柵の上で仁王立ちをしているニソラの姿があった。

 

「何やってんだ!?アイツら!?」

 

「全然作戦分かってねぇぇぇぇ!!!」

 

ガクッと足から崩れるナミ。他の皆は予想はしていたようだ。

 

「あの野郎は真面目かと思ってたが…『一緒』だったか」 

「まぁ…ルフィの奴が誘ったのかもしれねぇが……はぁ…」

 

サンジとゾロはニソラは違うと思っていたが、ルフィと一緒だった事で驚くどこか、呆れてしまう。

 

「俺たちもオチオチしてちゃいられねぇ!!!ソドム!ゴモラ!!鉄柵をよじ登って門をこじ開けろぉぉ!!!」

リーダーが呼びかけると2匹の海獣は雄叫びを上げながら突き進んでいった。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。