エタるつもりはさらさらありませんが、投稿はこれからもしばらくはこうやって長い間をおく事が多くなります。
今回は謂わば説明回です。
設定の変更により、紡の獣眼設定を無くしています。ここで明記するので必ずしも確かめに行けとは言いません。
評価、感想ありがとう御座いました。
〇
焔ヶ原学園に限らず豊葦那において冒険者育成校は、決して“冒険者になる道”だけを用意する訳ではない。
例えば、西の海を進んで行けば辿り着く──
また、東の海を挟んで存在するユレシアム大陸──通称“中央大陸”──の東部を占める
豊葦那では両者の折衷策を採っている。即ち、別界学や別架身学、忌化生学、武器学等冒険者育成校独自の科目も取り扱いながらも、算術や国語、歴史、錬学、物理学等も生徒に教えている。
理由としては、怪我やトラウマ等の何らかの事情で冒険者を引退した場合、冒険者関連の知識や技術しか持っていなかった場合、その後に就ける職は非常に限られてしまう。一応冒険者関連の職場等もありはするが、そもそもそういった人達の中には冒険者自体に関わる事を恐れる者も一定数は存在する為に、そういった者達が困らない様に選択肢の幅を予め広げておこうと国が判断したのだ。これには育成校を卒業したものの、結局冒険者にはなりたくないとした者への救斉措置という面も存在している。
ちなみに育成校の教師には教育免許さえ持っていれば一般人でもなれるのだが、育成校全般に物騒なイメージを持たれている為、そういう人種は非常に少数だ。また、引退した冒険者の中で育成校の教師になる者の数も少なく、現役ならば輪に掛けて少ないので、育成校の教師は基本的にマルチタスク、即ち1人で複数科目を受け持つ事も珍しくない。
授業を充てるコマ数は育成校によって変わるが、焔ヶ原学園では午前中は全て授業で、週2日だけ午後にも1コマあり、後は各自自由活動となっている。依頼等によって午前中の授業を受けない事も認められているが、新入生である全一年生と四年六組は順に半年間と1ヶ月間はそれは認められていない。
○
別界学。
「はいはーい、授業始めるねー。まず最初に言っておくけど、本来なら厳密に言うと“別界学”は“
──で、本題に入るワケだけど」
現役でありながらも育成校の教師も務める極少数の1人である猛はそこで言葉を止め、笑みを浮かべた顔のまま生徒達を見渡す。
「ある程度のサワりぐらいは一般校でもやってる筈だし、復習がてら確認しようか。──じゃあ、暦隻」
「え、あ、はい」
「アナザーワールドの
「
「そう正解」
猛が教室の正面に授業用の大判
「西央地域や
──で、じゃあ次、
「え、と、こちらの2倍の速さで進んでいます」
「その通り。どちらも共に深夜0時スタートで、
そう言って猛は表示紋の画面を切り替える。新しく表示されたのは別天原についての情報だった。
「この授業では主に別天原のルールや
大判表示紋の画面が切り替わる。表示されているのはとある地図だ。上下には海が広がっているが両端は陸地が途切れたようになっている。
「別天原はこの世界──
と、ここで猛が地図の両端を指し示す。
「見て疑問に思ったかもしれないけど、ここ、両端が途切れているけど、これで別天原の
呆れた様に溜息をつく。
「いやほんと、最高ランクである“霊脈級”の感知系と空間移動系の様々な魔現でも駄目だったって記録に残ってるから、この“無終地域”については誰も確かめる術は無いんだよねー。だからこそ世界に跨って“
ふと、そこまで語っていた猛が懐に手を突っ込む。すぐさま出した手にはペンが1本だけ人差し指と中指に挟まれる形で存在していた。そしてそのまま手首をスナップし、
「…………
「くぉーら、響一郎。私の授業で寝るとは毎度ながらいい度胸だな。何だ? また
○
別架身学。
「はい、じゃあ始めて行くわよー。通常この時間は
大判表示紋が切り替わり、“別架身”という見出しと幾つかの文がその下の並ぶ。
「さて、“別架身学”は
実際に頷いたのは数人だけだが全体的には肯定の雰囲気だ。
「別架身と言うのは
画面が切り替わる。今度はある写真が表示されていた。それは、先端を切り落とされた六角錘が両端に付いた六角柱の形状をした1つの鉱石であった。透度がある事から結晶の1つなのだろうが、白とも虹色とも形容できぬ様な、それでいて無色ともまた違う不思議な色を帯びていた。
「これが何か解るー? はい、じゃあ、
「あ、はい、えーと、“
「はい正解。じゃ、これの持つ効果は? 間違ってても責めないからそのまま答えて」
「……別架身に成る事ができます」
「御名答。──そう、別架身になるにはこの別身晶石が必要なの。これを使う事で別架身になれるわけだけど、どうしてなれるかは解っていない、と言うより、これ自体が“別架身を造る”って能力を持った、“
一息。
「宝具の一種なだけあって大きさは予め統一されてあって大体10センチで重さは普通の
画面が切り替わる。今度は動画の様だ。別身晶石を手に持った男の姿が停止した状態で映っている。
「手順自体は極めてシンプル。別身晶石を手に持って起動句を唱えるだけ。起動句は【シフトイン】」
映像が再生される。猛の説明通り、男が「【シフトイン】」と唱えると別身晶石が薄く発光し、霧散する様にして消失した。と同時に、男の身体も同様の光に覆われ、すぐに晴れた後には──そのままの何も変わらない姿の男がいた。
「これ一見何も変わってない様に見えるけど、ちゃんと別架身になってるからね。別天原にも対応している装備を
生徒達が頷くのを確認し、説明を続ける。
「別身晶石は一度使用すると使用者の“存在”に同化するから、二回目以降は起動句を唱えるだけで
ふと、猛が表示紋から視線を外し、皆を見回して言う。
「あとこれは他の宝具や魔現の起動句全般に言える事だけど、起動句は必ずしも口頭で唱えなくてはいけない訳じゃないから。念じるだけでも一応は可能よ。ただ、魔現者の、それも赤子の頃から魔現が発生して使いこなしていた人達ならともかく、念じるだけで発動させるのはかなり難しいのよ。その起動句だけを思ってなくちゃならないからね。日頃言葉を発して意志を伝えている者達にとっては、これが結構難易度が高いのよ。特に“王”シリーズとか一部の宝具の起動句はちょっとした短文並の長さだから、とてもじゃないけど言葉にした方が遥かに楽ね」
そこまで話し終えてから「さて」と時間を確認する。
「そろそろ時間ね。次回はステータスと
○
「さて、
顔面の右半分に縦に渡って付いた4条の傷をなるべく隠す様に色の入った眼鏡を掛けた壮年の男が表示紋を操作し、忌化生についての簡単な情報を表示する。
「別天原と同様、忌化生についても未だに詳しい生態は解っていない。現在判明している事は、
食事を必要としていない事、
生殖で個体が誕生する訳ではない事、
別天原に広く分布している事、
ヒトを襲う事、
既存の生物とはかけ離れた姿をしている事、
死ぬと“霊晶石”になる事、
そして何よりも重要な事だが」
そこで一息置く。
「別天原の存在にもかかわらず、こちらにも存在可能だという事だ」
「最後の項目は冒険者の存在意義にも関わってくる。今日はこの事と、霊晶石に変化する事を取り扱う」
「さて、別界学で習う事でもあるが、別天原固有の存在を根雲郷に持ってくる事はできない。両方の世界を互いに行き来させられるものも確かに存在するが、それらにはそもそも片方の世界に固有のものというのは含まれていない。だが忌化生は、何処からでもという訳ではないものの条件さえ満たせば、ステータスを据え置きのまま根雲郷に現れる事ができる。これは別天原での強さを根雲郷では完全に発揮できない人間種からすると大きな不利点だ。
──ではここで問題だ。奴等──忌化生が根雲郷に進入できる条件とは何だ。出席番号20番、答えよ」
「え、はい、ええと、じゅ、
「正解だ。そう、ヒトが別天原にシフトできる条件と同様、忌化生がこちらに現れるのができる様になるのは重界区域に入った時だけだ。だからこそ奴等のそこへの進入を食い止めるために我々冒険者が存在している。ただまあ、幸いにと言うべき事か、これまでの行動パターンを見るに、どうも奴等は根雲郷への侵入を第一義としてはないようだ。但しだからと言って忌化生討伐を軽視するのは愚の骨頂だ。実際に約200年前、西央地域のとある小国において、中々進入の姿勢を見せないからと忌化生討伐に割く力を減らした結果、何時の間にか大量発生していたD~C級の忌化生に国を滅ぼされかけている。その時は周辺の国が助太刀を出したが、その国はそれから政治的弱者になった。歴史の教科書にも出ているだろうから後で機会があれば確認しておけ。──で、何が言いたいかと言うとだ」
そこで言葉を区切って皆を見渡す教師には、有無を言わせない凄みがあった。
「今現在、冒険者の多様性を否定する訳ではないが、冒険者の本分は忌化生討伐だ。その事はくれぐれも念頭に入れておけ。解ったな」
「「「「「「はい」」」」」」
「結構。では次だ。忌化生は肉体的に死を迎えると、その肉体は“霊晶石”に変化する。霊晶石については完全に知っている者もいるかもしれないが、確認も兼ねて改めて説明しよう」
そう言って教師が画面を切り替える。次に映っていたのは、不思議な色をした石の様なものの写真だった。
「霊晶石とは霊脈を流れる
「ええと……生活により結びついているから、です」
「どう結びついている?」
「……別天原では、倒した忌化生から得た霊晶石を別天原での通貨に換金でき、それによって武器の購入や修復等が可能になります」
「予習ができている様で何よりだが、その例ならば、先程述べた両方の世界を行き来できるものの中には霊晶石も含まれているが、
「それは…………」
「結構。座ってよろしい。さて、今のは事実ではあるものの私の初めの質問への答えとしては不十分だ。今から私が述べる事がその答えにもなり、同時に2つ目の質問の答えともなる」
画面が切り替わる。今度は横長に区切られた枠が縦に積み重なっており、各々の欄に文が記載されているが上からS,A,B,C,D,Eと割り振られている。
「そもそも確かに霊晶石は両界を行き来できるが、全てがそれに当てはまる訳ではない。それが可能なのはある一定以上の質を持つ霊晶石だ。知っての通り、忌化生はランク分けされているが、霊晶石の質もある程度そのランクに比例している。そして、条件に適するのは
「それで、だ。忌化生においてB級以上となると事前の準備等がそれなりに必要だ。それ故にB級以上の霊晶石を手に入れられたとして
それから教師は面々を見渡す。
「さて、これが答えだ。納得したかな。──次に進めるぞ」
錬学:化学
ヒトと人の表記を変えているのは意図的です。
ヒト:生物の分類上として人間種や異種族を纏めた表し方。
人:厳密に区別する意図が無い表記。なので指す対象は場合によっては人間種だったり異種族も含んで居たりします。
説明と言ってる割に尻切れトンボ感がありますが、こういう展開は何分不慣れなのでお許し下さい。
感想や意見、質問待ってます。