「ていっ」
「アアゥ!!!!?」
キャスター……真名はジル・ド・レェ。
この狂人は話術に長けるが、精神汚染というスキルのせいで会話が成り立たない。
聖剣という自衛の手段こそ持ち得ているものの、バーサーカーの宝具によりランクがダウンして真の力は解放出来ない現状、望ましいのは対話による相互理解だ。
―――故に刺した。
「おぉ、これぞ正しく飛び出しがちな私の眼球を隙あらば諌めてきたジャンヌの目潰し……」
涙とも血涙とも取れる熱い液体を頬から流すジルド・レェ。
藤村大河との出会いで思い出した話だ。
特典映像なる世界でアイリスフィールが彼の目玉を指で突き刺し、原因は不明だかジル・ド・レェの狂気は鳴りを潜めた。
眼球を指先で圧しただけだというのに関係性は観測世界の知識、間桐の魔術をもってしても解読不可能。
子供の探求心というヤツだろうか。
……分からない。解らない。判らない。
故に面白い!
ぶすりっと5ミリほど沈んだ眼球から指を離し、ハンカチで拭う。
アアッァァァァ!!!!!
ジルは顔を抑えて絶叫している。
神秘なき物では英霊が傷付く訳がないのにわざとらしい…
と、幼子の臓物を高級な織物のように両手で抱える雨生龍之介が一歩二歩と下がり、ぶちまけられた脳髄に滑って尻餅をついた。
「さっすが、旦那の知り合い…出会い頭に目玉突き刺すなんて最高にクールだぜ」
頬を上気して……殺人鬼の思想など読める自信はないが、好感触なのか?
良くも分からず、首を傾げる。
取り敢えず、雨生龍之介の犠牲となった死体達を一ヶ所に集めて火を着けて処理しようと動いていると、雨生は驚いたように声を上げる。
「そりゃあ、勿体ないよ姉御!」
「勿体ない?
……これ以上、死後を辱しめてなんとなるのです?」
揺月からすれば、この肉塊達に使い道など存在しない。
死霊使いでもあるまいに、腐食も激しい、生前の原型すら留めていないこれらを態々芸術品のように取り扱う考えが理解出来なかった。
むしろ、変な病気になったらどうする。
「確かに……臭うのはちょっとやだし、綺麗だった芸術ちゃんが腐っていくのは見ていて気持ちのいい物じゃないし……あら?」
「(悪霊が湧いても面倒だし)この子達の亡骸は私が預かっていいですね?」
「あーうん、別にいいや。そろそろ新しい玩具を捕まえようって旦那と話してた頃だし、もう要らない」
「……そうですか」
聖堂教会に属した覚えがないが、観測世界の記憶のお陰という訳だ。
ある程度の経験は知識と出来の良さで埋める。
初めてであるにも関わらず、まるで本物の聖職者のように彼女は紡いだ。
「――主は我が魂を甦らせ、御名のために我を正道へと導かん。」
炎は青く不純を浄めるよう燃え上がり、やがて鎮火する。
無関心な者と瞳を閉じて沈黙を語る軍師に見守られながら。
眼球ダブルクリック