「ランサー陣営はこれで終わりだ」
あの後、セイバーとランサーの戦闘は互いが攻め手に欠けるジリ貧状態に持ち込まれ、マスター同士の対決は舞弥の切り札が決め手となってケイネス・エルメロイは瀕死の重症を負い、見事撤退まで追い込むことが出来た。
――全て、衛宮切嗣が立てた計画通りだ。
「しかし、切嗣。貴方の起源弾の真の能力は不発に終わってしまった」
「……流石は時計塔の天才と言った所か」
バルコニーでセイバーからの報告を聞き、返事も返さず切嗣は煙草の煙を空に吹かした。
対象の魔術回路を全て切断し出鱈目に嗣ぐ。
ケイネスの右太ももに命中した弾丸は彼の下半身の魔術回路をズタズタに傷付けた。魔術師にとって魔術回路は生命線だ。擬似神経である魔術回路を失えば魔術行使は勿論、最悪命すら落とすこともある。しかし、今回は魔術師として看板を降ろすほどではなかった。どうやったか切嗣にも不明だが、
ケイネス・エルメロイは――全身の魔術回路を破壊されるのだけは阻止し、令呪を使ってアインツベルン城を脱してみせた。
「どのみち、ランサーのマスターは後悔するだろう」
二度と歩く事の叶わないだろう障害を負い令呪は最後の一つ。
英霊の裏切りを警戒すれば、その手札を容易に切れる訳もなく……今回のような強気な策は、行使出来なくなった。
恐らく彼らが打って出るのは今回で最後だ。
孤立したランサー陣営は工房が街中にある分、セイバー陣営からして丁度良い魔除けになるだろう。
「間桐揺月、お前は一体何処へ消えた?」
切嗣は目先の敵がいなくなった所で、最大の脅威であるバーサーカーのマスターに思いを巡らせる。
セイバーの宝具の強奪やライダーの屋敷破壊から全く途絶えた足取り。
ハッキリ言って彼女の行動は僕の思考を遥かに先んじている。
間桐の屋敷ほど優れた霊地を進んで手放したとは考えられないが、完全に予想外の筈だったライダーの襲撃からここまで上手く立ち回られるとこれも計算の内ではないのかと勘繰ってしまう。
「酒盛りには姿を現すだろうか……そもそもライダー陣営はヤツの居場所を掴んでいるのか?」
切嗣の帰還後、間も無くしてアイリとセイバーを前に酒盛りの約束を強引に取り付けたライダーの提案が頭に浮かぶ。
ライダーは愉快そうに「バーサーカーのマスターも誘うつもりだ」と口にしていたが何処にいるかも分からない相手をどうやって誘うつもりなのか?というのは、切嗣のみならずセイバー陣営共通の疑問であった。
「バーサーカーのマスターは一体何処に隠れおった?」
空を駆ける牛車の手綱をたわませるライダーは困ったようにポリポリと頭をかいた。
過去現在そして未来。数多ある時代にてその名を轟かせた勇者達に万能の願望器を掛ける願いはなんたるか酒の席で問うてみたいと今回の催しを企てたのに、既に脱落したアサシンは仕方ないとしてバーサーカーの居場所が分からないのは面白くない。
「キャスターも未だ姿を見せんし、かー!バーサーカーのマスターめ!あやつはどれ程に余の心を掻き乱せば気がすむというのだ!」
膝を叩いて大きく笑うライダー。
「いや自分勝手が暴発してるだけじゃないか!」
ウェイバーは責めるように叫んだが、その言い分も無理はない。
何せ、バーサーカーのマスターはライダーに対して文字通り
ライダーが勝手に惚れて自宅を破壊し、酒盛り開くから来い等と……。
「(僕なら絶対罠だと思っていかないぞ)」
恨み辛みはあっても食事を囲める仲でないことは確かだ。
……まさか忘れてるんじゃないだろうな?
ウェイバーは己のサーヴァントの記憶力が本気で心配になるのであった。
if.イスカルダルが揺月のサーヴァントだった場合
イスカルダル「聖杯への願い……それは、我が妃と永遠の愛を誓い合う事よ!」
揺月「ファ!?」