間桐で女はアカンて!   作:ら・ま・ミュウ

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答え

――――――

 

 

※柳洞寺

 

 

 

砂利の敷かれた大地。

深々と降り積もる雪の足跡を残したその先に、一人の神父の姿があった。

 

「…………邪魔が入るな」

 

戦車(チャリオット)が奏でる牛の嘶きである。二人の人間が上空から飛び降り、その背後に立った。

 

マスター『ウェイバー・ベルベット』

サーヴァント『イスカンダル』

 

「まさか、僕達以外にも同じような事を考えるヤツが居るなんてな」

 

細身の体を覆うように深緑のコートを纏ったウェイバーは口を開く。

その口調には僅かな警戒の表れがあり、何があっても直ぐに対処出来るようにライダーの横から離れなかった。

 

「……貴様の求める大聖杯ならばこの地下にある」

 

男は小さく呟く。

ウェイバーは目を見開いた。

 

「お前ッ、聖杯が目的じゃないのか!?」

 

「……違うとだけ言っておこう」

 

この冬木の街では最高峰の霊地としてある柳洞寺。聖杯が顕現するような場所の候補として最有力だった。この男の姿を発見した時はいきなり当たりを引いたのかと密かに拳を握りしめたが、どうにも違和感のある男の反応。ウェイバーは思う、怪しい……と。

 

『ライダー、これは罠だと思うか?』

 

『さてな、これが戦場なら拷問して絞り出すのもアリだが』

 

『そんな時間はない』

 

『なら、どうする。先程の光を見るに、もう戦いは始まっちまってるぞ』

 

『あまりやりたくないけど、お前の戦車で強硬突破するのが一番堅実的だ。魔術師が張った罠なら英霊のお前に破れない道理がないからな』

 

不服だが時間的猶予の限られたウェイバーらはその言葉を信じ、この柳洞寺の地下を目指すことにした。

これにはセイバーとバーサーカー、アーチャーのマスター全員の顔が割れていた事で彼個人の脅威を低く感じ、少なくともサーヴァントによる襲撃はないだろうという考えからだが、そんな事など知るよしもないと、男は瞑想し、彼女の到来を待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

冬木の街が振動する

 

 

 

 

 

 

 

「―――ほお、誰かと思えば綺礼か。そんな所で何をしている?」

 

飛行する船から黄金の王(ギルガメッシュ)が見下ろしていた。

 

「聖杯はこの地下にある、既にライダーが向かった」

 

彼が求めた人間ではない。男は表情一つ変えずに指を指す。一瞬、彼の求める器の汚染について教えておこうかと考えたが、その義理もなしと。彼は待ち人を待ち続ける姿勢に戻る。

 

ギルガメッシュは面白い物を見るような目で彼を見つめ、しかし己が『その答え』を告げるのはお役違いであるのに気付くと何も語らずに彼の横を通り過ぎた。

 

 

 

 

 

 

街が揺れた。

大地が脈動し、黒い太陽が空に浮かび上がる。赤い力の奔流と戦車から放たれる落雷がやがて寺を焼き尽くした。

 

 

 

 

 

それから、何日が経ったであろう。

 

 

 

 

 

 

「―――まだか」

 

飲まず食わずで不眠不休。ついに立つことも困難となり、地面に倒れた男は力なく呟いた。

その日は風と雪が激しく、半身は半時間もしない内に埋まってしまった。男はこのまま死んで行くのだろうかと、朧気な思考で考える。

 

「いや、随分と遅くなったようですまない」

 

ふと、幻聴かと聞き紛う、求めた女の声がした。

 

「傷が癒えたのは暫く前になるんだが、何せ君が語らなかった真実に彼が腹を立てて黙っていてね。聞き出すのに時間が掛かった」

 

男はそれが幻聴か本物か分からないほど衰弱している。今この声によって浮上した意識も直ぐにノイズが走り始め……

 

「―――答えを言おう。お前の内に燻る感情は愉悦だ」

 

しかし、その言葉だけは胸の内にストンと落ちた。

 

「……そう、か。これこそが…愉悦か」

 

男は微睡みに沈む。女は続けて言った。

 

――なんて、気味の悪い笑みだと。

 

男の寝顔は頬を吊り上げ、とても愉快そうに嗤っていた。




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