「言っとくが結構汚いぞ? それに出せるような茶も無いし…」
「結構。三流の茶葉など出されても困るだけですわ」
失礼な…と思いつつも、カギを回しスライド式のドアを開ける。
どうぞ、と促すもなくスカイフレアはさっさと靴を脱ぎ勝手に上がっていく。
俺もその後ろについて行き、いそいそとリビングに散らばった物の片づけを始める。
朝、床に脱ぎ散らかして出ていった寝巻、テーブルに置きっぱなしの朝食の皿。
片付け終えてリビングに戻ると、スカイフレアはベッドに腰掛け足を組んで待っていた。
「広さはわたくしの宿舎とそう変わらないのね」
「お前たちの指揮を執っているとはいえ、一端のドクターに過ぎないからな。部屋も普通だ」
ふーん…と興味なさそうに俺の話を聞きながら、自身の尻尾を手に取り毛を梳く彼女。
二人分のコーヒーを淹れ、適当な茶菓子と一緒にテーブルに置くと、デスクの椅子を回し俺も腰を落ち着かせる。
「さてと」
不意にコトンとスカイフレアは仰向けに倒れ、俺のベッドにその身を預ける。
脚の隙間から下着が見えそうな角度に若干ドギマキする。
「いつまでボーとしておりますの? 早く脱がして下さらない?」
「は?えっ!?」
彼女が横になっている姿を眺めていると、首だけを起こしたスカイフレアがこちらに向かって言う。
「わたくしを部屋まで誘っておいて何をとぼけていますの?」
「部屋を見に行きたいといったのは君なんだが…」
「あら、そうでしたか? 覚えていません」
なんだそれはと思いつつ来ていた上着をハンガーに掛け、彼女が寝ているベッド端に座る。
暫くコーヒーを飲みながら耽っていると「はぁ…」と隣からため息が漏れるのが聞こえた。
「何を躊躇っておりますの? このスカイフレアを抱けるチャンスだというのに」
「そんなに他人に身を預ける性格だったかお前?」
「まさか。されど女に生を受けた以上、殿方に体を預けるのも吝かではありませんわ」
ゆっくりと、覆いかぶさるようにベッドの上に上がり。彼女の肢体を跨ぐ。
シーツの上を毛並みの良い尻尾がわさわさと揺れる。
「いいのか?俺なんかで」
「鈍いわね。言わないと分からないかしら? 『貴方が好きですわ』と」
言動こそ普段と変わりない彼女だが、相当恥ずかしいことをしている自覚はあるのか。
唇を引き結んで頬を朱に染め、耳はぱったりと伏せられている。
彼女に触れている場所が、じんわりと熱を帯びていくのが分かる。
「おいおい、燃やすなよ?」
「…“こういうこと”は初めてですから、わたくしもどうなるか知りませんわ。ですから…優しく、お願いしますわ」
「……勘弁してくれ」
眼を閉じる彼女とゆっくりと口づけを交わし、白いブラウスのボタンを一つ一つ外していく。
スカイフレアとの初めてのキスは、まるで燃えるように温かかった。