ロドスの備忘録   作:とってもみかん

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フロストリーフとクーリエの話

「こちらブロック“ベータ”クーリエです。敵の殲滅を完了しました。アーミヤさん、次の指示を」

 

剣に付いたオリジムシの体液を拭いながら、クーリエは無線で連絡を入れる。

周辺の村から感染生物に襲われているとの連絡があり、その近辺を航行していたロドスがそれに応じた。

 

『了解です。ご苦労様でしたクーリエさん。そのままフロストリーフさんと一緒に後退して下さい。ロドスが回収します』

 

無線機を切って、拭き終えた剣を鞘に納める。

倒れていた木に腰掛け、水筒の中身をあおっていた彼女の方へ向かう

 

「とのことです。帰りましょうかフロストリーフさん」

「そうか」

 

口元から零れた水を袖で拭き取り、キャップを締めて立つ彼女。

立てかけていたハルバードを手に持つと踵を返して後方へ戻ろうとした。

 

「おい、クーリエ後ろ…ッ!」

「なっ!」

 

二度見の要領で振り返った彼女は、クーリエの横を疾風のように駆け抜け、振り下ろされたハルバードと殻が割れるような破砕音。

 

彼女の向かったほうを振り返ると、今にも自分に襲い掛かっていたであろう一回り大きなオリジムシ。どす黒い血のような液体をどくどくと殻の割れ目から垂れ流していた。

その返り血を受け、真っ赤に染まっていたフロストリーフ、がゆっくりとハルバードを引き抜いてクーリエの方を向く。

 

「気を付けろ」

「…ありがとうございます。…貸しができてしまいましたね」

「貸しとか、別にいい」

 

最悪な気分だ、と水筒の中身を全て頭から被り付いた血を洗い流す。

クーリエが持っていたタオルを渡すと、礼を言って頭と顔を拭う。

 

「そう言わず。助けてもらった恩は必ず返すのが僕のモットーです! 帰ったら食事を奢りますよ」

「…勝手にしろ」

 

そういって今度こそ帰路に着くフロストリーフとクーリエ。

 

…僕を襲ったのは、普通のオリジムシと比べ明らか多い量の血液だった。証拠に彼女の服はじっとりと赤色の液体を吸い、肌にもまだ赤色の色素が残っている。

急に村を襲ったオリジムシ達の行動と何か関係があるのだろうか…

 

 

「すみません。フロストリーフさんはこちらへ?」

「リーフちゃん? うーん、そういえばまだ見てないね。作戦が終わった後、お風呂にも入らず部屋に戻っていったけど、何かあったのかな?」

 

夕暮れ、食堂でグムさんと話したが彼女は来ていなかったそうだ。傭兵としての習慣だったのか、彼女は良く決まった時間に食事を行っていた。今日に限ってそのルーティンから外れるようなことがあったのか…?

 

やはり何かあったのではないかとクーリエは宿泊棟へと向かうのだった。

 

 

:::::

 

ロドス艦内の宿泊棟は女性と男性とで分けられており、男が女性の宿泊室をノックするのはそれなりに理由と勇気がいる。幸いにも食事時とあって周りの眼は無く、僕の行動を怪しむ人はいなかった。いや別にやましいことをしているわけでもないが…

 

ノックしてから待つこと数十秒。

一向に扉が開く気配が無いため、いよいよ医療部の方へ連絡を入れようかと思ったその時。

 

スライド式の扉が開き、真っ暗な室内が覗いた。

扉に寄り掛かるように姿勢を傾け、少々乱れた衣服から白い肩口が見える。ヴァルポ族特有の大きな耳を後ろに倒し、いつもの帽子を外した髪の毛がぼさぼさと乱れていた。

 

「…フロストリーフさん? 大丈夫ですか、どこかお怪我でも…」

「ハァ…ふっ…お前か…」

 

顔を上げた彼女の顔は熱があるかのように蒸気しており、汗を幾つも垂らしていた。いつも強い信念を宿していたその眼は伏せられ、まるで酩酊しているかのように焦点が合っていない。

明らかに異常であった。真剣に彼女を医療部へ連れて行こうと決心して声をかける。

 

「あの、だいじょ…」

「…ちょっと、来い」

 

よろよろと伸びた彼女の右腕がクーリエの襟元を掴み、少女らしからぬ凄まじい力で部屋の中へ引きずり込む。

 

「え?ぅわあああ!」

 

彼女が脱ぎ捨てたと思われる衣服を足で踏み、思わず転げそうになりながらも彼女に引っ張られ続ける。

最後に思い切り押し出され、倒れた背中が何か柔らかいものに受け止められる。恐らくベッドだ。

クーリエの上に彼女が馬乗りになって跨る。両手で肩を押えられ完全に身動きが取れない中、常夜灯のみが彼女の顔と身体を淡く照らし出す。

 

「…あのさ、あのオリジムシ、実は知ってたの? …まぁどうでもいいか」

 

言いながら彼女はキャミソールの肩紐を外し腹まで下ろす。トップレスの状態になると、つんと張った胸を見せ付けるかのように上半身を傾け顔と顔を近づける。

 

「あれから身体が火照って仕方なくてな。…オリジムシは繁殖期に雌を惑わす催淫液を身に貯めるらしいが、その催淫液をもろに浴びたしてしまったんだ。…ずっと一人で慰めていたが、……限界だ」

「あの、それは僕のせいで…」

「ああ、お前のせいだ。だから責任を取れ」

 

荒い息で捲し立てる彼女の口調に対して、表情は今にも泣きそうだった。本当に辛くて耐えられないかもしれない。

まじまじと彼女の顔を見つめていると、垂れ下がった彼女の長い髪が徐々に顔に触れ始め、やがて顔と顔が合わさる。

柔らかい唇が触れ、更に求めるように細腕が首に回され引き寄せられる。熱い彼女の舌と唾液が絡まりあって音を立てる。

 

「あっあの!」

 

良くない。天国のような甘い欲求を振り払い、彼女の肩を掴み押し返す。

 

「駄目だと思います。こんなことで身体を預けるなんて貴女の本望じゃないはずです! 僕が医療部に事情を説明しますから、とにかく今は落ち着いて…」

 

「お前が好きなんだよ。ばぁか」

 

押し返す僕の手を払い、再び熱い体同士が重なり合った。

 

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