「先輩、おはようございます。今日の秘書担当は私です」
ノックをして執務室に入ると、既にドクターは机と向き合い書類を纏めていた。
「ああ、おはようエフィ。ちょっと早起きして仕事していたんだ」
「最近ロドスに加わる人も多いですからね…仕事も大事ですが、ちゃんと休んでいますか先輩?」
「もちろん、だからこうやって…」
ドクターはおもむろに立ち上がり棚を漁ると、大量のお菓子を取り出した。そして2人分のカップにインスタントコーヒーを注ぐと菓子の袋を開け始める。
「さて、ブレイクタイムだ」
「あの…私はまだ来たばかりなのですが…」
「いいからいいから、糖分がないと仕事も出来ないよ」
そう言って、お菓子をパクパクと口に運ぶ先輩
甘いものを食べる時は、普段厳格に指揮を執る先輩でも思わず笑顔になるらしい。
暫くお菓子を食べる時先輩の顔を眺める私。
…….....。
「先輩、ポッキー(ゲーム)をしませんか?」
私は菓子の中からそれを1本取り出すと、口にくわえてドクターの顔に向く
「ほうやって、ほたがいにポッキーを食べ合うんへふ」
かりかりかり食べ進めて、最後にガリと噛み切る。
「先に口を離してしまったほうの負けです。どうですか?」
「…? じゃあ、それどうやったら勝て…」
「はいスタートです!」
なにか言おうとした先輩の口にポッキーを突き刺し、栓をするように反対側を私が咥える。
(あわわわわ…ちっ近い…。勢いで始めちゃいましたが結構恥ずかしいです…)
油断すれば鼻息がかかりそうな距離に先輩の顔。
いきなり自分から始めておいて、恥ずかしさのあまりに顔が真っ赤になってそうだ。
と先輩がゆっくりと食べ進める。一気に近寄る先輩の顔。お互いの前髪が少しだけ触れ合い空気を震わす。
(え…えっこれもう私の負けなんじゃ…。残る距離は5センチ…くらい? うぅ…2…いや3センチぐらいだったら…大丈夫…かな…)
唇を滑らしてゆっくりとポッキーを口に収める。
ちょっと油断すれば先っぽ触れちゃいそうな距離、顔がみるみる紅潮していくのが自分でも分かる気がする。
口の中で溶けるチョコの味などもう分かるはずもない。
…そして3cmほど食べ進んだ時、
ゴツンッと額どうしがぶつかって音を立てた。
「い、いたぁ!」
「あはは、エフィの負けだね」
先輩の声で我に返ると、口を離した私に対し、先輩の口元には残された数センチのポッキー。
「うぅ…私の負けです」
そうして執務室での戦いは幕を閉じたのである。