オラリオの朝、古びた教会の前で少年少女?の声が響く。
「ベル君、今日はダンジョンに行く前にサン君の冒険者登録をしてきてくれよ」
「はい、任してください!」
「頼むぜ団長、昨日みたいに倒れないでくれよ」
と冗談交じりに言う。
「ははは・・・」
「サン君も街中で倒れたりしないでくれよ」
溜息をつきヘスティアがサン・アカートに注意をする。
「今日は俺の冒険者としての名が広まる最初の日になるからな、街中で倒れたりしねーよ!こんな日に倒れるやつは冒険者として二流・・・いや三流も良いところだ!」
自らが一流だと主張するように語る。
「昨日も思ったけど、サンの自信はすごいなぁ。子供のころおじいちゃんに読んでもらった物語にでてくる英雄みたいだ。やっぱりサンみたいな人が英雄になるのかなぁ」
ベルが自信なさげに自身の影が映る地面を見ながら言う。
「ベル君はもう少し自分に自信をもっても良いと思うぜ!それにサン君は自信を持ちすぎている所があるから君が団長として、しっかりとフォローをしてあげるんだよ。サン君は自分を過信して突っ走んないようにね!」
ヘスティアは人差し指を立て諭す。
「オッケー、オッケーわかってるよ。じゃあ団長行こうぜ。このまま話してたら団長がダンジョンに潜れなくなっちゃうぜ。ただでさえ今日は俺の冒険者登録に付き合ってもらうからな」
「か、神様行ってきます!」
ベルは焦ったように挨拶を済ませる。
「またな~」
ヘスティアに手を振り、二人は足早にギルドへ向かう。
「はぁ~二人とも無事に帰ってくるんだよ~。今日の夕食はじゃが丸君だよ~」
ヘスティアも手を振り二人の出発を見送った。
ベルとサン・アカートの二人は開店の準備に忙しなく働く人々や同じくダンジョンに向かうであろう冒険者たちの中、ギルドに向かう大通りを歩く。日が昇ってさほどたっていない早朝であるにも関わらず人々の活気にあふれている。この風景だけでも世界一の都市だということが伺える。ベルが歩きながらギルドについて、冒険者登録について説明している。その説明をサン・アカートは話半分に聞き流していた。
「サン聞いてる?」
「聞いてる聞いてる、ギルドに行ったら団長のアドバイザーのエイナさんて人に話を通して冒険者登録をするんだろ?でその後地獄の冒険者講習。本当に俺はエイナさんに話を通さなきゃだめなのか?別の人でもいいじゃないか?」
「はぁ~エイナさんが親切で優しい人だからだよ。それに短い間だけど僕のアドバイザーとして良くしてくれたから。講義はちょっときついけど、きっとサンにも良くしてくれるとおもうんだ。」
「なるほど。でここに親切で優しくて、団長が大好きなエイナさんがいるギルドか?」
「エイナさんはそんなんじゃないよ!ほらいくよ」
ベルはからかわれているのにも関わらず嫌悪感を抱いていない。
「あ、エイナさ~ん!」
ギルドのカウンターで仕事をするエイナにベルが駆け寄る。
「へ?ベル君?今日はダンジョンに行かないの?」
突然声を掛けられ目を見開く。
「エイナさん!僕ついに団長になっちゃいました!」
「え?新しい子がファミリアに入ったこと?やったじゃない!」
「はい!で今日は新しいくファミリアに入団したサンの冒険者登録にきました!え~と・・・エイナさんがもしよければサンのアドバイザーになってくれませんか?」
ベルは無意識の上目遣いでエイナにお願いをする。それにエイナはたじろぎほほを赤く染める。
「え、え~とちょっと待っていてね。私の一存じゃあ決められないから」
そういい奥の方へかけていった。
「真面目そうひとだな」
とサン・アカートはつぶやいた。しばらくして戻ってきたエイナは、サン・アカートのアドバイザーになることを二人に告げる。
「本当ですか!ありがとうございます、エイナさん!良かったね、サン。エイナさんがアドバイザーになってくれたよ」
「そうだな、よろしく頼むぜエイナさん。サクッと冒険者登録お願いするぜ。ベルはダンジョンに向かうか?」
「うん。サンは、エイナさんの言う事聞くんだよ。エイナさんお願いします。サンはちょっと自信過剰な所があるので・・・じゃあ行ってきます」
軽く会釈をしてベルはダンジョンに向かう。
「いってらっしゃい~。よし!改めまして私はエイナ・チュールです。よろしくサン君。これからサン君のアドバイザーになりサン君の冒険のサポートをします。まずは冒険者となるためにこの用紙を記入して」
「オッケー」
サン・アカートは渡された用紙に名前などを記入していく。
「よし!書けた。これでいいか?」
「どれどれ、う~ん問題なさそうだね!今から時間取れる?ベル君から聞いているかな?初めて冒険者になった人のために冒険者講習をおこなっているんだけど」
「オッケー、大丈夫。地獄の講習だろ?ベルからちゃんと聞いてるぜ。ここでやるのか?
エイナは地獄の講習の部分に眉をしかめた。
「じゃあ、奥のソファーでやるから付いてきてもらえるかな」
そう笑顔で言う。言われるままエイナの後をついて行った。窓際にソファーと机が置いてある。日の光が良く入るいい場所だ。サン・アカートは奥のソファーに座りエイナは手前のソファーに向かい合うように座った。エイナからサン・アカートに厚さ1cmある冊子が渡される。
「はい、これが今日から覚えてもらうダンジョンの資料です。取り敢えず一階層の知識を覚えられるまではダンジョンにはいかないように!といっても私たちギルドのサポーターには君たち冒険者を止める権利は無いんだけどね」
エイナが椅子に深く座りなおして言う。
「オッケー、大丈夫だ。諸事情によりヘスティア様と約束してるんで、ダンジョンにはしばらくは潜らないよ」
「本当?」
「本当さ」
ベル君はサン君のことを自信過剰と言っていたけど、そんなことは無いのかな?本人がヘスティア様との約束でダンジョンにはしばらく潜らないと言っているから大丈夫かな?
「サン君を信じるよ。コホン。じゃあ講義を始めます。講義をしていく中で分からないことがあれば遠慮なくいってね。とその前に冒険者になるにあたって一番重要なこと、必ず覚えてほしいことを言うね。冒険者は冒険してはいけない。いい?冒険者はダンジョンから生み出されるモンスターと戦うから必ず危険が付きまとう。だから、ダンジョン内では決して油断や慢心をしてはいけない。だけどね、特に新人冒険者に多いんだけど、神の恩恵によって得た力を過信して、自分の実力よりも先の階層に足を踏み入れる人がいます。そして、そういう冒険者の多くはダンジョンで命を落とします。自身の力を過信して冒険し、死んだ人を私は多くみてきてるの。私はサン君に死んでほしくない。だからね、冒険者は冒険してはいけない。この言葉を忘れないでね。」
過去を思い出し、俯いてエイナが語る。
「ベルに聞いていた通り良い人だな、エイナさんは。もちろんわかってるぜ。俺は無茶をしない。必ず生きて、無事に帰ってくる。なんせ俺は世界一の冒険者になるんだからな。夢半ばで死ぬようなことはしなよ」
「ハハハ、ありがとう。それじゃあ改めまして講義を始めます!まずは、1ページの・・・」
エイナはサン・アカートの言った世界一の冒険者になるという宣言を冗談だと受け取り講義を進めた。
サン・アカートが冒険者になってから一週間がたった。
「はぁ、はぁ。なんで四階層にミノタウロスがいるんだよ。やっぱり僕にはまだはやかったのか」
「モォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
ダンジョンの四階層でベルはミノタウロスに追いかけられている。エイナとの約束でベルはここ数日三階層を冒険していた。だが、ダンジョン探索に余裕が出てきたことから四階層へ足を延ばしていた。そして、そこで本来四階層にいないミノタウロスが現れ勝てないと判断したベルはダンジョンを駆け回っている。
「はぁはぁ。ひぃい」
ドン。ミノタウロスに通路の行き止まりに追い込まれた。ミノタウロスの一撃を何とか避けたベルだったが、この絶望的な状況にベルは死を覚悟する。いや、死を覚悟するというより、この状況を受け入れられないで放心状態といったようだ。
ミノタウロスが腕を振り上げベルを殺す一撃を放つ。だがしかし、その瞬間横一線、ミノタウロスを両断する一撃がミノタウロスを切り裂く。ミノタウロスの返り血がベルに降りかかりベルを赤く染めた。
「大丈夫ですか?」
ベルを助けたのは戦姫アイズ・ヴァレンタインだ。
「へ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ベルはアイズの美貌に見とれ、この状況も相まってアイズに惚れたようだ。だが14歳の少年の初恋ましてや、その惚れた相手に助けられた羞恥心からミノタウロスの返り血で染まった顔がより赤くなる。そして、脳の処理が追い付かなくなりベルは奇声を上げてダンジョンを駆け上がった。
「え、・・・」
「アイズwなんだ今のウサギ野郎はw」
急にかけていったベルに困惑するアイズとその様子がツボに入った狼の姿があった。
「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・」
「キャ!」
「駆け出しかぁ!?」
「なんだあいつ」
ベルは街中を懸命に走り抜けていた。それはもう周りの様子がわからないほど、懸命に走り抜けていた。しかし、その顔には先程ミノタウロスに追いかけられていたような必死の狂騒はなく、遊園地に遊びに来てはしゃいでいる子供のような無邪気なものだ。ベルのその姿に周りの人々は驚き、困惑し、軽蔑するといった各々の反応をしている。そんなベルが向かう先はギルド。エイナの下であった。
ギルドのカウンター。そこには、笑顔の少女エイナと疲れ切っているがやり切った顔をしているサン・アカートの姿がある。
「やっと終わった~これでやっとダンジョンに潜れるぜ」
「はい、お疲れ様。サン君がここまで根気強いとは思わなかったよ。大体の人は途中で投げ出しちゃうからね」
「約束は守るし、これが最善だってわかるしな。もし逃げ出したりしたらダンジョンに行く前に俺の命がどうなるかわからねぇ」
「はいはい」
サン・アカートは講習が終わりダンジョンに潜れるようになった。ギルドのカウンターでエイナと共にこの一週間の振り返りをしている。
「いい?最後にこれだけは覚えておくんだよ!冒険者は冒険してはいけない。これだけは絶対に・・・」
「エイナさ~~~~~ん!」
エイナが締めようとしていたところにミノタウロスの返り血をたっぷりと浴びたベルが手を振りながらちかよってくる。
「ベ、ベル君!!どうしたの!」
「ハハハ、団長どうした!その血は!」
「え?」
エイナはベルの姿に驚き、サン・アカートは笑った。ベルはその反応が予想外であるかのように首をかしげる。
「え?て!どうしたのその返り血は!!怪我とか無いの?大丈夫なの!」
「ハハハ!」
「す、すいませんーー!」
流石はエイナ冒険者は冒険をしてはいけないと言うだけあって、ベルの心配をする。対してサン・アカートは未だに笑っていた。二人の反応を見て自信を振り返り我にかえったベルは急ぎ足でシャワーを浴びに行った。
「やっぱ面白いな、団長はwww」
その後、シャワーを浴びてきたベルから事情を聴き一通りエイナに怒られた後二人はホームに帰ることになった。
「ただいま!我が主神よ」
「ただいま帰りました、神様」
「お?お帰り!今日は早いんだね、何かあったのかい?」
「俺は今日で講習が終わったから帰って来ただけだぜなぁ、団長?」
「そうかい。おめでとう!ベル君はどうしたんだい?いつもならまだダンジョンにいる時間だろ?」
「いや~その実はミノタウロスに襲われて・・・」
「ミ~ノ~タウロス!!ベル君、だ大丈夫なのかい?怪我はないかい?僕は君がいなくなったらもう生きていけないよ!」
ベルのカミングアウトにヘスティアは動揺しベルに抱きつき、ペタペタとベルの体を触る。
「大丈夫ですよ神様!」
「そうだぜヘスティア様。ベルは愛しのアイズ・ヴァレンシュタインに助けてもらったからな」
「愛しの?それはどういうことだい!そのヴァレンシュタイン?」
「ハハハ、団長はミノタウロスから助けられてアイズ・ヴァレンシュタイン惚れたらしいぜ」
「ちょっとサン!」
「惚~れ~た~!どういうことだいベル君!僕というものがあるのに!」
サン・アカートが煽り、ヘスティアが暴れる。暴れるヘスティアをなだめベルが何とか事情を説明したが、ヘスティアの機嫌は直らずほほを丸くしている。ひと段落付き恒例のステイタス更新、ヘスティアは目を見開き声に出さずに驚いていた。ヘスティアの目に映るのはベルの背中に書かれたスキル欄、「憧憬一途」の文字。今まで誰も獲得してこなかった、アビリティの成長を施すスキルだ。ベルの成長を喜びながらもこのスキルがアイズ・ヴァレンタインを思うベルの心によって発現したと判るヘスティアは複雑な心境になった。レアスキルなため、簡単に口を漏らしそうなベルには伝えず、スキル欄を消してへスティアは共通語に直した紙をベルに渡した。スキルを消して渡されたその紙にはいつもと変わらないあまり伸びないステイタスが書かれており、ベルは自身に才能が無いのかと気を落としている。ヘスティアは行き場のないやきもちした気持ちを抑えきれず噛みつくようにバイト先との食事があることを伝え家から出ていった。
「神様、怒ってたね。やっぱり他のファミリアだからかな?」
「さぁな。取り敢えず今日の飯どうするよ」
「あ、今朝食事に行くと約束した店があるんだけどサンも行く?」
ベルは今朝シルという少女と交わした約束を思い出し、サン・アカートも一緒に行かないかと誘う。
「約束?まぁいいか、じゃあそこに食べに行こうぜ」
ベルとサン・アカートは豊穣の女主人へと向かう。
俺だったらこの主人公とは、友達になりたくないな。
それはさておき、三日坊主になったわ。でも投稿したからこれもネットに晒したおかげだわ。
次はきっと一週間以内。次でプロローグ終わり。
a,時系列ミスってるけどゆるして