「ここのはずだよ」
「おおぉ、賑わってるな」
ベルとサン・アカートは豊穣の女主人に着いた。そこでは、多くの冒険者たちが酒と食事を楽しんでいる。ベルが場所を再度確認していると、店の奥から綺麗な灰色の髪をした美少女がポニーテールを揺らして、ベルの方へとかけてきた。
「ベルさん! 来てくれたんですね、待っていましたよ。今朝、渡したお弁当は食べてくれましたか?」
「シルさん! お弁当美味しかったです! ありがとうございました」
「良かったです。お口に合わなかったらどうしよかと……」
ベルの感想にシルは上目づかいで応える。その姿は小悪魔というに相応しく、何人もの人を虜にしてきたことが伺える。その様子をみたサン・アカートはベルが騙されていないかと不安を覚えた。
「え~と、そちらの方は?」
シルは今朝見かけなかったベルの隣にいる人物が気になりベルに尋ねた。
「え~と、隣にいるのは……」
「俺の名はサン・アカート未来の一流いや世界一の冒険者だ!」
「はぁ~?」
ベルの言葉を遮りサン・アカートが自信満々に応える。その姿にシルは呆気にとられた。キョトンとしているシルにベルが補足をするように話始めた。
「サンはちょっと自信過剰な所があるだけで、約束は守るし、料理とか作ってくれるいい人なんですよ」
「まぁな。いつもは家で食べているけど、今日は団長がお世話になった店があるってんでお邪魔させてもらおうと思ったんだが、まだ俺たちの席はまだ空いているか?」
他人の評価は気にしないとばかりに、話をながす。
「あ、はい! カウンター席が空いているので、こちらへどうぞ。二名様ご来店です~」
来店の話を振られたことで我に返り、いつもの調子で席に案内する。席に案内されるとシルはベルに「じゃあ、また」と耳元にささやいて厨房へと消えていった。ベルは顔を赤く染め、サン・アカートはつまらなそうに案内された奥のカウンター席に座る。途中猫耳をはやした獣人のスタッフに「おめゃ~シルのなんなんだにゃ?」など声をかけられる場面があったが、他の客は二人には眼中になく来店したことにも気づいていないようだ。
「アンタがシルの言っていた冒険者かい? ずいぶん可愛い顔をしているんだね」
「はははぁ……」
ベルは女将さんの言葉に愛想笑いをする。
「はいよ! 大食漢なんだろ? 取り敢えずこれ食いな! 酒はなにを飲むんだい?」
注文される前から大量のパスタが出される。ベルはメニュー表と食べ物を見比べて、それが一日の収入の半分の額だと知り驚愕する。シルがこちらに向かってウインクをした。どうやらシルが大食いだと吹き込んだようだ。女将さんに遠慮がない。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ~シ、シルさん?」
「女将さんいいね! じゃあ俺はエールをくれ。団長は何飲むよ」
「いやいやサン! どうするの僕たちの生活費が消えちゃうよ」
ベルは大声で話すサン・アカートに対して小声で訴える。
「団長、こういう時に金を使わないでいつ使うんだよ。女将さんこいつにもエール一杯頼むわ」
「こっちの坊主は良くわかってるねぇ。それじゃあこれもお食べ!」
ドン!
新たに出された魚料理にベルは目眩がした。
「ハハハ、ありがとう! じゃあ団長俺たちのヘスティアファミリアの未来を祝って乾杯といこうか!」
「はぁ~かんぱい……」
どこか諦めたように乾杯の合図を言う。
「めちゃくちゃうまいな!」
「そうだね」
「酒の席は全てを忘れて騒ぎ楽しむのが礼儀なんだぜ! ほら、飲め飲め。ハハハ」
二人はサン・アカートが来てからの一週間について談笑し、食事と酒を楽しんでいる。食べ物が半分程度無くなりかけたころ、厨房からシルがでてきた。シルはベルたちの方へと近寄り話しかける。
「楽しんでいますか?」
「もちろん楽しんでるぜ!」
「色々と圧倒されています。料理や金額もそうですけど、酒場の雰囲気が賑やかで」
「やっとわかって来たか団長。さぁもう一杯! 乾杯~」
「乾杯……一番圧倒されてるのはサンにだけど」
サン・アカートは大学の飲み会のような絡み方をし、ベルは新歓に初めて参加した大学生のような反応を見せる。
「ははは。このお店、いろんな人が来て面白いでしょ? 私、知らない人と触れ合うのが趣味で、このお店にいるといろんな人に会えるので、たのしいんですよね。ベルさんだってサンさんだって……こうした新しい出会いが嬉しいんです。心がうずいて……」
可愛い顔してけっこうしたたか。そうベルは心で思った。
「いろんな人をみるのが趣味というなら、見ただけでそいつのことが分ったりするのか?」
サン・アカートはふと気になったことを口にする。
「そうですねぇ。なんとなくですけど、わかりますよ」
「おお」
「オッケー。じゃあ、あんたの目から見ておれとベルはどう映る?」
ベルは驚き、サン・アカートは質問を返す。
「ベルさんは一見弱弱しいけど、芯がある可愛らしい方だと思いますよ。サンさんは自分に絶対の自信を持っているけれど、堅実に物事を進めるタイプに見えますね」
シルはそれぞれの評価を話す。
「それってほめられてるのかな?」
「まぁまぁいいじゃねーか!」
バン、バンとサン・アカートは下を向くベルの背中を叩いて励ます。シルとの会話を楽しんでいると店の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ご予約のお客様、ご来店にゃ」
入店の最に声をかけてきた猫耳のスタッフが元気よく叫ぶ。入り口から入ってきたのは、10名を超える大団体だ。先頭には赤髪の女性、後続にはパルゥム、エルフ、ドワーフ、アマゾネス、獣人といった多種多様な種族の男女が続く。その誰もが美形である。もともと店内で酒を楽しんでいた冒険者たちは、口を紡いだ。彼らは案内された席に座る。
「おいおい、どうして皆黙ってるんだ?」
「彼らがこのオラリオの二大巨頭の一角であるロキファミリアだからですね。ロキファミリア主神のロキ様がうちの店を大変気にいってくれていて良く来店してくれんですよ。ちょっとお店が忙しくなりそうなので厨房に戻りますね。楽しんでいってください!」
「オッケー、ありがとう!」
サン・アカートの質問にシルが楽しそうに答え、厨房へと帰っていった。
そして、ロキファミリアは赤髪の女性、神ロキにより宴会が開始する。
「いやいや、皆今回もダンジョン遠征ご苦労さん! 今夜は宴会や! 飲んで騒いで疲れを癒しな。ダンジョン遠征成功を祝して乾杯!!」
「「「乾杯~~~~~~~~」」」
ガヤガヤとロキファミリアの面々が騒ぎだしたことで黙っていた他の冒険者たちも談笑を再開した。
サン・アカートも例に盛れず談笑再開させ、ベルをからかうように問いかける。
「へぇ~おい団長そのアイズ・ヴァレンシュタインてのはどいつだ?」
「────────―」
サン・アカートはベルが惚れたというアイズ・ヴァレンシュタインがどんな人物かが気になりベルに尋ねたがベルからの返答はない。ベルは口を開けぼーっとした顔で金髪の少女を眺めている。
「お~い大丈夫か?」
サン・アカートはベルの方を揺らす
「え? あ、ごめん!」
「なんだ、あれがアイズ・ヴァレンシュタインか? スゲー美人だな。あれでいてオラリオ屈指の実力者というなら引く手あまただろうな。がんばれよ!」
ベルは意識を戻し、サン・アカートはベルを励ます。
「ありがとう……」
形だけの感謝を述べ、ジト目で料理を食べ始める。一日中からかわれたことにより、耐性がついたのかサン・アカートの言葉を軽く流す。そうして食事を楽しんでいると後方のロキファミリアの獣人が店中に聞こえる声で話し始めた。
「アイズ! 例のあの話、疲労してやろうぜ」
顔を赤くした獣人の男の話に店のロキファミリの面々は耳を傾ける。話しかけられたアイズは首を傾げ何の話か分かっていないような仕草をしている。
「あれだよ、ミノタウロス。最後の一匹をお前が始末しただろ? その時のトマト野郎の話だよ」
獣人の男の話にアイズを含めて数人が顔をしかめた。ベルとサン・アカートも眉をひそめてその話に耳を傾ける。そのことに気づかぬ男は意気揚々と語り続ける。
「ヒョロくせぇガキがミノタウロスに追い詰められてよぉwwwアイズが助けたんだがwwwwソイツ、クッセ~牛の血を浴びて、真っ赤なトマト見てぇ~なっちまったんだよwwwwwwwwww」
「「「wwwwwwwww」」」
男の話に一同は笑いに包まれた。それに気を良くした男は話を続ける。しかし、ベルは歯を食いしばり、手から血が出そうなほど拳を握りしめていた。
「それでよぉwそのトマト野郎にアイズが声をかけたんだが、トマト野郎w叫びながらどっか行っちまってwww」
「おいベートいい加減にしろ!! そもそもミノタウロスを逃がしてしまったのは我々の失態だ! 恥を知れ!」
緑色の髪をした美しいエルフの女性は男、ベートを注意する。
「別にゴミをゴミと言って何が悪い。これだから気高いエルフの副団長様は。チッ……そうだアイズ!! 俺とトマト野郎ならどっちをつがいに選ぶってんだよ!!」
気を悪くしたベートは悪態をつく。自身の正当性を訴えるように、あるいは自身の思いを隠すして伝えるためかベートは身を乗り出してアイズに問いただす。アイズは目を細め、心底嫌そうな顔で答える。
「そんなことを言うベートさんとだけは嫌です」
きっぱりと答えた。ベートはその答えに目を見開き大声で叫ぶ。
「チッ……いいかアイズ。お前はオラリオ一の女剣士だ! あんな軟弱な雑魚にお前の隣に立つ資格はありゃしねぇ。雑魚じゃあつい合わないんだよ! アイズ・ヴァレンシュタインにはな!!」
その叫びと共にベルは立ち上がり女将さんに「ごちそうさまでした」と言いお金が入った袋を置いて店を飛び出した。ロキファミリアの面々はベートを縛り上げ説教をしており、アイズを除いて、誰もベルがいたことに気付いていない。サン・アカートはベルが飛び出したことを無視するかのように食事に戻っていた。
「サンさん」
シルがサン・アカートに問いかけるように名を呼ぶ。
「団長は大丈夫だ。挨拶も金も払って行ったからな。冷静だ。無茶はしなさぁ。それより、この飯を残す方が失礼だろ? 団長のことは、これを食い終わったら追う」
シルの問いかけに対してサン・アカートが答える。それを受けてウエイトレスのエルフの女性が苛立ちを隠さず高圧的に問いかける。
「あなたは、仲間が馬鹿にされているのになぜそんなに平静を保っていられているんですか?」
「今ここで俺が声を荒げたところでロキファミリアには勝てない。何もしないのが最善だ、俺の直観が言っているからな。ロキファミリアに殴りかかっても得をすることなんて一つもねぇーよ」
「それでも!!」
「リュ———」
サン・アカートの答えに納得しないリューをシルが止めた。
「ご馳走さまでした。うまかったわ」
挨拶を済ませ、サン・アカートは店の出口に向かう。
「あなたは正しい。だが間違っている。あなたでは英雄にはなれはしない」
リューが言う。一冒険者としては正しいと。だがそれでは英雄世界一の冒険者になれないと。それに無言で手を振り応え店を出る。アイズは立ち上がりサン・アカートを追った。「どうしたんやぁ? アイズたん?」「さぁ?」「ベートに嫌気でもさしたんじゃない?」相も変わらず賑わっていおり、サン・アカートに気付かない者たちは酒と食事を楽しんでいる。
タッタ。アイズがサン・アカートに追いつく。
「ちょっと待って」
「ん? どうした? 剣姫さん」
「ごめん。ミノタウロスを逃がしたのは私たちのせいなのに」
「あ~いいよ。てか団長—──ベル・クラネルに伝えてやれ」
「……わかった」
サン・アカートは歩いてダンジョンに向かう。
(ちくしょう……ちくしょう……)
ズバッ! シュ! ダンジョンのモンスターを切り裂く。
「はぁはぁ」
(オラリオに来れば強くなれると思ってた。物語に出てくるような英雄になれると思っていた)
右手に握られてたナイフでモンスターを倒していく。
(違った。目指す場所にあの人の横に立つにはやらなきゃいけないんだ!)
ドス。重い打撃がベルを打つ。
「ゴホッ、ハァハァ。やるんだ……やるしかないんだ! そこにたどり着きたいのなら! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
雄たけびを上げ、モンスターへ立ち向かう。数分後そこにはモンスターの魔石と血だらけのベルのみ。
「ハァハァ、まだ……」
「よう、団長探したぜ? そんな姿じゃあエイナに怒られるのは確定だな。いや、その前にヘスティア様か?」
いつものような軽口を言う。
「サン……ハハ、そうだね」
「俺も一緒に謝ってやるから帰るぞ。これ以上は意味ねぇーよ」
「意味ないかぁ……。サン。僕、決めたんだ。僕は強くなる。物語に出てくる英雄のように。あの人の隣に立てるように、子供の夢見た姿に追いつけるように、世界一の冒険者なる君以上に、強くなるよ」
未来の英雄の決意の言葉。満身創痍、体はボロボロ。今にも倒れそうなベルの瞳には未来を見通した強い光が宿っていた。
「そうか。帰るぞ」
「うん」
ベルから自身を超えると宣言されたにも関わらずそれを否定できなかった。サン・アカートは、自身より弱い何の取り柄もない少年に苛立ちを隠せない。言動は幼稚、後先考えない無謀さ。そして、自身の能力以上の待望。その全てがサン・アカートには理解できない。だが、その在り方、ベル・クラネルを否定できない。そう直観が言っているから。
答えとは 問題を解いて出される結果である──―
最適解とは現状から最適と考えられる解答である──―
冒険とは成功が約束されていない状況で危険を冒し未来を掴み取ることである──―
英雄とは才知や武勇にたけ、普通の人には出来ないような事を成し遂げる者である──―
人は失敗から学び、失敗から成功する。何かに挑戦することは何かを失うことである、だが何かに挑戦しなければ何も得ることは無い。人は自身の出した答えを信じ、危険を冒して未来を掴むために奔走する。多くの挫折や失敗を繰り返して、前へ進む。そして、いつの日か他とは違う自分だけの幸せな未来を掴み取る。
この物語は答えがわかる少年サン・アカートが自ら間違った行動をとるまでの物語である。
未来を掴み取るために。
―プロローグ終―
最後のは良くなかったかもしれん。
目標は達成できてないけど、取り敢えず投稿しつづけます。
書くのに慣れてきたから次からは情景描写とか考えて書いてみるわ
リューさんは裏でシルからサン・アカートについて聞いています。
後ベートてやっぱクソじゃね?少なくともこの場に限っては。