悪役令嬢攻略物語   作:助難

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第二話 前世の記憶

 

 話を進めるために前世の私がプレイしたゲームを紹介しよう。

 『シークレット~秘密の花園~』

 私が中学生の時に初めてプレイした乙女ゲームである。

 タイトルから察せられると思うが古いゲームで、確か1が出たのは2000年頃だったと思う。

 私が買ったのはそのリメイク版。何と1の続編である2も入ったリメイク版である。中古でお安くなっていたため興味本位で手に取った。

 

 『シークレット~秘密の花園~』は一人の女の子──デフォルト名 ローダンと、攻略対象の男性キャラクターの恋模様を描いた乙女ゲームである。

 ローダンの家は貴族だが、所謂新興貴族であり、父親も母親も元農民であった。

 父親が戦争で活躍し一代で男爵位まで登ったが、貴族になっても畑を耕す少し変わった人間。

 母親は強い父に惚れた、と言うよりは土を弄っている時の、泥と汗にまみれた筋肉に惚れたこちらも変わり者。

 主人公(ローダン)には弟と妹がいるが、二人は原作にほぼ出てこないのでここでは割愛しよう。

 ついでに姉もいるが、彼女の場合は2の方の登場人物なので今は関係ないだろう。こちらも今は割愛する。

 そんな家庭で育ったためか主人公(ローダン)も農作業や剣を扱うことが好きであり、平民と同じ生活をしてきた。

 そんなほぼ平民の様な暮らしをしてきた人間が貴族しかいない学校に放り込まれ、浮かないはずもなく、気がついたら主人公(ローダン)は遠巻きに見られるようになった。

 そして、一人ぼっちな主人公(ローダン)に絡みにいくのが、攻略キャラたちである。

 

 メインの攻略キャラは五人。

 第二王子、王子の幼馴染みである騎士団長の息子、若き魔導師、担任の先生、そしてラスボスの龍。

 他にも隠れ攻略キャラが何人かいたり、ライバルの悪役令嬢がいたりするが、大体は一年間の全てを恋愛に注ぎ込ませるゲームである。学校なんだから勉強しろ。

 大体の攻略キャラたちはルートに入ると過保護になり、イベントでは主人公(ローダン)をデロデロに甘やかしていく。

 しかも主人公(ローダン)は乙女ゲームでは少し変わり種な女王様タイプ……というかツンデレというか、言葉の暴力で攻略対象を殴っていく様な人間である。

 王子を攻略してる時に選択肢で『私の馬になって』が出てきたときは度肝を抜かれた。しかもそれが最適解だった時の言い様のない心のざわめきは今でも思い出す。

 攻略対象が結構な確率でMなこのゲームは当時異端だったと思う。

 正直イベントを見るのが色んな意味で辛いゲームだ。

 

 ライバルの悪役令嬢は攻略していくキャラクターによって変わり、私が愛しているロベリアは第二王子を攻略していくと登場する。

 ロベリアは、王子とイチャイチャしている主人公(ローダン)に嫉妬して虐めてきたり、男達に暴行させようとしたりするのだが、その都度どこから見てたんだというタイミングで王子が助けに来たり、他の攻略キャラが助けに来たりして、どんどん立場が悪くなっていく。

 そして最後には、公爵家からも見放され過去バチバチにやりあっていた隣国に追放されるのだ。

 いや、追放は語弊があるか。身売りね、身売り。

 隣国の王子がロベリアを気に入って妾にしたいと言われ、公爵家や王家から良い縁談だと、隣国との縁を結び国を救うのだと言われ、少数のメイドと花嫁道具を持ってロベリアは隣国へと旅立つ。

 これが悪役令嬢ロベリアの原作で語られる全てである。

 しかしこの乙女ゲーム、公式の設定集にはその後の事が少しだけ描かれているのだ。

 

 主人公(ローダン)と第二王子が結ばれ、ロベリアが隣国に嫁入りして数年後。

 隣国はこの国に戦争を仕掛ける。

 元々この二つの国は仲が悪く、原作の少し前に戦争をしていた事もあって日々小競り合いはしていたのだが、ロベリアが嫁に入ってからは隣国からちょっかいをかけることも無くなり、王国が警戒を緩めた瞬間の事だった。

 隣国に接している辺境伯領が何とか耐え、攻略対象である若き天才たちが隣国を焼き払い、そして隣国の王族たちを処刑した。

 処刑された人達の中には勿論、悪役令嬢ロベリアの姿もあった。

 隣国の王族たちは全ての罪をロベリアに擦り付け難を逃れようとしたが、隣国の王族たちを生き永らえさせればまた何をされるか分からないと全員漏れ無く処刑される。

 公式設定集には断頭台へ向かうロベリアが挿し絵として描かれていた。

 原作の時よりも細くなった手足と首に錠をかけられ、青色の瞳には生気が感じられず、枝毛なんて無かった長い髪は首元でざっくりと切られ、ふっくらと整った唇は切れガサガサになっていた。

 正直、原作の時はお邪魔虫として色んな嫌がらせをしたり、攻略対象の好感度を下げられたりして、嫌いだった。

 でも処刑される挿し絵を見たとき、その嫌いという気持ちに別の感情が交じった。ざまぁ見ろとは思えなかった。

 私はその時確かに、同情という愛情をロベリアに向けてしまったのだ。

 設定集を読んでからの二週目は正直ロベリアをどう攻略するか、もっと言えば友情エンドが無いかと探ったものである。

 数少ない攻略サイトとネット掲示板をさ迷い歩き、イベントにうんざりしつつ自分でプレイした。

 まあ、結果無かったんだけどね。

 

 さて、何となく分かってはいたが、(ローダン)は今第二王子ルートに進んでいるらしい。

 しかも第二王子ルートでも好感度がMAXに近い状態である。まだ学園に通い出して1ヶ月経っていないのにどういうことなのか。

 転生特典? どちらかと言えばバグに近いかもしれない。

 二週目からは好感度が数%引き継がれるゲームだったので、そういうシステムが働いた、とか?

 前世での私の周回回数が何らかの形で今世の好感度として表れた、とか。

 いや、それはゲームのやりすぎか! HAHAHA!

 今はそんな事を考えている暇はない。

 第二王子から求婚されたら逃げ場が少ない。無いとは言わないけど、逃げたらロベリアと一緒にはなれないだろう。

 

 ゲーム内イベントで、攻略キャラクター達から贈り物を貰うシーンが存在する。

 そのイベント発生時点で一番好感度の高いキャラクターから一つだけ贈られる。贈り物は好感度によって変わるが、MAXの時の贈り物は『ドレス』である。

 いやいや、ちょっと待ってくれよ。そうしたら何か? 王子が私にドレスを贈ってきたのはつまり死刑宣告(ラブコール)って事か?

 荒ぶる気持ちを抑え、何とか頭をフル回転させる。

 

 とりあえず、お茶会には別のドレスを着ていこう。そうしよう。




 キリがいいところで投稿。
 ローダンのテンションががた落ちしています。
 お気に入り、評価、しおり等ありがとうございます。
 次の更新は未定です。暑くなってきたので遅くなると思います。
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