ポケモン世界でやりたいことやろう。   作:窓風

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2話 「研究所の生意気子猿」

 

 

 

 

暖かな日差し。頬を撫でる柔らかな風。

一時はもう二度と味わえないと思った光景が目の前に広がる。彼らにとっては遊びだったかもしれないが、それでも救われたこの命だ。感謝しないわけにはいかない。

 

「いやもうホントに感謝………」

『うるさいわねさっさと行くわよ!』

 

二柱の神に跪いて感謝していると、エムリットに髪の毛を引っ張られる。

 

「わかったわかった!わかったから引っ張るな!」

『……それで?その研究所はどこにあるのよ?』

「マサゴタウンにあることしか知らない。看板とか建物を見て探すしかないでしょ。」

『はぁ、それもそうね。とりあえずあんたが旅立つまでは一緒にいてあげるから。感謝しなさい。』

 

ギラティナに乗ってるときから会話をしているけど、エムリットは口ではなんだかんだ言いつつ結構優しい。これが母性か?

 

とか考えていたら森を抜けたようだ。太陽はほぼ真上、おそらく昼間だろう。

目の前には2階建の大きな一軒家があった。左右を見渡すと他にも似たような家が点々とあり、街というよりは町という印象だ。

 

『着いたわね。』

「これがマサゴタウンか……」

『じゃあ私は周りからは見えなくなるようになるわね。』

「え……あぁそうか。わかった。」

『察しがよくて助かるわ。』

 

一瞬何を言ってるかわからなかったが、エムリットは伝説の精霊なのだ。そう簡単に人間に見つかるわけにはいかないのだろう。

 

エムリットの体がスゥッと透明になり、うっすらと輪郭がぼやけて見える程度に見えなくなったのを確認した。そしていざ研究所へと意気込んだときに後ろから声をかけられた。

 

「あの、ちょっといいですか?」

「え、なんですか……?」

 

振り返るとそこには俺と同い年くらいの少女がいた。ボールマークがついた白いニット帽、紺ベースにスカートの裾が桃色のミニワンピース、桃色のブーツを身につけた少女はゲームでも見慣れた格好のままだった。

 

「もしかして研究所に用があるのかなって思って。」

「実はそうなんです。森を抜けてきたばっかりで。」

「そうなんですね!私もこれから研究所に行くところだったので、良かったら案内しますよ!」

「あぁ、ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて。俺は……マコトです。」

「私ヒカリっていいます!」

 

ちなみにエムリットについては気がついてないようだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

まさかの出会いに内心驚きながらも研究所にたどり着いた。話を聞くに予想通りヒカリは俺と同い年で、父と研究所の手伝いをしていて、明日フィールドワークも兼ねた旅に出るという。相棒はポッチャマで、すでに博士から貰っているらしい。

 

「へぇ、ノモセシティの方から来たんだ!結構遠かったよね?」

「確かにね〜、ノモセからはちょっと遠かった。」

「でも博士は去年カントー地方に行っちゃってるからしばらくは会えないと思うよ?」

「それはちょっと残念だな。まぁ仕方ないか。」

 

シンオウ地方のポケモン博士:ナナカマド博士はつい去年カントー地方に行ってしまったという。数年は帰ってこないらしく、面と向かって会えるのはまだ先になりそうだ。

 

「着いた!ここが研究所よ!」

 

ヒカリがある建物の前で立ち止まると、俺に向き直って建物を指差す。

 

緑の屋根と茶色の壁の建物の前には看板があり、【ポケモン研究所】と書いてある。間違いなく研究所だ。

 

「こんにちはー!」

「し、失礼します!」

 

扉を開けて入っていくヒカリを追うように続いて入る。中はポケモンの研究機材や資料が山ほどあり、思わず目移りしてしまう。

 

「お、来たわねヒカリちゃん。」

「後ろの子はお客さんかい?」

「うん!」

 

資料の谷から顔を出したのはメガネをかけた白衣の女性と同じくメガネをかけた白衣の男性だった。

 

「ノモセシティの方から来ました、マコトです。」

「ようこそポケモン研究所へ。私はヒカリの父でナナカマド博士の助手をしています。」

「同じく博士の助手をしてるハマナです。」

「博士はいないけどせっかく来てくれたんだ。ゆっくりしていってください。」

「ありがとうございます。」

 

軽く中を案内してもらい、奥に通されるとお茶を出されソファに腰をかける。ヒカリ父とハマナさんも俺の対面に座り、ヒカリは俺の隣に座った。

 

「それでマコト君は研究所に何か用かな?」

「実は博士に会ってから旅を始めようかと思ってました。ですが研究所を見に来れただけでもいい経験になりました。落ち着いたら出発しようかなと思ってます。」

「旅を始めるにしてもポケモン1匹も持ってないんでしょ?私はポッチャマがいるけど、マコト君はどうするの?」

「店でモンスターボールを買っていこうかと思ってたんだけど……」

「ポケモンを1匹以上所持していないと買い物もポケモンセンターの利用もほぼできないんだ。」

「あーやっぱりそうですか。んーどうすっかな……」

「…………あ!そういえば研究所に1匹いましたよね?あの子どうですかハナマさん!」

「あの初心者トレーナー向けに用意してた子?ただあの子ちょっと……」

「何か問題があるんですか?」

「ちょっと性格に難あり、ってところだな……直接会ったほうが早いか。」

 

そう言うとヒカリ父は研究室らしき部屋に行き、1つのモンスターボールを持ってきた。

 

「出てこい!」

「ヒヒーーッ!」

 

宙に放ったボールが開き、中からオレンジ色の毛をもつ子猿が出てきた。ゲームでは一番最初に選んだ個人的に思い出深いポケモン。これも運命だというのか。

 

「ヒコザル……!」

「そうだ。本来は初心者トレーナーに最初の1匹としてあげるはずだったんだけど……」

「ヒヒーーッ!!」

「おわっ!?」

 

ヒコザルが出てきたかと思うと、いきなり俺に襲いかかってきた。咄嗟に出した右手は引っ掻かれ、これでもかとパンチやキックを繰り出してくる。席を離れて比較的周りに物がない場所に誘導し即座にヒコザルの猛攻を対処する。

 

最初の「引っかく」こそモロにくらってしまったが、その後のパンチやキックは右腕1本で全て防いだ。ヒコザルは息が上がっており、こちらの出方を伺っているようだ。

 

「マコト君大丈夫!?」

「なんとか。ちょっと驚きはしたけど。」

「これがちょっとした問題でね。このヒコザルは他の初心者向けポケモンがいたときからずっとこうなんだ。おかげで毎日ポケモンの喧嘩が絶えなかったよ。」

「しかも初心者の子たちに過剰に飛びついたりして、初心者の子が怖がって他の子を選んだりしていたの。」

「なるほど……」

 

生意気な上に喧嘩好き。そして人にも遠慮がないとなると確かに初心者には厳しいだろう。だが伝説を除けば初めて出会ったポケモン。このチャンスを正直逃したくはない。

 

「…………なぁヒコザル。」

 

飛びかかってくる警戒をしながら問う。

 

「本当はどうしたいんだ?」

 

一瞬だけヒコザルの動きが止まる。

 

「お前は、他の誰よりも旅に出たかったんじゃないか?自分なりに精一杯アピールしたつもりが、やり過ぎて逆効果になった。そんなところか?」

 

ヒコザルの動きが完全に止まる。ヒカリやヒカリ父、ハナマさんも驚いていた。

 

「そんでさっき俺が来て、今度こそと思ってまた同じことをした。自分はこれだけできるぞ、一緒に行こうぜ、ってさっき攻撃されてなんとなくそう感じた。」

 

近づいていきしゃがんでヒコザルの目線に合わせる。

 

「そんなお前を俺は気に入った。いろんなところを旅してシンオウ地方の、いや世界中の強いやつとバトル(喧嘩)したくないか?あとはお前の気持ち次第だ。」

 

ゆっくりと左の手の平を差し出す。ポケモンは欲しいが彼らだって考え生きる者だ。ヒコザルの意志だって尊重したい。

 

実際は1分くらいだったと思うが、俺たちにとっては倍以上に感じた時間の後、ヒコザルは俺の手を取った。炎タイプ故か、その手はほんのり温かい。

 

「えーっと、勝手に話進めちゃいましたけど、このヒコザルっていただいても大丈夫でしたかね……?」

「それは構わないが……すごいな君。あのヒコザルを……」

「私たちでも手を焼いていたのに……」

「生き物はみんな理由もなく喧嘩なんてしませんからね。」

「マコト君、これ!……ってケガしてるじゃない!」

 

ヒカリがヒコザルのモンスターボールを持ってきた。その後引っかき傷を見て慌てて俺の手を握られた。内心ドキドキした。生まれてこのかた女の子に手を握られたことなどほとんどない。

 

「だ、大丈夫。びっくりしたけど。」

「もう!変な無茶しないでね!心配したんだから!」

 

出会ってまだ数時間なのにこう言ってもらえるのは嬉しい。ヒカリの人の良さが表れている。

 

「そんじゃ、ヒコザル!戻れ!」

 

受け取ったモンスターボールをヒコザルに向けると、ボールから赤い光が放たれヒコザルを包み込み、そのままボールに吸い込まれていった。これでようやくポケモントレーナーとして旅ができる。

 

「もう夕方になってしまったな。マコト君、今夜はウチに泊まっていくといい。」

「え!?いえそんな……」

「遠慮するな。ヒカリの旅立ち記念も兼ねてるんだ。今更1人増えたところで問題はないよ。」

「それいいじゃない!もっとお話ししようよ!」

「あー……じゃあお言葉に甘えて。」

 

ヒカリにこう言われちゃあ断れない。エムリットが『あんたチョロいわね』って言ってた気がする。うるせ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

ヒカリの家で晩御飯をご馳走になり、4人で食卓を囲んで色んな話を聞けた。特に驚いたのは、ヒカリの母さんがコンテストの優勝経験豊富で棚にいくつものトロフィーが飾られていたことだった。

 

今は2階のベランダに出ており、満月の明かりに照らされながら夜風に当たっていた。

 

『しかしあんたよくあんなこと思いついたわね。』

「あんなことって?」

『「ノモセシティの方から」ってやつ。意地悪な言い方。』

「まぁ嘘は言ってないからな……」

『?』

 

姿が見えているエムリットに茶化されながら話していた。研究所にいるときや晩御飯のときは気をつかって口出ししないでくれた。今はそれの反省会(?)中だ。

 

『それにあの子に心配されたときとかあんた妙にドキドキしてたでしょ。童貞なの?』

「童貞で結構。」

『あの子に手を出さないか私も心配だわ〜。』

「手を出す勇気もないから心配すんな。」

『ま、とりあえず無事に旅が始められそうね。これでやっとあんたの面倒見ずに済むわ。』

「ん?もう行くのか?」

『あの子の親もいることだし、見送りは大丈夫とみたわ。私も用があるし。』

「あーそういや言ってたな。じゃあここで一旦お別れか?」

『そうね。まぁせいぜいあの猿を上手く扱いなさい。』

「心配無用。そのうち戻ってきて成長した姿を見せてやる。」

『ふふっ楽しみにしてるわ。じゃあね。』

「あぁ、またな。」

 

そう言うとエムリットの姿は完全に見えなくなり、どこかへ飛んでいった。彼女とはまたどこかで会えるだろう。

 

「なんなら今度シンジ湖に行ってやるか。」

「あれ?マコト君?」

「うわっほっ?!」

「きゃあっ!」

 

背後から突然声をかけられ驚くと、声の主もそれに驚きへたり込んでしまった。

 

「……ヒカリか。悪い驚かせた。」

「う、ううん。私こそ急に声をかけてごめんね。」

 

髪留めを外して髪を下ろしたヒカリはとても綺麗だった。それこそ女神かと思ったくらいには。

 

へたり込んだヒカリに手を差し伸べて立つのを手伝う。風呂上がりなのか、ほんのり温かい。

 

「何か用だった?」

「いや、ベランダで何してるのかなーって。」

「あぁ、今日一日を振り返ってたんだよ。とても濃い一日だったからな。」

 

優しい夜風が吹き、互いの髪が揺れる。ほんのり温かい右手……………ん?

 

「「あ」」

 

ほぼ同時だった。その後互いに素早く手を離す。まさか繋いだままだったとは……

 

「「…………………………………」」

 

ちょっと、いやかなり気まずい恥ずかしい。ヒカリなんてもじもじしちゃった。うん可愛い。

 

「……ねぇマコト君。」

「な、なんだヒカリ?」

「私たちさ、明日から旅に出るんだよね。」

「あぁ、そうだな。」

「そこでお願いなんだけど…………

 

 

 

少しの間、私と一緒に旅をしてくれないかな?」

 

 

fin




『何を見せられてんのよ私は…………』


ーーーーーーーーーーーーーーー
マコトの手持ち
ヒコザル♂
生意気な性格で喧嘩をするのが好き。


久々に最初から始めたらクセのあるヒコザルを仲間にしました。
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