それはともかく本編いきます。
郷田達と対戦して3日が経過した。それからあらゆる場所で「郷田を神谷 ルキが討伐した」という噂話が流れ始めた。噂は中学校にも流れ始めているのだが、一つ心配なことが増えた。それはルキちゃんの心情である。というのも普通なら噂程度では動じない人が多いのだが、なにぶんルキちゃんは慎重で神経質な性格の持ち主。少しでも噂話が耳に入ると、過剰な反応をしてしまうのだ。例えば、恐怖を感じて体が震えてしまうことや他人を睨み付けてしまうようなことだ。
このような環境に慣れていないのに加え、彼女は今まで噂されるような立場を望んでこなかった。故に、ルキちゃんには現在相当の負担がかけられている。流石に心配になってきてなんとかしてあげたい気持ちなのだが生憎、俺の体はLBX。人間相手ではどうしようもできない。
自分のCCMから教師などにメッセージを送るという手もある。しかし、流石に送られた相手は不気味に感じてしまうだろうし、もしかしたら余計にルキちゃんに迷惑をかけてしまうかもしれない。というわけで絶賛苦戦中なのだが、ルキちゃんが小声で話し掛けてきた。
「・・・あの、ハルバさん。後でお話に付き合って貰えないでしょうか・・・?学校では少し・・・落ち着かないのです。」
『おう、いいよ。なんでも話してくれ。力になれるかもしれないからね。』
「・・・ありがとうございます。ハルバさん。」
いつも以上に挙動不審になっているのが分かる。ここで人生いや、LBX生のセラピーといこうか。もうこれダンボール戦機の内容からどんどんズレていっている気がするが、2050年になれば大事件が起こるだろうし問題ない。ということなので俺達は学校が終了した後、自宅の近くにあるという大橋で話をすることにした。
現在、俺達は例の大橋の真下にいる。実はここは最初に俺が転生し目覚めた場所なのだ。意外と神谷家の近くにあったらしく、町からは5分程度で行けてしまうところだった。随分と遠かった気がするが、俺がLBXとなり体が小さくなってしまったから遠く感じてたのだろうな。すると、俺はゆっくりと鞄から取り出され、コンクリートに置かれる。それに続き、彼女も腰掛けた。
「あの、ハルバさん。最近私の様子はどうでしたか?何か心配させるようなことはしていませんでしょうか?」
「うーん、強いて言うなら少し変わった。」
「例えば・・・どのような・・?」
自覚症状がないのか。まぁ、そりゃそうか。自覚があったらこんなこと聞かないもんな、普通。
「例えば、顔色が悪くなってた。小声で誰かが喋る度に顔が青くなっていって睨み付けそうになってたよ。後は体が震えてたかな、ちょっと心配になったよ。」
「本当にちょっと心配になるレベルの話ですか?だいぶ気に掛けてくれていたじゃないのですか?」
ちょっと怒ったような声でツッコミされる。ああ、ヤベ。早く正直に言えば良かった。でも、うだうだ言ってもしょうがないので謝ることにする。
「ごめん、実はめちゃめちゃ心配だった。」
素直に謝ると彼女は少し微笑みを浮かべた。
「・・・フフ、わかってますよ。貴方はLBXでありながら、とてもお優しいですものね。」
「そんなに率直にいわれると・・・照れる。」
「・・・もしかしたら、貴方が人間なんじゃないかって思ってしまうのです。機械である限り、その様なことはないですが。」
微笑んだ後、彼女は見た目は普通そうな顔つきに戻ったが目だけが少し悲しみの色に変わった。姉弟以外頼る人がいない彼女としては、色々なことを考えてしまうのだろう。
「・・・たとえ俺が人間じゃなくてもさ。俺はルキちゃんのLBX、『鉄塊』なんだぜ?ずっと一緒の相棒なんだからさ。人間とかLBXとか考えることはないんじゃないかな。」
「そうでしたね。私達はこれからもずっと一緒に生きていくのですよね。・・・頼れる人はもう2人と2機いるんでした。ならまだ私は安心していいということですか。・・・そう思うだけで胸の部分がほっこり暖かくなってきます。落ち込んでいてもしょうがないですね、キタジマ模型店にでも行きましょうか。なんだか遊びたい気分になってきました。」
「待ってたぜ!その言葉!んじゃ、早速いこうか。・・・といっても俺はルキちゃんに運んでもらわないとキタジマどころか家にも帰れないんですけどね。」
「フフ、わかってますよ。」
彼女は腰元に下げていたスクールバッグに俺を入れ、立ち上がった。しかし、進行方向に謎のフード男が立ち塞がっていた。歩くのを辞めたのを察し、俺はバッグから顔を覗かせる。
うわぁ、いかにもヤベェい奴に目をつけられてしまったかもしれん。だって姿が完全に不審者のそれなんだもん。黒のフード付きのパーカーに赤いズボン。さらにはサングラスまでかけていて、誰がどう見ても不審者にしか見えない形なのだ。そう考えていると、奴は口を開き何か喋りだした。
「お前か。最近、郷田を倒したって噂の女子中学生ってのは。」
ルキちゃんは警戒心を強めた。何しろ相手は大の大人だ。しかも、男ときたらたまったものではない。力技では確実に負けてしまう。襲われでもしたら確実に終わりだ。人間相手に危害をくわえるのは気が引けるが、いざとなれば俺が出よう。
しかし、LBXになったとはいえ、俺も大人相手では恐ろしい。背中に冷や汗がつたわるのを感じる。・・・俺、汗なんてでないはずなのになんでそう思ったのだろうか。心の中で漫才をしていると男が軽く笑い、こう言った。
「フッ、随分と威勢がいいじゃねぇか。安心しろ、別に捕って食おうなんてしねぇよ。ただ、知り合いが最近、物凄く強いプレイヤーに負けたと言っていたもんでな。ちょっくら、顔を拝みに来ただけさ。後、そこから顔を覗かせてる奴もな。」
どうやら男はルキちゃんを襲うつもりはないらしい。しかし、そう言われても説得力がない。姿が姿なので素直に信じることはできない。騙されて普通に襲われてしまってもおかしくない。ってえ?今この人俺のこと言ったのか?ますます信用できなくなってきた。ていうかなんでバレたし。完璧な立ち位置だったはずなのに。しかし、だからといって目の前でペチャクチャしゃべる訳にもいかないので、とりあえず黙っておこうそうしよう。
「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は『檜山 蓮』。『ブルーキャッツ』のマスターをしている。」
と自己紹介を済ませると男はフードとサングラスを外して素顔を露にした。・・・あら、イケメン。紫色の髪に瞳、細い顔立ちにりりしい鼻。これ絶対女の子達にモテるやつじゃん。ルキちゃんも想わず、見とれてしまっている・・・かと思ったが違った。さっきと変わらない怖い表情のままだった。顔だけで判断しないということは流石といったところか。これもクレイさんの言い付けなのだろう。
「ブルーキャッツってあのキタジマの隣にあるカフェのことですか?そこのマスターが何故私のところへ・・・。」
「言ったろ、俺は郷田の知り合いさ。少し、店に来てみないか?話はそこでしよう。」
「どうしましょう・・・ハルバさん(小声)。」
「どうするって言われてもなぁ。・・・まぁ、多分大丈夫なんじゃないかな。いい人そうだし。」
「・・・分かりました。とりあえずついていくことにします。ですが・・・ハルバさん。私に何かあったら・・・どうなるかお分かりですよね?」
凄い形相でこちらを睨んでくるルキちゃん。いや、止めてくれよ。それ普通に怖えぇから。デリートキーで消されそうだから。
「お前ら、何してんだ?来るのか?」
「・・・えぇ、いきますよ。」
「よし、じゃあこっちだ。」
というわけで俺達は檜山 連という男についていくことにした。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
しばらく歩いた後、本当にキタジマのほぼ隣でカフェを発見した。堂々と『Blue Cats』と看板まで下げてられている。俺、なんでこの3年間気づかなかったのだろうか・・・。早速、檜山 連につられて、玄関から入店する。すると、真正面にあるカウンターに郷田 ハンゾウが座っていた。
「郷田、戻ったぞ。」
「おう!レックス!俺の言ったとおり、橋のふもとに居たろ!?」
何故、俺達のいつも集まる場所がバレているのだ。あの場所を知っているのは他にクレイさんとアレンくん、そしてドレイクくんしかいないはずなんだけどな。まぁ、色々調べられたら出てくるのも当然か。レックス・・・どっかで聞いたことあるような・・・。
「・・・ッ!?郷田さん来ていたのですか。それに・・・お仲間達まで。」
「よっ、久しぶり。」
「でゴワス。」
ああ、本当だ。よく見たら郷田だけじゃなくて、周りにいた子分たちもいる。相変わらずあのデカい奴はスナック菓子つまんでるし。でもあのカメレオンみたいなやつはいない。どこかに出掛けているのだろうか。しかし、この檜山 蓮という男、郷田達とどういう繋がりなんだろう。こんなヤンキー達と関わりがあるとは到底思えないんだけど・・・。
「さて、お前。名前は『神谷 ルキ』で間違いないな?」
「えぇ、そうですが・・・。このような場所で一体どんな話が・・・。」
「ああ、それなんだがな。お前、『アングラビシダス』ってLBXの大会は知っているか?」
アングラビシダス?前に聞いたことあるぞ。確か地下で行われる残虐非道なLBX大会のことだっけ。負けたLBXは容赦なくスクラップにされるとか。まさか俺達がその大会に出場するとか言うんじゃないだろうな?だってその大会の参加者って、確かヤベー奴らばかりじゃなかったか?町の不良とかゴロツキ、さらにはマフィアまで来ているなんて噂されている。そんな危険なところへルキちゃんを行かせられない。頼むからそんな馬鹿なこと言うなよ、お兄さん。
「・・・聞いたことはあります、とても危険な大会だと噂です。ですが、その大会と私が何の関係が・・・。」
「ここへ呼んだ理由はお前に『アングラビシダス』出場してもらいたいからだ。」
「・・・ッ!?」
口に手を当て驚愕するルキちゃん。ってええええッ!?ホントに参加が希望だったの!?ちょっと待て待て。一体どうゆうこと!?
「まぁ、驚くのも無理はない。ただ、お前は強い。だからこのアングラビシダス、『闇の大会』の王者になってもらいたい。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。なぜ私なんですか。他にも強いプレイヤーは沢山いるでしょう?なぜ私だけ・・・。」
「安心しろ、アングラビシダスはチーム制だ。お前の兄弟もスカウトするつもりでいる。」
い、いやー、だからといって安心できる訳じゃないんだよ。だってマフィアだよ!?・・・でも、騒ぐこともないか。もし襲われたとしても保証はしてくれるでしょ、普通に考えて。
「あ、アングラビシダスで何かあったとしてもそれは自己責任だからな。」
と矢沢 リコ。いや、自己責任なんかい!無理やり連れてきたお前らが責任とれよ!
「で?どうだ!?参加してみる気はねぇか!?お前が王者になってくれれば俺達も動きやすいからよ!」
と郷田。いや、だからお前らのことはは知ったこっちゃないってばよ。俺は目線をルキちゃんに向け、誘いを断ってくれと言うようにシークレットサインを送る。しかし、俺の願いは届かず
「・・・まぁ、大会なら構いません。こちらも退屈していたところですし。」
とあっさり了承してしまった。ルキちゃん?なにしてるのかな?こんな危ない大会に出場させるわけないだろ!もし、クレイさんが知ったらどうなるか・・・。すると、入り口から他の客が入ってきた。誰だろう、この話をするのに他の人がいると少し不味い気がするのだが・・・。
「檜山さ~ん、集まる場所はここでいいんだよな?・・・っておお!ルキ!お前もここにいたか!」
「来たか、クレイ。」
「クレイ姉さん!?何故ここにいらっしゃったのですか?」
なんと入店してきたのは、制服姿のクレイさんだった。遅れてカメレオンのやつ。おそらく檜山さんは彼女にも声をかけていたのだろう。それで迎えに奴を向かわせた訳か。最近、クレイさんはカフェに行きだしたと言っていたが、まさかここだったとは。て言うかこれもう大会参加不可避ジャナイデスカヤダー。
「何でって、ルキ。私ら姉弟が『アングラビシダス』に招待されてるってこと知らなかったのか?」
「・・・知らなかったです。ですが理由がないと怪しすぎます。姉さんはちゃんと理由を聞いたのですか?」
そうだよ。いきなり参加を希望されても、よっぽどの理由がないと怪しすぎる。大会参加にはお金も掛かるし、それを全て負担してまで俺達を希望するのは何でだ?
「檜山さんがな、『理由を知りたいならアングラビシダスの王者になれ』って言っていたのだ。私は少なくとも犯罪ではないと思っている。それに・・・郷田もいるってことはきっと面白いことに違いない。だとは思わんか!?ルキ!」
出ました。クレイさんの究極のワクワクモード、これが発動するともう止められない。普段、姉弟の世話役をしているクレイさんにとってこのような出来事はそうそうない。その為、凄まじい好奇心が沸き上がって体を押さえられなくなるそう。彼女の相方であるドレイクくんが言ってた。ちなみに郷田と戦う前も出ていたらしい。
「・・・気持ちは分かります。ですが「よし、お前も参加だな!檜山さん、早速説明を頼む!」
っておいいいいい!ルキちゃんの意見を遮るじゃねえええええッ!ほらぁ、ルキちゃん落ち込んじゃったじゃん。少し涙目になってるよ、悲しそうなお顔になっちゃったよ!?
俺は気分が落ち込んでしまったルキちゃんを化粧室に連れていき、慰めてあげることにした。まぁ前もルキちゃん、似たことをカメレオンくんにしてたし、これでおあいこじゃないかな。
そう言い聞かせ、慰めることに成功した俺は再び、彼女にカウンターに戻らせるように言った。流石にやり過ぎたとクレイさんも気がついたようで、きちんと誤ってくれた。
「さぁ、お前ら。会場に行くぞ。」
「行くって・・・檜山さん、流石に今から会場に向かう時間はないですよ。もうすぐ5時になりますし・・・。」
「安心しろ、時間はとらせねぇよ。」
すると彼はカウンターから移動し、近くにあったおそらく地下に向かうだろう扉を開いた。え?まさか会場って・・・。
「そうだ。アングラビシダスはここの地下で行われるんだ。」
「「ッ!!?」」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
少し長い階段を下っていくと明かりが見え始め、人の気配がした。確かにここの地下には人が大量に入れるだけの空間があるようだ。
「着いたぞ。ここだ。」
そこには、まさに闇の大会にふさわしい会場が広がっていた。まるで闘技場だ。下のフロアにジオラマが設置されており、そこで既に何人かのチンピラが楽しくバトル・・・というよりLBXの破壊を楽しんでいた。いかにも荒くれの溜まり場というかなんというか。地上ではかなり浮いた存在感のルキちゃんだが、ここでは似たような暗い人物も多そうなので溶け込みやすそうだ。
しかし、ルキちゃんは女性。しかもか弱そうな見た目をしているため、周りからの視線が気になる。俺が言うのもあれだが、ルキちゃんははっきり言って中学生にしては美しい。それにより、男どもの視線を釘付けにしてしまっている。やめろやめろ、ルキちゃんに寄るんじゃない。嫁入り前の家の子に何かしたらぶっ飛ばしてやる。
「随分と・・・賑やかな場所なんですね。」
「そりゃそうだ!何せここははみ出し者達の聖地だからな!お前も気に入っただろ!」
と郷田が言う。・・・まぁ、確かに言えてるけどな。この時代はどうやらケンカするときにもLBXを使う。昭和の時みたいに特有の拳で語り合うみたいなことは遠い時代の話なのだろう。平成の頃にももう古臭い芸当だったけど。
?「おい、お前。いい面ぁしてんじゃねぇか、ちょいと顔を貸せよ。」
巨体でオレンジ色のモヒカンをしたすごく個性的な大男が近付いてきた。なんだとッ!!?と言い返したくなったが・・・いやいやでかすぎでしょお前。ルキちゃんの身長も結構あるけどこいつは彼女の1.5倍くらいのデカさだった。すると、ルキちゃんがいきなり手を捕まれ、どこかに連れていかれそうになる。
「ちょ、ちょっと!どこへ連れて行く気ですか!?」
「新入り臭かったんでな。ちょいと可愛がってやろうと思っただけさ。」
ほう、俺達に挑むつもりか。チンピラごとき、ねじ伏せてくれる。その傍らで心配そうにこちらを見送る郷田三人朱とクレイさんを押さえる郷田。そして、檜山さん。心なしか檜山さんはこちらの強さを見るためにわざと連れてきたのだろう。ズル賢い男よ。
案の定、ジオラマに立たされLBXバトルをさせられることになった。でも、どうやらリンチやチーム制ではなくタイマンのようなので安心した。流石に3対1とかになったら泣く。DARK SOULSの暗い森の庭並みの地獄絵図と化すのだけはなんとしても避けたい。
「では行きますよ、ハルバさん。」
『おう!』
お久しぶりです。はるばーどです。大変遅くなって申し訳なかったです。下書きのデータが消えたりなどトラブルがいろいろあって手こずってしまいました。こんな調子ですがまだまだ続きますので、これからもよろしくお願いいたします。