艦core over the next   作:タータ/タンタル

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第四話

長く膠着状態だったペルシャ湾周辺の地域の奪取紛争。

多くの資源を欲するAAU社と如月グループ、故郷を守るコロニーアラビアの三つ巴の戦いは半年経った今でも未だに終息の目処が立っていない。

だが、奴が来た

戦況の運命は決まった。

 

ーーーーー

 

「詳細を報告します。対岸に陣を取った如月グループ部隊が撤退を開始、ネクストACに襲撃されたようですが、企業のネクストではありません」

「『アナトリアの傭兵』だ。撤退。部隊は撤退しろ」

「ですが、逃走などすれば」

「命が惜しくないのかよ」

「くそ、アナトリアめ。漁夫の利を狙ったか」

「対ネクスト部隊以外のレイヴンは全員退避、速急に待避せよ。もう一度繰り返す、待避せよ。戦況は絶望的、出来るだけ損失を減らせ」

緊急事態を知らせるブザーが基地内に響き渡る。

雑多な足音がブザーの音をかき消す様に聞こえる。

「おはよう。素敵な目覚ましだね。止められないけど、ふぁ〜」

「TID、お前は起きるのが遅い。今すぐ戦場に向かえ」

「…戦場?」

「ああ、思いっきり暴れてこい、もう無条件降伏なんて狙わない。毟り取ってやる」

「やった〜」

「ほら、早くスロウスに乗れ」

 

ーーーーー

 

高いAMS、コジマ耐性を持つ熟練の女性リンクス『TID』の駆る AAU社ネクスト機『スロウス』はその名に似合わず軽量機である。

天賦の才を持ち、最悪の場合、機体が操縦者に間に合わずに崩壊するとさえ言われる才能を持つ彼女の才能を活用した武器構成をしており、中距離から確実に、堅実に、仕留める。

 

AU社から、その門であるAAU社に譲られた。

故にAU社は強大であり、他の企業に遅れを取っても大企業であり続けた。

 

ーーーーー

 

「まさか、私が…」

ヘッドが吹っ飛び、視線が暗転する。

「ぐぁっ。そ、そんな…。いや。やっぱり噂は本当なのね」

AMSから光が逆流してくる。

「会えてよかった」

相手は自分の前に立ち、ずっと自分を見つめている

「やっぱり喋らないのね。レイヴン」

じりじりと熱波が体を包み込んだ。

コジマ爆発だ。

「貴方はきっと」

きっとあの傭兵は変わらず、この爆風すら躱すだろう。

あの力。

 

 

それだけ有ればきっと世界を壊してくれる。

 

ーーーーー

 

トップのリンクスが死んだ事は直ぐに本部に知れ渡った。

AU社は直ちにAAU社との物理的距離をトップのリンクス『ホット・チリ』を中心とした部隊を送り込み、確保する事になった。

コロニーエチナ軍は対『TID』のみを想定していた為、簡単に崩壊する事となる。

 

ーーーーー

 

「ふーんふーん」

『『ホット・チリ』また単独行動をしたのね』

「マム、そんな風に言われても困るぜ。どうせ俺はNo.2さ」

『…貴方はNo.1よ』

「ケッ。どうせ、わかってんだろ。相手の装備は遠距離砲撃機に近接戦闘機。完全にTIDがターゲットだ。俺じゃない」

『でも敵を蹴散らしたのは』

「はいはい。相性がいいからな。ケッ」

『…分かった。指定座標に来て、回収する』

「どうせ…うん?微弱な電波が出てるぜ。熱反応も」

『粗方、核地雷だと思う。相当昔のものね』

「相当っても五年やそこらだろう?」

『ええ。コジマ技術が企業に普及する前だから3年以上前ね』

「エチナの奴ら、こんなものを出してきてまぁ」

『…電波の解析が完了…これは⁈』

「どうした?なんかあったのか?」

『地雷が海に浮かんでる…違う。多分海の化け物だわ』

「…機体の損傷率は?」

『10パーセント。継続して戦闘は可能ですが、装備が対海の怪物(リヴァイアサン)には向いていません』

「それがどうした。大きな熱反応を持った意思の無い怪物。興味が湧いてきた。狩らせろ」

『…了解。ですが、プランは』

「爆風で吹き飛ばして怯んだら、ぶっさすか、ぶった斬る」

『いつものですね』

「ああ、普段は46センチ砲弾を撃たせてるからな。まぁ、自分の実力を測ってやる。お前の実力もな」

 

ーーーーー

 

海に立っている彼女

その怒りは凄まじかった。

いとも簡単に自分を振り切り、嵐の中を撤退していった空母。

何度も入れ替わる敵艦隊。

まるで過去の自分を貶しているようで、虫酸が治らない。

だからこそ、その怒りは簡単に矛先を変えた。

急に目の前に現れた赤い機体に。

 

ーーーーー

 

「…なんだあれは…見た事ない個体だ」

『そ…個…から、強…な妨…電…発生…てい…。た…ちに…撤…せ…』

「おい、マム!ノイズが混じってる…チッ。電波妨害か」

『S…だ…思…れる。…なう…ず…ない』

「くそ、通信を遮断する。カメラの録画を開始」

大量の黒い豆粒が頭上を飛んでくる。

それから発射されたチリの様なものが当たる。巨大な機械にただの小さな榴弾は普通は効かない。

「ファンネルタイプか。苦手分野だな」

だが、まるで爆撃機の榴弾が当たったようなダメージが入る。

(プライマルアーマーがこんなに削れるとは…)

大量のファンネルが明らかに可笑しな爆弾をまるで急降下爆撃のように落としてくる。

「良かったぜ。AAUが如月の奴らから奪った武器が有能でよ」

起動し、青色に輝き始めた大型のブレードを構える。

「報酬はがっぽり貰うぜ」

 

ーーーーー

 

『ホット・チリ』にとってTIDの存在は憂鬱そのものだった。

対人が得意な彼にとって、まさに万能と言える彼女は自らを貶める枷だっただろう。

彼女のせいで何年もの間No.2であり、彼女が居なくてもただの囮であった彼の心は、すでに折れていたのだろう。

だからこそ、彼は海に浮かぶ化け物を相手に奮い立ったのだ。

彼は今、自暴自棄になっていた。

 

ーーーーー

 

「くそ、ファンネルのキリがない。本体を狙うべきか…」

『応答せよ。応答せよ。龍驤、どこにいる。目標の敵艦を発見した』

(な!ジャックされただと…違う、電波自体は微弱だ…。コジマ通信じゃない。こいつは何十年も前の無線だ。勝手に拾っちまうわけだ)

ぶつぶつ言いながらブレードを振り、ファンネルを叩き落としていく。

『⁈なんだ…なんなんだ⁉︎あれは』

「この海上でそれを使うとなると…」

(タイムトラベラーかなんかか?過去からやってきた主人公がこの世をぐちゃぐちゃに掻き回すって話…。アナトリアの傭兵か、それは)

彼はその声と微弱な電波に引き寄せられた。

その発信源は直ぐ目の前にあった。

『くそ、想定外が多すぎる。まぁいい、勘を信じる。あのロボットが艦載機を防いでいる間に…。あっ、今は無線に報告しても意味ないか』

(どうやら囮にさせる様だが…。あの子娘一人で何が…。ただの女か?いや、ここは海だ。しかも嵐の時に、なんで立っていられる?いや、そもそもなんで‘ここ’にいるんだ?普通ならリヴァイアサンに殺されていてもおかしくないはず)

「ああ、分かったよ。その役を買ってやろうじゃねえか」




オリジナル企業

如月グループ
火炎放射器やパイルバンカーの様な特殊な兵器を好む企業。
先代社長の如月月光が日本から脱出し、アフリカを中心に企業を展開した。
遺伝子操作にも長けており、これによりアフリカの砂漠地帯の国々で受け入れられた。自社製の兵器が特殊なのは独自のバイオテクノロジーを利用しているから、らしい。
生物兵器も手掛けていると噂されるが、貧者の核について否定している。


AAU社(アジア・オーストラリア・ユナイテッド社)
AU社のアジア支部。インドに本拠地がある。本部とは異なり、こちらは対ネクスト兵器に関して研究している。 AU社の本拠地から大陸への橋の役割を担っている。
しかし、 コロニーエチナ軍により東アジア一帯を奪われてしまい孤立している。
反撃のチャンスを手に入れる為にコロニーアラビアを狙った。
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