幼馴染みがゲームを始めたようなので、やってみた 作:ぼいぼい
ピンポーン
午後5時頃、突如インターホンが鳴った。いつも大体この時間に来る人物に心当たりがある。だけど、念のためにビデオカメラを確認する。すると............
『やっほ〜、いつも通りもってきたよ〜』
そこに映っていたのはいつも通りほわほわとした笑顔を浮かべている女子高生、本条楓だった。彼女は僕、佐藤剣也の幼馴染みだ。最近色々あって不登校となった僕に毎日プリントを持ってきて、さらには板書まで見せてくれる。そんな彼女には頭が上がらない。
「今日も来てくれたんだ、ありがとう。今開けに行くからちょっと待ってて」
『ん、わかった』
すぐに鍵を開けると、お邪魔しますと言ってから戸惑うことなくすぐに家の中へ入っていって、僕の部屋へと入っていく。最初は幼馴染みとはいえ同年代の女子を自分の部屋に入れるのは何か恥ずかしかったけど、自分が不登校になった事がそもそもの原因だし我慢していた。それも毎日続けて数ヶ月ともなると流石に慣れた。慣れって怖いね......
「今日は.............」
メイプルの話を聞きながら授業の板書を見せて貰って、写真を撮る。さらに、その間に課題を机へと置いていく楓。
「今日もありがとう。助かる!」
「気にしないで〜。自分がやりたくてやってるんだから。」
その後は、いつも通り楓の話を聞く。すると、珍しく楓の方からゲームの話をしてきた。
「そういえば、New World Onlineってゲーム知ってる?」
「ああ〜、確か最近発売されたVRMMOだっけ?」
「うん、それ。今、中々手に入らないらしいんだけど........」
楽しそうにNWO(New World Onlineの略称らしい)のことを話し始める楓。普段、ゲームの話を彼女の方からすることが殆ど無いのに、そういった話をするって事は.......
「楓がゲームの話するのって珍しいね。もしかして、始めたの?」
「流石、剣也。バレバレか〜」
「でも、楓が自分からそういう物をやろうって言ってるイメージ無いけど、どうしたの?」
「えっと、最初は友達にやってみようって言われたからだったんだけど、やってみたら楽しくなっちゃって...........」
「それでドップリはまったって感じなんだ。」
「うぅ..........恥ずかしながら、その通りなんだよね。あはは.......」
「確かに、そういうのは友達と一緒にやると楽しいよね。」
「えっと、その........やろうって言ってた友達は次のテストまでちゃんと勉強しないとやらせて貰えないないらしくて、今は一人なんだよね。」
「あ、そうなんだ。ごめん」
「気にしてないし、全然いいよ。でも、もし剣也が出来るなら一緒にやりたかったんだけど、どう?」
「うーん、ちょっと待っててね。」
予想外の答えが返ってきたからすぐに板書の写しを終えて、パソコンを使ってネットでNWOがどういったコンセプトのゲームなのかとそのソフトの入手方法を調べ始めた。その結果、自分が好きな剣と魔法を使うのほほんとした世界であること、明日明後日あたりに始めるならおそらく店舗に並んで買うのが一番いいということが分かった。
「なるほど。よし、僕も始めるよ、NWO」
「どう?一週間とちょっと後にイベントあるけど、間に合いそう?」
「う〜ん、そこは運もあるから何とも言えないけど、多分ある程度育つくらいまでは出来ると思う。無理そうだったら、イベントやらなきゃいいだけだしね。」
「それもそうだね。じゃあ、もしログインできる様になったら一緒にやろうね!一応ある程度は助言できる........と思う.........多分......」
徐々に自信が無くなっていっているのか、喋るにつれてどんどん勢いが無くなっていく楓。そんな彼女を見て、一言。
「うん、頼りにしているよ、楓。」
そう言っただけで、楓はちょっと元気よさを取り戻した。
「うん!」
ちょろ...じゃなくて単純なんだよね、楓って。でも、わかりやすいから助かるし、だからこそ彼女には心を許せているところがあるんだよね。
「うわ、もうこんな時間!ごめん、勉強もしないといけないしNWOもやりたいからもう帰るね!また明日〜!」
時間を見て驚いた楓はそのまま荷物をまとめて慌てて家に帰っていった。
「まぁ、楓らしいか。」
どこか抜けていると言うことは長年のつきあいで分かっている。だから、話しすぎて時間が思っていたより経っていて慌てる彼女の姿を思い返して彼女らしいと思いながら、近くの店舗の中で明日NWOを入荷するのはどこかを探す。
「よし、見つけた!」
運良くNWOを明日入荷するところが家の近くにあったため、思わずガッツポーズをしてしまう。そして、そんな自分の行動に気がついて思っていた以上に楓と一緒にゲーム、それも最近かなり人気らしいNWOをやれることにうれしさを感じていることを自覚した。
そして、夜のうちに買いに行く準備をした。と言っても、せいぜい財布の中にちゃんと買えるだけの現金があるかを確認するくらいだけれども。
明日は朝早くに起きてお店の前で待っていないと多分買えない。勿論、開店と同時に入れれば手に入るんだろうけど、直前に行って最初に入れる気がしない。だから、目覚ましをかけて朝早くに起きるつもりだ。
「明日、手に入るといいな。違うな、手に入れられるように頑張るぞ!」
次の日、僕は珍しく午前7時に起きて8時半には店の前にいた。そして、ネットでNWOの情報を見ながら時間を潰して開店時には最前列に居た。
そして、今はそのままソフトを買って家へと帰っているところだ。ここ数ヶ月、学校どころか家から出ることもろくにしていなかったせいで、太陽の光がとても眩しかった。ただ、流石に外に何時間もいたおかげで慣れた。そして、家へと帰った後は、日課をこなす。まず勉強を3時間する。その後に筋トレをしてから身体をほぐして素振りをする。そして、それらが全部終わってからようやくNWOを始められる。ただ、それらを全てこなしてから情報を集めてキャラメイクをどうしようか考える。
そうしていると
『やっほ〜』
「空けるからちょっと待ってて!」
『はーい。』
昨日よりも少しテンションが高いことが声から分かった楓は首をかしげる。まさか、もう一緒にNWOができるとは思っても居なかったため、思い当たることが無かったからだ。
「はい、これ今日の分の板書。後、課題は...........」
「今日もありがとう!」
「もう、気にしないでって言ってるでしょ〜」
「それでも、感謝の気持ちは伝えたいから何度でも言うよ。ありがとう!」
「何か今日テンション高いよ?何かあった?」
「ははは、流石にばれるか。」
自分でもテンションが高いことは分かっていたため、苦笑いしながら
「えっ、これって.........えっ?」
流石に予想外だったようで、楓が固まった。
ドッキリ大成功!だけど、このまま放置するのもな…とりあえず、起きてくれないと。話が進まないし、何よりすぐにでもやってみたいんだ。
「おーい、楓さ〜ん大丈夫?」
そう言いながらこういったときのお約束通り、彼女の目の前で手を振る。反応無し。うん、どうやら屍のようだ…….
って違う、この状況がずっと続くと流石に困る。楓の意識を戻すんだったら……..そうだ!
プニプニ
彼女の頬を手でつつく。反応無し。じゃあ、仕方ない。恥ずかしいからあまりやりたくないんだけど、彼女の頬を今度はつまんで伸ばす。その後、少し元に戻す。後はこれを繰り返すだけ。しばらく続けていると、彼女に意識が戻ったようで、喋りながら手を掴んできた。ただ、頬を僕がつまんでいるせいで何を言っているのかはよく分からないけど。
「
何を言っているのかは分からないとは行っても大体どうして欲しいのかは分かる。だから、しょうがないと思いながら手を離すと頭をポカポカと叩かれる。
「もうっ剣也君のばか!」
しばらくの間、おとなしく叩かれ続けていたけれど、落ち着いてきたのか叩くのをやめた。ようやく何が起こったのかを理解したようだ。
「えっと、今日から出来るって言うことだよね?」
「うん、ハードの方はもう持ってたし、キャラ作ったらいつでも出来るよ。」
「えっ?私が来るまでに時間あったでしょ?やってないの?てっきりもう始めているかと思ってたんだけど。」
「今日は午前中がこれ(ソフト)買うだけで結構つぶれちゃって、午後にいつもの日課と勉強終わらせたらすぐに楓が来たんだよ。」
「あ〜、なるほど。で、情報は集めたの?いつもやる前にある程度情報集めてるでしょ?」
言ったことは無いはずのことを知られていたっていう事実に顔から血の気が引いたのが分かった。いつ、誰に聞いたんだ?
「集めたよ。でも、何でそんなことを楓が知ってるんだ?」
「内緒。」
楓に直接問いただすも、内緒と言われてしまった。多分、この事を言った人から口止めされているんだろう。楓は口硬いから、言わせるのは骨が折れる。諦めるか。
「それはそうと、これで一緒に遊べるんだ!今日の夜出来そう?」
楓はそう言いながら満面の笑みを見せる。
楓、その笑顔は反則だよ。
そう思いながらも、何とか返事を返す。
「そ、そうだね。」
「じゃあ、今日の夜21時にNWOの中で集合しよ?ある程度はサポートできると思うよ〜。」
「わかった。」
その後、少し喋ってから楓は帰って行った。
「よし、じゃあNWO内で集合するまでには時間があるね。早めに夕ご飯食べてNWOにログインしよ。」
確かに、さっき楓に言ったことは全て本当のことだ。ただ、集合するまでにキャラを作って少し試運転しても問題ないよね?