【完結】なんか変なポケモンに懐かれた話   作:兼六園

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【悲報】ミュウカス、出番無し

【朗報】ファンアート貰った


なんか変なジムリーダーと戦った話

「──来てやったぞ、サカキ……!」

 

 トキワシティ、トキワジム。誰も居ないポケモンジムと一時期噂のネタになっていた場所に、レンゲは訪れていた。

 

 身体中に巻かれた包帯の上に着た普段着とコートは痛々しさを隠しきれず、集中的に治療を受けたフライゴンとルカリオ、無傷のテッカニンだけを手にしている。

 

 暗い室内が明るくなり、部屋の奥に一人の男が立っているのを視認し──敵意を剥き出しにしてボールを力強く握った。

 

「来ると思っていたぞ」

「おめーが呼んだんだろ」

 

 それもそうかと笑いフィールドの中央に歩み寄るサカキは、不思議なことにロケット団としてのマフィアめいたスーツを着込んでいなかった。

 

「……あの服はどうした」

「おかしなことを。今の私は挑戦者(チャレンジャー)を待ち構えるジムリーダーであって、ロケット団のリーダーではない」

「ああ、そうかい。じゃあ私が勝ったら自首でもしてもらおうか」

「出来るものならな」

 

 レンゲは眉をひそめ、サカキは笑う。

 そして、同時にボールを投げた。

 

「──フライゴン!」

「──ドサイドン!」

 

 

 

 

 

 ──フライゴンのドラゴンクローが、ドサイドンの巨体を浮かせて地面に叩き付ける。そして両足で体を固定すると、レンゲの声が響く。

 

「じしんッ!」

 

 ポケモンが発生させるエネルギーで地面を揺らし無差別に周囲を攻撃するのがじしんのメカニズムであり──つまり、それを直接相手に叩き込めばどうなるか。

 

 ────ズンッ!! という轟音。

 

 ドサイドンに直撃して尚有り余るエネルギーはフィールドを余震程度に揺らす。

 果たしてドサイドンを打ち倒したフライゴンは、あちこちに傷を作りながらも余裕を残してサカキの手持ちを減らした。

 

「……ふ、やるな。

 先日のダメージが残っているだろうに」

 

「ドラゴンタイプの頑丈さを舐めるなよ」

 

「よく知っているとも」

 

 ドサイドンをボールで回収し、二匹目を放つ。毒々しい紫色の巨躯がフィールドに現れ──吼えた。サカキが出したニドキングは、フライゴン目掛けて挨拶代わりにれいとうビームを撃つ。

 

「飛べ!」

 

 ミュウツーとの戦いで警戒していた氷タイプの技を見て、レンゲは素早く指示を出す。

 地面タイプ使いのジムリーダーであれば、ニドキングには対水タイプに電気技、対草タイプに炎技を覚えさせる筈だ。

 

 つまり、このニドキングはレンゲのフライゴン用に氷技を覚えさせている。

 

「──フライゴン、()()()()?」

 

 レンゲの手持ちはフライゴンとルカリオとテッカニン。地面タイプに対抗できる技はあるにはあるが、それをニドキングに使いたくない。

 三匹目が確実にアレであると知っているレンゲは、毒タイプのニドキングに決定打を与えられるフライゴンに賭けるしかなかった。

 

 故に、相討ち覚悟でニドキングを倒せるか? と、言葉少なにレンゲはフライゴンに聞いたのだ。力強く頷いたフライゴンは、ニドキングの真上を取らんとして大きく羽ばたく。

 

「ニドキング、れいとうビーム!」

「フライゴン! かえんほうしゃ!」

 

 水色の光線と赤色の火炎がぶつかり、中央で爆発する。霧のような水蒸気に包まれたフライゴンは、それを散らすふぶきに直撃し──意に介さずその両足で胴体を鷲掴む。

 

「なに──!?」

「氷技の対策をしてないわけないだろ!」

 

 ぺっ、とフライゴンが吐き捨てた()()()()()()()きのみのヘタを見てサカキは察する。

 

「ヤチェの実*1か……!」

 

「──じしんッ!!」

「れいとうパンチ!」

 

 フライゴンの足から発せられるエネルギーと、ニドキングの拳に発生した冷気が交差する。ドサイドンと同じように地震を引き起こせるだけの力が直撃し、その体に冷気が突き刺さった。

 

 ドラゴン・地面共に弱点である氷技に二度直撃したが、ヤチェの実の効果はまだ残っている。三度目は無理でも、まだギリギリ体力が残っているだろう──という考えは、倒れてきぜつしたフライゴンのせいで中断させられた。

 

「……フライゴン、よくやった」

 

 ボールに戻しながら、どこで計算を間違えたかを同時に倒れてサカキのボールに戻って行くニドキングを見ながら思案する。

 フライゴンの体力が万全の状態から半分ほどまで削れていたとして、タイプ不一致のれいとうパンチで倒されるほど柔な鍛え方はしていない。──が、あのれいとうパンチは、どこか纏う冷気に違和感があって────。

 

「──『ちからずく*2』か……?」

「ふっ、ご明察」

 

 ポケモンは時折、先天性か後天性かは不明だが、通常のものとは違う特性を持って生まれてくる場合がある。ニドキングは豊富な技への適正を持つため、炎や電気、氷といった技と『ちからずく』の相性が抜群と言えた。

 

「どちらにせよこっちはまだ二匹、お前はあと一匹だ。出せよ──ガブリアスをッ!」

「──まだ二匹、か。数的不利を覆してこそがポケモンバトルだとは思わんかね?」

 

 そう言いながら、サカキは懐からハイパーボールを取り出す。転がすように足元に落とすと、開かれて溢れた光から──怪物が現れた。

 フライゴンのものとは違う、刺すような敵意。ドラゴンタイプの中でもトップクラスに凶悪で狂暴なポケモン、ガブリアスが解き放たれる。

 

 反してレンゲが出したのはルカリオだった。

 ポケモンセンターでの治療と自身の操る波動で傷を癒したことで、前線に復帰できたのは幸いである。なにせ──()()()()()()に耐えられない可能性があるのだから。

 

「ガブリアス」「ルカリオ」

 

 双方が同時に取り出した、鮮やかに輝く宝石のようなものが埋め込まれた小道具。サカキは指輪に、レンゲはネックレスに加工したそれを掲げて、『視覚化されたポケモンとの絆』を自分と繋いで声高らかに言った。

 

『──メガシンカッ!!』

 

 直後、ガブリアスとルカリオは膨大なエネルギーによって更に姿を変える。

 より凶悪に、より洗練された姿に、力をぶつけるのに最適な姿を取る。

 

 獰猛な顔のガブリアス──メガガブリアスと、ルカリオ──メガルカリオが静かに、それでいて濃密に殺意を滾らせる。つぅ、とレンゲの鼻から一筋の赤い滴が垂れ、ぽたりと床に落ちた。

 

「──ドラゴンクロー!」

「──インファイトォオオ!!」

 

 それぞれの指示により、メガガブリアスの巨大な鎌に竜のエネルギーが纏われ、メガルカリオの両手足に闘気や鋼鉄、炎が宿る。

 超接近戦(インファイト)の指示を合図に複数の技を同時に発動できるよう鍛えられたメガルカリオは、両手にメタルクローとグロウパンチ、両足にブレイズキックを灯していた。

 

 自身の次の一撃の威力を上げつつ、足の炎で火傷を狙っている。

 しかしてメガガブリアスの大鎌に灯る竜のエネルギーが振り回される度に、まるで鎌鼬かのように暴風が吹き荒れ砂塵が舞う。

 

「っ、ぉおッ!?」

 

 咄嗟にコートの襟で口許を被い、腕で顔を隠して叩き付けるような砂粒を防ぐ。

 大鎌の側面を鋼鉄化した拳で叩いて逸らし、炎を纏う足で人間で言う脛の辺りと腹、胸に三段蹴りを入れる。それでも、膨大なエネルギーで強化された竜の肉体に、決定打となりうる効果抜群の技でもない攻撃は意味を成さない。

 

「ガブリアス、かえんほうしゃ!」

「まずっ──ルカリオ! 腕!」

 

 不意打ち気味にメガガブリアスから放たれた火炎を、腕を高速で振るう事で生み出した風圧を用いて払う。直撃は避けたが僅かに熱が体力を奪い──斬、と大鎌がメガルカリオを捉えた。

 

「ちぃ……っ」

 

 続けざまの一撃を、レンゲはメガルカリオをボールに戻すことで回避させる。即座にクイックボールからテッカニンを飛び出させるが、たかが虫に、竜の打倒は不可能に近い。

 ()()しつつ()()()()()させるも、メガシンカを果たしたガブリアスを止められるのは、ボールの中で満身創痍の体を休めているルカリオしか居ないだろう。

 

 心臓がバクバクと早鐘を打ち、集中力が極限まで高まる。自分では見えないが目が充血し、ブチ、と鼻の奥で治りかけの血管が切れる。

 

 タイミングを間違えてはならない。速度で撹乱するテッカニンに飛ばす指示を間違えてはならない。しかして徐々に、指示を出す側であるサカキがテッカニンの速さに慣れてくる。

 

「1……2──()()だ!」

 

「──テッカニン、とんぼがえり!」

 

 完璧なタイミングで振るわれる大鎌がテッカニンを捉える。だが、レンゲが咄嗟に放った指示通りに動いたテッカニンは、大鎌に弾き飛ばされながら逆再生するようにボールへと戻った。

 

「……ふっ、選択を間違えたな、レンゲ。これで貴様はルカリオを出すしかなく、それでいて私は出たと同時に攻撃を叩き込める」

「────」

「いつまでもそのままでは居られんぞ」

 

 ジム戦のルール上、交代するポケモンを出すタイミングは自由である。だが、5分以内に次を出さなければ無条件で敗北となる。

 

 ギリ、とルカリオの入ったボールを手元で握り、投げる直前まで緊張感を高める。

 まるで西部劇のガンマンだな──等と、そんな思考がレンゲの脳裏を過った。

 

 まるで祈るようにボールを額に持って行き、そして、僅かな間を置いて投球フォームを取る。サカキの手が伸ばされ、メガガブリアスに指示を飛ばし、出現に合わせてドラゴンクローを叩き込む算段でその大鎌にエネルギーが迸る。

 

「──ルカリオォオォオオオ!!」

 

 文字通りに血を吐きながらレンゲは叫ぶ。ボールが投げられ、中から光が溢れ、勢いよく飛び出したルカリオに鎌首をもたげる竜の力が衝突────することはなかった。

 

「──な、に……!?」

「……ごぼっ、うぇ……」

 

 サカキとレンゲは、ドラゴンクローが直撃したルカリオではなく、深々と腹部に()()()()()()ルカリオの拳がめり込み、メガシンカが解除され地面に倒れ伏すガブリアスを見た。

 傷が開いたのか、口の中が切れたのか、血の塊をぺっと吐いてから改めて言葉を紡ぐ。

 

「……れいとうパンチ」

「馬鹿な、あのタイミングで、ルカリオがメガガブリアスより先に攻撃を当てるなど──」

「──あまつさえ、一撃で倒すなんて。か?」

 

 不敵に、ニヤリと口角を吊り上げる。

 残心しつつ戻ってきたルカリオに傷薬を吹き掛けながら、レンゲは淡々と語った。

 

「さっき私がテッカニンに飛ばした指示は『とんぼがえり』だけどな、テッカニンが使った技はとんぼがえりじゃない」

 

「……なるほどな、指示とは違う技を出すように先んじて伝えておいたのか。あのルカリオの速さと攻撃の重さからして、バトンタッチさせたのだろう。違うか?」

 

 正解と、静かにそう呟く。レンゲは推理通り、テッカニンにバトンタッチをさせたのだ。

 上昇した身体能力をそのまま次のポケモンに上乗せさせる技は、特性と技で素早さや攻撃力を高められるテッカニンと相性が良い。

 

「──くく、素晴らしい。負けは負けだ、バッジを進呈し、組織も解体しよう」

「……潔いじゃねえか」

「理由はどうあれ、組織のトップが子供に負けたとあってはメンツが立たんのでな」

 

 パチパチと乾いた拍手を送られ、しかめっ面を隠そうともしないレンゲは、ジムバッジを手に近付いてくるサカキにやたらと高そうなハンカチで顔を拭われる。

 

「んぐ、ぶぇっ」

「勝った方が無様な面をするものではない。誇れ、幻のポケモンに選ばれたトレーナーよ」

 

 敵の癖に、妙にサカキからは父性を感じる。フィールドから去ろうとするサカキの後ろ姿に向けて、レンゲは気になったことを聞いた。

 

「サカキ、お前、子供いるのか?」

「──なぜだ?」

「居そうだな、って思っただけだ」

「……さて、どうだろうな」

 

 どこか寂しげな言葉を聞いて、そのまま、どこか小さく見える男の背中を見送り──レンゲは背中から倒れた。元々怪我が治りきっていないのに病院を抜け出してジム戦を申し込んだのだ。

 

 こうなるのは必然であり、入院期間がさらに1ヶ月延びるのも当たり前の結果だった。

 

 

 

 

 

「──どうして病院を抜け出した挙げ句に怪我が悪化してるんですか?」

「リングマに襲われまして……」

「ベッドに縛り付けんぞコラ」

 

 医者のセリフがそれかよ……とぼやきながら、レンゲは静かにベッドに寝転がっている。

 腹の上で丸くなり鼻提灯を膨らませるミュウを見やる。医者と看護師にはミュウの存在を明かしているため、誰も騒ごうとはしない。

 

「──強くなんねぇとなぁ。

 今よりもっと、もっと……ミュウ(こいつ)を誰にも渡さないくらい、もっと強く……」

 

『……まず家さぁ……屋上あんだけどぉ……焼いてかない……?』

 

「どんな夢見てんだこいつ」

 

 よく分からない寝言を呟くミュウを起こさないように枕の位置を調節して、痛み止めを飲んでから、レンゲは眠りにつく。

 ──窓の外で、虹色が空の彼方へと飛んで行く様子には気付いていなかった。

*1
一度だけ効果抜群の氷技の威力を半減させられる

*2
技の追加効果が発生しない代わりに威力が上がる




・サカキ様
武人肌のボス。レンゲを殺そうとしたのは後々自分にとって面倒になりそうだったからというのもあるが、レンゲ自身がこれからも苦難に巻き込まれるのをなんとなく悟っていたから。
ふん、面白い女だ……(天丼)
尚DNAはちゃっかり確保した模様。

手持ちは
・ドサイドン(Lv.79)
・ニドキング(Lv.82)
・ガブリアス(Lv.87)


淫夢を見せてあげるわね……王道を往く4章よ
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