「マサラタウンを出てほんの数ヶ月で病院送りにされるとはヤンチャだのぉ」
「喧嘩売ってるなら買うぞ」
カラカラと笑うジジイを睨むが、足元にまとわりつくキャタピーやビードル、コンパンをあしらうのに忙しくて直接文句を言えない。
サカキとの戦いから暫く経ち、ようやく退院できたのは僥倖であった。まさか本当に病院のベッドに縛り付けられるとは思わなかったが。
「フライゴンとルカリオ、調子はどうだ」
「ポケモンは野生の時点で回復力は人間のそれを大きく上回る。しかし、ルカリオはともかくフライゴンはちと不味いのぉ」
「……だろうな」
ミュウツーにビルの上階から叩き落とされ、サカキとのジム戦で酷使した体は相当にボロボロだったらしい。渡されたレントゲン写真を見て──顔をしかめる。
「翼の骨格と体の骨のあちこちが歪んでおる。数年、ゆっくり療養させるべきじゃ。旅を続けるなら置いていった方がいい」
「──だとよ」
気配がして振り返ると、視線の先には申し訳なさそうにするフライゴンがぎこちない動きで近づいてきていた。
確かに骨が歪んでいるのだろう、ジジイ──オーキド博士の研究室の隣にあるポケモン保護区域を歩くフライゴンは動きが緩慢である。
「おー、おー。そんな自分が悪いみたいな顔すんなよ。強くなかった私が悪いんだ」
首を曲げて顔を擦り寄せるフライゴンの頬を撫でる。竜特有の固い皮膚は、地面タイプと複合だからかどこかザラザラしていた。
──そう。これは全部、私が弱いのが悪い。指示はもっと手早く的確に、常に戦場の全体を見渡し、もっと──容赦なく。
悪の組織相手にルールで固められた公式戦のような戦いをする必要なんてない。
ミュウを渡さないためにも──親父の才能を継いでることにあぐらを掻いてはならないのだ。一ヶ所に留まることも良くはない。なら、旅に出て力を付けることは悪くない筈だろう。
「お前とルカリオ、テッカニンはここに残す。ごめんな、体を休めててほしいんだよ」
わかっていると言わんばかりにベロンと舌で顔面を舐められる。麻痺になったらどうする……と睨むが、残念ながら私がにらみつけてもフライゴンの防御は下がらない。
「……さて、次はどの地方に行くか。そもそも誰連れてくかなんだよなぁ」
ミュウは当然として、ギルガルドも続投。あと3匹は必要として……まあ
まずは虫ポケモン専用の、森を模した区域に足を運んで奥に向かう。すると、ヒュンヒュンと風を斬る音が聞こえてきた。
赤い鋼の肉体に、顔にも見える両手のハサミ。死んだ親父の遺産の一匹ことハッサムが、木々を揺らして落ちてきた木の葉を高速で切り裂いていた。相も変わらず、まるで侍である。
「──よっ、ハッサム」
ちらりとこちらを一瞥して、すぐに視線を木に戻す。それは暗に、「他を当たれ」と言っているようだった。親父以外に使われる気はねぇってか。そういうわけにもいかねーんだよ。
進化する前から使われていたID登録されているモンスターボールを取り出して向けると、今度は鋭い眼光を向けてきた。
「嫌か? 私に使われるのはそんなに嫌か。親父以外は認めねえ、って言いたいんだろ?
よほど強いエスパータイプがテレパシーを使うか伝説のポケモンくらいに『格』が違うポケモンが語りかけてくるでもない限り、人はポケモンの言葉を聞くことは出来ない。
でも、私は少しだけ違う。向こうが心を開いているなら、多少だが普通のポケモンだろうと言葉を理解することが出来るのだ。
……まあ、大抵は研究所のポケモンが相手なので『お腹すいたー』とか『遊んで~』とかそんなんばっかりなのだが。
キャタピーだのビードルだの、ニドランだのポッポだのと分かりやすい言葉を発するのに、ミュウのあの言語は……なんなんだ。
とどのつまり、ハッサムは私を自分を扱うに足るトレーナーだとは思っていない。信用していないから、声が聞こえてこない。
「なあハッサムよぉ、お前、今よりもっと強くなりたいって思わないか?」
懐からあるものを取り出して、ハッサムに見せる。マーブルカラーの珠は不可思議な力を蓄えていて、それはルカリオに持たせているものと同じ物だった。その名は『ハッサムナイト』
特定のポケモンをメガシンカさせるのに必要な──ハッサムを強くできる手段。
「こいつでお前が強くなる為の条件は一つだ。ハッサム、お前が私を信じれば良い。
まさかとは思うが……出来ないって言うわけじゃないよなぁ……?」
口角を歪めて、ハッサムを煽る。ハッサムは逡巡するようにまぶた……まぶたなのか? 多分まぶたなのだろう目の近くの甲殻を閉じた。
それから諦めたような、呆れたような顔をしてからモンスターボールを片方のハサミでカチリと押す。レーザーが放たれると、ハッサムをボールに収納する。中身を覗くと半透明の表面からじろりとこちらを見るハッサムが居た。
「よし。あとは……リザードンと
──突如としてガタガタとハッサムがボールの中で抗議する。そんなに嫌なのか……? まあ、既にメンバーは決定してるからハッサムにどう文句を言われようと変えるつもりはないけど。
「諦めろ。お前が嫌なのはナルだろうが、あいつあんなんでも優秀なんだよ」
森エリアから出て人工池の方に歩くついでに、指笛を鳴らして合図を飛ばす。
開放的な空間の上空から羽ばたいて降りてきたのは、鮮やかなオレンジの体に尻尾の炎。真横に降り立ち、さながら竜のような体躯をした──リザードン。そんなリザードンは、私の顔を見るなりさも当然かのように、
「グワーッ!!」
当たり前だが、歯は立てられていない。立てられていたら潰れたマトマのみのように頭が弾けているので相当器用な事をされている。
──そう。このリザードンは親父の遺産の二匹目なのだが、ハッサムと違い私にかなり懐いている。リザードナイトを渡せばメガリザードンになれるのも確認済みだった。
「は、な、せっ!」
顎を手で押さえて抜け出すと、顔どころか髪までリザードンのよだれでベタベタだった。ため息をついてから、私はリザードンがヒトカゲの頃から使われていたモンスターボールを出す。
「ったく……来るか?」
ぶんぶんと、犬のように尻尾を振って、喜び勇むままずつきするようにボールを押す。
もし今のでボールが壊れてたら私はどう反応すりゃ良いんだ。ボールに収まったリザードンをハッサム入りのボールを固定しているホルダーに仕舞い、改めて池に向かう。
ザクザクと草を踏みしめていると、不意に背後から声が聞こえて頭にぽすんと何かが乗る。薄い桃色の体は、見覚えのあるそれだった。
『ちょっと熱いんじゃないこんなとこで~? 俺も仲間に入れてくれよー』
「好きにしろよ」
『いいっすかぁ? ありがとナス!』
ジジイの研究所とポケモンを自由にさせてる区域という隠れ場所が出来てからは、ミュウも自由に動き回るようになっていた。
そもそも自衛自体は普通に出来るのだから、あまり過保護になる必要もないのだろうが、こいつ自体がまあまあな頻度で相手を煽るのだから必然的に私が保護者にならざるを得なかったのだ。
「ナル、ナールー。どこ行ったー?」
そんなことを考えながら池に到着するが、件のナル──ヒンバスから進化させたミロカロスの姿がなかった。仕方ないな……。
コートのポケットからポロックケースを取り出して、『うつくしさ』を上げる為の渋い味のきのみで作ったポロックを一つ手に取り──勢いよく池の中央に投げる。
「ナル!」
──ざばぁ、と水を弾かせて、池の中央から真上にポロック目掛けてポケモンが飛び出す。口にそれを咥えたポケモンことミロカロスの『ナル』は、池を泳いで端のこちら側にやってくる。
「ふっ、元気そうだな」
『どうもこんちわーっす』
気さくに挨拶するミュウが私の頭から離れ──直後、ナルはポロックを飲み込んで直ぐ様みずでっぽうを撃つ。水は私の顔に直撃し、横に浮いてたミュウが巻き添えを食らった。
『ぶぇふおぇえっ!?』
まるでヘドロ爆弾でも食らったような悲鳴を出して地面に揉んどり打つミュウを余所に、私は髪の水気を絞る。……ああ、リザードンのよだれが汚かったのか。
「……綺麗好きの
ヒンバスを釣り上げた時からずっと使っているルアーボールをナルに見せるが、ふん、と鼻息を荒く吹き出させてそっぽを向く。
眉をひそめる私を見てから、視線を腰のハッサムとリザードンに向ける。
「──お前まさか、最初に誘ったのが自分じゃなかったからって拗ねてんのか」
『はぁ~、あほく──ンアーッ!?』
今度はハイドロポンプがミュウに直撃し、遥か後方に吹っ飛んでいった。どうせ放っておけば戻ってくるしと、私はナルに向き直る。
「最後にナルを選んだのはな、お前が頼りになるのを知ってるからだよ。ヒンバスの頃からの付き合いだろ? ほら、行こうぜ」
ぱしゃぱしゃと尾の先で水面を叩いて、満更でもなさそうに、ナルはルアーボールのボタンを鼻先で押して自ら入って行く。
……言っちゃなんだが、こいつはこいつでチョロいんだよな。
腰のボールホルダーに縮めたルアーボールを収納し、すっ飛んでいったミュウを回収してからジジイの元に戻る。
びしょびしょのミュウを尻尾を掴んで振り回す事で遠心力で水気を飛ばしながら歩いて数分、レポート片手にパソコンとにらみ合うジジイを見つけて近付いた。
「博士、そろそろ荷物纏めに家帰るけど」
「ん? おお、そうかそうか。ジョウト地方には明日の船で向かうんだったか」
「そっすね。デカい船で朝から半日、昼にはジョウトに到着するんじゃないすか」
「──ああそうじゃった、ここ数ヵ月で解散したらしいロケット団をジョウト地方で見かけたという噂があった。気を付けるのだぞ」
……マジで言ってんのか。
サカキは確かに解体するって言ったし、悪人だが嘘をつくほどみみっちい奴ではない。つまり──残党か誰かが居るのか?
「……めんどくせぇ」
深くため息をついて、研究所のポケモン保護区を出て帰路を歩く。自宅が見えてきた──その時、不意に背後から視線を感じて振り返る。
「──んん?」
が、どこにも、誰もいない。気のせいかと踵を返そうとし、視界の端で空間がぐにゃりと歪んでいることに気付いた。
「……なんだ……?」
それとなく左手首のバングルに嵌めたギルガルドを入れたボールに意識を向けながら、空中に浮かぶ歪みに注視する。
歪んだ空間の向こうに目をやると歪みの後ろにある普段の光景とは別に、違う世界が広がっていた。……なんだったか、これ知ってるぞ。確か……なんか……
カチリと手首のボールを起動して、左手にギルガルドの盾を、右手に剣の方を握って警戒心を高め──バツンと電源を落としたように空間の歪みが突然消失した。
……私に見られたから逃げたのだろう。もしかして、今までも何かが私を見ていた?
「気持ち悪りぃ、ストーカーかよ」
『集団ストーカーに襲われてまーす!』
「集団ではないだろ」
騒ぎ立てるようにしながら頭の上を飛び回るミュウを連れて、家に帰る。
夜になり、明日の準備をしてから寝ようとして2階に上がろうとしたその時、ふとチャイムの音が来客を知らせた。
「……誰だよこんな時間に……」
ガチャリとドアノブを捻り扉を開けた先には──見覚えのあるおっさんが立っていた。
「──よっ!」
「もしもし警察ですか」
「あーっ!! あー!!」
「……警察に情報売った、ねえ」
「ったく、あのあと大変だったんだぜ?」
『なんだこのおっさん!?』
翌日、カントーから出ているジョウト行きの船に乗り、甲板で寛ぐ私だったが、あのときミュウを狙っていたロケット団のおっさん──アクツがどういうわけだか私の旅に同行していた。
コートのボタンを真ん中だけ開けて出来た隙間から、ミュウが顔を覗かせて驚愕している。端から見たら服にアップリケでも付いてるようにしか見えないだろう。やや立体的だが。
「サカキさまがロケット団を解体してどっかに消えたって聞いてな、そんですぐに元仲間が隠れ蓑にする予定だった漢方の店やらハーブ店やらを全部教えたんだよ」
『お前味方じゃないのかよ!』
「……あー、仲間なんじゃ?」
「いや別に」
あっけらかんとした顔でアクツはそう言うと、手元の縮小したままのハイパーボールとダークボールを玩びながら続けた。
「俺ぁアローラ地方出身でね、島特有の……なんつーの? 同調圧力みてーなもんが嫌いでな。はみ出しものとしてこんなとこまで来てみたが……サカキさまの言う『悪の組織』って響きが甘美だっただけさ。仲間意識なんてねーよ」
「そういうもんか?」
「そういうものさ」
初めて遭遇したときのあの妙なかませっぽい情けない感じは何処へやら。
恐らくこちらの、ドライというかクレバーなアクツが本性なのだろう。
特に会話が続きそうにないため、適当に切り上げて違う話題を口にする。
「そのボール、何が入ってるんだ?」
『シュバルゴ!』
「あん? ああ、サザンドラとバンギラス」
「なんであのとき使わなかったんだよ」
……しかも外してんじゃねえか。
「あの時の俺は『ロケット団のしたっぱ』だったからな。強いポケモンなんて使ってたら目をつけられるだろ? それに、ミュウの捕獲にデカい図体のポケモンは向かないと思ってな」
『お前ら二人なんかに負けるわけないだろお前おぉん!』
「……俺はお前の言葉わかんねえよ」
私以外にはただの鳴き声にしか聞こえないらしいが、アクツが煽られている事については言わぬが花という奴だろう。
「しかし、見事に悪タイプばかりだな」
「そうなんだよなぁ、バンギラスなら例え格闘タイプが相手でも耐えられるんだが──アローラ地方に凶悪なポケモンが居てなぁ」
そんな恐ろしい格闘タイプのポケモンが居るのか。いや、確か、風の噂では格闘と複合のドラゴンポケモンが居るとか聞いたな。
「それはどんなポゲェ」
「うおっ、レンゲ!?」
ゴン、と突如として頭に何かがぶつかった。舌を噛みそうになりながら、落ちてきたらしい物体を拾い上げる。
「──なんだこれ、ピカチュウ……もどき? いや待て、まさかこいつポケモンか?」
「おま、それ……いや、なんでこんなところにこいつが居るんだよ……!?」
「……アクツ?」
良くできた人形……のようなガワを被ったポケモンをつまみ上げると、アクツが分かりやすいくらいにガタガタと震えていた。
「そいつだ、アローラ地方の凶悪ポケモン……フェアリータイプのミミッキュだ!」
「へぇ」
……フェアリータイプってなんだ。
ミミッキュとか言うらしいポケモンを膝に乗せ、恐らく本体がある方なのだろう腹の辺りを指で撫でる。このおどろおどろしい雰囲気からして、ゴーストタイプとの複合なのか。
悪タイプ好きのアクツがゴーストと複合のミミッキュを恐れるということは、フェアリーが悪タイプに強く、悪タイプの攻撃を弱めるため、ミミッキュの弱点を突けないのだろう。
「しかし、意外と……可愛いじゃないか。なんでピカチュウの振りなんかしてるんだ」
「……さあなぁ、一説ではピカチュウの人気に嫉妬しているとか、恐ろしい見た目を隠しているとか、色々だな。
あとミミッキュの中身を覗こうとするなよ、最悪死ぬらしい」
スカートを捲るように指で布地を捲ろうとしたがやめた。それはそれとして、ミミッキュはコートのボタンの間から顔を覗かせているミュウをじっと見つめている。顔どっちだ。
「おー、おー? こいつが気になるのか? ほらミュウ、挨拶してやれ」
『お前のような三流タレントの世話はもう御免だ!』
なんでそんな喧嘩腰なんだよ。
コートから飛び出してミミッキュの周りを飛び、喧嘩腰のままシャドーボクシングを始めるミュウは──べちん! と、ミミッキュのガワの中から現れた影の爪に引っ掻かれて床を転がる。
『ぶぇふおぇええっ!?』
私は勿論だが、横で立っているアクツもまた物凄い顔をしていた。
『あーいったい痛い痛い!』
「……これどうすりゃいいんだ」
「知るかよ……そもそもどうやって海のど真ん中にある船に落ちてきたんだこいつ」
「鳥ポケモンについばまれてた、とかか」
「アローラ地方って南の島国だぞ?」
「……ますます分からなくなってきたな」
どうやってこんなところに来たのかはわからないが、それ以上に、このミミッキュをどうするべきなのか。保護するにしても、一旦ボールを使って捕獲するべきだろうが……。
「おい、アクツ」
「ぜっっってえイヤだね!」
「そんなに嫌いなのかよ」
「……ある場所にヌシポケモン……一際デカい個体のボスのミミッキュが居てな、ガキの頃、そいつに俺のポケモン全員が蹂躙された」
「ああ……なるほど」
『草』
そりゃあ、トラウマにもなるか。あとミュウは可哀想だから今回ばかりは煽ってやるな。
「じゃあ仕方ねえ。警察に保護するまでは私の手持ちになっててもらうが、いいか?」
懐から空のモンスターボールを取り出すと、ミミッキュは逡巡してからボールではなく私の肩に飛び乗る。ミュウが憤慨した様子で飛び掛かるが、またもやシャドークローでしばかれた。
『ンアーッ!!』
「懲りねえなお前も……。で、ミミッキュは……なんだ、もしかして私と一緒が良いのか? 別にそれでも構わないけどさ」
「オイオイオイ……勘弁してくれよ」
「なんでか私の旅に同行するらしいお前への抑止力にもなるからな」
「く、くそっ……それが人間のやることかよ……! ひぃっ」
しゃーっと威嚇するように、ミミッキュはガワの腹辺りの目を光らせて布の中から影を爪状に尖らせている。完全に私の味方をしていた。
本当に苦手なようでびくびくしているアクツが若干可哀想に見えた来たため、ミミッキュにボールのボタンを押し付けて捕獲する。
ミミッキュがボールに登録されたことを確認してから、改めて外に出す。
「そんじゃ、これからよろしくな。──そうだな、『パンドラ』ってのはどうだ?」
「……パンドラ? なんだそれ」
「神々が災いを閉じ込めた箱の名前だ。中身を覗いたら酷い目に遭うミミッキュにはなんともまあピッタリだと思わないか」
「そうかぁ?」
アクツにとってはミミッキュは悪魔かなにかに見えるのか。手に持ったミミッキュ──パンドラを眼前にもって行くと、面白いくらいに素早く甲板から船の中に走っていった。
「……しっかし、ロケット団の噂ねぇ」
サカキを倒して解散させてそれで終わりと思ったが、どうやらこれで終わりどころか、これから本格的に
「ストーカー野郎も見つけないといけないし、これから忙しくなるなぁ」
『やっちゃいますか? やっちゃいましょうよ! 馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前』
「はいはい」
パンドラを肩に乗せ、ミュウをコートの中にねじ込み顔だけを首元から出させる。戻ろうかと思いながら甲板の椅子から立ち上がった私の前に、アクツが走って戻ってきた。
「今度はなんだよ」
「おいレンゲ! 今から船の中にある特設フィールドでバトルすると、勝った奴に限定で高級スイーツ進呈だってよ!」
「ほぉ……」
「タッグバトル枠で出ようぜ?」
いい歳のおっさんがなぁに顔輝かせてんだか。行くぞっ! と捲し立てるアクツの背中を追って歩く私は、パンドラとミュウに言う。
「──お前たちと出会ったのって、案外、偶然でもなんでもないのかもしれないな」
ピカチュウのガワを動かして首をかしげるパンドラと、コートの中で尻尾を振るミュウ。愛らしい動きだが、私の『ポケモンが好き』という感情は、時折『生き物を愛でる』というより『
しかし、それでも、好きなことに変わりはないのだから──まあこの辺は置いておく。そんな奇妙な私の旅を分かりやすく、明確に、簡潔に言葉にするとしたら──。
『なんか変なポケモンに懐かれた話』
そんなお話と言う他ないのだろう。
「……そんじゃ、頼むぜ?」
船の中に戻りながら、私は小さく笑って、腰のホルダーからモンスターボールを取り出した。
くぅ疲。
気が向いたらVSデオキシスとかVSギラティナなんかを書こうかなーと思ってます。
ではまたどこかで。お気に入り登録して高評価入れておくと得かもしれない。
アクツ
・悪タイプ好きのアローラ出身。ロケット団に所属していたのは暇潰し半分と『悪』の組織という響きを甘美に感じたから。
・アローラ特有の閉鎖空間の圧力からあまり目立つことは好きではないため、サザンドラとバンギラスはボックスに隠していた。
・ミミッキュだけは好きになれない。
ハッサム(♀/Lv85)
・レンゲの父の手持ちで、自分に何かあったらレンゲの手持ちとして力を貸してやれと言われているが、現時点ではあまり乗り気ではない。
リザードン(♂/Lv90)
・父の元手持ちその2。今よりも幼い頃のレンゲを知っていて尚且つかなり強めに懐いており、甘噛みしたがるきらいがある。
・ある時レンゲと本気の喧嘩に発展した際、反射的に『かみなりパンチ』でレンゲの心臓を10秒程停止させる事件があった。(ぼんやりと原作知識が記憶にあるのはこの時のショックが原因)
ナル(♀/Lv80)
・レンゲが釣り上げたヒンバスが進化したミロカロス。名前の由来はナルシストから。由来の通りに自分こそがこの世で最も美しい存在だと信じて疑わず、汚れた水を泳ぐのが一番嫌い。
パンドラ(♀/Lv28)
・アローラ地方から鳥ポケモンについばまれて運ばれ続けて幾星霜、ジョウト地方に向かう船の甲板で寛いでいたレンゲの頭に直撃することで出会ったミミッキュ。ミュウをシャドークローでしばくのがすき。
ロータス(故人)
・レンゲの父親にしてとある地方のチャンピオン。あまり認知されていない小さな街の王者だが、何人かの他地方チャンピオンはロータスの名前だけは知っている。
・数年前のある日、チャンピオンとしての仕事を終わらせ暫く振りに帰省する途中、帰り道の山中で車がスリップし滑落。車は爆発炎上し、数ヵ月振りの帰省は終ぞ叶わなかった。
・事故が起きた原因は山のポケモンが車道に飛び出した際、ぶつからないよう咄嗟にハンドルを勢いよく切ってしまったこと。
……ロータスはチャンピオンなのに残されたポケモンがハッサムとリザードンの二匹しか居ないのは、つまりはそういうことである。