ロドス劇場   作:ゆっくり妹紅

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えー、遅くなってすみません……実はちょっと最近体調を崩してしまいまともに動けない状況でして……皆様も体調には気をつけるようにしてくださいね!

そして今回も執筆しやすい方から投稿させて頂きました…誠に申し訳ございません。


自称医者Aさん「正直これは予想外だった」

 

「*溺愛する娘に「パパ臭い」と言われた父親が膝から崩れ落ちるのと同等のダメージのスラング*」

 

「────」

 

「ら、ラッピー!」

 

 ロドスの医務室にて、いつもより刺々しい雰囲気のヤマトの口から出た心を抉るスラングを受けたラップランドが白目を向いて倒れるように気絶。そしてそれを近くにいたリーシーが地面にキスする前にキャッチし、死にかけの戦友に声をかける兵士のような形相で声を張り上げる。

 

 そして、それを見たフロストリーフは一言。

 

「なんだこれ」

 

 至極真っ当な感想を零しながら、頭痛がし始めた箇所を抑えるように手を当てたのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

「「ヤマトが倒れた!?」」

 

「うん、原因はある程度予想はできるんだけど……いmうわっ!?」

 

「ヤマトはどこに居んのかさっさと教えなさいよ!教えないなら股間にバスターウルフ打つわよ!?」

 

「ひっ!?」

 

「それは流石にやめてやれ……というか、頭冷やせ」

 

「ぴゃああぁぁぁっ!!」

 

 いまから10数分前、食堂にて朝食を食べ終え談笑していたラップランドとリーシーの元へ慌てた様子のドクターが駆けつけ、ヤマトが倒れたことを告げた。

 そして、その情報に頭に血が上ったのかリーシーがドクターの肩を掴んでぐわんぐわん揺らした挙句、男からしたら恐ろしすぎる脅迫を迫り、それを傍から見ていたフロストリーフが呆れながらリーシーの首元に自身のアーツを弱めて流し、リーシーを無力化させ、ドクターに話の続きを促す。

 

「えっとね、それで医務室に運ばれてさっき起きたんだけど……」

 

「?起きたなら別に良かったじゃないか」

 

「いや、その……」

 

 どこか歯切れの悪いドクターの様子に3人が不思議思いながら、続きを促すようにドクターじっと見つめる。

 暫くその視線に晒されていた彼はかなり渋っていたものの、観念したのか、はたまた心を決めたのか口を開いた。

 

「実はね、今のヤマトは()()()()()()じゃなくなってるんだ」

 

「は?」

 

「どういうことだい?普段のヤマトじゃないって」

 

「……まあ、行けば分かるかな」

 

 ドクターが告げてきた内容に3人はあまり理解出来ず首を傾げるも、とりあえず行けば分かるのだろう、という軽い気持ちで3人はドクターの後を着いていくのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「ラッピー……あなたの分までヤマトのことはちゃんと愛してあげるから安らかに眠りなさい……」

 

 そして、ドクターが止める前にヤマトがいる部屋にラップランドが突撃したところで、話は冒頭に戻る。

 ベッドの上でこちらをまるで敵意むき出しの猫のように威嚇してくるヤマトを見たフロストリーフは、気絶してるラップランドで妙な寸劇をしているリーシーを視界に入れないようにしつつ、目線でドクターに説明しろと訴えると、ドクターは渋々といった様子で説明を始めた。

 

「今のヤマトは激しい興奮状態になってる挙句、目に入る人全員が敵のように見えてる状態らしくてね……結果として常に心が休まらず攻撃的な状態になってるっていうのが今のところの診断結果かな」

 

「つまりどういうことだってばよ」

 

「ようは、グレた状態……もっと簡単に例えていうと全然人に懐かない気難しい猫ってことだね」

 

「なるほど、理解した」

 

「すごい端的すぎないか……」

 

 ドクターの説明を聞いて、イマイチ理解出来ずに聞き返したリーシーのために一言で完結した症状を聞かされたフロストリーフは何か違うような気がしつつも頭を抑えてため息を吐く。

 

 だが、この頭痛の1番の原因はグレたヤマト……グレヤマトだ。こんな状態の彼をここから放牧しようものなら、大惨事になることは間違いないだろう。具体的に言うと一番まずいのはイカズチが発狂してロドスが沈むこと。

 

「それで、原因はわかってるのか?」

 

「推測だけど、多分昨日アが打ったアドレナリンのせいかなって……」

 

「よし、そいつ殺そう」

 

「復活したのは何よりだが、まずなんでも殺そうとするな」

 

 いつの間に復活したのか、むくっと起き上がったラップランドが早速原因を作ったアを殺る気満々で抹殺しに行こうとするのをフロストリーフは慣れた手つきで羽交い締めして何とか抑えて、彼女と一緒に部屋から退出しようとした時だった。

 

モフっ

 

「……?」

 

 フロストリーフは自身の腰辺りにモフモフしたものが、ピトッとくっつけられたような感覚を覚え、「HA☆NA☆SE」とバタバタ暴れるラップランドを抑えつつ振り返ると。

 

 

「……」

 

 いつの間にかベッドから離れ近くに立っていたヤマトが、フロストリーフの腰に尻尾を器用に巻きつけていた。纏う雰囲気もツンツンとしたようなモノはあるものの、「置いていくの?」と言わんばかりに何処か寂しそうな空気も混ざっている。

 

 瞬間、フロストリーフは察したくはなかったが何となく察してしまった。しかし、信じたくないため、一筋の希望を掛けてドクターに確認を取るために声をかける。

 

「……なあ、ドクター。これはどういうことか分かるか」

 

「……多分、フロストリーフには心を開いてるんじゃない?」

 

「( ゚∀゚)・∵. グハッ!!」

 

「あ、ショックでリーシーが倒れた」

 

「お前らのメンタル弱すぎないか?」

 

 顔面から勢いよく地面にキスしたリーシーは無視しつつ、フロストリーフはこの状況に頭を抑える。まさか、ヤマトが今のところだけ自分にのみ心を開いているとは思わなかった。無論、彼と最も付き合いが長い彼女からしたら心を開いてくれているという事実が嬉しくない訳はない。ただ──

 

『お兄ちゃん……ねえ、なんで私じゃなくてフロストリーフお姉ちゃんなの?ねえ、教えて?なんでフロストリーフお姉ちゃんなの?私、怒らないから教えて?……答えられない?それなら私と2人っきりになって分かり合えるまで話すならいいよね?』

 

『……へえー、子犬ちゃんったら尻尾を振るべき相手すら分からなくなっちゃたの?仕方ないわね、子犬ちゃんを分からせる必要があるから、ちょっと貸してくれる?』

 

(こんなの、あいつらに見られたらろくなことにならない……!)

 

 ヤマトガチ勢の残り2名の存在がデカすぎた。イカズチなら間違いなく目のハイライトをオフにして迫ってきて、ヤマトを軟禁しそうだし、Wに至ってはヤマトが本当に子犬の如く躾られてしまう可能性がある。そして、それを阻止すべくガチ勢が大乱闘をするまででワンセット。

 頭痛を発生させるな、というのが難しい話だった。

 

 どちらにせよ。

 

「なあ、ヤマト。とりあえず離してくれないか?動こうにも動けん」

 

「……!べ、別に寂しくてやった訳じゃない……こ、このオカンキツネ!

 

「……反応に困るな」

 

「多分、これがヤマトがフロストリーフに吐ける精一杯の悪態なんだろうなぁ」

 

黙れ鈍感朴念仁ヘタレタマなしドクター

 

「すごい、悪口なのにほとんど事実」

 

「泣いていい?」

 

「泣くとしてもアーミヤの胸の中で泣いたらどうだい?」

 

 とばっちりで心に深い傷を負ったドクターを他所に、口で威勢があったものの、渋々といった様子でフロストリーフの腰から自身の尻尾を離したヤマトをおいて、彼女らは今回の原因を作ったであろう容疑者の元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

「まさか、うっかり試作のやつを打ち込んだだなんて……とんだヤブ医者じゃない!」

 

 アから事情聴取という名の尋問を終えた4人は怒りと呆れが入り交じった感情を抱いていた。

 話しを簡潔にまとめれば、昨日の作戦においてアはヤマトのお願いでアドレナリンを打ったのだが、それが普段持ってきているのではなく試作のものであったということであった。

 アも一応多少の罪悪感は抱いてたらしく、薬の効能などを纏めたレポートを既に作成しており、それを先程渡した上で軽く説明もした。

 

「まあ、効果自体は一日だけでしかもその間の記憶も失くなるとのことだからマシではあるな」

 

「ボクとしては、なんかテキサスみたいな感じもあって良いかなって思えてきたんだけどなぁ」

 

「またえげつない暴言吐かれて気絶しても知らんぞ」

 

「気難しい猫だと思えば痛くも痒くもないよ」

 

「無敵か、こいつ」

 

 ラップランドの返答を聞いてフロストリーフは調子の良い奴だと思いつつも、よくよく考えてみればテキサスに普段から無視されるか冷たくあしらわれている彼女からすれば、事前に言葉のナイフが飛んでくることがわかっていればそこまでのダメージはないのかもしれない。

 

「まあとにかく!ヤマトには悪いけども、効果が完全に切れるまでは隔離ということで──」

 

「ドクター、大変です!ヤマトさんが脱走しました!!」

 

「今すぐ探すぞ!!俺は片っ端に協力してくれそうな人に連絡しまくるから、3人は捜索を!」

 

「「「わ、分かった!!」」

 

 医療オペレーターの切羽詰まった言葉を聞いたドクターの行動は素早く、彼の一声でフロストリーフ達は被害が広がるの防ぐためにその場を駆け出したのだった。

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 結論からいえば、グレヤマトの被害は予想よりは広がらなかった。

 というのも、グレヤマトが悪態を着いた人達が。

 

「まさか、会って早々実は面倒見がいいスケバン!なんて言われるのは思いませんでしたよ」

 

「私はツンデレだぞ……」

 

「わ、私は静かすぎるって言われました」

 

「なんかさ、アタシの場合は引き際が分からない万年ボロ雑巾バカ天使ってシンプルな悪口だったんだけど?」

 

「ヤマトちゃんから、あんな蔑んだ目であんな罵倒を受けられるなんて……お陰で新しい扉が開けました!」

 

 悪態をつこうにもつけない人物であったり、メンタルが異様に硬かったりといった人物であったからだった……約1名のみダメージを受けた結果新しい世界へ旅立ってしまったが。

 

 そして件のグレヤマトは現在どうなっているかと言うと……

 

 

「くっ、離せ!!俺に変なことするつもりなんだろう?変態女が書いてた薄い本みたいに!」

 

「ボクとしてはお望み通り分からせてあげてもいいんだけどねぇ」

 

「*50代の男性が泣き崩れるのと同等のダメージのスラング*!」

 

「ふふっ、結構乗り気じゃないか。ドクター、ちょっとヤマトと2人っきりにさせてもらってもいいかな?」

 

「ひっ……!イカれてる!」

 

「流石にヤマトが可哀想……というよりそんな事やらせるわけないでしょーが」

 

 とある部屋にて、拘束された状態でベッドの部屋で寝かされており、先程まで陸に上げられた魚のように跳ねながら結構えげつない悪態を着いていたが、もう慣れてしまったラップランドからしたらそよ風に吹かれる程度の衝撃しかなく、イタダキマス宣言をしたところでドクターが待ったをかける。

 こちらは健全な方なので、ドクターの行動はファインプレイと言えるだろう。

 

「まあ、監視役兼お世話役としてフロストリーフを置くのが1番いいのかもね……納得したくないけど」

 

「おい待て。こんな状態でヤマトが脱走できるとでも思ってるのか?」

 

「いや、普通に考えてこのまま放置だとご飯やトイレどうするんだい?この状態でも普段の通りできる方法を教えて欲しいな、フーちゃん?」

 

「ぶち殺していいか?」

 

「フロストリーフ、ステイステイ」

 

 やけにいい笑顔に加えてなんか癪に触るような言い方で煽ってくるラップランドに、フロストリーフはマジな方の殺意を抱くも、ドクターに止められたこともあって何とか堪えたのだった。

 

 

 後日、元に戻ったヤマトはアが言っていたようにグレヤマトになっていた時の記憶はまったくなかったものの、朧気ながらちょっとだけスッキリしたと言っており、もしかしなくてもヤマトは結構ストレスを溜めているのではないかという話が出てきて、やけに周りの人物がヤマトを優しく接するようになるのだが、それはまた別の話。




今回のイベントの現段階での感想を色んな人から怒られるのを覚悟で一言で言うと、ケルシー先生のコスプレ大会でしたね()

キャラ紹介

ヤマト:被害者兼加害者。脱走した理由は頑なに喋らなかった。

ラップランド:初手気絶をしたものの、次のヤマトの悪態を軽く受け止めるという短期間で耐性を得るというやべーやつ。

リーシー:悪態よりも、グレヤマトがフロストリーフの方を信頼してることにショックを受けていたものの、復活は早かった。実は脱走したヤマトをみつけたのも彼女だったり。

フロストリーフ:ヤマトのオカン。結局、フロストリーフの前ではグレヤマトは終始大人しかったとか。

ア:まさかあんなことになるとは思わんかった

罵倒されて新しい扉を開いた女性オペレーター:薄い本の作業が更に早くなったらしい。

年末の話、何やろうかすっごい考え中です。大晦日のまったり系にしようかなぁ…決まらなかったらアンケも取るかもしれないです()

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