課題や試験の関係上、なかなか時間を取れずにこんなに遅くなってしまい大変申し訳ございません。
これからは時間は取れると思いますのでペースの方を上げていきたいと思います。
それでは本編の方どうぞ。
『ヤマト、中々の大活躍だったじゃないか』
「……急に着信が来たので急いで取ったら第一声がそれですか」
第1ラウンド終了直後、急に連絡端末にホシグマから着信が来たヤマトはチェンとユーシャにホシグマからの連絡だと気づかれないように2人に一言入れてから急いで距離を取って耳を傾けてみると、彼の耳に届いたのは労いの言葉。普通であればお礼の一言や二言を述べている場面ではあるが、状況が状況なためヤマトとしては少しだけ気分が良くなるものではなかった。
『冷たいな。上司からの労いの言葉をそんな風に切り捨てる様なやつに育てた記憶はないぞ?』
「ホシグマさんは僕のお母さんですか……確かに教育係として着いてはもらいましたけども」
『あの時はお前がここまでの猛者になるとは思えなかったからな。教育係を務めた身としてはかなり誇らしいよ』
「……」
『ふっ、お前は照れるとすぐに黙る癖があるよな』
「……ホシグマさんには言葉でも一生勝てる気がしません」
『当たり前だ。まあともかく、しっかり休んで第2ラウンドに備えることだ。お前たちのチームにかけてるんだからな』
「え?ちょ」
『じゃあな』
「ホシグマさ……全くあの人は……」
からかうだけからかった挙句最後にとんでもないことをぶちまけた上司にヤマトはため息を吐きつつも、気を使って態々連絡をしてくれたことに内心申し訳ない気持ちになっていた。これはホシグマという人間とそれなりに仲良くなればわかるのだが、基本的には彼女が連絡をしてくるのは仕事に関する話、飲みの話、もしくはツーリングの誘いと3択しかなく先程みたいになんの用事も無い雑談というのは全くしない。そして彼女がかなり気を使える人物ということさえ分かれば、いくら鈍感な者でも先程の連絡が気を使ってしてくれたことぐらい気づける。
(本当に俺はまだまだだな……)
ヤマトは自分の未熟さを痛感し、そして次の第2ラウンドで自分が最後の方は全く使えないということを残りの2人にどうやって伝えるべきなのかと頭を悩ますのだった。
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「皆お待たせ!2日間のお休みが終わって、いよいよ大会第2ラウンド──トライアスロンを始めるよ!」
(あぁ……結局泳げないってことチェンさんに言えずじまいだった……)
D.D.D.が第2ラウンドの説明をしている中ヤマトは死んだ魚のような目をしていた。何故か?それは第2ラウンドが始まるまでの2日間でヤマトは自身の最大と言ってもいい欠点である、全く泳げないカナヅチということをチェンにだけ伝えられなかったからだ。無論彼女だけに言えなかった理由はちゃんとあり、一番の理由としてはシナノ=ヤマトということがバレる可能性があまりにも高すぎたからだ。自惚れている、と言われればそこまでの話ではあるものの、変装状態で顔を合わしただけで正体を疑われたというのにそこにまた新しくヤマトと同じ特徴をぶち込めばチェンなら気がつくだろう。そのため、現在チームでヤマトが泳げないのを知っているのは第1ラウンドの最中にこのことを伝えられたユーシャとチェンがいないタイミングで言われたエルネストの2人のみだ。
(遅かれ早かれバレるから早めに言っておいたほうがいいとは頭ではわかってたけど……次問いつめられたら誤魔化しきれる気がしないし……)
「以上で今回出るチームの紹介は終わりだよ!」
(って、もうチームの紹介終わったのか……今は目の前のことに集中しなくちゃ)
「──なあ、やはりお前は……」
D.D.Dの言葉が耳に入ったヤマトは先程まで考えていたことを振り払うかのように軽く頭を振り、頬を軽くパンと叩いて意識を切り替える。そしてこれはヤマトがよくやる無意識な癖でもあった。無論ヤマトとて時と場所を弁えた上でやることでもあるが、そんな彼と一緒に過ごした人物からすれば既視感を覚える行動だ。そのためそれを何処かぼーっとしていた彼に声をかけようとしたチェンはそのまま自身の予想を聞くために声をかけ──
「大いに楽しめ、若者たちよ。それではこれより──第二ラウンドを開始する!」
「チェンさん!」
「っ!」
──ようとした瞬間スタートを告げる合図が会場に響きわたり、チェンはヤマトの声を聞いて反射的にしゃがむ。するとその直後に水の弾が彼女の上を通り抜け後ろで武器を振り下ろそうとしていた男の顔面に当たり弾け飛び、追撃として男の腹にヤマトの飛び蹴りが刺さり男の意識はすぐに暗転した。
「狙われてるよ……って言いたかったけど、言うまでもなかったかな?」
「まあ敵意ガンガン飛ばしまくってたからねー。気づくなってのが無理な話だし、それに女性を守るのは男として当然っしょ。んで、どうすんの?」
「速攻で蹴散らすわよ」
「即答なのは助かるわー」
ユーシャの発言を聞いたヤマトは後ろから不意打ちとして振るわれた一撃をしゃがんで躱すと同時に右足で足払いをかけて男の体制を崩すと、右手に持っている源石剣を模擬戦モードで起動し思いっきり振り切って一撃でダウンさせる。その直後に第1ラウンドで使用した水圧銃を右手に、そして新たに用意してもらった拳銃型の水圧銃を左手に持つと横に構えて左右から機会を伺っていた2人の武器を持っている手と頭をほぼラグなしに撃ち抜き無力化。すぐに周囲を見渡せば流石と言うべきか、チェン達は既にこちらに向かってきていた者たちを全員倒していた。ヤマトはそれをやってのけている人物達の実力の高さにもはや呆れの感情を持ったところでユーシャの近くに股間を抑えながら白目を向いて気を失っている男性が視界に入り、そしてそれを同じく目に入ったエルネストと共に顔を青くしながらも手を合わせた。
「一応近くに近道あるけど使っちゃう?」
「いや必要ない。地図を見るに、バイク区間には近道が多くあるようだからな」
「りょーかいっと」
方針を決めた彼らは更に足を動かすスピードを早めたのだった。
*****
「やられたな……」
ヤマトは近道に配置されているドッソレスの精鋭達に囲まれた状態で1人愚痴る。『龍威鼠心』は自転車のコースに入ったところで他のチームからの妨害を受け中々前に出れていないタイミングでエルネストの提案により近道を使用。そして近道には事前に知らされていた通りドッソレスの市長であるカンデラの中でも精鋭の部下たちが待ち構えており、戦闘が始まる前にエルネストが「チェンとユーシャに自身の店の近道を使った方がいい」と進言し、2人は了承。更に彼から「シナノさんはここの抑え役を手伝って欲しい」と言われヤマトはユーシャとアイコンタクトを交わした上でそれを受け入れ先程まで2人で奮闘していたのだが。
(まさか、店を爆破してそれに気を取られた振りをしてやられてリタイア判定を貰うなんてね)
突如チェンとユーシャが向かった方向から爆発音が鳴り響き、それにその場にいた全員が僅かに気を取られ、そしてエルネストはそれにやや過剰気味に気を取られた振りをしたところをカルデラの部下にやられてしまった。だがエルネストのそれが演技だと気づけたのは人の嘘などに敏感なヤマトだから気づけたもの。無論、元々疑っていたのもあるのだが。
(多分エルネストさんは僕が泳げないのを知ったからここに残したって感じかな。チェンさんとユーシャさんさえ封じればあとは泳げない俺しかいなくなって、決勝には行けなくなるわけだし)
そこまで考えたところでヤマトはすぐに思考をこの場面を乗り切るかに変える。正直な話、店を爆破した程度でチェンやユーシャがどうにかなるとはヤマトは微塵にも思っていない。強いていえばこの遅れをどう取り返してゴールするかの方が心配だ。一応砂浜に着いたあとの動きは事前にユーシャと話したのでそこにさえたどり着ければどうとでもなる。
「って、少しぐらいはゆっくり考えさせて欲しいんだけ、どっ!」
ヤマトはそこまで考えたところで自信に飛んできた矢を水圧銃で撃ち落としつつ、その隙に接近してきていた男の一撃を右手の源石剣で防いで鍔迫り合いの状態にもつれ込むも、男が押し込もうと体重を入れた瞬間に刃を消して体制を崩した所に左肘を首に入れてそこに追撃として蹴りを加えようとしたところで敵意を感じ、すぐに後ろに跳んで術士の攻撃を躱す。
(前衛と後衛がしっかり役割分担できてるだけじゃなくて、前衛はタフで後衛は援護が的確と来たから簡単には突破できないな)
首に思いっきり肘を叩きつけたというのに叩きつけられた男は痛そうにはしているものの、戦闘の続行は可能であることにヤマトは内心ため息を吐く。まるで近衛局の小隊1つを相手しているかのような錯覚に陥っていること自体にイラつきも感じているが、それ以上にこの程度の相手を全力でやらねば突破できない自分の無力さも腹正しかった。
(……仕方ない。チェンさんには見られないことを祈って思いっきりやるか)
ヤマトはそう結論づけると、左手に持っていたアサルトライフル型の水圧銃を背中にかけて拳銃型の水圧銃に持ち替えると、アーツで脚力を強化して警戒している精鋭達に突っ込んだ。
****
「何とかここまで来れたけど、エルネストとシナノはまだ来てないということはやられたのかしら」
「……かもしれんな」
時は進み、瓦礫から何とか抜け出し予想以上に後続がいないことも相まって怒涛の追い上げを見せたユーシャとチェンは、最後のチェックポイントに来るまでにエルネストとヤマトの姿を確認してないことから、2人がカンデラの部下たちにやられてしまったと結論づけた。
「全く、シナノがいればもうちょっと楽だったんだけど……」
「何をしている?早く行くぞ」
「急かさないで。こういうのは久しぶりだから準備が必要なの。分かったらさっさと行ってきな──」
「すみません、遅くなりました!」
「なっ……」
「……遅かったわね」
いざゴールへ泳ぎにというタイミングで声が聞こえ、振り返るとそこには金色ではなく茶色の髪のループスの青年が片手にビート板と思しきものを抱えながら、あちこち切り傷やら擦り傷やらでボロボロな姿で息を切らしながら立っていた。そしてその姿を見た瞬間、チェンはシナノの正体が自身が思っていた通りであることを確信し、彼の肩を掴んだ。
「ヤマト。何故ここに?それになんで名前や姿を偽ってまでここにいる?」
「チーちゃん。話は後でゆっくり聞くから、今は優先すべきことをやろう?」
「……分かった」
「……まとまったならいいけど。とりあえず私は準備してから行くから先行ってなさい」
チェンは不服そうではあるものの先を急がねばならないのは事実であるため、ヤマトと共にゴールへ向けて泳ぎ始めた。だが、いくらヤマトの身体能力が高いと言ってもビート板ありなためバタ足でしか進めないという関係上、あっという間にヤマトとチェンの間には距離が空いてしまっていた。尤もそのヤマトの進むスピードもバタ足の割にはとんでもなく早いのだが。
「……シナノとチェンがあそこだからこれぐらいあれば十分かしらね」
そして浜辺でバタ足で頑張って泳ぐヤマトとチェン、そして他の選手の位置を見ながらユーシャは砂を集めると、おもむろに走り出しそのまま必死こいて足を動かして進んでいるヤマトへ向けて跳躍した。
****
「いやー、チェンとヤマトの反応面白かったなー」
「ああ。特にチェンの踏まれた時の顔は……ふくっ」
「いつまで笑ってんのよ、あんたたちは」
第二ラウンドが終了してから、エイヤフィヤトラの付き添いとして来ていたロドスの前衛オペレーターであるムサシはホシグマと先程目に入った中々愉快な場面を思い出して話していた。特にヤマトに関しては踏まれた瞬間にビート板から手を離したせいで、そのビート板をまた手に取るまで必死こいて犬かきしていた様はヤマトのことを真面目が服を着て歩いているようだ、と思っていたムサシとしては意外だったのだろう。
「あ、そういえばよ。ヤマトの坊主がここの市長さんの部下とやり合ってる時、『本来の戦い方に戻したか』って言ってたけどありゃどういう意味だ?」
そこでムサシがふと思い出したかのように聞いたのは、ヤマトがカルデラの精鋭部隊を突破した、多少の被弾は構わないと言わんばかりにやった捨て身に近い戦い方だ。ムサシは「派手にやるなー」程度にしか思っていなかったが、それを見ていたホシグマが先程のようなことを額に手を当てながら呟いていたのが気になったのだ。そして聞かれたホシグマは苦笑いを浮かべながら答えた。
「ああ、実はあの戦い方はヤマトがチェン隊長と付き合う前まで……正確に言えば付き合ってちょっとするまでにしていた戦い方でな。本人曰く、『戦線離脱や四肢欠損しない程度の攻撃なら避けずに突撃した方が早い』ということでやっていたものでな。実際、あいつはその戦法で敵を倒すの早かったからな。だが、付き合ってからはチェンに余計に口酸っぱく言われたらしくてな。最終的には余程のことがない限りは被弾を0にする戦い方に変えたんだ……まあ、あのバカはその戦法だとウィッグが外れるってことまで想定できなかったわけだが」
「なるほどなぁ」
ホシグマの話を聞いたムサシはヤマトの肝っ玉の強さに感心していた。彼女が傭兵時代に渡り歩いた戦場でもそのような戦い方を最初からするものはおらず、取るとしても最早助からないと感じた者だけがとる捨て身の戦法だ。常人ならやろうとは思えない。
(あいつの異質さ?みたいなものは前から薄々感じてはいたが……俺が口を挟むのはお門違いだな。それに……)
ムサシは思考を一旦やめてドローンに映っている映像を見る。そこには──
(今、まさに注意してる奴がいる訳だからな)
両肩を掴まれて思いっきり揺さぶられて青い顔をしているヤマトと、如何にも怒ってますという顔でヤマトを揺さぶりながら何かしら言っているチェンの姿があったからだ。
早くギャグ時空の話に持ち込みたい……
キャラ紹介
ヤマト(龍門チェン√):なんか色々バラされてる+正体バレした狼さん。ウィッグに関しては戦闘中に術士の攻撃でどっか飛ばされてしまい、探す時間も惜しかったためバレるのを覚悟して泣く泣く進んだ。なお、ビート板は運営に事前に泳げない事を伝えたら慈悲として渡されたもの。犬かきよりビート板+バタ足の方が速い。
チェン:シナノの正体がやっぱりヤマトで感情が爆発しかけたものの、久しぶりの「チーちゃん」呼びのおかげで何とか耐えれた。因みにどちらか片方が再度告白すれば万事解決だったり。
ユーシャ:何となく二人の関係性を察し、なんだコイツらと思った。
エルネスト:暗躍店主
ムサシ:ムサシィ!生きとったんかワレェ!……冗談は置いといて、このルートではヤマトと傭兵時代に遭遇及びバディを組んでないため生存してます。現在はロドスで大剣を振り回す前衛オペレーターとして活躍中。
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