ロドス劇場   作:ゆっくり妹紅

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今更ではありますが、皆様のおかげでUA25000&お気に入り250件を突破しました!
これからも、「ロドス劇場」の方をお願いします!

今回はその記念話というわけで、有り得た世界のうち最も辿る可能性が低い世界線のあるオオカミのお話を皆様に…


UA25000&お気に入り250件記念!〜ifルート:近衛局の狙撃手~

『…なるほど、苦戦していたところをこの少年が助けてくれた、と』

 

『ええ、信じ難い話ですが。自分の二回り以上も大きい大人をいとも容易く……』

 

『…ふむ、よし決めた。この子は私が預かろう』

 

『ええ!?本気ですか!?いくら子供とは言えど──!』

 

『言いたいことはわかるが、こんな逸材を放っておくのは勿体ない。それに──』

 

****

 

「……懐かしいな」

 

近衛局特別督察隊の隊員であるヤマトは、捨てられた自分を拾ってくれた育ての親と会った時の夢を見たことを噛み締めるように呟くと、すぐに意識を切りかえベッドから抜け出して、寝間着から隊服を着て、着任祝いに貰った特別性のコートを片手に朝ごはんを済ませようと台所へ向かった。

 

 

****

 

「おはようございます、ホシグマさん」

 

「おはよう、ヤマト。いつも通り早いな」

 

「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」

 

近衛局内の廊下でばったりあったヤマトとホシグマは喋りながら廊下を歩いていく。

ヤマトとホシグマは両者の戦闘スタイルの関係上、同じ任務に派遣されることが多く気がつけば2人には上下関係を超えた絆が出来ており、仲良さげに話していたり、一緒にお酒を飲んでいるところは今や近衛局の者たちにとってはよくある光景となっていた。

そんな中でホシグマは昨日から気になっていたことを聞くことにした。

 

「そういえば、ヤマト。昨日からチェン隊長の機嫌がすこぶる悪かったのだが…何か知っているか?」

 

ヤマトは最初聞かれた時こそ、疑問符を浮かべているような顔をしていたが「あっ」と何か思い出すと「多分あれかな…」と呟き、しどろもどろに話し始めた。

 

「あー、えーと。そのスワイヤー…さんだったかな?休憩中に飲みもの買いに行ったらそのスワイヤーさんが『書類終わらない…』ってブツブツ呟きながらフラフラ歩いてたから、つい手伝いますよって言っちゃって…」

 

「ああ……(察し)」

 

ホシグマはそこまで聞いて何となくそのあとの展開が読めて思わずため息を吐いてしまった。

ホシグマが内心想像したことは、ヤマトの事務処理の手際の良さを目の当たりにしたスワイヤーが「是非うちに!」と引っこ抜こうとして、それを休憩時間が終わったのにも関わらず戻ってこないヤマトを注意しようと探していたチェンがそれを目撃してしまい、そこから口論に発展し、終わったあともイライラが治まらなかったのだろうという事だった。

 

そしてホシグマの予想は全て的中していた。

なお、近衛局に勤める者の中でも茶目っ気と肝がかなり据わっている一部の猛者達はそれを「ヤマト争奪事件」という風に名付けていたのを当事者たちは知らない。

 

「…お前の優しさというか人の良さは美徳だが、やりすぎるとああいう事になるということをしっかり覚えておけ」

 

「はい…気をつけます…」

 

ちょっとシュンとした相変わらず色々と素直なヤマトの頭をホシグマはポンポンと手で軽く撫でたのであった。

 

「そういえば、今月の見回りはヤマトとチェン隊長がコンビだったな…」

 

「え」

 

…因みにヤマトは先程の戦闘スタイルの関係上チェンとも同じ隊になったり、見回りの組を組むことが多かった。

 

****

 

「ねーねー、オオカミのお兄ちゃん。りゅうのお姉ちゃんお兄ちゃんのことすごい見てるけどどうしたの?」

 

龍門のとある場所にて、ある子供が穢れが全くない純粋さ100%の目で聞いてきたないようにヤマトは内心、どう言うべきかと頭を悩ませていた。

バカ正直に話せばいい笑顔(目は笑っていない)を浮かべたチェンに八つ裂きにされる未来は考えなくとも分かるものの、変なこと言って彼女の琴線に触れてしまっても同じく八つ裂き。

 

(詰んでる)

 

ヤマトが「もう殺される覚悟で何とか誤魔化すしか…」と悲壮な決意を固めた中、一人の少女がチェンに近づいた。

 

「りゅうのお姉ちゃん、オオカミのお兄ちゃんと【ちわげんか】したの?」

 

「「!?」」

 

Q.痴話喧嘩とは?

A.男女間の愛情のもつれでおこる他愛のない喧嘩

 

(とんでもない爆弾を投下されたあぁぁぁ!?)

 

気まずそうにしているヤマトとチェンの為を思って女の子が聞いた内容は、正直やばいものだった。

 

「そ、そ──」

 

「あーとね、お兄ちゃんとお姉ちゃんはそういう仲じゃないんだ」

 

チェンが顔を赤くして何か言う前に、それを怒りで顔を赤くしていると感じたヤマトがすかさず女の子に一言入れてこの話を終わらせようとした時だった。

 

『ポイントX-502の銀行にて立てこもり事件発生!近くにいる隊員は速やかに急行せよ!繰り返す──』

 

「ヤマト」

 

「はい、すぐに向かいましょう」

 

緊急通信用のチャンネルで入ってきた情報にチェンとヤマトは先程までとは一変して、歴戦の戦士の顔になり互いの顔を見て頷きあった。

 

「…お兄ちゃん、お姉ちゃん。お仕事?」

 

急に顔を険しくした2人に、不安そうに聞いてきた男の子にヤマトはしゃがんでその男の子の目線に合わせると、優しい笑みを浮かべて彼の頭にポンと手を乗せた。

 

「ああ、俺らはこれから悪い人たちをやっつけに行かないといけない。だから、また俺らが戻ってくるまで皆のことを守るんだぞ?」

 

「…うん!頑張ってね!」

 

「ああ、じゃあまたね」

 

元気よく頷いた男の子の頭を軽く撫でると、ヤマトは先に現場へと向かったチェンの元へ向かった。

 

 

****

 

『ヤマト、そちらから中の状況は伺えるか?』

 

「…確認できる限りですが、数は10で武装はボウガン、ナイフ、あと鉄パイプです。あと動きからした素人と見ていいです。あと人質の傍からは3名ほど離れず近くにいますが、あまり距離をとっていませんね。結論としては、攻め込むなら一瞬でケリをつける必要があるかと」

 

『了解した。こちらから指示が新たにあるまで待機せよ』

 

「分かりました」

 

ヤマトは立て篭り犯がいる銀行から少し離れた狙撃ポイントにて、自分専用に矢倉を付け加え連射性を上げた狙撃用のボウガンから倍率スコープを覗きながら中の様子をひたすら観察していた。

 

『これより、裏口から突入を仕掛ける。ヤマトはこちらの合図と共に人質の近くにいる奴らを全員無力化させろ』

 

「分かりました」

 

人質に危害が加わる前に人質のそばに居る3名を無力化させろ、という無茶ぶりに対してなんて事ないように返事をし、照準を3名のうち1名の頭に合わせて合図が来るのを待つ。

そして──

 

『やれ』

 

チェンからの合図とともに引き金を引き、当たったかどうかを確認する前に矢が自動で装填された瞬間に残りの2人をすぐに射抜いた。その直後にチェン達が内部へ突撃したのをスコープ越しで確認したヤマトは、ボウガンを肩に背負うと人質を保護するためにその場から離れようとして──

 

「うわっ!ちょっと待って!私だよ私!」

 

「…なんだ、エっちゃんか……」

 

背後に気配を感じ、腰のホルスターから拳銃を抜いて振り向きざまに構えると両手を慌てて上げるペンギン急便のエクシアがいた。

ヤマトはため息を吐きながらも、抜いた拳銃を回しながらホルスターにしまった。

 

「それで、何でここに?」

 

「いやー、ちょっとテキサスに追われてて、それから逃げるためにショートカットで…あ!ヤマト、私の事──」

 

「職務中なのでムリですさようなら」

 

「うーん、淡白!でも仕事中なら仕方ないよね!それじゃ、私は逃げなきゃだからバーイ!…あっ、この前の約束通りその拳銃後で見せてねー!」

 

嵐のように去っていったエクシアにため息を吐きつつも、サンクタにとって拳銃っておもちゃみたいなものなのになんで見たいんだろう?とヤマトは自分で扱いやすいようにカスタマイズした拳銃を見て、息を吐くと自分の仕事を片付けに向かった。

 

 

****

 

「「「今日もお疲れ様(でした)」」」

 

あの後、無事に事件を解決し事後処理を終えたヤマトとチェンはホシグマの誘いでいつも世話になっている居酒屋に来ていた。

 

「ふぅ…あー今日も疲れた…」

 

「あれぐらいでへばるなんて、ヤマトらしくないな。一体どうしたんだ?」

 

「どっかの隊長さんが事後処理の書類の半分を俺に回してきたからですよ…」

 

「隊長…」

 

ジョッキを片手に机に突っ伏して疲れたように声を出しながらも、恨みを込めた目で見つめるヤマトと、呆れたように見つめてくるホシグマにチェンはぷいっとそっぽを向いてつぶやくように言った。

 

「…仕方ないだろう、私だけじゃ厳しかったのだから」

 

「そうですけど…いくら何でも俺が自分の分が終わった瞬間に回さなくても良かったじゃないですか…」

 

ジト目で見つめてくるヤマトに「うっ」と呻き声を上げたチェンは、やけくそ気味に酒を飲む。

ヤマトはそうやって相変わらず誤魔化そうとするチェンに苦笑しつつも、機嫌が治っていることに心底ホッとしていた。

 

その後はチェンが酔いつぶれて寝息を立てるまで酒を飲み続け、その後解散となったあとはヤマトはいつものように寝息を立てるチェンをおぶって歩いていた。

 

「……お疲れ様です、先輩」

 

ヤマトは寝ているチェンに、かつて呼んでいた敬称で彼女をいたわる言葉を告げてまた歩き出す。

 

──これは数ある彼が辿る可能性があった世界線でも、特に可能性が低い未来。

──彼は、信頼する者たちと共に自分を受けいれ育ててくれた龍門を守り続けるだろう

 




基本的にifルート系列はこういった記念系であげる感じになります。

それにしてもちょっと今回はやっつけ話っぽい感じになってしまった…
もっといい話をかけるように頑張らないとなぁ…

キャラ紹介

ヤマト:本編、ペン急ルートとは違いムサシに拾われることなく、ある偶然で当時の龍門特別督察隊隊長にその才能を買われ拾われたという経緯をたどったifのヤマト。拾われてからは、ある学校に通い様々なことを学び、卒業後は近衛局に入って地道に成果を上げていって龍門特別督察隊に入隊した。こちらの世界のメインウェポンはカスタマイズした狙撃用ボウガンでサブに刀と、グリップや連射性さらにロングマガジンと色々改造した二挺のFN Five-seveNを使っている。なお、射撃能力は本編ルートのヤマトよりも高く、逆に近接は本編より劣っている。なお、定期的にスラム街の子供達と交流しており、チェンとはそこでたまたま会ってからは2人で行くことが多くなったという経緯もある。
余談ですが、ヤマトの装備を見て成層圏を狙い撃つ男の機体を思い浮かべた人は何がとは言いませんが正解です。

チェン:書類仕事をテキパキとこなせる部下がいるおかげで、仕事が少し楽になった隊長。ヤマトとは一時的に先輩後輩の関係だったが、まさか部下になるとは思ってなかったとの事。ヤマトの人柄と戦闘力を信頼しており、傍から聞くと無茶ぶりな指示もヤマトなら出来ると信じているから。二日酔いの看病は本編とは違い20回目でやっと慣れた。

ホシグマ:ヤマトの上司にあたる。共通の上司に振り回される苦労人仲間として意気投合し、さらにヤマトが酒も自分と同じくらいイける口と判明してからはよく誘うようになったとか。ヤマトからみたホシグマは頼れる姉みたいな人。

スワイヤー:こっちにも事務処理出来るやつよこせぇぇぇ!

エクシア:ひょんな事でヤマトと知り合ってからは、たまにつるむ仲に。ヤマトが彼なりにカスタマイズした拳銃は銃マニア的に気になる模様。

元隊長:回想で登場。ヤマトの才能を実際に戦闘を見てもないのに見抜いたというとんでもない人。現在は退職しており、早く孫の顔が見たいとかつての友に愚痴ってる。
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