ロドス劇場   作:ゆっくり妹紅

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関係ない話ですがエアースカーペくんのS2の名称聞いた時真っ先にGNソードビットが思い浮かびました(小並感)

あとWの実装まだですか?()


兄として

「ドクター、すまない。私が不甲斐ないばかりに…」

 

「いや、気にしないでください…でも、ヘラグさんとシュヴァルツ、エンカクの3人であの子を倒せないなんて、とんでもない実力をもった子だ…」

 

「いや、それはちげえよ」

 

「え?」

 

 

レッドの働きによって動けるようになったサイレンス達医療オペレーターの治療を受けたヘラグがドクターと話している中、同じく手洗い治療を受けたエンカクが口を挟んだ。ドクターはそれに驚きつつも目で彼に続きを促し、エンカクは息を吐いて話し始めた。

 

「めんどくせえから結論言っちまうと、あいつは()()()()()()したタイプだ…最も、個人的な実力はヤマトに少しだけ劣るかどうか程度ってのも追加されるがな」

 

「立ち回りが巧いんです。常に私の射線上にヘラグ殿がいるように動き、そして撃てる隙を見出しても陽動が限界レベルでした…」

 

「しかも、それはヤマトみたいな直感で動くようなものではなく、広い視野と戦闘をこなしながら様々なことを考えられる並行思考能力、そして頭の回転の速さによってそれを実現してやがる…まあ、多少は勘もあるだろうけどな」

 

彼らが語ったのは少女のバカげた能力。つまり、彼女はエンカクが加入する前からそして加入したあともへラグやエンカクの相手をしながらシュヴァルツの位置を把握し、シュヴァルツの援護射撃が通らない立ち回りを常に考えて動いていたのだ。

 

「そ、そこまでなのか…」

 

「それだけじゃねえ。お前も遠くから見えただろうが、俺らはあいつが放った広範囲高威力の雷のアーツを食らった。そして、あのガキはそんなアーツを使ったのに平然としてやがった…これの意味がわかるか?」

 

「…なるほど、彼女を倒そうとして人数を送りすぎると一瞬で全員無力化されるってことか……」

 

規格外。まさに、あの少女は規格外な能力を持っていることをドクターは実際に戦った猛者から聞いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

──思い出したことがある。

──それは俺にとっては思い出したくなかったことでもあったけど、同時に何であの子のことを頑なに認めなかったのかが分かった。

 

 

──何故だろう。理由が分かると、あの子のことをしっかりと見れた。

──そして同時に理解したんだ。まだ、はっきりと認めてはないし自覚できてないけど、俺は【■】としてこの子を受け止めないといけない。

 

 

 

 

****

 

 

 

ヤマトは目で捉えるのがギリギリな速度で振るわれた袈裟斬りを受け流し、それを見越した上で振るわれた2太刀目を身体を後ろに逸らしてかわしつつ、合体剣を振るった。

少女はそれを屈んでかわし、お返しとばかりに太刀を振るいヤマトもそれに合わせるように合体剣を振るう。2人は剣戟は既に数えるのすら億劫になるほどのスピードで展開されており、そこから2人の実力の高さが伺い知れる。

 

「なんで君のことを認めたくなかったのか、さっきまで分からなかった」

 

「…っ、それって、何となくで私の事無視してたってこと?」

 

「…ああ。ただ、決定的だったのは君が【先生】が言ってた子だと分かった時だった」

 

「くっ…!」

 

少女の斬撃を弾き返したヤマトは、嫉妬が入り交じった目線を彼女に向けながら剣を振るう。少女は思わず気圧されて、振るわれたなぎ払いを太刀で受け止めてその勢いのまま後ろに下がりながら、左手で鎖のムチを取り出し電気を流しながらヤマトの腕に向けて振るった。

 

 

「君が【先生】に認められたっていうのが羨ましくて、そして認めたくなかったんだ。だから、君が【先生】の話を楽しそうにしてくる度に嫌な気持ちになった」

 

ヤマトはそれをかわし、同時にその位置へ放たれていた雷の衝撃波をアーツを表面に纏わせた合体剣で切り裂きながら距離を詰め、少女が牽制として銃を抜く前に斬りかかり、鍔迫り合いの状態へと持ち込み、自分の中の答えを彼女に聞かせるために口を動かした。

 

「ちっ……!」

 

「あの人は今でも憎いとは思う。けどさっき思い出したんだ。演技だったかもしれないけど、俺は優しかった【先生】を知ってしまっていたから。だから余計に楽しそうに【先生】のことを話し出す君が嫌になったんだ」

 

それがヤマトが妹と名乗るループスの少女に対して、否定的な態度をとってしまっていた理由だった。最初こそ、理由はよく分からなかったが、少女がヤマトに着けたあのヘルメットのせいでヤマトはかつて自分が殺した孤児院の子供をの顔を見て思い出してしまったのだ。

 

──すぐに泣いてしまう自分を微笑みながらあやしてくれたこと。

──配膳を手伝ったら暖かい手で頭を撫でながら褒めてくれたこと。

──眠れない時に絵本を読んでくれたこと。

 

思い返せばキリがない。

結局あれが演技で偽りの暖かい優しさだったとしても、ヤマトにとっては初めて貰った人の温もりだった。

だからこそ、自分にとって間違いなく【親】であった【先生】から自分を離す原因となった少女に対して、無意識ながら嫉妬して、彼女のこと無視してしまっていたのだ。

 

ヤマトが自分のことを嫌っていた理由を知れた少女は納得できるかどうかは別として、胸の突っかかりが取れた。が、しかし。それとは別の新たな疑問が生じ始めた。

 

 

「そんなこと話して何がしたいの!?」

 

「…………」

 

「今更…!今更そんなこと聞かされたって、どうしていいか分からないよ!!」

 

少女は癇癪を起こした子供のように、感情をさらけ出しながらヤマトへ太刀を力任せに振るっていき、ヤマトはそれを避けることはせず剣でその全てを受け止め、防ぎながら言葉を発する。

 

 

「君のことを聞かせてくれないか」

 

「…っ!」

 

真剣でどこか温かさが入り交じった目を向けられた少女は、あからさまに動揺してしまった。

そしてヤマトがその隙を逃すはずがなく、鍔迫り合いの状態で合体剣を力強く振り抜いて少女の体勢を崩し、そこを狙うかのように太刀に強烈な一閃を加え、少女の手から太刀をはじき飛ばした。

 

「なっ…!?ちっ…!」

 

少女は自身の失態に驚き、舌打ちしつつもホルスターから拳銃を取りだしヤマトに向けて撃ちながら距離を取るために後退し、そしてヤマトはそれを致命傷になる部分だけ避けるようにして彼女に特攻した。

 

「君のことを否定した俺が言える義理じゃないのは分かってる」

 

「っ!」

 

銃弾が容赦なくヤマトの体を貫いていく中でも、彼は痛みを気にせずただ自身の覚悟と答えを伝えるために足と口を動かしていく。少女はヤマトの命を捨てるような行動を見て、それを止めるためにムチを何のフェイントもなしで彼の腕に絡みつくように振るってしまった。と同時に彼女は避けられると己の失策を悟ったが、それに反してムチはヤマトの腕に絡みついた。

 

「えっ…」

 

予想外の出来事に少女はアーツを流し込むのを忘れ、そしてそれがヤマトが欲しかったチャンスであった。

ヤマトはすぐさま、ムチが絡んでいない方の腕をムチに伸ばしアーツで自身の筋力を限界まで強化し、少女を自分の方へ引き寄せるように引っ張った。

 

(しまった!対応出来…!)

 

少女は自分に襲いかかってくるであろう痛みに備えて思わず目を閉じ体を強ばらせた。が、彼女が感じたのは身体を斬られたような鋭い痛みではなく、誰かに抱きしめられるような懐かしい暖かい感覚であり、彼女の嗅覚は血と兄の匂いを捉えていた。

そして少女は自分が、ヤマトに抱きしめられているのだと理解した。

 

「お、にいちゃん…?何で…」

 

 

「ごふっ…ろくに話を聞かずに嫉妬して、無視して、認めなくて、傷つけてしまった…でも、どうか君のことを聞かせて欲しい…」

 

 

 

 

 

 

 

「俺が君の【兄】…【家族】になるために…」

 

 

 

 

 

 

「あっ…」

 

それは1番言って欲しかった言葉であり、そして彼女が一番欲しかったモノ。手から力が抜け、カシャンとムチと銃が音を立てながら地面を転がった。

今、ヤマトが出来ることは少女が話してくれるまで意識を途絶えさせずに待つことのみで、彼はひたすら少女が口を開くのを待った。

 

「…捨てられたのを、拾ってくれたのが【先生】だった」

 

しばらくしてポツリと少女は話し出した。

 

「…女なんか産みたくなかった、産まなきゃ良かったって言われて、家を追い出されて、寒くて死にそうだった私を拾ってくれたのが【先生】だったの」

 

「【先生】は私を必要としてくれた。いらない子だって言われなかった。温かいご飯もくれた。訓練は厳しかったし、初めて人を殺した時は怖かったけど、【先生】は最期まで私を必要としてくれたの…」

 

「…【先生】が死んでから、2人の大人の男女と手を繋いで歩く子供を見る度にすごい胸が痛かった。独りが嫌だった」

 

「…そうか」

 

ヤマトは彼女が自分のことを【兄】だと呼んだ理由をようやく理解した。

ただ、寂しかったのだ。1人が嫌で寂しくて、そして【家族】というモノに対しての憧れを持っていたからヤマトのことを【兄】と呼んだ。

そして求めたモノこそ違うものの、ヤマトも同じであった。ムサシが死んで、暫くしてから独りが寂しくて嫌で怖くなって、その最中、ロドスのことを聞き自分の力が役立てるなら、というのとそこなら1人にならないはずだといった理由でで履歴書を書いて入った。結果として、そこでも独りだったもののフロストリーフのお陰で周りにはかけがえのない大事な人達が出来た。

 

(なら、俺がするべきことは──)

 

ヤマトは震える少女…自分の妹を抱きしめながらある決意を抱き──

 

「ドクター聞こえる?頼みがあるんだ」

 




次回、本編最終回(の予定)
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