ロドス劇場   作:ゆっくり妹紅

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遅くなってすみませんでした!色々修正してたらどんどん遅くなってこんなことに…いや、本当にすみませんでした…。

今回の話もリクエスト回です。それではどうぞ!


イカズチの悪夢と調香師

「──っ!!」

 

真っ暗な部屋の中、イカズチは勢いよく体を起こした。

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

先程見た光景のせいで心臓が破裂しそうなほど早く鼓動し、汗をびっしょりとかいていた。息を荒く吐きながらも、胸に手を当て気持ちを落ち着かせる。

 

「はっ…はあ……はあ……まだ、0時……」

 

ある程度落ち着いてから、枕元に置いてある時計を見たイカズチは1時間も寝れていないことに気がつくと、落胆したように息を吐き。

 

(やっぱり、お兄ちゃんのところ行かないとだめなんだね……)

 

イカズチはそう思いながら、ベッドから降りると枕を持って部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ドクター、ちょっといい?」

 

「ん?イカズチか、どうかしたのかい?」

 

お昼頃、執務室にてノックをせずに入ってきたイカズチにドクターは特に気にした様子なく、彼女の話に応じた。勿論、書類を捌くのは止めて真剣に聞く体勢を取った状態でだ。秘書であるアーミヤもイカズチの様子が普段と違うのを見抜いているのもあって、黙っている中、イカズチはバツが悪そうに口を開いた。

 

「実は…最近嫌な夢ばっか見ちゃうせいで、でお兄ちゃんと一緒じゃないとよく眠れないんだけど…どうしたら1人でも眠れるようになれるかな……?」

 

「……ごめん、質問に対して質問する形になっちゃうけど、いつからその夢を見るようになったか教えてくれる?」

 

「えっと……1週間前ぐらいかな……」

 

「なるほどね…もう少し詳しく話を聞いてもいいかな?」

 

「……う、うん」

 

イカズチの相談内容を聞いて、「もしかしたら」と考えたドクターの質問に対する彼女の答えを聞いたドクターは、確信を得るためにも更に質問を続けた。

 

 

 

*****

 

 

「……なるほどね」

 

 

自分が出した質問に対するイカズチの答えた内容から、ドクターは自身の予想が当たっていたことを確信した。

 

今回の話の発端は、今から1週間程前…つまり、イカズチが悪夢を見始めた前において、彼女はヤマトとコンビを組んでとある任務に当たっていた。その際に、敵部隊の奇襲を受け、ドクターたちが駆けつけるまで2人で敵部隊と戦闘、そしてイカズチの認知外から放たれた狙撃をヤマトが庇って軽傷を負った。結果として、ドクターたちが駆けつける前に奇襲をしかけた敵部隊はクラッシャークラスも居たものの、ヤマトとイカズチの活躍によって全員無力化し、被害もヤマトの軽傷のみだったため、ドクターを含めヤマトも気にしていなかった。

 

しかし、「(ヤマト)が自分を庇って怪我をした」というのは彼女にとってはとてつもないストレスであったのだろう。それ以来、彼女は「(ヤマト)が自分を庇って死ぬ」という夢を見るようになってしまった。そして、その悪夢はヤマトと一緒に眠ると見ないという訳だった。

 

(それに眠れると言っても、眠りは浅いみたいだしどうしたものか……)

 

「……あの、イカズチさん。悪夢を見なくなるまでヤマトさんと一緒に寝ていくのはダメなんですか?」

 

「……それも考えたけどさ、その、お兄ちゃんに迷惑かけたくないし、それに、なんかズルいというか……私もよく分からないけど、ダメな気がしちゃって」

 

アーミヤの提案にイカズチが少しバツが悪そうに答えた内容に、ドクターとアーミヤは驚いた。それもそのはず、三度の飯より兄のイカズチがここまで考えていたというのは予想外だったからだ。

だが同時に、彼女が本気で何とかしたいと思っているのが2人には伝わり、ドクターは少し考える素振りをして、何か思いついたのか、メモ用紙にサラサラとペンで何かを書き込んでイカズチに手渡した。

 

「何これ…?」

 

「この紙を療養庭園にいるパフューマーのラナって人に渡してくれるかい?今回に限っては俺より彼女の方が適任だと思うからね」

 

「んー……わかった。わざわざありがとうね」

 

紙を受け取ったイカズチはドクターに一言お礼を告げると、部屋を出ていった。そして、その姿を見たアーミヤは心配そうにつぶやく。

 

「……イカズチさん、大丈夫でしょうか?」

 

「こればっかりは、時間をかけていかないとダメだろうね。だからこそ、あの子が立ち直れるまで俺らが別の方面を支えていかないといけない、そうでしょ?アーミヤ」

 

「……はい、そうですね!」

 

アーミヤのつぶやきを聞き取ったドクターは、彼女を安心させるように自分なりの答えを投げかけ、それなアーミヤは笑顔でそれに反応した。

 

「……さて、それはそれとして。ドクター、まだ書類が沢山ありますから、まだ休んじゃダメですよ?」

 

「……いい話で終わりそうだったんだけどなぁ」

 

ドクターはそうぼやきながらも、せっせと書類に目を通しつつペンを走らせていくのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

(ここが療養庭園…始めて来る場所だなぁ…)

 

イカズチはドクターの言われた通り療養庭園に来ていた。一応、ヤマトからそういう場所があるというのは聞いてはいたものの、匂いに関しては「とりあえず臭くなければいいや」の精神、そして花に関しては「有害じゃなければいいや」の考えを持ち、ヤマトをめぐる修羅場さえ起きなければ精神面も安定していたイカズチにとっては無縁の場所であったため、彼女は物珍しそうに視線を動かしながら歩いていた。

 

「あら?本当に来た人がいたのね……」

 

「っ!」

 

後ろから声をかけられたイカズチは驚き、そして気を抜きすぎていた自分に内心舌打ちしながらすぐに振り返る。そこには、作業着を着たミノスの女性が何故か驚いた表情を浮かべながら立っていた。

 

「驚かせてしまってごめんなさいね。初めまして、私はパフューマーのラナ。あなたの名前は?」

 

「あんたが…私はイカズチ。あんたに用があって来たの、とりあえずこれを読んでくれる?」

 

「ああ、あなたが……」

 

「?」

 

「ああ、気にしないで。それじゃ早速読ませてもらうわね…あら、ドクターくんからなのね」

 

イカズチのぶっきらぼうな言い草に嫌な顔をせずに、ドクターからの手紙を受け取ったラナはそれに目を通し、そして段々と真剣な表情に変えて行った。そして読み終えた彼女は顔を上げてイカズチに視線を向けた。

 

「なるほどね……とりあえず、ここで立ち話は疲れるでしょうから…そうね、私の作業部屋で話しましょうか」

 

「分かった」

 

「うん、それじゃついてきて」

 

イカズチはラナの提案をすぐ承諾し、彼女のあとについていったのだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

「それじゃあ、お茶を淹れてくるからそこに座って待っててね?」

 

「はーい」

 

作業場に案内されたイカズチは、近くの椅子に座りラナが戻ってくるまで、することがないためキョロキョロと首を動かしていた。作業場と言っても、イカズチが想像していたような色んな器具が所狭しと置かれていたりということはなく、それっぽいものはあるものの沢山ある、という訳ではなかった。なお、ラナとは作業場に行く道中で話したところ、すぐに打ち解け、イカズチの彼女に対する態度もかなり軟化しており、ラナもそんなイカズチを受け入れていた。

 

「ふふ、思ったより道具とかないでしょ?」

 

「うん。こういうのは全く知らないってのもあるけど、予想以上になくてビックリしちゃった」

 

(血は繋がってない聞いてたけど……ふふ、()()()()と同じ反応ね)

 

イカズチが来る前に来ていたある人物と同じ反応をしていたことに笑みを零しながらも、ハーブティーが入ったカップをイカズチに渡す。

 

「あっ、ありがとう!……なんか落ち着く香りだね」

 

「ふふ、気に入ったかしら?」

 

「うん!」

 

「それじゃあ、早速本題に入っていきましょうか」

 

「うん、分かった」

 

年相応の明るい笑みを零すイカズチを見て、ラナは軽く微笑んでから話を切り出した。一応、ラナはドクターの手紙と()()()()()の話から事情を知ってはいる。しかし、イカズチ本人の口から聞くのも大事だ。

そして、それはイカズチも理解しており素直に応じた。

 

「ドクターくんの手紙だと、1人じゃ1時間すら寝れなくて、ヤマト君……っていうあなたのお兄ちゃんと一緒でも眠りは浅いって書かれてるけど、ここの所を詳しく聞いてもいいかしら?」

 

「……えっとね、1人の時だと、その…お兄ちゃんがね、私を庇って死んじゃう夢を見ちゃうの。お兄ちゃんと一緒だと……夢は見ないんだけど、起きたらお兄ちゃんが居ないんじゃないかって怖くてよく眠れないの……」

 

「そうなのね……あと、あなたのお兄ちゃんが庇って怪我をした、っていうのを実際に見てしまったことはある?」

 

「……うん」

 

(なるほどね……)

 

ラナはイカズチの話から、彼女が精神状態がこちらの予想以上に安定していないことを察した。そしてラナはイカズチがこちらの質問に対して答えた内容から、彼女は心的外傷の原因となった場面を再現した悪夢、所謂再現性悪夢と言われる悪夢を見てしまっていると、推測した。

 

そして悪夢を見ないようにする方法も幾つかある。ラナは椅子から立ち上がると、予め作っていたとある効果が見込める香りがするアロマオイルが入ったアロマスプレーを棚から持ってきた。

 

「イカズチちゃん、今日から寝る時はこのアロマスプレーを吹き付けてから眠ってみてくれる?」

 

「……それは良いけど、これって何?」

 

「それはね、睡眠の質を高める効果と心を落ち着かせる効果がある香りのアロマスプレーなの。悪夢って、その人の精神状態とかもそうなんだけど、睡眠の質を改善することで見なくなることもあるらしいから、まずはそこからやっていきましょう」

 

「……うん、分かった。それじゃあ使わせてもらうね……それじゃあ、話を聞いてくれてありがとう、ラナお姉ちゃん」

 

イカズチはラナから手渡されたアロマスプレーを大事そうに手で持つと、席を立ち上がるとペコリと頭を下げて作業場を出ていった。

 

「……ヤマト君、いつまで隠れてるつもりなの」

 

「……今出る」

 

イカズチから出ていってから暫くして、ラナが珍しく呆れたような様子で声をかけると、物陰からひょっこりと気まずそうな表情のヤマトが出てきた。

実は、ラナにイカズチのことに関しての話をしていた人物というのはヤマトであった。

1週間前から眠れずに自分の元に来るイカズチのために、何とかしなければと思ったヤマトは、イカズチに隠れてコソコソと色々調べ回っていた。そして昨日の夜にパフューマーのラナの存在を知り、今日になって早速相談をもちかけ、そして話が終わったタイミングでイカズチが来た予感がしたヤマトは、思わずラナに「妹が来たから隠れる」と意味不明なことを言って物陰に隠れていた、というのが流れであった。

 

「別に隠れる必要はなかったのだと思うのだけど…」

 

「……」

 

「……まあ、この話はこれで終わりにしときましょうか?」

 

「そうしてくれると助かる……では、失礼する」

 

ラナの心遣いによって追求されなかったことにヤマトは内心ほっとしつつ、その場を去ろうとして、ふと何かを思い出したかのように振り返ると。

 

「次は、イカズチと来る」

 

「……ええ、待ってるわよ」

 

そう一言だけ告げると、ラナに見送られながら今度こそ作業場を出ていったのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

結論を言うとイカズチは悪夢を見ることはなくなった。ラナが作成したアロマスプレーのお陰で、イカズチは全く眠れなかった時とは打って変わって熟睡することができるようになった。

 

「だけど、今度は寝坊すること多くなっちゃって……」

 

「あー、それは私も経験あるので分かりますね」

 

「ポデンコちゃんも?」

 

「はい。確かあの時は──」

 

「あ、あははは……」

 

しかし、今度は逆に熟睡しすぎて朝に起きれなくなるという事態が発生し、それを聞いたポデンコは当時の事を話しだし、製作者のラナは困ったような笑みを浮かべるのだった。




……こんな感じで良かったですかね?

キャラ紹介

ヤマト:イカズチの悪夢の元凶にして、裏で色々してたお兄ちゃん。なお、撮影外ではあらかじめ書いていおいた台本を片手にラナさんとの相談を望んだという……コミュ障は健在である。因みにポデンコとは後にハーブティーとフラワークッキー関連でよく話すようになった。更に言うと、イカズチが夜遅くに部屋を訪れた時は、何も言わずに「おいで」と優しく言って、一緒にベッドで寝るというムーブをかましてた。

イカズチ:今回の話の主人公。ある任務でヤマトが自分を庇ったことが原因で、悪夢を見るようになってしまったが、癒し系お姉さんことラナさんのお陰で無事改善。最も、今度はアロマスプレーが効きすぎて寝坊することが多くなるという、別の悩みの種ができた。ポデンコとは仲良くなり、暇な時は彼女とよく話してる姿が見受けられるようになったとか。因みにオシャレに関しては無頓着系ガール。

パフューマー(ラナ):殆どのドクターがお世話になったであろう、星4範囲医療。素質がリジュネなのでフィリオプシスやナイチンゲール、ブリーズがいても使う人は多いとか(てか自分がそうですし)。実は、ラナとパフューマーのどっちをイカズチに呼ばせるか悩んだ結果、ゲームの入職会話でラナと名乗ってたから、という理由でラナに。そして今回の1件でイカズチの保護者枠に入ってしまった(というより小さいキツネちゃんにロックオンされた)

ポデンコ:星四補助。かわいい(脳死)

ドクター:アーミヤが膝枕してくれたらもう少し頑張れる。

アーミヤ:ひ、膝枕ですか!?……ちょっとだけですよ?

ケルシー:お前ら…なんであとがきでイチャついてんだ…?

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