そして今回の話の時系列的には、
第2回ヤマトの修羅場対策会議→笑ってはいけないロドス→今回の話
となっているのを頭に置いてくださると、次の話が分かりやすくなると思います。
それでは、どうぞ。
「ねえ、これってお兄ちゃんだよね?」
食堂でご飯を食べ終えて、食後のお茶をまったりと飲んでいる時にイカズチがバンッ!と叩きつけるようにテーブルの上に置いた数枚の写真──色んな服を着ているループスの美少女を見て、ヤマトとメランサ、アズリウスは固まり、その様子を大勢のオペレーター達が何事かと見守る中、数秒後先に我に返ったヤマトが声を震わせながらイカズチに質問を投げかけた。
「こ、この写真……ど、どこから見つけて……」
「知らない人に貰った」
なんてことがないようにイカズチが答えた内容に、ヤマトは頭を抱えたくなった。そもそも、知らない人が物を普通に貰ってはいけません、と言いたいところだが、それよりもヤマトはこの話を早急に終わりにしたかった。
というのも、殆どの方が気づいているようにイカズチがテーブルに出した写真に写っているループスは、女装したヤマトだからだ。
一応、補足しておくとロドスにおいて女装したヤマト…通称「ヤマトちゃん」は「1日だけしか現れなかった幻のロ美少女ループス」という形で、ロドス七不思議(誰かがテキトーに作った)のうち1つとして勝手に語られており、正体を知る者はいない、とされている。
その上、ヤマトにとっては不幸なことに購買部の某K氏の陰謀…という名のお小遣い稼ぎのために、「謎の美少女ループス写真集」という名の隠し撮りの写真集が裏ルートで売られまくったせいで、そのループスを推し始めたり、ガチ恋勢になってしまったオペレーターが出てしまっている。
そのため、お昼時で人が集まっている食堂で正体を明かしてしまえば大惨事…具体的に言うと、美少女ループス(男)を推している者たちとバラされたヤマトが精神的な意味で大変なことになるのは誰でもわかる事だ。
なお正体を知る者云々に関しては、知っている面々がヤマトに気を使って黙っているだけなのだが。
閑話休題
「そ、その話はまた今度しようか?」
「お兄ちゃん……正直に答えて欲しいなぁ……」
「分かった!ちゃんと答えるから、アーツを抑えて!」
何とか話題を逸らそうとするも、そんなのは許さないと言わんばかりにバチバチと体からスパーク音を鳴らし、そのスパークのせいで髪の毛が逆立ち始め、その上ハイライトが消えた目で迫り来るイカズチの姿を見て、ヤマトは冷や汗をかきながら「答える」と言ってしまった。
「本当?それじゃあ早く答えて!」
あっという間にアーツを抑え、いつもの様子に戻ったイカズチを見て、ヤマトは彼女が演技をしていたことに気づくも後の祭り。答えると言ってしまった手前、今更なしなんてことも出来ず、かといって場所を移そうとも言い出せず、ヤマトは肩を落として口を開いた。
「イカズチの言ってる通り、その写真に写ってるのは俺だよ……」
「やっぱり!そうだと思ったんだよ!だって、この写真の困ってる顔の目の感じとかお兄ちゃんに似てるし、この写真は立ってる時の姿勢の重心の位置がお兄ちゃんと一緒だし、あとこの足を組んで座ってる時の写真なんかは、足の組んでる角度とかそういうのがお兄ちゃんと一緒で──」
「分かった、分かったからもういいよ」
嬉しそうな表情を浮かべながら、暴走し始めたイカズチをヤマトは宥めながら周りの様子を伺う。予想通りというべきか、様子を伺っていた者たちからヤマトへ向けられる視線というのは、疑問的なものもあれば、懐疑的なもの、中には嫌悪感や失望といったような向けられて嬉しくないものが殆どであった……最も、一部は目を輝かせている者もおり、その視線に晒されたヤマトは謎の悪寒を感じ、ブルりと身体を震わせた。
そしてそれは一緒にいたアズリウスとメランサ、そしてイカズチにも伝わったようで、特にイカズチは嬉しそうな表情から一変、不機嫌そうな態度になると。
「ちょっと、何お兄ちゃんにそんな目……特にエ○同人のモブがヒロインを見つめるみたいな目を向けてんの?あんたら、そこに並びなさい。まとめてビリッと……」
「イカズチ、頼むから穏便に事を済ませるってことを覚えて?本当にお願いだから…!あと、その○ロ同人云々に関しては誰に聞いたか教えてね?」
「それですわ!」
またもやバチバチと音をたてて、周りを威圧し始めたイカズチにヤマトが押さえ込むための説得として、そんなことを発言した時、アズリウスが椅子から立ち上がって食いつき、メランサも何か分かったかのような表情でポンと手を叩いていた。
その瞬間、何となく2人が何を思いついたのかヤマトは持ち前の勘の良さで察したものの、自分の予想が外れていることを期待して声を震わせながら2人に聞く。
「……何をやろうと?」
「それは勿論、ヤマトにまた女装してもらうんだよ」
「皆さんが納得してもらえるほどの仕上がりにしますから、安心して下さい」
「やっぱり……」
女装させられる時点で安心も何もないというのに、メランサとアズリウスは全く気づいていない様子に、ヤマトは天を仰ぐように顔を上げた。だが、補足しておくとこの2人は何の考えもなしにこんなことを言ったわけではなかった。この場であのような発言をすれば、ヤマト自身が望んで女装した訳ではなく、あの二人の手によって女装させられたというふうに周りは思うはず、という考えの元での発言であった。
実際、その発言のおかげでヤマトへ向ける視線は段々と同情的な物へと変わっていっており、ヤマトに対するヘイトは幾らか少なくなっていた。
「じゃあ、そうと決まったら早速行こう?」
「いや、なんでそんな普通に俺を女装させようとしてるの?」
「あ、あのさ……ちょっとお願いがあるんだけど…」
「イカズチちゃん、どうしたの?」
「実は……」
いざコーディネート、というタイミングでイカズチが珍しくしおらしい様子でメランサに声をかけ、そしてメランサは彼女のお願いを聞くと、一瞬驚いたような顔を浮かべるが、すぐに優しい表情を浮かべ了承したのだった。
*****
「……?食堂の方が騒がしいな」
昼食を摂るにしては少し遅い時間帯で、食堂の近くを歩いていたドーベルマンの耳は、食堂内がシャッター音やら叫び声やらで騒がしくなっているのを捉えた。
彼女はこめかみを抑えながら、騒ぎすぎだと注意するために自身のスイッチを切り替えていざ食堂へ行こうとした時、入口付近で左手人差し指だけを立てた状態で左腕を頭上側へ伸ばしうつ伏せに誰かが倒れているのが目に入った。
一瞬、ドーベルマンは戸惑うもののすぐに意識を切り替えて倒れている人物へと急いで駆け出し、抱き起こそうとした所でその倒れている人物が龍門近衛局特別督察隊隊長のチェンであることに気がついた。
「お、おい!しっかりしろ、一体何があった…!き、気絶してる…?だが…」
「( ˘ω˘ )」←幸せそうな顔
「な、何故こんなにも幸せそうな顔で鼻から血を出しながら…?」
自分が知っている人物であれば、100%しないであろう表情で気絶していることにドーベルマンは戸惑いつつも、未だに騒がしい食堂の方へと目を向ける。十中八九、チェンがこんな状態になっているのは食堂が騒がしいのが関係あるはず。
──確かめる必要がある。
ドーベルマンは覚悟を決めると、チェンの鼻血を拭き取り彼女を壁に寄りかかるように座らせ、食堂の中へ入っていくとそこには──
「次、2人でハートマーク作ってみて!」
「分かった、お兄ちゃん早くー!」
「はいはい…これでいいかな?」
「ああ~いいっすね~」
「なあ、信じられるか?あれが男でしかもあのヤマトなんだぜ…?」
「印象が違いすぎてギャップ萌え」
「可愛いは正義、はっきりわかんだね」
「折角だから、俺は兄と妹どっちも推すことにするぜ!」
「姉妹丼っていうネタも書ける…!」
一言で言えば、ドーベルマンにとってそこは混沌としていた。まず、中央にはメランサが学生時代に着ていた制服を着ているノリノリのイカズチと、それと同じ服を着て諦めたような、悟りを開いているような目をしている女性のループス。その近くにはカメラを片手にポーズの指示をしながらシャッターを切るクロージャ。そしてその周りにはガヤガヤと男女問わず多くのオペレーターが騒いでいた。
「こ、これは一体……?」
「ドーベルマン教官、あなたも来ていたのか」
「ドクターか…」
後ろから声をかけられたドーベルマンが振り向くと、そこにはいつ来たのか分からないがドクターが立っており、彼女はドクターが神出鬼没なのはもう当たり前のことなのでスルーしつつ、今の状況の説明を求めた。
「ドクター、これは一体?」
「あー、簡単に言えばロドス七不思議の1つの、謎の美少女ループスのネタばらしだよ。まあ、言っちゃうとイカズチの隣にいるヤマトなんだけどね」
「……ドクター、私の目にはイカズチの隣にいるのは女性のループスが写っているんだが?」
「うん、だからヤマトだよ。メランサとアズリウスによってコーディネートされて、女装してるヤマトだよ」
ドーベルマンはドクターの答えに言葉を失った。そして、目をゴシゴシと擦ってイカズチの隣にいるループスの女性を見る。確かに、よく見るとヤマトの面影が見えないことはないのだが、正直言われないと分からないレベルだ。
だが、ここでもう1つだけドーベルマンの中にある疑問が浮かび上がった。
「……なあ、ドクター。何故チェンが食堂の入口でた倒れていたのかわかるか?」
「あー…多分、丁度入ってきたタイミングでヤマトとイカズチがあざと可愛いポーズとってたから、それでやられたんだと思う」
「そう、なのか…」
****
それから数日後、某K氏の裏ルートで売られた今回のヤマト兄妹の写真集はかなり売られ、彼女の懐はかなり潤い、そして今回の1件でヤマトは女装したらイケる口なのが判明し、一時期女装した彼が18禁展開になる本が一部の者達に売れ渡ったのだった。
キャラ崩壊が凄まじい!!
キャラ紹介
ヤマトちゃん:遂にロドス全員にバレた…が、何故かいい感じにまとまってしまった。なお、今回の件でもう女装に関しては何も感じなくなった模様。なのでメランサとアズリウスに声をかけられても、二つ返事で応じる様に…
イカズチ:兄と同じ服装を着れただけでなく、ツーショット写真も貰ったので暫く顔がゆるっゆるだった。
メランサ:ヤマトちゃん専属コーディネーターその1。
アズリウス:ヤマトちゃん専属コーディネーターその2。
チェン:死因、尊死。止まるんじゃねえぞ……(そして今回の話で1番キャラ崩壊が酷かった犠牲者。ファンの方、本当に申し訳ない)
ドーベルマン:新しい世界を知った。
ドクター:まさか自分が全ての発端だなんて言えない…(震え声)
W:へえ、子犬ちゃんったらこういうのもイケるのね…へぇ……
ラップランド:ペアルック羨ましい
リーシー:私じゃなければ即死だった…
知らない人:どこの別世界のドクターなんですかねぇ…(すっとぼけ)そして、勝手に出演させてしまって本当にすみません。
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