──サルゴン。
砂海とオアシスの境目に国土が広がっているいて、サルゴン人の多くは荒野と密林の中に暮らしているとされている場所であり、一言で言ってしまえば、自然豊かなところ、というのがヤマトの感想である。
そしてヤマトはそのサルゴンの熱帯雨林の中で──
「皆、どこに……?」
絶賛彷徨っていた。
*****
「サルゴンに行く?」
「そう、ガヴィルがちょっと用事があるらしくて帰るらしいんだけど、ついでにドクター含む私達も着いていくことになったの!」
「えっ、よくケルシー先生が許してくれたな…あ、はいココア」
「ありがとう!んー、美味い!」
自分に宛てがわれている部屋に普通に入ってきた挙句、お茶を強請ってきたブレイズの話を聞いたヤマトはアイスココアを差し出して意外そうな顔をする。それは、エリートオペレーターとドクターというロドスの重要な位置にいる人物2人にお暇をあげるとは、ヤマトとしてはあのケルシーが許すとは到底思えない故の反応であったが、ブレイズに絡まれない日が数日出来たことに同時に気が付いた。
「けどそっか。ちょっと寂しいけど、ブレイズとは暫く顔を合わせられないのか…」
色んな意味で喧しいものの、気のおける友人と会えなくなるのが寂しく感じたヤマトは、少しだけ気落ちしたような声を出しながら自分の分のアイスココアを飲み──
「え?君も行くんだよ、何言ってんの?」
「ぶフォッ!?」
「あ、ちょっ、大丈夫?」
盛大に吹き出した。ブレイズが慌ててティッシュ箱を持ってきて、吹き出されたココアを吹いていくが、ヤマトはそれどころではなかった。それもそうだろう、話の展開からしてヤマトはてっきりブレイズ達がガヴィルの故郷に行く、と思っておりまさかそこに自分も含まれているとは思ってなかったからだ。
(いや、あれだ、多分聞き間違いか幻聴なんだろうな……後で仮眠を取ろう……)
「言っとくけど、聞き間違いとか幻聴じゃないからね?」
(なんで考えてる事が…!?)
(って思ってるんだろうけど、正直プライベートの時のヤマトって顔に出るから分かりやすいんだよねー)
自身の考えてることを当てられたことにヤマトが驚いている中、ブレイズはコロコロ表情が変わる彼を微笑ましい目で見て、それから事情を説明し始める。
「ケルシー先生から働きすぎなキミも連れていくように言われてね。あと、お義父さんとお義母さん、ガーディアンのマサムネさんとカシマさんからも同じような言伝を貰ってるし、キミの仕事も小隊の子が肩代わりしてくれる手筈にもなってるから、実質強制だよ!」
「お、おうそうなの……って、ちょっと待って。お義父さんお義母さんの言い方おかしくなかった?」
「そうだぞ、ゴリラ猫。何勝手にヤマトのご両親をお義父さんお義母さん呼ばわりしてるんだ」
「え?そんなの私とヤマトがそういう関係に……」
「よし分かった。まずは表出ろ」
いきなり部屋に入ってきたフロストリーフとブレイズが殴り合いに発展しかけたり、それを止めるためにヤマトが鳩尾にいいのを食らったり(事故)、フロストリーフも行くことになったり、プロヴァンスとラップランドそしてイカズチが血涙を流す勢いでブレイズとフロストリーフを睨んだり、と色々あったが、結局ヤマトは荷物とともに飛行装置の中へぶち込まれ、サルゴンへと向かったのだった。
****
それから、ヤマト達が乗っていた飛行装置は何者かの攻撃によって落とされてしまい、ヤマトは反射的にフロストリーフを抱えて一緒に外へ飛び出した…までは良かったが、その最中でフロストリーフとハグれてしまい、現在はこうしてジャングルの中を歩きながら今回飛行装置に乗っていたメンバーを探しているのだが。
「……だめだ、どこにいるか全然分からない」
周りは高い木や蔦、図鑑で見た事があるような無いような植物だらけでロドスのオペレーターどころか、現地に住む人にすら会えない始末。
一応、集落や村を見つけられないかと木を登って高所から探してみたものの、全く見えず結局足で探すことになっている。
「それにしても、ユイお姉ちゃん本当にこうなることを見越してサバイバルキットとバックパックを持たせてくれたのかな……?」
ふとヤマトは出発前に渡されたサバイバルキットや多めの水と食料が入ったバックパックを渡した、自分の小隊のメンバーであるユイの一言を思い出した。あの時、ユイは「墜落するかもしれないからこれ持ってって」と一言だけ告げ、「墜落させねーよ!」と言うパイロットのディランを無視してさっさと帰ってしまったが、こうなることを予見していたとすれば、流石ガルーダ小隊のブレインだ、とヤマトは1人見習うところがまた更に増えたなと頷いていた。
……なお、真相はユイが最近やった某バイオなシリーズのゲームではどの作品でも大抵の飛行装置が墜落していたため、ついネタ半分で渡したというものだが……世の中には知らない方がいいこともあり、後にユイは純情な眼差しで「凄い!」と褒め倒してくるヤマトから、この真相を必死に隠す羽目になる。
閑話休題
「でも、2日歩いても誰とも会えないどころか現地の人の村とかに辿り着けないのはマズイな……せめて何処かで水を補給しないと…」
ユイが渡していた水と食料は3日分と多めだったが、2日間歩いて川や食べられそうな植物などを見つけられてないのが現状。食料は念の為初日から少なめに食べていたので、あともう2日はもつと見ていい。だが水に関しては、熱帯雨林の気候のせいで汗を沢山かいてしまうため節約するわけにもいかなかったため、明日にはもう無くなるというのが今の状態。そのため、川か村を見つけて物資を補充するというのが今のヤマトの行動の方針となっている。
「……本当に誰とも会わないなんて。ブレイズやフーちゃん、ドクター達は大丈夫なのかな……っ!」
ブレイズ達は無事なのか、はたまた誰かと一緒に行動しているのか。彼女達の心配をしながら歩いている中、何かが近づいてくる気配を感じたヤマトは、背中の機械仕掛けの剣の柄を握り何時でも斬りかかれる体制を取りながら、その何かが出てくるのを待つ。そして現れたのは──
「………」
「……女の子?」
リーベリの小柄の女の子であり、手にはボクシングで使うグローブを持っていた。最初こそ、予想していなかった人が現れたことで呆けていたヤマトだったが、すぐに気を取り直すとこの地に来て初めて会った人というのもあって、剣の柄から手を離してから話しかけた。
「すまない、君はここに住む人かな?俺は訳あって別の国から来たんだけど、出来たら君が住んでいる所に連れて行って欲しいんだけど……」
『誰だお前は?』
「え?あれ?初めて聞く言語…?」
『何を言ってるんだ?』
「あー、どうしよう……」
(それよりも……こいつ、出来るな)
ヤマトはここで言語の壁という問題が発生したことで、額に手を当て真剣に悩み始めた一方で、リーベリの少女は目の前でウンウン唸っているループスの青年がかなりの強者であることを読み取っていた。すると段々少女の中に闘ってみたい欲が出始める。
(……まあ、ちょっとした肩慣らしとしてやるのはありだな)
「えーと、本当にどうし……っ!?」
未だにどうしようかと頭を抱えこみ始めたヤマトは、自分に振るわれた拳にギリギリで気が付きをそれを後ろにバックステップをしたことで躱し、距離を取る。ヤマトは自分に拳を振ってきたリーベリの少女に目を向けると、そこにはグローブをつけファイティングポーズをとる彼女の姿があった。しかし、彼女からは敵意や殺気のようなものは発せられたおらず、同時にラップランドやエンカクと同じように感じる闘志から、ヤマトは何となくどういうことかを察し、そしてそういうのに慣れている彼はため息を吐いて同じく拳を構える。
「何で俺はこんなに戦闘狂とかに好かれるんだろうなぁ……」
『やる気になったか?まあ、いい。いくぞ!』
「少しは痛いかもしれないけど、我慢してね!」
ヤマトは拳を握りこんでこちらに向かってくる少女を真っ直ぐ見すえて迎え撃った。
****
「いやー、それにしても合流出来て良かったよ」
「そうだね、ブレイズとフロストリーフの2人と合流出来て良かった」
熱帯雨林を歩いてる中、大声を出しながら自分たちを探しているブレイズとその隣でうるさそうな表情をしているフロストリーフと合流したドクター一行。彼らは現在、先程の2人を交えてトミミとの集合場所である大滝へと向かっていた。
「そういえば、フロストリーフはんも水着持ってきてたんやっけ?」
「……まあ、一応な」
「それって、もしかしなくてもヤマトたいちょーに見せるようでしょ?うーん、恋する乙女って感じ~」
「そんな訳ないだろう。普通に何となくで選んだものだ」
嘘である。フロストリーフは態々ヤマトの好みを事細かに調査し、そして自分なりに分析し、配色も自分に合うものを選ぶだけではなく、ヤマトは程よい大きさで綺麗な形を好む傾向があるのを知ってからは、そういうマッサージやトレーニングをして程よい大きさまで何とか上げるという徹底ぶり。この通りガチでヤマトを落としに来ているが、それが知られるのが何となく恥ずかしいため、彼女はそっぽを向いて誤魔化しにかかった。
しかし、ウタゲとクロワッサンにはそんなことお見通しであり、ニヤニヤしていたが変にからかうと斧が飛んでくるorあとから知ったヤマトによる「マサムネ式トレーニング~死んだ方がマシレベル〜」を強制的に受けさせられる可能性があるため、ニヨニヨしてフロストリーフを見るだけに留め、今度はブレイズへと矛先を変える。
「ふ~ん、まあそういうことにしておいてあげるよ」
「そうなると、ブレイズはんもあんまり考えてないん?」
「私?私は勘で選んでる感じかなー」
半分嘘である。確かにブレイズはフロストリーフ並の調査などはしていない。だが、ある程度ヤマトの好みを考えてそこからあとは自分の女の勘が命ずるものを選ぶ、と言った感じである。なお、彼女はヤマトの好みを知ってからはどこがとは言わないが、垂れないように必死こいてマッサージやトレーニングをしている。
そして、これまた半分嘘だと見抜いたウタゲとクロワッサンがそこを着いて彼女をオモチャにして遊ぼうとした時、近くからガサガサと物音が聞こえた。
「皆、一応警戒態勢を……」
「ん?もしかしてその声はドクター?」
「お?この声って「ヤマト!」あ、フロストリーフ!」
「ちょっと!?あーもう、ドクター私も先行するから!」
「恋する乙女って凄いんやな~」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、俺らも行くよ」
「私も同感だな、ほらさっさと行くぞ」
ドクターが念の為陣形を整えようと指示を出したところで、それに反応した声から、物音を立てた正体がヤマトということが分かったフロストリーフはすぐに駆け出し、それを見たブレイズも一緒に突撃。その一連の行動を見たクロワッサンがそんな感想を漏らしている中、珍しくドクターが呆れながら言ったことにガヴィルも同調し、ヤマトの声がした方向へ行くと。
「ヤマト、正直に答えてくれ。お前は小さい女が好みなのか?そうなのか?その枠は私じゃだめなのか?」
「いや、何言ってんの?もしかして暑くて頭がおかしく…?」
「いや、それはこっちのセリフだよ。なんで…なんで…
見ず知らずの女の子をお姫様抱っこしてるの!?」
そこには気絶している見知らぬ女の子をお姫様抱っこをしているヤマトに詰め寄るフロストリーフとブレイズの姿。正直、この時点で色々ツッコミどころ満載な上、絵面としてはなかなか面白いのだがドクターは少し考えて。
「取り敢えず、ヤマトが女児誘拐しロリコンってことをケルシーに報告すればいいかな?」
「変な言いがかりはやめて!?」
「くっ…!ヤマトの好みを修正しないと私の勝ち目が…!」
「ブレイズ?それいつもの悪ノリだよね?本当にそんなこと思ってないよね!?」
「お前、クマールまで手を出すとはな……まあ、悪いやつじゃねえしなんやかんやお前と相性いいと思うぜ?」
「ガヴィルさんも頼むから俺の話を聞いて!?」
悪ノリするドクターとガヴィル、腹を抱えて大笑いしてるウタゲにクロワッサン、目がマジになってるブレイズ、そして「これは押せばいけるのでは…?」と呟くフロストリーフというカオスな状況。ヤマトは無責任にも、早くロドスに帰りたくなったが、サルゴン旅行はまだ終わらない。
彼のバカンスはこれからだ!
~[完]~
「あ、何か打ち切り漫画みたいな終わり方してるけど、もう1話あるからな?」
今回は外伝というのもあって地の文も少しはっちゃけてみました。因みにフリントは(ヒロインにはなら)ないです。
キャラ解説
ヤマト:辺境の守護者√のヤマト。基本的に1番しっかりしてる(当社比較)がやはり素でとんでもないことをする。今回のお姫様抱っこ事件は、単純に背中に剣やらバックパックやらを背負ってるせいでおんぶ出来ないから、というもの。因みにフリント(クマール)とその部下は纏めてぶちのめした。因みにこの√のヤマトもバスターウル○とパワーゲイ○ーをとある死んだほうがマシだと思えるトレーニングの果てに、習得してます。
フロストリーフ:辺境の守護者√のヒロインの1人。多分、この√の中では1番まとも。なおヤマトの好みの情報源はヤマトの部屋を掃除した際に見つけてしまった聖本と、現ガルーダ小隊のサンクタの男性。
ブレイズ:辺境の守護者√のヒロインの1人。この√の中では3番目にヤマトとの付き合いが長く、コンビネーションも息がすごい合う。ヤマトを良い意味でも悪い意味でも振り回すが、振り回される本人はそんなに悪い気はしてないらしい。因みに腕相撲などの力勝負はヤマトより強い。
ガヴィル:今回のイベントの主人公。彼女の水着姿を見て驚いた方も多いのでは?なお、作者は雰囲気が変わりすぎて「???」状態に。いや、本当に変わりすぎ。
ドクター:体が丈夫になったらしい。
フリント(クマール):星5前衛でボクシングを幼い頃からやっていたとのこと。こっちの小説では、ゲームとは違いブレイズではなくヤマトに勝負をふっかける。でも、総合戦闘力はブレイズより上なヤマトには勝てるはずもなく……。
ウタゲ&クロワッサン:人をからかう時は息ぴったし(当小説設定)。それにしても、キョウイ的な格差でs(ここから先は血がこびりついて読めない)
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