…はい、また一週間以上空いてしまい大変申し訳ございません。
多分、これからはリアルの影響もあって投稿頻度がおちてしまうと思います…なので、大変申し訳ないのですが、これまで以上に気長に待ってくださると幸いです。
さて、喧騒の掟の後半の方、どうぞ。
「うっ……ぐっ……」
「ふー……これで何回目なんだろう……?」
ヤマトは呻き声をあげて倒れている男たちを見下ろしながら、疲れを吐き出すかのようにため息を吐く。
現在に至るまでにヤマトは最初に襲ってきた男たちと同じ服装の者たちと何度も交戦しており、ついさっきので5回目になる。正直、5回も襲撃されれば、幾多の戦場を経験した元傭兵であるヤマトと言えど肉体的にも精神的にも疲労を覚える。
だが収穫ももちろんあった。
(まさか、俺が入る前にあったシチリアでの喧嘩が原因とはね……)
平和的な方法で聞いた話によれば、どうやらヤマトがペンギン急便に入社する前にとあるマフィアといざこざがあったようで、自分を襲ってきているのはそのマフィアの者たちで、復讐とペンギン急便の立場を自分たちのものにしようということで動いている、とのことだった。
(まあ、これが嘘だったらどうしようもないんだけど……でもそういうことなら俺のことを戦い方まで知ってること、襲撃をしかけてきてることにも辻褄が通る)
正直、頭が痛い案件であった。よりにもよってまだ見ぬバイソンが職場に入る初日にこんなことが起こるという最悪のタイミング。
別にヤマトはバイソンの戦闘力のことは心配していない。事前に聞いていた話や彼の写真からして、自分の目で見てもそうそうやられる程弱くはない。むしろ、自分が相手する場合少しだけ本気を出さないと時間がかかると思えた程だった。自分のペースが乱されなければ。
写真越しとはいえ、バイソンの目を見た時ヤマトは何となくであるが、バイソンはいい意味でも悪い意味でも「真面目」なのではないかと感じていた。もし、そうであれば、ペンギン急便のメンバーのハチャメチャ具合を見て動揺したりと何かしら精神的に影響を及ぼすのは難なく予想可能。
そうなってしまえば、瞬時の判断が遅くなってしまったり、迷いが出てしまう可能性が高い。ヤマトは、そのせいでバイソンだけではなくその彼をフォローしようとしたテキサス達の身に危険が及ばないかが心配であった。
そのため、先程からテキサスを始めとしたペンギン急便のメンバーに連絡を取ろうと連絡端末を弄っているのだが。
「……ダメだ、また繋がらないし、返信も来てない」
結果はどれも著しくなく、それがどういったことを示しているのかをヤマトは理解しており、焦りと何も出来ていない無力な自分への苛立ちが募るばかり。
(どうする? 無闇矢鱈に探しても時間の無駄だ。かといって、何もしないのはダメだ。聞き込みするにしても、時間がかかりすぎる。どうすれば──っ!)
「やあ、こんなところで何してるんだい?」
「!あんたは──」
必死に打開策を考えてる最中、後ろから声をかけられ振り返ったヤマトは、その声の主が予想外の人物であったため驚愕の表情を浮かべた。
****
「さて、見せてもらうとしようか。エンペラーがどんな変わり者を飼っていたのかを」
「──っ! 剣が砂に触れた瞬間折れただと……? 厄介な」
「そうじゃ。これのおかげでワシに剣を向けようとする者は少なくてな……」
「それならこれはどうだ!」
戦闘態勢を取った鼠王に向けて振り下ろされたテキサスの源石剣による斬撃は、鼠王を纏うようにある砂に触れた瞬間に刃が折れる結果となり、それを見たエクシアは自身の愛銃のトリガーを引き銃弾の雨を浴びせる。
「残念じゃが、銃弾も効かないのじゃよ」
「やっぱりダメかー!クロワッサン、任せた!」
「ダメや。うちのハンマーも砂に絡み取られとる。ビクともせえへんわ」
しかし、エクシアの銃を持ってしても鼠王の砂の盾を打ち破ることは叶わず、突破できなかった銃弾が地面に転がる。予想していた現実にエクシアは悪態を着きたくなる気持ちを抑え、クロワッサンに声をかけるも彼女のハンマーは鼠王が撒き散らしている砂によって絡め取られており、彼女の力を持ってしても全く動かせないほど強力に絡められていた。
「無駄な足掻きじゃよ。この程度かの?ペンギン急便」
「まだまだ、こんなものじゃないよ……それに、1人忘れてるんじゃないかな?」
「む……? ──っ!」
プレッシャーを更に強く放ちながら、そして余力をまだ残しているのが一目で想像つくような態度で告げる鼠王に対し、モスティマは軽い調子で返し、鼠王の後方に向けて軽くウィンクする。
モスティマの場と状況に合わない仕草に鼠王は怪訝そうな目を向けるも、その直後背後から急に思わずゾッとするような殺気を感じ、振り返った瞬間、鼠王の周りを囲むように6本の形状が違った剣が浮いていた。
「む……?」
「え……」
それを見て困惑する鼠王とバイソンを他所に、テキサス達は安堵の息を吐き、エクシアはにへらと表情を崩してこの現象を巻き起こした人物の名を呼ぶ。
「もう、大遅刻だよ。ヤマト君!」
「……はあっ!」
「ふっ!」
その直後、目に止まらぬスピードで浮いた剣を手に取っては刃にアーツを流し込んでから鼠王に斬撃を加え、そしてすぐにその場を離脱してまた別の剣を取ってを5回繰り返し、最後の一撃に合わせるようにモスティマがアーツを1発だけ放つと、鼠王の砂の盾はまるで風が吹いたかのように霧散した。
「「今だ、エクシア(エクねぇ!)」」
「オッケー、弾幕射撃ターイム!」
*****
「お疲れ様、バイソン」
「あ、ヤマトさん……」
鼠王を退け一連の騒動の流れを推測したテキサスの話を聞き終え、そして自身の執事を話をしたあと散歩して迷子になったところでバイソンはヤマトに声をかけられた。
今のヤマトは鼠王と対峙した際に持っていた合体剣を持っておらず、表情を含めた雰囲気もあの時とは違い柔らかいものであり、ヤマトはバイソンの隣に立ち少しだけ明るくなり始めた空を黙って目を向け、何を話していいか分からないバイソンも何となくそれに倣って空を見る。
「……良い目になったな」
「え?」
唐突に隣にいるヤマトから告げられたバイソンは思わず声を零して、ヤマトの方に視線を向けるが、当の本人は顔をぷいっと逸らして先程と同じように空を見つめる。が、何故いきなりあんなことを言ったのかが何となく気になってしまったバイソンは、ジッとヤマトの横顔を見る。
「…………」
「………………」
「……最初、君の情報が乗ったデータで君の写真を見た時と比べて、真っ直ぐで振り切れた目になってると思ったんだ」
「…………」
「……正直心配していたけど、君は俺が思っていた以上に強くて、しっかりしたトランスポーターみたいだ」
「.そうですか」
バイソンの視線に耐えきれなくなったヤマトは視線を隣で熱烈な視線を向ける彼に戻して、先ほどの発言の理由を話し、そして彼を一人前のトランスポーターとして認めているかのようなこと述べ、それを聞いた本人は少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべる。
「.ともかく、君がうちにまだ残るのか、別の道に歩むのかは分からないが……その……なんだ……」
「?」
「……初めての後輩なのは事実だから、困ったらいつでも頼ってくれ。可能な限り力になる」
(……ああ、なるほど)
言いたいことを言い終えたヤマトは自分でも恥ずかしいことを言ったのを自覚しているようで、恥ずかしげに顔を赤くしながらそっぽを向く。
その姿が、鼠王と退治していた時に見た頼もしい姿から遠く離れていたことにポカンとしつつも、バイソンはテキサス達がヤマトのことをあんな風に言っていた理由が何となく分かった。
(……僕に、こんなお兄ちゃんみたいな人がいたら良かったのにな)
バイソンはフッ軽く笑みを零し、ヤマトと一緒に日の出を見届けるのだった。
なお、この後絡んできたチンピラを2人は息のあったコンビネーションで返り討ちにし、その帰り道でペンギン急便に対するとあることで盛り上がるのだった。
****
「やれやれ……全くボクの約束すっぽかすなんて酷いじゃないか」
フォルテの少年と仲良さげに歩いている茶髪のループスの青年を少し離れた物陰から見ながら、服を赤く染めている彼女は拗ねたように零す。
正直、今すぐ約束をすっぽかしたループスの青年に文句を言いながら自分達にとっての楽しいデートと洒落こみたいところではあるが、とある情報が手に入ったことと、青年の珍しい照れた顔を見れたということ、そしてちょっとした憂さ晴らしが出来たのもあってか、彼女は今回だけは許すことにした。
どうせ、彼とはこれからも定期的に会えるのだし、よくよく考えてみれば彼の剣を持ってきて、更に仕事仲間の場所と状況を教えてあげたという恩を売りつけることも出来ているのだ。(もっとも、自分が彼の剣を持っていたことに対して、彼は露骨に引いたような態度を取ったのは解せなかったが)
(そうすると、今はここで油売ってる場合じゃないね。何を彼に要求するか考えておかなきゃ)
彼女はそう纏めると、その場を去る前にもう一度ループスの青年の方を見やる。すると、こちらの方に顔を向けている青年の姿が目に入る。
(ふふ、やっぱりボクらは気が合うみたいだね……それじゃ、また今度ね)
彼女は今度こそ彼に背を向けて歩き出す。頭の中には、彼の仕事場の先輩であるループスの女性とその彼のことしかない。
──そうだな、まずは手始めにテキサス達にヤマトの傭兵時代のこと教えてあげようかな?
──ボクはその過去を受け止められた上でヤマトのことを想えてるけど、果たしてテキサスにはそれが出来るかな?
ループスの女性──ラップランドはこの後に起こるであろう出来事に想いを馳せるのだった。
最後が怪文書めいてて、もう目が当てられない…
キャラ紹介
ヤマト(ペン急):前回の話の後に、シラヌイの隠れ家にバイクを預け、それから襲いかかってきたマフィア達を返り討ちにしていた所やべーループスと遭遇し、彼女の情報を元に遅れながらも現場に到着し、鼠王の砂の盾を破壊するのに尽力した。何故か、バイソン君に対してはコミュ障のよるあがり症の症状があんまり出なかったため仲良くなれたようで、後日嬉しそうに尻尾を振っているのを仕事先の先輩達が目撃したとか。
バイソン:今回の1件で吹っ切れた男の子。ヤマトのことはこの後交流を重ねていくうちに、ヤマトの無自覚なお兄ちゃんムーブの餌食となり無事彼を兄と慕うように。どけ、僕は弟だぞ!とは言ってないためセーフ。
テキサス:なんか、嫌な奴の匂いがヤマトからしてちょっとだけ機嫌が悪くなったが、テキサス専用ヤマト特性クッキーが献上されたため期限は良くなった。チョロすぎぃ!
エクシア:モスティマ…
クロワッサン:後日、バイソンにもメイド服着させようと計画してるのがヤマトにバレた模様。
ソラ:バイソン君がソラ姉って呼ぶようになってから、ソラ姉って呼んでくれなくなっちゃった(´・ω・`)
ラップランド:この時期からヤマトへの好感度は限界突破してるやべーやつ。どこからか、ヤマトの傭兵時代のことを知りそれを知ってヤマトが最初会った時遠距離武器を持ってなかった理由だけでなく、それがトラウマになってるというのを察した。これをテキサス達にばらまいて、それを知った彼女たちがヤマトを拒絶したところをGETしようと画策中(計画は失敗する模様)
なお、ヤマトはこの日合体剣を自分が住んでる部屋にある専用のケースにしまっていた。なのにラッピーが持ってこれたということはつまり…?