転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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CHAPTER 2 くねくね
仕方のない出来事だから


 

 

 

 

ミーンミーンミンミンミン!!

 

「.....」

 

「.....」

 

ミーンミーンミンミンミン!!

 

「.....」

 

「.....」

 

ミーn

 

「うるっせぇーーーー!!!!!!!」

 

セミ兄貴のうるせぇ雑音により堪忍袋の緒が切れる。俺の叫びは余程らしく、気に止まっていたセミが一斉に飛び上がった。いやほんとに勘弁してほしい。こんなクソ暑いときにノイズをずっと耳に浴びせられるとか...これが夏の風物詩ですかそうですか。

 

「引道くん、落ち着いて...怒ってもどうにもならないよ。とりあえず、近くの人に道を教えてもらお?」

 

「うぅ...はい.....」

 

姫野さんに宥められ、なんとか落ち着きを取り戻す。ダサいとか思われても今さらだ。この人になら何でもぶちまけられると思う.....怪しい意味はない。

 

姫野さんとしばらく歩き、ゲームでも見たような光景がだんだんと現れてきた。

 

「あ、姫野さん。自販機ありますよ!買いませんか買いましょう!」

 

「う、うん...」

 

少し引き気味に答えられたが、今の俺はそれほど暑さでストレスが溜まっているのだ。ここが都会とかなら車の音でぶちギレていたはず。120%は解放できるよマジで!

 

 

 

ガコンッ

 

プシュッ!っと、缶を開ける音が鳴る。余程炭酸が詰まっているのか、いつもよりも音が大きく綺麗に聞こえた。

 

姫野さんはお茶を買ったらしく、それを丁寧に飲む。髪を耳に掛け、首筋に流れる汗。あれ?もしかして俺今誘われて...

 

「んっ...それじゃあ、いこっか?」

 

「はい...」

 

あまりの可愛さとエロさに思考がぐちゃぐちゃになる。いやいや落ち着け引道新聖!お前は見た目だけで堕とされる人間じゃないだろう!?性格4割顔6割。あ、ごめん嘘ついたわ。

 

姫野さんの後ろをひたすらついていく。何故横に並ばないかって?今この顔で並んでみろ。引かれるとかの問題徐ないぐらい気持ち悪い笑み浮かべてるんだぜ?

 

「引道くん、その...そんなに離れられると...心配って言うか、傷つくんだけど...」

 

「あ、あぁその、これはですね!?姫野さんの後ろをガードしているんですよ!今の世の中、人だろうが妖怪だろうが怪異だろうが、背後から突然襲い掛かってくるのがお約束です!」

 

「そ、そうなの...?」

 

「はいそうです!」

 

姫野さんはそれでも納得いかない顔をしていらっしゃる。いや、まぁ背後とか不意討ちかましてくる奴はいるんだけどね。というか俺達つい最近、人形の怪異に出待ちされたばかりなんだけど...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ...ここ曲がった先に家が見えるよ!誰かいるかもしれない...いってみよう...?」

 

「...そうですね」

 

結局横に並んで歩かされた。自分のためにしてくれるのは嬉しいが、俺がそこまで気負う必要はないとのこと。いや、この世界であなたが死んだら俺戻れる気がしないんだけど...。なんてことも言えず今に至る。

あ、顔のことは何も言われなかったよ。ちょっとガン見されたぐらいで何も言われなかったよ(泣)。

 

「ここまで来るのに、家なんて見なかったよね?」

 

「そうですね、不思議なこともあるもんです」

 

嘘である。普通ここに自販機が置かれているのなら、周りにもう少し家があるものなのだ。例えそれが理由ではなくとも、この先にコンビニを置く意味なんてない。

 

俺達はもう、ヤツに見いられている。今でこそまだ姿は現さないが、この後に出てくる方言おじさんの犠牲により出てくる。おじさんごめんよ。

 

 

家に辿り着いた俺達はインターホンを鳴らす。しかし返事は帰ってこず、ドアをノックするが何も起こらない。

 

誰もいないと思った姫野さんは、周辺を探索しようと言い出した。俺はこれに従い、畑の方へ何気なく誘導する。

 

畑に辿り着くと案の定、方言おじさんが作物を収穫していた。姫野さんはやっと人を見つけたのが嬉しいらしいのか、早足でおじさんの元へ行k...ってちょっと、速い速い。

 

 

 

「ちょっといいですか...?」

 

姫野さんが遠慮がちに話しかける。別に話し掛けにくいなら俺にさせても良かっただろうに。え、コミュ症?歳より相手なら平気です。近所のおば...ママさんたちと世間話してたぐらいだしね!そこに強い力は働いてないから、自主的に会話してただけだから。捕まったとかそういうんじゃな

 

「んん?...珍しいのう、こげなとこに若い奴が来るとは。...人の畑まで入ってきてどないした?」

 

おじさんは畑を耕すのを止めると、首にかけていたタオルで汗を拭きながらこちらを見る。勝手に畑に入ったこともあってあまり良い印象とは言えないだろう。

 

「あの......菊川駅にはどう行けば良いのでしょうか?」

 

「菊川駅......?そりゃあお前......こっからずっと西だよ」

 

「......え?」

 

姫野さんが呆けたように答える。かくいう俺も訳は知っているが、当たり前の聞かされるとその不可解なことに疑問を強く抱く。

 

おじさんは俺達の反応を見て不思議に思ったのか、優しく続ける。

 

「こっから先は畑しかなかばい。菊川駅に行きたいなら、元の道に引き返したほうがよかよ」

 

「......そうですか。どうもありがとうございました」

 

俺と姫野さんはお辞儀をしてその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「......ねぇ」

 

「俺達なら間違いなく西からここまで歩いてきましたよ。おかしいことは何もありません」

 

「そう、だよね...」

 

そう、これはただの迷子である。姫野美琴の迷子である。だから、ただ来た道を戻ればそれで解決するのだ。

 

無言の時間がひたすら流れる。別に気まずいわけではない。このクソ暑いなか、無駄な会話は体力を減らすだけなのだから。それでも姫野さんの顔は浮かないように思えた。

 

しばらく歩くと、右手に看板が見えてきた。

 

『菊川市は自然溢れるいいところです!

ゆっくりお散歩 よい健康! 市長 永田 照彦』

 

看板を見て姫野さんはボソリと呟く。

 

「散歩する距離じゃないよ......」

 

全くその通りです。石っころを草道に蹴っ飛ばし再度歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......あれ?」

 

「どうしました?」

 

どうやら何か異変に気づいたのか、ふと足を止める姫野さん。それもそのはず、今目の前に見えてきたのは自販機である。

 

「この自動販売機......さっきも見たような...」

 

そう言って自販機へと近づく。俺達は畑から出たあと、しっかりともと来た道へと引き返した。勿論その道中にこの自販機を通ったのは俺も姫野さんも知っている。だからこそ異様なのだ。

 

「これ...さっき俺が捨てた空き缶ですよね...」

 

「うん......でも、たまたまなんじゃないかな...」

 

自販機を離れると、また歩き出す。ちらっと姫野さんの顔を窺う。異様な光景を前にした表情には焦りが見てとれる。本当は自分でも気付いているのではないのだろうか...。

 

 

 

 

「...これって...!」

 

思わず声を張り上げる。それも仕方のないことだろう。何せ目の前には先程見たばっかりの看板があったのだから。

 

俺は落ち着いて目の前の現状を伝える。

 

「えぇ、この看板はさっき見たものですね。隣に続いている道もそのままですね」

 

「......」

 

俺の言葉でさらに顔を曇らせる。困った顔も魅力的だが、今そんな事を言えば暫くは口を聞いてはくれないだろう。それに、俺はそこまで空気が読めないほどKYではないのだ。俺のKYは空気が読める意味だ。

 

「もう一回歩きましょう。それでさっきの自販機へと辿り着いたら、一旦あのおじさんの所へ話にいきましょうか」

 

俺の提案に頷くと、またトボトボと歩き出す。姫野さんの足取りは重く見えた。今頃頭のなかは疑問と不安でいっぱいいっぱいなのだろう。

だからこそ、決して足を止めないよう俺がリードする。男だからと言えばかっこいいが、俺のはむしろ下心満々だからな。カッコいいものではない。

 

 

「......」

 

もうこれ以上の疑い用は無いだろう。何せ俺達の前には、先程話していた自販機があったから。もう一度近づいてゴミ箱を見る。当然そこには俺の捨てた炭酸ジュースの空き缶があった。

 

「......姫野さんの考えていることは分かっています。でもまずはおじさんに報告しに行きましょう。話はそれからです」

 

「......そう、だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おじさんの家の隣に続く道を歩く。その先の畑では収穫し終わったであろう野菜をカゴに詰め、木製の椅子に腰を掛けて休んでいるおじさんの姿があった。

 

俺達の姿が見えてきたのか、おじさんは立ち上がり俺達の方へと寄ってきた。

 

「またあんた達か...一体どうしたの?」

 

「あの......驚かないで聞いてください。こう言うと変なんですが......さっきから、同じところをぐるぐる回ってるんです」

 

そうそうループってんのよループってる。俺達の話を聞いたおじさんはやはり信じていないようだ。

 

「どんなに歩いても、同じ道に戻ってしまうんです。警察署からこの辺一帯に来るまでは、そんなに時間は掛からなかったのに......」

 

え、そう?掛からなかった?あれおかしい、俺達はわざわざ警察署からここまで歩かされたのに、距離もまあまあだったはず。

 

そう言うと、おじさんはこちらをバカにしたようにいい始めた。いやまあ、確かに事情を知らない人から見たら頭おかしいの確定なんだけどね。

 

「そらアンタ...狐にばかされてるとじゃかね?はっはっは!」

 

「......本当なんです!」

 

姫野さんが珍しく強い口調で言い放つ。珍しいことだがバカにされたのが気に食わないのか、信じてもらえなくてイライラしてるのか、俺なら前者だろう。頭に血が昇りやすいからな俺。

 

流石のおじさんも、姫野さんにここまで言われては不信感を抱かずにはいられなかった。

 

「...本当かね?そんなら...ちょいと様子ば見に行こうかね......嘘じゃなかろうね?」

 

「は、はい!」

 

おじさんにそう答えると、重い腰をようやく動かした。着いてくるよう言われたので、おじさんの後に続く。

 

「そういやお前さん方、名前は何て言うんだ?」

 

「わ、私は、姫野美琴です...」

 

「どうも初めまして、引道新聖です。よろしくお願いします」

 

俺達は軽く自己紹介を交わしながら歩く。おじさんの名前は『佐藤淳二』と言って、妻と離婚してからはこのド田舎でのんびり農業を営んでいるとのこと。

 

なにその重い設定。公式でそんなのなかったよ、この世界特有のやつか?しっかし佐藤さん、今は65歳超えているのに、めっちゃ元気じゃん。俺もこんな風に長生きしたいぜ。

 

ある程度自己紹介が終わったときには道路に着いていた。おじさんは道路を挟んだ向こうの景色をひたすらに眺める。

 

「......確かに、どこか風が嫌な感じばい」

 

「いやどんな感覚してんですか。エルフですかあなたは...」

 

おっと、思わず突っ込んでしまった。いやだって、顔をキメて「どこか風が嫌な感じばい」なんて言われてみ?絶対にこう返すから!

 

「ちょっと引道くん...ごめんなさいおじさん」

 

俺の行動を咎めて代わりに謝る姫野さん。いや、そこまでしなくても...なんかめっちゃ申し訳無くなるじゃん。

 

「エルフとな?そんなにワシは若う見えるかの?」

 

「...へ?」

 

だが残念、この人には通じなかったようだ。てか意外にもエルフのこと知ってたのねおじちゃん。俺と絶対友達になれるよ!まぁ、さっきのセリフは十中八九ネタなのだろうが。......なので体をくねくねさせるの止めてください恥ずかしい。本家はもうすぐ出てくるのでその動きは止めましょう、真っ先に狙われるよ。

 

「どんなにっ!歩いても......元の場所に戻ってしまうんです、何が起こっているのでしょうか?」

 

変な空気にうんざりしたのか、姫野さんは強引に話を戻す。心なしか俺の方を見て怒っていたスミマセン。

 

俺達の様子を見てふざけるのはここまでと思ったのか、急に真面目に話始める佐藤さん。おいジジィ、お前が変なこと言わなければこんなことにならんかったんだぞ。起点を辿れば俺が原因なのだがそこはあえて考えない。

 

「......田舎には稀に起こる、こげな変なことがな。......ま、ワシらにはどうしようもないことだって。こういう変なことは、放っとくのが一番よか」

 

正しい判断ですね。俺も佐藤さんの立場なら、面倒なことには首を突っ込まなかった。触らぬ神に祟りなし、って言うしな。

 

まぁ...それも無理な話だけどね。この世界はそれで終わらせてくれるほど甘くはないのだ。

 

「家で休ませてやる」と佐藤さんは言うと、家の方へ戻っていく。その心使いは有り難いが...悪いなおっさん。

 

「......?」

 

どうやら姫野さんも何かの異変に気が付いたらしく、田んぼの奥を見つめる。因みに俺は見ない。ここでラリれば即終了。元の世界に帰れなくなるからな。

 

姫野さんがおかしいことに気づいた佐藤さんは、またこちらへと戻ってきた。

 

「どげんしたかね?」

 

「あ、いえ....大したことじゃないんです。なんかあそこに白いモヤみたいなのがあって...」

 

姫野さんが指を指した方向を見つめる佐藤さん。だが目が悪いのだろう。発作は起こらない。

 

 

 

 

......今から人が死ぬのを、俺は容認している。別に死体を見るのはこれが初めてでもない。目の前には助けられる命があるというのに、手が出せないのは仕方のないこと。もしここで変なことをすれば、物語は変わる。例えば助けたとしたら、野郎がここへ来る確証もなくなりこのループ世界も終わらない。

後半に出てくるおばさんはこの怪異を生み出した張本人。ヤツを見たところで何も起こらない。

お寺の坊さんなんかもっての他だ。坊さんがいなければ、この怪異を終えることも出来ない。

 

だから仕方がないのだ。一の命と二の命、助けられるのなら多い方を選ぶのが当たり前。だからこれは仕方のないこと。避けようのない出来事。

 

 

 

 

 

 

 

「どれどれ...ちょっくら見てみるかの」

 

佐藤さんは懐から眼鏡を取り出し掛けた。

 

「なんか...変ですよね。まるで生き物みたいに動いてるんですけど...」

 

姫野さんは気味が悪いものを見るかの様に話す。実際近くで見るともっとグネグネしてる精◯野郎なんだけどな。

 

姫野さんが話し掛けても、佐藤さんからは何も返事が返ってこない。夢中になって構ってられないのか、それとも......。

 

流石におかしく思ったのか、佐藤さんに再度話し掛ける。

 

「......あの、ちゃんとみえますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「............わカらナいホうガいイ......」

 

「どういう、ことですか...?」

 

「仕方...ないんだ...」

 

思わず溢れた弱音を姫野さんは理解できず首を傾げる。

 

「それって、どういう...」

 

 

 

 

そのとき、佐藤さんはあの野郎に精神を壊された。

 

「うううヴヴぅぅぅああぁぁぁうがぎゃぎゃぎややゃゃゃいいいゃゃゃあああヒャヒャヒャがががががガ!!!!!」

 

俺は姫野さんの手を取り、急いでその場から離れる。それとは対象に、佐藤さんは俺達から離れていった。

 

と、同時にヤツが......『くねくね』が現れた。




と、いうことで...今回も読んでくださり誠に有難うございます!!
いやぁ、新聖くんも葛藤してるんですよね...助けられる命を前にして動けないのはさぞお辛いことでしょう。あと今回も前半がほとんど散歩の話になっててすんません...。次はちゃんと野郎と戦闘?します!

それではまた次でお会いしましょう!ではでは~
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