転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

14 / 31
田舎にコンビニ置いて欲しいマジで

 

「きゃぁぁぁぁ!!??」

 

「早くっ!逃げますよ!」

 

恐怖で混乱している姫野さんの手をとり走り出す。行き先は考えていないので、取り敢えずこの道を真っ直ぐに。

 

「くそっ!とりあえずこのまままっすぐ走りますよ!」

 

「で、でも、それじゃ追い付かれるんじゃ!」

 

「だーいじょうぶです!野郎を撒くルートは頭の中で出来てます!」

 

とりあえずは信じてくれたのだろう、俺が手を引かなくても自分で走るようになった。

 

後ろからは言葉では表し難いような奇声を上げて追いかけてくる。正直気持ち悪さで言うならあの人形よりも上回る。まだ幼児が叫ぶ方がマシである。

 

「くっそ、今回の怪異は滅茶苦茶しつこいな!いくら走っても引き離せない!」

 

そう愚痴を吐きたくなるほどに、今回の怪異は執着強かった。結構な速さで走って距離は徐々に開いているが、それでも今だけだ。相手が折れなければこの差は縮まる一方である。

 

姫野さんもそろそろ苦しくなってきた頃か息も荒い...ちょっとエロチックですね。

 

「どうするの...!?」

 

ゴミを見るような目で静かに咎められる。怒鳴られるより静かな方が怖いのはこの世の子供全員が思うことであろう。。そんな悠長な事を考えられるだけまだ余裕があることは分かった。

 

姫野さんにもう少しだけ頑張って下さいと言うと、渋々ながらも承諾してくれた。やっぱ信頼って素敵!これを信頼と呼べるかはさておき。

 

 

 

しばらく走るとループしたのかあの自販機へと戻ってきた。佐藤さんの家にはヤツを撃退するための物があったと思い出した俺は佐藤さんの家へと向かう。

 

「後ろに奴はいますか!?」

 

「いるけど、こっちに追い付くにはもう少し掛かると思う!」

 

そう聞いた俺は姫野さんを家の中に入るよう言った。俺も家の中に入るとすぐに扉を閉め鍵を掛ける。俺はテレビの近くに行き、姫野さんには押し入れに隠れるよう指示を出した。

 

押し入れの隙間からそっと顔を覗かせ、何をするつもりなのか聞いてくる。

 

「私が隠れちゃっていいの!?早く引道くんも隠れないと!」

 

「いいんですよ俺は...それに、試したいこともありますしね」

 

「大丈夫なの...?」

 

「大丈夫ですよ」

 

渋ったような顔はしたもののちゃんと言うことを聞いてくれる辺り結構可愛く見えて仕方がない。

 

なーんて思っていたら、玄関のドアをガチャガチャ鳴らせてくる怪異さん。もうちょっと二人きりの時間を過ごさせてくれない?なんて言うこともできず俺はテレビの近くで待機する。

 

設定では確か、テレビを着けたときに発生するノイズでくねくねは撒けたとなっていた。つまり今回の怪異は雑音...人間が嫌うような音を出しさえすれば向こうから逃げていってくれる流れである。

 

「......?」

 

ドアを弄る音がいきなり消えた俺は動揺し、周囲を警戒する。すると玄関からカチャ!っと聞こえ、驚きよりもおかしさが勝ってしまい、思わずケラケラと笑ってしまった。

 

押し入れから「ドンッ!」と強い音が鳴る。どうやら今の姫野さんはご機嫌が優れないらしく、ちょっと過激っぽさが増している。

 

「玄関を丁寧に開けて入ってくるとは、随分と殊勝だな」

 

玄関を閉め、再び鍵を掛ける怪異に褒めるように言った。ピッキングしてる時点で殊勝もクソもないが。

 

改めて部屋全体を見渡し、俺に目を止める怪異。しかしどうしたのだろうか、怪異は俺の方を見るだけで何もしてこず、むしろ出ていったのだった......玄関を開けて。

 

「......」

 

随分と礼儀正しい怪異でした。あ、でも外から鍵を掛けるのね、先程の言葉は取り消します。

 

 

 

 

 

 

しばらくしても怪異は出てこず、近くにいる気配もないので姫野さんを押し入れから出した。

 

「大丈夫でしたか?....それにしても、おかしな怪異でしたね。まるで姫野さんを探しているような感じでしたけど...あ、立てますか?」

 

姫野さんに立ち上がる様子はなく、心配になった俺は手を差しのべる。

 

 

 

「...なんで、そこまでしてくれるの......」

 

「......え?」

 

姫野さんは手をとらず自分の足でたった。拒絶されたのか、胸に棘が刺さるような感じに陥る。

 

「私と引道くんは確かに由香の時の怪異を退けた。確かにそこに友情は芽生えたと思う。そこは私だって否定しないでもね......ちょっと過保護すぎじゃない...?」

 

「......っ」

 

怪異すら思わず震えそうなほどの冷めきった声。まるで邪魔者扱いされてるみたいな感覚になる。

そんな感じだから俺は何も返答できずに姫野さんに場を許してしまう。

 

「引道くんは私の事を可愛い、って言ってくれたよね?私、嬉しかったよ...男の人に面と向かって言われたのは初めてだったし」

 

「へ、へぇ~...それは嬉しいですね。俺が初めての人ですか!めっちゃ嬉しいです!」

 

「うん、私も嬉しいよ。それに、引道くんの自分に素直なとこも嫌いじゃない。......でもね、引道くん」

 

姫野さんは改まって俺の方を向く。しかも珍しいことに向こうから目を合わせてきているのだ。これが好意的なモノであったなら見つめ合っていたかったが、今回のはどうも蛇睨みに近しいものであり、目を反らすことは出来なかった。

 

姫野さんは戸惑いの表情を見せたが、それも一瞬のことだけでキッパリと言ってきた。

 

 

「たかだか知り合って1日もしない私を、命を掛けてまで守る理由は何?いくら一目惚れでも限度がある。私からしたら今のあなたの保護欲は、狂気に近いよ」

 

「......で、そう言うことを言うかなぁ...」

 

思わず不満が溢れた。胸が締め付けられるように苦しい。漫画ではバカにしていたが本当にこんな気持ちがあるのだと改めて実感する。

 

実はこれについては俺も頭を悩ませていたことなのだ。自分の行いが姫野さんに悪影響を与えているのではないのかと。過保護すぎな部分も分かっていた。でも、自分の気持ちを押さえられなかった。

 

姫野さんの前でカッコつけたかったというのは本音だ。

勿論守りたいと言う気持ちだって十分に存在していた。建前なんか建てたりはしていない。だからこそ、自分に正直を貫いてきた。

 

......でも

 

「...俺は......いえ、すみません。姫野さんの言うとおりでした」

 

素直に謝る。自分に落ち度があったと。姫野さんは苦笑して俺から視線を外した。

 

「......うん、こっちこそごめんね、酷いこと言って...。でも...さっき言ったことは、しっかりと考えてほしい、かな」

 

姫野さんは歩き出し、部屋のなかを探索し始めた。

重い空気が漂っている。居ることが辛くなるほどに。

 

(本当は、分かっていたんだ......)

 

本当は分かっていた。自分が姫野さんにストレスを与えていることを。別に冗談を言い合ったりとかではなく、彼女に心配ばかりかけていることを。

 

もし俺が逆の立場なら、確かに気味悪がるだろう。自分の為に命を張ってくれるというのは聞こえは良いが、張ってもらう方からすれば心配ばかり掛けてくる心の嵐だ。気持ちなんか休まりはしない。

 

結局は......俺は自分の願望、理想を姫野美琴に押し付けているだけだった。こうあって欲しい、無事でいて欲しい、と。

 

この物語を知っているからこそ、彼女に気を掛けたくなる。この物語を知っているからこそ、もっと関わりたくなる。そんな気持ちに歯止めを掛けるのは難しかった。いっそ自分が転生者であることを話そうと思ったときもあった。......けど、それによって結末が変わることを恐れた俺は結局何も言い出せずにいた。これはその延長結果だ。

 

別に俺は主人公じゃない。カッコよく言って認めてもらうことも、この状況をすぐに打破することも叶わない。

 

 

 

 

だから俺は、ダサく醜く言い訳をして全てをマルにする。俺は一般人だからだ、特別な人間でもないからと。

 

蝉の音はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...う~ん、何もないね」

 

「そですね...何かめぼしいものがないとやる気出ませんよね...」

 

「部屋割りまだだったよね?留置所がいいと思うな」

 

「まだ未遂ですからセーフですよ」

 

遠回しに俺の事を犯罪者だと言っているようなものですよね。まだ何も盗ってないのに......神代家からは借りた傘ですから。一段落ついたら返すつもりなので多分、大丈夫と思われる...。

 

「そういやさっきの怪異、俺襲われませんでしたよね」

 

ふとさっきの情景を思い出したので、姫野さんには意見を求める。どうやら姫野さんも驚いていたらしく、何も分からないそうだ。

 

「外にいるときは俺達のこと執念深く追いかけてきたのに、家の中じゃ呆気ないほど何もせず出ていきましたからね...」

 

「そう、なんだよね.....待って引道くん、その言い方だと私が狙われているみたいじゃない」

 

「いや、結構ありだと思いますよ。実際、姫野さんはここでは姿を眩ましていたので、怪異は襲ってこなかった。いい線いってると思うんですけどねぇ」

 

姫野さんは表情を暗くすると、机の上に置いてある湯飲みをいじる。うん、渋い。

 

「....ま、何はともあれ、ちょっと外に出てみますか。ここにいてもしょがないですし」

 

姫野さんも同感らしく、すぐに立ち上がった。鍵を開け外に出る。照りつける太陽は先程よりも強く、影の位置からして昼に近いようだ。そうなると当然腹が減ってくる。

 

グギュゥゥー...

 

「.....」

 

お約束である。漫画でしか見たことがないその光景に軽く歓喜しながらも、どうしたものかと頭を悩ます。別にコンビニはあるはずなので、そこには困ってはいない。むしろ姫野さんをどう意地悪しようかで頭を悩ませているのだ。

 

姫野さんが耳を赤くしながら、どこに行くかも決めていないのに先頭をきって歩き始めた。

 

コイツっ、動揺を行動で消そうとしてるんだ!

 

某巨人と戦うアニメの台詞を思い浮かべながら、急いで歩く姫野さんに声を掛けた。

 

「.....とりあえず、畑から何かもらってきますか?ワイルドに堀りたて野菜ムシャムシャします?」

 

姫野さんが突然振り替える。どんな顔をしているかと思いきやまさかの無表情。え、無表情が一番怖いんですけど!何かアクションないと言った側はつまんn

 

 

ゴギリ

 

 

「んぎいいあぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく田んぼ道を歩く引道一味。あのあとまだ通っていないであろう佐藤さんの家の西側に続く田んぼ道を行こうと言う形になった。

 

「そういえば私たちまだ話題にしてなかったけど.....佐藤さんどうなったのかな?」

 

「あーーー...そっすねぇ....」

 

話題にしてなかったんじゃない、しなかったのだ。すれば絶対に空気重くなるし、なんならマイナス思考に駄々落ちよ。

 

ここはあえてはぐらかす。

 

「多分.....どっかで会えますよ」

 

「ふーん.....」

 

ふーんって...今になって思ったが、姫野さんってサイコ気質ありそうなんだけど。いや、単に図太いだけなのかも知れんが。

 

俺は先程の素晴らしいジョークの後にかかとでひね踏まれた足をちょくちょく触りながら歩く。いやホントに痛かったよ、絶対に加減しないで踏んだよね。だってヤバい音したもん!

 

 

 

 

 

 

ある程度歩くと、右手の方にコンビニらしきものが見えてきた。と言ってもこの時の俺はコンビニよりも、姫野さんにはヒエログリフ(神聖文字)読んで欲しいとずっと考えていたため、姫野さんが足を止めたことに気付かないでいた。

 

「ちょっと、引道くん...さっきからなにブツブツ言ってるの?不審者っぽく見えちゃうよ」

 

「こんなクソ暑いお天道様の下で女子高生と男子が田んぼ道をトボトボ歩いてる時点で既に怪しいですけどね」

 

「......」

 

どうやら思うところがあるらしく、何も言ってこn...ってちょっと、速い速い。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ...こんな田舎にもコンビニってあるんだ...」

 

ちょっとそれは俺にケンカ売ってるんですかね?ま、まぁ?近くにコンビニなくたって!?ち、ちょーっと自転車漕げばすぐに着くよ!...山一つか二つ越えたらだけど......。

 

頼れるのはやはり自販機と実家の畑しかないと思った俺は目を赤くしながら、あの世界に戻ったら市役所にコンビニ建てるようクーデター起こそうと考えるのだった。

 

そんな俺をジト目で見ながら裾を引っ張ってコンビニに向かう姫野さん。その手に愛情はこもっていなかったねグハッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なに...これ......」

 

俺と姫野さんは揃って同じことを言う。いや、それも仕方ないのかもしれない。いつもなら自然に耳に入るであろうファ◯マの音楽も、今は聞こえてこなかった。

何故って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く、あっちへ行かんか!!この...バカ野郎!!!!」

 

怪異......くねくねに対し暴言を吐き、レジを持ち上げて今にも投げようとしている『おばさん』の姿が目に入ってきたからだった。

 

 

 

 

 

 

あれ?怪異症候群1って、こんなシーンあったっけ(白目)?

 




今回も読んでくださり誠に有難うございます!!え?タイトルからして主の願望が滲み出てるって?いやいや、そんなことナイデスヨ!

神聖くん、自分がいかに姫野さんの邪魔をしているか自覚できた?回でしたね。いき過ぎた心配は結構ストレスになりやすいものです!なので全国のお父さんお母さん!子供をもう少し信じてあげてください!

以上!それではまた次でお会いしましょう!ではでは~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。