転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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休校明けの中間テストって、学生をヤりに来てるよね(´・ω・`)?


殺ろうぜBBA!!

 

「盗み聞きとは感心しないぞ.....引道くん」

 

「えっ......」

 

唐突に発せられた言葉は、静かだった心を荒らすのには充分であった。

 

恥ずかしくも体力のない俺は、炎天下に晒されるなか、よからぬ妄想の世界に足を運んでいたため、太陽による熱に興奮が拍車をかけ倒れる結果となった。

 

それに気付いた姫野さんは、俺に肩を貸してここまで運んでくれたのだろう。男としてのプライドを問われる場面ではあるが、そんなものはとっくの前から消失していた。

 

と言っても目が覚めたのはつい先程で、老人がBBAの過去を話している途中だった。物語では、BBAの過去は奴自身が話す設定なのだが、俺が不甲斐ないせいでストーリーが少しズレてしまった。

 

 

ファサ...

 

「...?」

 

頬に手を添えられる感覚がする。手の大きさ、触り心地からして姫野さんで間違いないだろう。......えっ、姫野さんによしよしされるの!?ちょっとそれはパナイ。パナ過ぎて絶頂しちゃu――

 

「引、道、くん。寝た振りってどういうことかなぁ」

 

「いだだだだだダダダダァァァ!!!??」

 

絶好のシチュだと思っていたのもつかの間、瞬間的痛みが突如として俺の耳を襲う。引っ張られる痛みに耐えかねた俺は、情けなく声をあげた。

 

「ほらの?やーっぱり起きとったわい」

 

「......引道くん。とりあえず体を起こして」

 

「......」

 

姫野さんからこれでもかと言うほどに溢れる怒りのオーラ。蛇睨みすら可愛く思えるそれは、俺を動かすのに充分であった。

 

布団を膝の上に被せた俺は、出来るだけ無表情を作り老人と姫野さんを見る。

 

「なに寝惚けた顔をしてるんじゃ...」

 

「言いたいことは色々あるけど、それはまた今度ね。それで、話を聞いていたんでしょ?引道くんはどう思うの?」

 

「どうって.....俺達がくねくねを引き寄せたことに関してですよね」

 

「うん。そうですよね、おじさん」

 

うむ、と頷く老人。物語からして、姫野さんがくねくねを引き寄せたのは知っているし、理由もある。ただ疑問が拭えないのが、この老人は俺も含めて呼び寄せたと言っていた。

 

それが単に間違いなのかもしれないが、俺は自意識過剰の男である。どうにも転生したことが関与していると思えて仕方がない。

 

「そうですね...自分は何も見に覚えがありません。ですが、仮説はあります」

 

「仮説.....どういうものなの」

 

俺は頷いて、横に添えられていた湯飲みを手にする。

 

「氷室さん達が言ってましたよね、『怪異がくねくねを呼んだのではないか』って。俺達がここに来る前のひとりかくれんぼが、怪異によって引き起こされたものだとしたら.....怪異は明らかに俺達を付け回している。そんな怪異をここに連れてきたことにより、くねくねが現れたのだとしたら、合点はいきます」

 

しっかりと考えた風にいけしゃあしゃあと話を進めるが、こんなもん即席の考察でしかない。ちゃんと考えることが出来るのなら、俺の言ったことのおかしさにも気付くだろう。.....だが、今はもうそんなに時間も猶予もないのだ。

 

だから姫野さんは気付かずこの言葉を呑み込み、違う疑問を提示してくる。

 

「え、でも...それなら何で、ひとりかくれんぼを始めた由香が襲われなかったの?」

 

「それはまだ分かりません。単純にひとりかくれんぼを解決した俺達に狙いを絞ってきてるとかでしょう、多分」

 

納得したかのように黙りこむ姫野さん。というよりも、さっきから何も言ってこない老人の方が不気味で仕方がない。

 

ゲームでの老人は、主人公をパシりに使う優しくないおじちゃんだったが、妙にこの世界では優しすぎるのだ。最終的に助けてくれることに変わりはないと思いたいが...結構予定と食い違ってる所から見るに、警戒MAXでいないとホントにあの世へGoしそうである。

 

一段落ついたのかどうかはよく知らないが、話は一旦ここで止まった。それぞれの茶を啜る音や、体を動かしたときに関節の音だけが部屋を支配する。

 

 

(き、気まずい.....!)

 

何度でも言うが、俺は気まずい空気がとっても嫌いなのだ。出来ればその場から走って逃げ出したくなるほどに。なら自分で話題でも出せとは言うが、変な緊張をしているため、中々言い出すこともできない。我ながらめんどくさい性格をしているものだ。

 

 

 

外がうっすらと紅くなってきた辺りで、老人が話し出した。

 

「君達だけでは奴を倒すことは出来ん。もし奴と鉢合わせたのなら、ここへ逃げてこい。どうにかしてやる」

 

「「......」」

 

姫野さんは固い眼差しで老人を見る。その目には覚悟と言う言葉でしか表せそうにないほど、真っ直ぐであった。

 

かくいう俺はといえば、急に主人公みたいな台詞言ってきたなこの老人、と考えて少し嫉妬していた。いやだって、普通は俺が言うのよ?カッコいい場面を老人が取るとかそれもう俺に喧嘩売ってるよね。え、主人公どもないモブがほざくなだって?やだ厳しすぎて泣いちゃう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒がしかった蝉の音は鳴りを潜め、蟋蟀や鈴虫などの昆虫が心地のよい音色が響き渡る。

 

紅く染まった夕陽をバックに、俺と姫野さんは再び畦道を歩いていた。

 

「......ねぇ、引道くん。あのおじさんは、一体何だったんだろうね...」

 

遠慮がちに聞かれたその言葉に、顔をしかめながら振り返る。

 

「何って聞かれても......俺も知らないんですよね。あの人が何者なのか」

 

適当に答えているようにも見えるが、本当にこれしか言えないのだ。ネット上で仮説しか飛び交っていない老人の正体なんか知るよしもないし、別に興味もない。

 

舗装されていない畦道を淡々と歩く。愛しの姫野さんと会話が上手く弾まない中、俺は先程の老人が言っていた事を思い出していた。

 

 

 

 

 

『あの女は多分、廃工場の奥にいるじゃろう』

 

『え、廃工場.....ですか?私達、場所を知らないんですけど、何処にあるんですか?』

 

姫野さんが老人に尋ねる。それを受け答えるも、言う相手は姫野さんではなく、俺だった。

 

『お主なら分かっておるじゃろ.....引道くん』

 

 

 

 

 

いちいち余計な一言が多いんだよあのじいさん。変な言い回し使わず素直に教えてくれてもいいのによ...。俺は不満からか、無意識で歯軋りをする。

 

「ぐぬぬ.....」

 

「声に出すとかみっともないよ、引道くん。漫画じゃないんだから」

 

やっと出来た会話が姫野さんのドライな発言により心が氷河期を迎えた頃、目の前に工場らしきものが見えてきた。

 

「.....ここが、おじさんの言っていた廃工場...だよね」

 

文字が霞んで見ることができなくなっている看板の前に立つ姫野さん。やがて目線を左に移すと、恐らく繋がれていたであろう鎖が、人の手によって破られた後があった。

 

それは先程の老人が言っていた事を裏付けるものでもあり、疑惑が確信へと変わっていく。

 

「やっぱり......この先には、あのおばさんが...。......ねぇ、出来ればこんなことはあまり言いたくないんだけど...」

 

先程の事実に直面したシリアス展開を中断し、俺の方に振り返る姫野さんの目は、言いたいことを口に出来ない分を含んでいるように見えた。

 

「頬を膨らませて拗ねたフリをするのは...やめた方がいいと思うよ?その.....凄く似合ってなくて...しょ、正直...笑いが込み上げて...ん、くくっ」

 

どうやら俺の滑稽な姿は、大層気に入られたようだった(涙目)

 

 

 

 

 

 

「あの、引道くん。笑ったのは悪かったし、謝るから...いい加減機嫌直してくれないかな?」

 

「姫野さんの頼みとあらば断るわけにもいきませんけど...せめて顔を合わせるときぐらいは笑うのやめてくれませんかね.....」

 

「え、な、なんのこと、かな...っん、くっ...」

 

いえ笑ってまぁすよねぇ!?嘘つくのならもっと能面みたいな顔しなさいよぉ!顔がにやけてるし肩震えてるし。おまけに堪えるためか、手は膝のスカートを強く握っていた。

 

まさかこんな形で姫野さんを笑わせることになろうとは...マジ泣ける。とりあえず、いつか仕返ししてやると心に決めた俺は、作り笑いで廃工場の奥へと歩きだした。

 

 

 

 

 

廃工事の奥へと辿り着いた俺達は、先程の甘酸っぱいムード(大嘘)は何処へやら、顔を引き締めて目の前の墓石を見る。

 

ゲームとの違いはないように見えるが、それでも墓地というのは馴れるものでもないし気持ちのいいものでもない。随分と当たり前のことを言うようではあるが、この墓には、人骨が入っている。それはこの世界では皆等しく平等な死を迎えると言うことを暗示しているように捉えることができる。

 

「やっぱり、墓地ってあまりいい場所じゃないよね...。自分のことでもないのに、気が重くなるようだよ」

 

姫野さんも同じ感想なようで、しかめっ面をする。そもそも姫野さんがこんな所を好きとか言い出したあかつきには、ヤンデレ属性を疑わなくちゃならなくなる。

 

そんなの真っ平ごめんだ。よく二次元のヤンデレキャラは多くの人間に愛されやすいが、それは会うことのできない二次元だからである。実際にそんな状況に会ってしまえば、バッドエンド主人公の運命を辿ることになるのだ。

 

痛いのはNGなはずの俺だが、姫野さんがヤンデレであって欲しいと思う気持ちが心の何処かにある。さすが、生粋の変態とはよく言われたもんだ。

 

少しうろうろとしていると、今は使われていない古びた井戸を見つけた。

 

そう...くねくねの依り代となった遺体がある井戸である。

 

 

「引道くん...もしかしてこの中に.....」

 

「.....えぇ、今は夕方なので覗いても見えませんが.....恐らく、保坂里美の息子さんの遺体が―」

 

「入ってるよ」

 

「「!?」」

 

女性としてはもう使い古された濁声が後ろからした。俺と姫野さんは直ぐに振り向くと.....そこには保坂里美が気味悪い笑顔を浮かべて立っていたのだ。

 

さっきまでの虫の合唱は嘘のように鳴りを潜め、生温い風がこの緊張した場に介入してくる。俺達は突然の事態により、上手く答えることができなかった。

 

そこを分かってか、保坂里美は続けて話す。

 

「誰に聞いたか知らないが、よくそんなどうでもいいことを調べることが出来たもんだ。.....誰に聞いたんだい?」

 

俺が答えようとすると、珍しく姫野さんが我先にと保坂里美の質問に答える。

 

「お寺のおじいさんです。貴方...保坂里美さんの過去について教えていただきました。ご存知ですか?」

 

「お寺のおじいさん?私にそんな知り合いはいないねぇ。嘘ついているんじゃないのかい?」

 

「そんな.....嘘ではありません!しっかりと、ここにいる引道くんと一緒に話を聞いてきました」

 

俺は頷くが、BBAはどうやら信じていないようで、バカにしていた笑みは消え、段々と目を吊り上げていく。

 

「私の知らない奴が、どうして私の過去なんか知っているんだい馬鹿馬鹿しい。狐に化かされたのか、それともお化けでも見たか?」

 

信じてもらえず、さらに煽ってくるような調子。こんな事されると神聖くん、殴りたくなっちゃう!

 

ねっ、姫野さん!と、横を見ると、悔しそうに手を握る姫野さんの姿があった。言いたい気持ちを必死に抑えているのだろう。

 

「あんたがそれを言うのかババァ」

 

こちらから発せられた言葉は、先程の丁寧なものではなく、とても荒っぽく汚いものだった。

 

姫野さんは驚いて此方を見るが、今の俺は少し機嫌が悪いのだ。あとでいっぱいイチャラブするから、今はとりあえず無視る。やだ地味に心にくる!

 

「出会って第一声がそんな言葉遣いだったとは、出来が悪いとしか言いようがないが...今は置いておくか。それよりさっきの...あれはどういうことなんだい」

 

「いやー、幽霊がいないとか語っちゃうのって思ってね。あんたが幽霊の類いがいないと言うなら...あんたの息子はくねくねになったりなんかしない」

 

そこで初めて、保坂里美に動揺が走ったのを確認した。一瞬呆けた顔になったが、直後に怒りの色を表した。

 

「.....やっぱり...」

 

小さな呟きが耳に入ってくる。外だと言うのに周りは不気味なほど静かで、BBAの呟きが思いの外よく聞こえる。

 

「はい?何て言ってるんですか?」

 

 

 

「お前達があの子を外に出したんだろ!!!!!!!」

 

 

 

突然の大声に姫野さんは驚いて後退りし、情けなくも俺は「うわっ!」なんて声をあげてしまった。

 

そんな事をお構いなしに、BBAは怒声をあげて俺達に少しずつ詰め寄ってくる。

 

「だとしたら筋が通るってもんさ!お前達だけがこの町に残ってることも!!」

 

「こ、こないで!」

 

姫野さんは急な展開に驚き後ずさるが、俺はこのシーンを見てやっぱりゲームの世界なんだなぁと染々と思っていた。

 

俺達が下がるのを見て、BBAは更に距離を縮めてくる。

 

「どうして逃げるの.....?.....やっぱりそうよ。やましいことがあるからだわ!!」

 

「く、狂ってる...」

 

端から見れば、自分の行いをたまたまこの町にやって来た俺達に押し付けているように見える。

 

まぁ.....BBAが言うことも一理あるけどね...。

 

姫野さんは俺に逃げるよと言うと、一緒になってその場から走り出した。

 

後ろからは大きな怒声か、それとも雄叫びか分からない声が響き渡ってくる。

 

 

 

 

 

「やっと追い詰めることが出来た...さぁ、全部吐かせてもらうよ!!」

 

「話を.....話を聞いてください!」

 

「.....今更、何をいってるんだい!話すことなんて何もないよ!!」

 

俺達は出口の横のフェンスへと追い込まれていた。別にたまたまとかではなく、敢えてここに追い込まれた.....いや、誘導したんだ。

 

息を深く吸って吐き、姫野さんに小声で話しかける。

 

「姫野さん、走る準備をしてください」

 

「えっ!?...う、うん。分かった」

 

突然俺がこんな事を言い出したのに驚きはしたが、それでも言いたいことを察してくれるのはやはり嬉しいもんだ。

 

そう、ここに来た理由は間違いなく.....くねくねに保坂里美を殺してもらうためである。

 

 

 

俺に情があるかと聞かれれば、当然あると答える。なら何でこんな事が出来るのか。人が死ぬ場面に慣れたと言うのもあるが、所詮は命の認識の違いによるものだ。

 

アフリカで飢餓にあっている子供たちを可哀想と誰もが思うだろう。しかし、ただそれだけなのだ。地球の裏で知らない人が死のうが、自分には当然関係ないことで、気の毒にと思うことしかできない。

 

言い訳を並べて自分を保護しているように見えるが、これが理由なのだ。とどのつまり、BBAが死んだとこで俺に何か支障があるわけでもない。

 

BBAが一歩ずつ、俺達に歩み寄ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

突然、周りの温度が急に下がったのを肌で感じ、震える。それは決して寒さからくるものではなく.....怪異の出現によるものであった。




今回も読んでくださり誠に有難うございます!!

投稿が遅れてしまって、いやはや申し訳ない。やむを得ない事情が積もりに積もって、遅れてしまいました。けどそこは、しっかりと週末に投稿できたと言うことで、許してください(涙目)

それではまた次でお会いしましょう!ではでは~
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