転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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CHAPTER 3 表情のない女
夜の患者さん


 

 

 

 

 

「病院内ではお静かにお願いします。いくら貸切状態と言えど、あなた方の声は外まで大きく響いていましたよ」

 

看護師さんがめっちゃ見下し目線で話してくるため、興奮と同時に恐怖を覚える。俺とそんなに慎重差変わらんくせに.....ちょっと高いぐらいじゃん!

 

「はい、反省めっちゃしてます。それでなんですが.....絆創膏、というか消毒ってしてもらえますか?」

 

「消毒?.....えぇ、それなら私に着いてきてください」

 

そう言うと、見た目30代の美人なお姉さんは回れ右をし、病室のドアを開ける。

 

俺はとりあえず姫野さん含めた全員に一旦詫びを入れて、ドアの前で待機している看護師さんに着いていった。

 

何故こんなことなったかと言うと、前回を見てもらったらわかる通り.....腕を怪我してしまった。別に重傷とかではないが、グロアニメよろしくの両腕が取れるイベントは無かったが、それでも無傷では済まなかった。腕には見ると「うわっ...」て溢すぐらいには、引っ掻かれた痕があった。.....なんか、これ見て愛の証しと思ってしまう俺は大丈夫なのでしょうか?

 

「ここの病院に精神科あるし、そこで診てもらったら?特に頭とか」

 

「神代さん本当にエスパーじゃないんですよね!?」

 

心を読み解かれた挙げ句めっちゃばかにされた俺はむやむやする気持ちを抑えながら、看護師さんに着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「引道くん、大丈夫かな.....」

 

「あんなモラルもデリカシーもない男を心配するだけ無駄よ無駄」

 

引道が病室を出ていくと同時に、怒っていた気持ちは薄れ不安気にそのドアを見つめる。対して神代は引道に何かされたのか、対応が随分と荒っぽかった。

 

「.....ご飯は引道くんが戻ってきてからでいいか?」

 

引道が退室したことにより、部屋に静けさが戻ってきた。気まずくなると読んだ氷室は晩飯の確認をとり、早速情報収集に務めようと動き出す。

 

氷室に叱られたのが余程きたのか、珍しく加賀が静かである。ふと外を見れば、あれほど輝いていた星々や半月を呑み込まんと雲が地上との境界線を作り出していた。

 

怪我はだいぶ完治したであろう神代は再びベッドに座ると、先程まで読んでいた少女漫画を棚に片付ける。

その行動に疑問を感じたのか、姫野が少し驚いた様子で質問する。

 

「あれ、漫画はもういいの?普段の由香なら少女漫画は何がなんでも読みきるのが鉄則みたいな事言ってたのに.....」

 

「ここでその話は恥ずかしいからやめてよ美琴...。いやまぁ、勿論読みたい気持ちは満々だけど.....警察の人達を見るに、そんな雰囲気じゃないでしょ?」

 

ばつが悪そうに目線を逸らすが、空気の読みには敏感である神代は今から始まることに薄々気が付いていた。

 

「話が分かる子で助かる。さて、時間は有限だ。こちらとて少しの時間も無駄にはしたくなくてな、早速だがいくつか質問させてもらう」

 

「私が答えられる範囲でなら、何でも言います」

 

神代は何でもないように言うが、内心では嫌な気持ちの嵐である。その大半が自分の行いについての罪悪感と、やってしまったという後悔だ。

 

氷室とてそこはしっかりと理解している。伊達に長く怪異の事件を担当してきたのだ。彼には大体の人間の嘘をつくときの鋭さは警察内でも屈指を誇る。

 

「分かった。それなら遠慮なく言わせてもらう。.....おい加賀、書くならそこの机を貸してもらえ。コソコソする方が不審に思われるぞ」

 

壁に寄り添って手帳を取り出す加賀を見て、咎めるように注意する氷室。加賀は理解したとアピールしたいのか、右手をヒラヒラと振る。

 

「へいへい.....悪いな神代ちゃん、ちょっくら机貸してもらってもいいかぁ?」

 

「えぇ、構いませんよ。あ、美琴は私の隣に据わってて。そっちの方が安心して答えやすいし、ね。.....それじゃ準備も整ったみたいですし、始めましょうか」

 

「あぁ。それでは一つ目の質問だ。神代くんは何故ひとりかくれんぼをしたんだ?」

 

加賀が机に座ると同時に、警察側の質問タイムが始まる。神代は平然な顔をしていたが、姫野はどっちかというと心配で仕方がなかったのだ。

 

自分は守れなかったという罪悪感程しかないが、神代はそうではない。守れなかったという罪悪感だけでなく、ひとりかくれんぼをしてしまったという自分に対する怒りと後悔。そして家族を失ってしまった喪失感。自分でもこんなに参っているというのだから、神代のはきっと想像もつかないような負の嵐なのだろう。

 

姫野は自分が心配で仕形がないという顔をしていることに自覚があるため、それが神代にバレないよう顔を俯かせる。

 

しかしそんなものはこの場にいる全員が分かっていたことでもある。

 

「......単に興味があっただけです。その時はまだ幽霊や心霊なんてモノを信じていなかったので、ただやってみたかったと思い軽い気持ちで始めました」

 

「もっともな意見だな。こんな呪術をする奴は皆、そういうんだよなぁ」

 

「......まぁ、そうだな」

 

珍しいことに、氷室は加賀の意見に同調する。加賀には普段から、質問中には話に割り込むなと言ってはいるが、今はそれがなかった。再度言うが、本当にこれは珍しいことなのだ。氷室は話の腰を折られる事をとても嫌っており、また作業中に邪魔をされるのをとても嫌がる。イケメンなのに彼女が出来ないのは、こういった性格も絡んできているのだろうが......。

 

そんな氷室が、加賀の意見に同感している。それほどまでに、これまでの事件が酷似しているのだ。それが分かっているからこそ、加賀は何もツッコまなかった。

 

「それでは二つ目の質問だ。君はあの化け物と対峙した時、どう思った。どう感じた?」

 

「それは.....とても怖かったです。人形が包丁を持って歩くのも、口は動いてないのに直接頭に声が響いてくるのも...」

 

「そうか.....」

 

この時、神代の頭の中でフラッシュバックが起きていた。自身の部屋に隠れていた時、突然ドアが開いて笑いながら襲い掛かってきた時の光景を。

 

額からは脂汗が滲み出ていた。その横顔を見ていた姫野はポケットからハンカチを取り出し、神代の額の汗を拭う。

 

氷室は彼女たちのその行動を優しく見守っていた。

 

「では、最後の質問だ」

 

ゴクリ.....音など鳴っていないのに、あたかも鳴っているかのような緊迫感が彼女達を包み込む。

 

手に汗を握る展開となったわけだが、氷室は何処か意地悪をする様な顔をしていた。

 

「君は姫野くんの事をどう想っている?」

 

最後の質問、ということなのでどれ程重いものが来ると心構えをしていた神代であったが、考えていた内容とは遠くかけ離れた質問であったため、拍子抜けだった。

 

また内容も内容なため、頭が理解するのは少し時間が掛かる。姫野は神代よりも早く理解し、顔を赤くした。

 

「ちょ、ちょっと氷室さん!何ですかその質問!!怪異と何か関係があるんですか!?」

 

別に友達としてどう思っているのかと捉えることが普通であるが、二人とも現役バリバリの女子高生。嫌でも意識してしまう「好き、嫌い」は仕方のないことであった。

 

姫野が慌てる様を見て、ようやく今の事態が分かってくる神代。しかし精神.....ポーカーフェイスとしては彼女が優れており、乱したりはしなかった。しかしそのポーカーフェイスも完璧ではないため、よく見ると耳が赤くなっている。

 

「そ、それは.....友達って意味でですか?」

 

「友達としてでもいいし、勿論.....他の意味でも構わないぞ」

 

今度は氷室がからかうように言うが、先程の衝撃が大きかった分、そこまで動揺することはなかった。しかし隣であたふたする姫野を見ると、彼女はこの事にからっきし弱いことが窺える。

 

加賀も面白そうに姫野達を見るが、その手にはしっかりとペンとメモ帳が握られている。

 

「私は.....美琴の事が大好きです。私の事になると命を捨てる美琴を好きじゃないなんて、死んだ方がマシですよ。美琴が私を愛してくれるから、私もそれ以上の愛をあげているんです.....。私達の絆は切れない強固なものだと思っています」

 

「由香.....わ、私も、由香の事.....大好きだよ」

 

そういって、目に涙を浮かべながら抱き締め会う二人。ここに引道がいたのなら、きっと彼は鼻血を吹き出して担架で運ばれていただろう。誰でも思い浮かぶ彼の光景に、氷室と加賀は苦笑いをしていた。

 

しかし、彼等の顔は優れておらず.....どちらかというと、敵を前にしている。そんな警戒を浮かべたような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの.....精神科も一応あるので、行きますか?」

 

「あの冗談真に受けないでくださいね!?あれはただの戯れですよ、暇をもて余した神々の遊びですよ」

 

「精神科は一階にあるので、そこのエスカレーターを降りましょうか」

 

「調子乗ってすみませんでした!!」

 

俺は少しの誤差も許さないほどの綺麗な90度謝罪をした。その姿を見て向こうも冗談だったらしく、ため息を吐いては通路をまっすぐ歩き始めた。

 

「ここは病棟ですが、腕のいい医師もいます。頭の方はあちらですよ」

 

じょ、冗談ですよ.....ね?今いくとこはただの治療室ですよね!?そんな俺の思いも知らずに、ズンドコズンドコと足を進める看護師さん。そういや名前を聞いてなかったと思い出し、駆け足で看護師さんの横に並んだ俺は名前を聞いた。

 

「そういや、こんだけ話していることですし、名前を教えてもらってもいいですよね?そろそろ看護師さんって言うのも疲れましたし」

 

俺の意見を聞いて腕を組ながら足を止める看護師さん。暫くすると腕は解かれ、再び歩き始めた。

 

「いいですよ、私も看護師さんなんて呼ばれるの正直な所気持ち悪かったですし」

 

「そ、それじゃ.....!」

 

「えぇ、私の名前は『小野鈴美香』。引道さんがさっきから仰っている通り、看護師です」

 

思いの外あっさりと教えてくれた小野さんに狼狽えながらも、ガードが甘いと分かり有頂天になる引道くん!狙った獲物は相手に嫌われるまで狙うのが俺なのです。

 

なんて考えていたのも束の間、いつの間にか俺は病棟の東側まで来ていた。すると隣から、小野さんが俺に声を掛けてくる。

 

「着きました。ここでその腕を治療しましょうか」

 

「.....あの、治療って」

 

「あぁ、心配しなくても、そんなに痛くないからね」

 

絶対に痛い!!そう思うのも仕形がない。過去にこの手で俺を騙してきた歯科医を俺は知っている。それは今でも夢に見るほどのトラウマとなっていた。歯茎に麻酔はそんなに痛くないよと言ったあの野郎。顔は今でも覚えてるぜ...。

 

なんてバトル漫画みたいな展開を一人で作っていたが、小野さんは俺を置いてドアをノックし開ける。

 

「失礼します。......先生は居られないようですね。それじゃ引道くん、そこの椅子に座って待ってて。今消毒するから」

 

「は、はい。分かりました......」

 

小野さんは薬品棚から手馴れたように消毒スプレーと、大きめのガーゼを取り出した。

 

俺は左腕の傷を改めて見る。絆創膏では収まりきらないぐらいにはある引っ掻き傷が痛々しくあった。俺はたまらず「うへぇ」と情けない声を漏らす。

 

「はい、それじゃあ消毒するよ。痛いだろうけど我慢してね......」

 

その言葉を合図に、手に握られている消毒スプレーがシュッシュッと吹き掛けられていく。吹き掛けられて少しして、左腕を起点とした痛みがジンジンと広がっていく。

 

「い、いってぇ!!」

 

「我慢してね、男の子でしょ」

 

そんな事を無表情で言われてしまうと、この痛みもまた良しと思ってしまう自分がいる。変態ですがなにか。

 

「ねぇ......なんでそんな嬉しそうな顔をするの?」

 

「......楽しいことを思い浮かべて、痛みを堪えているんです」

 

「そ、そうなんだ。ならそのままでいてね、後はガーゼ貼るだけだから」

 

微妙そうな顔を浮かべながらも、手際よくガーゼを貼られる。時計を見ればもう八時は当に過ぎていた。それでも外からは車の走る音が絶えず聞こえてくるので、実家が恋しくなってくる。あ、帰れないんだった。てへぺr――

 

「引道くん、どうして左頬を抑えているの?」

 

「形を持たないナニかに右フックもらったからです」

 

「.....すみません、小野鈴美香です。集中治療室空いてますか?今すぐ運び込みたい患者がいるのですが」

 

「ちょっっとまってくださいぃぃぃぃ!!!???今のは嘘ですよ!?そういう年頃なんです!!だからそのPHSを仕舞ってくださいぃ!!??」

 

もう何度目かもしれないやり取りを繰り返す。シリアスそうな顔でコールなんかされてみろ。迷惑掛けたことに関して氷室さんと加賀ちゃんからげんこつもらうじゃないか!

 

どうやらその心配も杞憂に終わったらしく、小野さんも軽く笑いながらポケットにPHSを仕舞う。...本当に大丈夫ですよね。

 

「けれど、よくPHSなんて物知ってたね」

 

小野さんが片付けをしながら少し驚いたように言う。まぁ、病院という施設とは無縁でありそうな見た目をしているため、PHSなんて物を知っていることを意外に思っているのだろう。

 

机の上に散らばっているカルテを見ながら、俺は何でもないように答えた。

 

「同級生で、希望の就職先が病院なんですよね。それでよく話を聞かされるので、その時に聞かされた事をたまたま覚えていただけです」

 

「へぇ...その友達は何になりたいの?」

 

「看護婦ですね。なんでも医師の隣で必死にサポートしたり、患者に寄り添って励ましたりする姿に惚れたんだとか」

 

あいつ絶対にコウノ○リの見すぎたよ。あの先生の頭めっちゃ触りたくなるよね!弾力が丁度よさそう。

 

片付け終えたのか、小野さんがこちらに向き直る。

 

「.....なれるといいね、その友達」

 

「そうですね......きっとなれますよ」

 

小野さんから発せられた言葉は優しく、それに反応するかのように俺の言葉も優しかった。

 

俺はもう一度外を見る。あれほど天真爛漫だった星々は雲に隠れ、月の光だけが地上を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐々木さん、今日のレポートどう?」

 

「あ、あれね~.....あまり手つけてないんだよね」

 

「それ結構大変じゃん!提出明後日だよ!!」

 

「そう!明日もスケジュールきつきつなのに.....」

 

夜も深くなり始め、受診時間を終えた看護師達はエントランスで話を弾ませている。ここは総合病院と言うだけあって、エントランスの広さも中々のもの。十数人の看護師達が事後処理に追われていた。

 

「あれ.....?」

 

そのうちの一人が入り口を通りかかったとき、何者かに見つめられているような感覚に襲われ、ふと外を見る。夜であっても、外はまだ肉眼で確認できるほどだ。

 

入り口の前には、鞄も何も持たない一人の人間がいた。服装から見て判断すると、女性と見受けられる。

看護師は不審に思いながらも自動ドアを自力で開け、女性に入るよう促した。

 

 

「キャァっ!?」

 

 

終業間近で緩んでいた空間に、一つの叫び声が響き渡った。それを聞き付けた警備員、看護師が入り口へと集まる。

 

「おい大丈夫か?終業近いのに、一体何があったんだ」

 

警備員は魚のように口をパクパクさせている看護師の肩を叩く。しかし帰ってきたのは返事ではなく、外を指差すジェスチャーであった。

 

周りの看護師達も、指が指す方へと視線を移す。

 

月が照らす暗闇のなか、ある人はケータイを取り出し、ある人は腰を抜かし情けなく座り込み、ある人はただ呆然と突っ立っていた。

 

しかし誰もがその女性から目を離さない。その女性はとても赤かった。生地などの話ではない。塗られたような色をしていたためである。肌も青白く、所々には服と同じ『赤』があった。

 

これだけを見れば、何かの事件に巻き込まれた被害者だと思うこともできるだろう。ここにいるのは研修生ではなく、現場を知っている大人たちである。残酷な姿で運ばれてきた患者であろうと、しっかりと対応してきたエキスパートたちである。

 

だが彼らは動けなかった。それは服の異様な色でも、血に覆われた体を見た事ではない。

 

女性が無表情でこちらを一瞥していることに、底知れぬ恐怖を抱いたからである。

 

「......」

 

女性は何も言わず歩き出す。しかし、自動ドアを越えた直後にまた静止した。女性の目の前には、先程腰を抜かし尻餅を着いた看護師がいる。

 

「あ、あぁ...あ」

 

動きたい、叫びたい、逃げたい。そんな思いが頭の中で交差するなか、看護師の前でいきなり女性が前屈みになった。

 

逃げることも叫ぶことも出来ない看護師は、ただ見つめることしか出来ず......そして、目の前の物に涙を流しながら大きく目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

血濡れの女性の口から吐き出されたものは、歪ではあるものの、赤黒く腐敗臭を漂わせている肉の塊......猫の死骸の一部であった。

 




今回も読んでくださり誠に有難うございます!!

......はい、週末に投稿出来なくて本当にすみませんでした!!いやねぇ、色々あったのよ。彼女できたりとか親にネット禁止させられたりとか期末テストまで一週間切ったりとか......。

ま、まぁとりあえず...いよいよ本当のオリジナル展開!新しい怪異は外国から引っ張ってきました!分かった人はコメントしてね!!

それではまた次でお会いしましょう。ではでは~
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