転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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外国産の都市伝説はいかがですか?

 

 

 

「私、今回の事件に近い都市伝説を知っています」

 

懐中電灯で照らされた病室に、小野さんの声が透き通る。その言葉に反射的に顔を上げようとしたその時、小野さんが挙げていた右手を縦にし振り下ろしてきたのだ。

 

「ぶはぁ!!」

 

脳天から体の芯まで響き渡る痛みと、みっともない短い呻き声が病室に響き渡った。

 

あの怪物と遭遇したときはバールで顎を貫くほどの力だったので、これで済んでいると思えば本当に身震いする。ば、バーロー!これはむ、武者震いってやつだ!!

 

「お、小野さん?下着を見られて怒るのは分かりますけど、もう少し力を抑えては。あなたはバールで顎を貫けるほど強いんですから」

 

「んぎゃああ!アイアンクローはらめぇ!!」

 

こんのイケメン警察官!何てことを口走るんだ天然白髪!!火に油じゃなくて水素ぶちこんだみたいに小野さんが攻撃してくるんですけど!ていうか何で俺!?

 

「元凶は引道くんだと思うので」

 

「リアルなエスパーはリアルに怖いです!!」

 

いや割とマジで。エスパー使える人何人いんの?姫野さんと小野さんとか、バレちゃイケナイようなことばっか考えてるから一番エスパーであってほしくないんだけど!!

 

不満たらたらな意見も、当然彼女には届かずに、俺の頭はイヤな音を少しずつ鳴らしていく。そろそろ本気で痛がっているように見えてきたのか、姫野さんが助け船を出してくれた。

 

「あの...引道くん結構痛がってますし、その辺にしては.....」

 

「うん、私もそうしたいんだけどね.....引道くん、化け物から逃げる力を出すために、私のパンツを獲物と仮定して追いかけてたのよ?」

 

「..........」

 

ひ、姫野さん?姫野さんが無言で頭を掴まれている俺を見下ろす。果たしてこのようなことがあったのだろうか、いやない。慈悲で溢れていた眼は光を失い、無言のパンチが俺を殺しにやって来る。ある意味一番辛いです。

 

別におかしなことではない。化け物から逃げるには、ああするしかなかったのだから。だからでーじようぶ!

 

 

 

「それで、その都市伝説とはなんですか」

 

 

 

こんなくそ下らない茶番に嫌気が指してきたんだろう。氷室さんが少し圧を乗せる。

分かるよその気持ち。誰が好き好んで人のパンチラ事情を聞きたがるんだってことだよねごめんなさい。

 

実を言うと、こんな茶番をしている俺たちだが、余裕など全く無いのである。人の叫び声などが聞こえてこなくなったのは襲われていないととることもできるが、逆にあの化け物が狩り尽くしたと捉えることも出来るからだ。

 

そんな中、何処をほっつき歩いてるか分からない化け物の情報が現状あまりにも少なすぎるため、後手に回ることしか出来ない。

 

そこで降りてきた天使が、小野さん。彼女はこれに近い都市伝説を知ってるとのこと。さすが撲殺天使ですね、天使の輪っかとか日本刀の切れ味してそうで怖い。

 

「.....はい、そうでしたね。では.....皆さんは、『表情のない女』と言う都市伝説、話を聞いたことがありますか?」

 

「いや.....ないな」

 

怪異担当の氷室が分からないぐらいだろう。俺を含め、他の面子も黙りこむ。

 

「この話は、病院を舞台にした都市伝説ですが.....皆さんが知らないのも無理はありません。何せこの都市伝説、アメリカでの話ですから」

 

「「アメリカ?」」

 

氷室と加賀が仲良く声を揃える。いや正直俺も声を揃えそうになるほど驚いているのだ。あの『怪異症候群』の続編ですら、日本の都市伝説を抜粋している。それが海外の都市伝説となると、物語が大きく変わってくるのだ。

 

小野さんは俺たちの反応を見て少し口を歪まし、すぐに話を続ける。

 

「はい。これはロサンゼルスの病院で起きた出来事なんですが...ある日、服を血で染めた女がやって来たそうです。看護師始め、事件に巻き込まれたのではないかと思い、女に話し掛けました」

 

一同は静かにして、その話に聞き入る。顔を体育座りで隠していた神代さんも、いつの間にか小野さんの方を向いて話に食いついていた。

 

「私はその看護師が気の毒に思いました。だって血塗れの女性が口を開いたかと思ったら、出てきたのは言葉ではなく″猫の死骸の一部″だったんですから」

 

「「「「..........」」」」

 

何とも言い表しがたい不気味な空気が、辺りを包み込む。猫の死骸って美味しいの?腐乱臭ガンガンでしょ、だって想像している俺ですらお腹グルグル鳴ってるよ。

 

しかしその女性、猫の死骸を口にいれて病院行くとか正気の沙汰じゃないな。

 

「これを見て異常性を感じた病院側は、こっそり警察に通報。警察に引き渡すため、女を拘束しようと病室のベッドに連れていきました。驚くほどに、女は大人しかったそうです」

 

「まぁ妥当だな。俺っちでもそうすると思うぜ」

 

病院の動きに同感したのは加賀ちゃん。やはり不審者を野放しにするのは危険と考えてのことだろう。

 

「しかし、まだ疑問が拭えませんね。どうしてタイトルが表情のない女なんですか?今聞いてる限りだと、ただのサイコパーソンですよ」

 

「まぁ聞いて引道くん。スタッフはいくつかの質問を女にしたの。それでも女は無表情のまま答えず...。やがて病室に着いたスタッフは拘束の準備をしようとしたその時に.....突然、女が暴れだしたのよ。それも私達が対峙したときのような人間離れした力で」

 

「......あれっすか」

 

小野さんがバールを振る場面が鮮明に浮かんでくる。確かにバールは鈍い音をたて、化け物の顎を貫いた。普通の人間なら即死、良くて瀕死の状態だろう。そんな中、あの化け物は俺たちの後を追いかけてきたのだ。

確かに人間離れしている。体力も筋力も。実際、エントランスに散らかっていた残骸がそれを表しているのだ。

 

「そう、それも無表情のまま。これには流石に驚いたわ。実際ネットで検索してみると、当時の写真が残ってたりするみたいだから。相当気味悪いわよ」

 

うひゃ......それならまだ笑顔で殺りに来る方がいいね。何処ぞの漫画の主人公みたいに。

 

「でもね、その女が一度だけ表情を変えたの。医師達が押さえつけている時に、細い針のような歯をギラつかせて笑ったの。そして次の瞬間、押さえつけている男性医師の首元に深々と噛みつき、頸動脈を噛みちぎった」

 

「......っ」

 

誰が固唾を呑んだか、ごくりと小さな音がなる。当たり前のことだが、人は頸動脈を噛み千切られると出血多量で死に至る。至急の処置が必要になる。

 

「ま、病院だから死ぬ心配もないんだけどね。けど不気味なことに、その女は逃げる際頸を抑えていたがる男性医師の耳元に『私は神だ』なんて言って逃げたとか。この一連でも、女は終始無表情だったことから、『無表情の女』って言われてるの.....。一応、今のが私の聞いた都市伝説です」

 

 

「......」

 

 

姫野さん達は様々な顔を浮かべている。そのどれもが、マイナスの感情を露にしていることは、見なくても分かるほどであった。

 

しかし......無表情の女か。俺たちと対峙したとき、確かにあの化け物は無表情だった。俺はそこに恐怖を覚え、コイツは化け物だと確証もないのに分かったんだ。

多分そこは小野さんも同感だった気がス。

 

小野さんからの説明が終わって誰もが口を紡ぐなか、先に声を上げたのは、我等が女神みことんだった。なんか化学物質でありそうな名称だなおい。

 

「その.....小野さんの話を聞く限り、今回の怪異の特徴は分かりました。けれどその話の解決法?と言うか終わり方って、怪異自身が病院から出ていって終わってますよね」

 

つまり、具体的な解決策がないと言うことが言いたいのだろう。

 

「そこについては俺も同感です。ひとりかくれんぼやくねくねの時は、まだ解決策がありました。ですが話を聞く限り、今回の怪異を退く方法が見付かりません」

 

そう。ひとりかくれんぼは終わらせ方が存在する。くねくねなら、ヤツを認知せずに逃げればいい。流石にループ世界は稀だろうけど。

 

どんな.....というか、大抵の都市伝説には終わりが存在する。最終的にバットエンドになる話でも、終わりは存在するのだ、多分。今回聞いた『表情のない女』でも一応終わりはあった。向こうから退出するんだけどね。

 

 

「あーー...もう向こうから出ていくのを待って、ちょくちょく部屋移動するしかないんですかね」

 

適当な案を出すが、どこからもいい声は上がらない。当然だ、ヤツは人間離れをしているため、どうしても勝てるビジョンが浮かび上がってこない。

 

結局、氷室さん達が始めからしていた俺の得意プレイ、『イモリ』を使用することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「土方の死体が428...土方の死体が429...土方の死体が――」

 

途方もない時間、どれ程経ったか時計を見てもケータイを見ても分からない。どうやら闇の世界では時間の流れが不安定になるらしい。いや普通に迷惑。

 

電池が勿体無いと全会一致し懐中電灯の光を消した今、部屋は一筋の...それこそ外の月?か何かの光で、スゥーっとだけ薄く照らされている。

長時間じっとしていた俺は暇に暇を重ね、某新撰組の副隊長の真似をずっと繰り返していた。けどマヨネーズはそこまで好きじゃないです。

 

「ちょっと!何言ってるのよ気持ち悪い!」

 

「ぴえん.....神代さん?」

 

端から見ればやはり気持ち悪いだろう。ブツブツ口走るのは、陰キャの特徴。俺はもう脱陰キャしたけどな、ハッ!

 

そもそも、突っ込んでくるのは小野さんか姫野さんだと思っていたが、向こうも気まずい思いをしているであろうに、声を掛けてきたのはまさかの神代さんだった。

肩を軽く叩かれ、堂々と言われた気持ち悪い。ちょっとだけ心にきちゃったよ。

 

「何よその顔.....驚いた?殺しに掛かってきた人に肩叩かれるの」

 

「あー...まぁ驚きましたね。でもなぜ俺に声を掛けたんですか?お互いに気まずい思いをしてるのは分かってますし、ツッコミなんか他に任せれば良かったのに」

 

「私じゃ不服?.....なーんて、別に用がなかった訳じゃないの」

 

「俺に何か用...あ、もしかして謝罪ですか?それなら大丈夫ですよ、怪我したわけでもないですし」

 

「謝罪してもらえると思ってたの?自意識過剰?」

 

「えっ...違いました!?」

 

「いや合ってるけど。でさ!それでね、言いたいことがあって...その.....」

 

自分の自意識過剰を反省していると、まさかの正解だったと言う。やっぱりそこら辺の礼儀は当たり前だよね、別に自意識過剰とかじゃないよね...ね?

 

途中までツンツンとした態度をとっていた神代さんだったが、言うのが恥ずかしいのだろうか。もじもじと言い淀んでいる。

 

 

「えーと.....ごめんなさい。さっきは危険な行動をしてしまって。勘違いだったとはいえ、一歩間違えれば私は終わってた。引道には恐い思いをさせたよね。......本当にごめんなさい」

 

どうやら本気で謝っているらしく、綺麗な90度謝罪である。ふつくしい。

 

「誤解が解けたのならもう気にしてませんよ。それより、神代さんこそ精神面で大丈夫ですか?」

 

 

「それなら心配いらないよ、引道くん」

 

 

不意に隣から透き通るような美声が聞こえた。我等が天使、美琴エルである。心配無用とは、やはりこの二人は固い絆でお互いが分かるのだろうか。

 

「さっきは暴走しちゃったけど、しっかり話し合って落ち着いたから。これでも引道くんには結構丸くなった方だから、大目に見てあげて」

 

「めっちゃツンツンしてるんですがそれいってぇ!!」

 

理不尽だ。ちゃんと正直に言ったのに.....。というかこれの何処が丸いんですか?俺に対する態度が刺々しいですよ美琴さん。あれか、お腹でも丸くなったのか?

 

「引道くん。デリカシーって言葉知ってる?」

 

「どうせ知らないわよ。自分で紳士名乗ってて恥ずかしくないの?」

 

「二人の攻撃に耐えてる俺はすごいぴえん」

 

「結局それ言いたいだけでしょ」

 

女三人も寄れば男なんてすぐに崩れます。ヤバい、女三人に泣かされちゃう!いいやポジティブになれ。普通に考えればこの構図はハーレムと見て間違いないのでないか?

 

 

 

コン、コン

 

 

 

「「「「「「!!??」」」」」」

 

やはりハーレムなんてなかったんや。俺の幻想をぶち壊すかのように、扉がノックされる。一般人の可能性もあるが、大方化け物の仕業だろう。氷室さんが扉を押さえていながら何も反応なかったということは、気付けなかったということ。ステルス性が高いことで。

 

 

コン、コン

 

 

しばらくノックは続くが、意外なことに皆冷静になっていた。あれだけ化け物を殺すことに執着していた神代さんさえ、今は果物ナイフを右手に持ちいつでも飛び出せる準備をしていた。

 

俺は手持ちに何もないので、テレビで見た喧嘩の格好をする。なにこれ絶対ダサい.....。

 

 

コン、コン、コン......

 

 

「......止んだ?諦めたのかぁ?」

 

「ちょっと加賀さん、それフラグ――」

 

俺が言い終わると同時に、タイミングよく大きな音を立てて扉が壊された。その光景にデジャヴを感じるが、決してそれだけではない。

 

『......』

 

無表情の女。確かに小野さんが言ってたように、改めてその顔を見ると肝が冷えるほどの不気味さがある。

小野さんに貫かれた顎は血で染まっていたが、流れているわけではないようだ。どうやら傷が塞がったと見て間違いないだろう。

 

化け物の存在感に圧倒されていた俺達だが、化け物が歩み寄ろうとした瞬間、先に動いたのは氷室さんだった。

 

「っ!」

 

両手でピストルを構え、体を支える足と綺麗に伸びた背筋。非常に体感が良いことが窺える。

 

化け物の一歩が床に着く前に、氷室さんは引き金を引いた。モデルガンのような弾けた音ではなく、耳が痛くなるほどの轟音が病院に響く。

 

「っ、すごい!」

 

「腕が落ちていないようで安心したぜぇ氷室!」

 

銃口が捉えたのは、化け物の頭だった。弾丸が空けたであろう額からは血が噴き出している。思った以上に血が出ているため、その光景は非常にグロッキー。

 

加賀さんはこの瞬間を好機と見なし化け物の腹に飛び蹴りをかます。体格に見合った通り、蹴られた化け物は廊下の壁まで飛ばされ倒れた。

 

「よくやった加賀!今のうちにここを離れるぞ!着いてこい!!」

 

氷室さんが俺達に指示を送るが、神代さんがうずくまっているため、俺と姫野さんは動けないでいた。

 

「恐い.....恐いっ!」

 

恐らく初めて見たのだろう。こんなグロッキーな現場を初めて見たのなら、恐怖を覚えても仕方ないのだ。動けないでいる神代さんに痺れを切らした小野さんだが、化け物が起き上がろうとしているのを見て、加賀さんと一緒に化け物を抑え込んでいた。

 

「もう!この化け物力強すぎ!押し返される.....!」

 

「小野さん頑張ってくだせぇ。と言うけど、情けない話俺っちも全力の力を押し返されてるんだよなぁ!」

 

どうやら抑え込むのも長くは持たないらしく、徐々に化け物が起き上がるのが見える。

俺は震える足を平で叩き、神代さんを背中に背負う。

 

「すみません!小言は後で聞くので!今は非常事態なんです!!」

 

「由香、ここは引道くんに頼って逃げよう!」

 

姫野さんが声を掛けてくれたからだろう。神代さんの震えが収まっていくのが分かる。そして小さな声で『ありがとう』を言っているのが聞こえた。

 

「それじゃ先に出ます!小野さん達もしっかりと見計らって逃げてくださいね!!」

 

「おう!もう少ししたらそっちに向かうぜ!!」

 

加賀さんは余裕があるのか、サムズアップをしてくる。調子のいい人なんだから、まったく.....。え、俺もだって?

 

「神代さん、しっかりと捕まっててくださいね」

 

恥ずかしがって顔を埋める神代さんを背負って、50メートル7,0の引道新聖が全速力で廊下を走る。

姫野さんも隣で真剣に着いてきてくれていた。

 

奥では氷室さんが分かれ道を確認しながらスピーディーに進んでいる。

 

 

 

 

 

 

第二ラウンド開始しちゃったね......。(白目)

 

 

 

 

 




今回も読んでくださり、誠に有難うございます!そして更新遅くてすみません!

文化祭取り組みが本格的に始まったり、いい内容があまり思い浮かばないなどで大変です.....(泣)

まぁさんなこんなで、次回また御会いしましょう!ではでは~...

新キャラ出すとしたらどんなキャラがいい?

  • やっぱ男子で熱くなりたいよね!
  • いいや女子で癒されたいでしょ!
  • オカマが最強です
  • ロリは正義
  • 人間じゃなくてペットがいい
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