転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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無表情の女:日記①

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奥さん頑張って下さい!!次の陣痛で赤ちゃんをだしますよ!」

 

「く、ぐうぅぅ...」

 

「はーい大きく息を吸ってー、ひーひーふー。ひーひーふー」

 

ある国の巨大都市にある大きな総合病院。今この瞬間、地球に新たな生命が宿ろうとしている。

 

「ふー、ふー.....ぐ、ぐぎいぃぃぃ!!」

 

「はーい頑張って!赤ちゃんも今頑張ってるから!...赤ちゃんの頭が出ました!!あともう一息ですよ奥さん!!」

 

「ぐうぅぅぅ..........うんぐあああ!!!」

 

 

 

んギャー!おギャー!.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かとは遠い街で、私は産まれた。誰もが揃えて赤子の時の記憶はないと言うが、私は違った。産まれた瞬間の産声は今でも鮮明に覚えている。

目を開いたのはそれから少ししてのことだ。初めて写した光景にいたのは複雑そうな顔をした母親と、凝り固まった笑みを向けてくる医師達であった。体はまだ未熟で、腕を動かすことすら儘ならない。始めてみた光景に、私は泣かなかった。

 

 

私が4歳になったときの事。他の子よりも精神的な成長が早かった私は、周りの物事が分かるようになってきた。母が見るニュースを見て社会を知り、家に置いてある本を片っ端に読んでは字を覚えていった。ひたすらに自分が成長できる悦びを感じ、没頭していった。幼稚園でも変わった目で見られたが、気になどする必要はなかった。

 

 

私が5歳になったときの事。私は自分が住んでいる家に不信感を抱くようになった。父の存在が理由である。

ことあるごとに母に質問すると、「お父さんは遠いところで働いてるの」と口にするばかりで、すぐにはぐらかされてきた。思えば産まれてこのかた、母の姿は何度も見ているが父の姿は一度たりとも見たことはなかった。祖父母には何度かお世話になっているが、父の話は一度も聞いたことがない。

私は母が仕事に出掛けた頃を見計らい、家のなかを出来るだけ捜索した。物置を調べ、タンスを漁り.....出てきたものは、母が嬉しそうな笑みを浮かべている男と撮った写真である。私はその写真を手に取り、自分の部屋に隠した。

 

それから数日が過ぎ、仕事から帰って来た母を問い詰めることにした。

 

「お母さん。私のお父さんはこの人なの?」

 

私が差し出した写真を見た瞬間、母は疲れた顔を強く歪ませ叫んだ。

 

 

「あの男の顔なんか見せないでよっ!!!」

 

 

瞬間、私は横へ軽く飛んだ。体は打ち付けられて痛く、左頬は強い熱が広がっていく。しかし私にとってその痛みはどうでもよく、むしろ母の泣きそうな顔が印象的だったのを覚えている。私は泣かなかった。

 

 

私が12歳になったときの事。あの日から母は変わり、感情を表に出さないようになった。無表情と言うのだろう。機械のようにただひたすら同じ表情で仕事をする母に、私は初めて怖いと感じた。

そんな母だから、仕事では愛想がないと言われ強制的にテレワークへと移行された。元から要領が良かった母なので辞めさせられはしなかったが、現場の空気が悪くなるので居ない方がいい言うのが会社側の判断なため、母はほぼ一日中家にいることが頻繁に増えた。休日などは確保されているし、給料もしっかりと入ってくるため生活には心配していなかった。

 

「お母さん。今度の休日遊びに行かない...?」

 

「...私疲れてるから、友達と一緒に行ってきなさい.....」

 

母はことあるごとに私からの誘いを断る。不満に思うことはあれど、どこか仕方ないと思う私がいた。旦那はおらず、頼れる祖父母は私が小学に上がる頃に亡くなった。女一手で私を育て、愛情を注いでくれた母を尊敬し愛していた。だから私は母の重りを少しでも減らすために家事を手伝い、たまの休日には気分を変えようと遊びに誘った。私は母の無表情を毎日見るのが堪らなく辛かった。

 

 

 

私が高校に入ったばかりの事。ようやく母からバイトをしてもよいと許可を貰うことができた私は、友達作りよりも家庭を優先した。前とは違い、母は変わらない愛情を私に注いでくれている。生活が安定してた私を母は頑なにバイトを許してはくれなかった。それでも私は母の助けになりたいと願い、何度も働けるよう試みた。その結果、成績を上位に定着させ第一志望の高校に入れることを条件とした。それを私はクリアしたのだ。母は複雑そうな顔をしていたが、約束は約束なため仕方なく受け入れた。

何も私は遊ぶ金欲しさで働きたい訳じゃない。進学を考える私が、母の手を出来るだけ借りないでやりたいと思ったからである。母は勿論その事を知っていた。「愛する娘の青春を私の事情で潰したくない」と言っていたが、私にとって母は青春を棄てるほどの価値がある。私を愛してくれる気持ちだけで嬉しいのだ。

 

 

 

私が高校2年になったときの事。昔とは違い、母はよく笑うようになった。たまの休日には一緒に遊びにいったり、家事を分担して仲良くしたりなどした。元々顔が良かった母は取り戻した笑顔でテレワークを解禁。会社に復帰した母はたちまち評価を上げていった。仕事が良ければ階級も上がり、連携して給料も高くなる。二人暮らしの私達には充分すぎるほどの暮らしになっていた。

 

「お母さんは今幸せ?」

 

「えぇ.....あなたのお陰で、ここまで頑張れてこれたの。本当に自慢の娘だわ」

 

頭を撫でる母の手つきは優しく気持ちのよいものだ。気分が荒れている時だって、これをされればどうでもよくなる程に。幸せを胸に抱きしめ、母のお腹に顔を埋める。親特有の香りが鼻を擽るのがまた堪らない。

 

どうか、この幸せが永遠と続きますように...

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かでナニカが割れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は...久しぶりのオフか。確か食材が少なかったはずだし、買いに行こうかな」

 

7限目の授業が終わった私はスマホでバイトのオフを確認し、買い物に向かおうと自転車小屋へ足を運んだ。

ただ.....この日からは、いつもの学校生活ではなくなったのである。

 

 

「ねぇねぇ.....君いつも早く帰るよね。どうしてそんなに早く帰るの。用事?」

 

席を立ち、教室を出て少しして後ろから急に声を掛けられた。こんなぶっきらぼうで人間関係に関心のない面白くない女に声を掛けてくるのは何処の物好きか。はたまたトイレ等に呼び出されて虐めでもするのだろうか。

様々な思考が漂う中、私はイライラを出来るだけ抑えながら振り返る。

 

「えぇ。急いでるから要件は手短にお願い」

 

「いや.....別に用と言うほどでも無いんだけど、ただ気になってさ」

 

「そう。私早く家に帰らなくちゃいけないから、じゃあね」

 

生徒一人に時間を取るよりも母との時間を大事にしたい私は適当にあしらって離れた。

 

「.....」

 

この男子生徒が向けてくる視線にも気づかずに...。

 

 

 

 

次の日の登校時の事。私は下駄箱を開けて上履きを履く。二階にある一年教室へ向かう途中、またもあの男子生徒が廊下で待機していた。どうやら待ち伏せていたらしく、私を見付けるなり駆け足で寄ってくる。

 

「おはよう!」

 

「.....おはよう」

 

挨拶するためだけに私に声を掛けてきたのではないだろう。その内容に答えるのも面倒臭い私は挨拶だけして横を通り過ぎようとする。

 

「おいおい、挨拶だけじゃ悲しいよ!」

 

案の定、私の行く手を阻んでくる。私は遠慮などもう捨てて、自分ができる一番の嫌そうな顔をコイツに向けた。

 

「眉間にしわ寄せちゃってさ、人形みたいな顔が台無しだよ」

 

「それは私が無表情だってこと?」

 

開いていた手を無意識に強く握るのを、コイツは見逃さなかった。両手を胸の前に出して少し後ずさる。

 

「おやおや気にでも触れてしまった?でも無表情なのは間違いないよ。でも誰もが羨むほどの美しい顔立ちだ。だから俺は『人形』と呼んだんだ、納得?」

 

美しい顔立ち?そんな言葉はとっくの前から言われてることだ。どの子も私に好意を持ち、羨み、そして妬んだ。私が家以外で無表情を見せたのはもう随分と前のことだろう。

可愛いげのない様子と圧倒的な程の無関心を含めて、私は学校で『残念美人』と呼ばれていた。

 

「.....納得はした。でも不満が消えた訳じゃない。これ以上ここにいる意味もないし.....そもそもあなたに道を拒まれる意味も分からないし。何がしたいのあなたは」

 

「何がしたいか...か。強いて言うなら、君に惚れたかな!雰囲気もムードもへったくれも無いのは分かります付き合ってく」

 

「ごめんそう言うのに興味関心ゼロなんだ」

 

「せめて最後まで言わせてよ!」

 

人通りが多いこの廊下でよくもまぁ無様に吠えることができる。こんなヤツと話している自分が恥ずかしくなってくるので、早急にこの場から離れる。

 

「ちょちょちょっと!?」

 

別にこれが初めての告白ではない。一部からは批判を食らうかもしれないが、私はこれでも上の中位の顔面偏差値だと自負している。故に告白された回数も余裕で3桁越えるのだ。私は他の人からの愛なんかいらないし、母の愛情だけで充分なのだ。

 

 

 

 

 

人通りの多い廊下でフったにも関わらず、あれからもアイツは私に話し掛けてくる。いや、むしろ以前よりも頻度が増えたと言っても過言ではないほどにだ。

 

『次、移動教室だぞ』

 

『今度の週末遊べない!?』

 

『テストの点数上げたいんだ。手伝ってくれ!』

 

何かと理由をつけては私に関わろうとしてくる。その都度「無理、嫌だ」とフるにも関わらず、距離を縮めるのを止めてくれない。朝食の時間になれば隣か前に座ってくるし、家に帰ろうとすると着いてこられることもあった。

 

アイツの事が少し気になった私は評判について少し調べた。どうやらあの性格でもそれなりに評判はよく、嫌われてそうな口振りはほとんど聞かない。

 

そしてある日、珍しく着いてこないアイツをよく思い購買へと向かっている最中。向かいにある空き教室で女子と二人っきりのアイツを見掛けた。気になった私は見たからないよう配慮して窓越しに見ていたが、少ししてアイツが急に頭を下げたのだ。それを見た彼女は少し後退り、手を口に当てて走って飛び出していった。

 

なぜか胸に突っ掛かるものがあり、私は引き返して教室へと戻る。角を曲がろうとすると、先程の子が泣きながら私の隣を走り去って行った。

 

放課後になり、私はいつも通り帰宅しようと自転車小屋に向かう。道中アイツにフられたという子の話が聞こえてきた。今日の帰り道に、アイツは姿を現さなかった。

 

しかし次の日からはまたいつもの調子に戻ってる彼に、私は少しの苛立ちと責任感を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日もやって来るアイツに、私はイライラをぶつけることとなった。

 

「なぁ一緒に昼飯食いに行こうぜ!」

 

「.....いいけど、私が場所決めていい?」

 

恐らく男に申し出を許したのはこれが初めてだろう。何か変な気分である。コイツも私がいつもみたいに突き放さなかったのが以外に思えたのか、笑顔のまま固まっている。とても失礼なヤツだ。

 

「お、おう!よろしくお願いします!?」

 

「なんで声裏返ってるのさ...」

 

普段ツンツンして(デレたことはない)いる私が誘いに乗ってきてくれたことが意外だったのだろう。声が裏返っており、若干汗も流れている。緊張しているのか、はたまた.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここでいいかな?」

 

やって来たのは校舎裏。生徒はおろか先生さえもここを通ることは殆どないため、話し合いにはもってこいの場所である。

 

「も、勿論ここでいいし.....むしろ俺が大歓迎って言うか..........」

 

「あっそう」

 

今日の私はお弁当を持ってきておらず、朝コンビニで買った菓子パン一つだけ。当初から予定してたことなので、話メインとなる昼食だからだ。それに比べコイツの弁当は緑と茶色が見事に両立しているかのような美味しそうなお弁当である。.....別に負けたとか、悔しく思ってなどいない。

 

コンビニで買ったサンドイッチを袋から取り出し、一口含む。私が食べているのを見ていたコイツを横目で見ると、お弁当を食べることを今まで忘れていたかのような反応を取り、急いでかけ込む。当然いきなりそんなことをすれば噎せてしまうのは当たり前。どうせコイツも..........

 

「っ!?ゴホ!ゲホッ!」

 

はい噎せた。私は素早く水筒を手に取り渡す。申し訳なさそうに飲むが、予想してた事なのでなんとも思っていない。

 

「―――っんぐ。ぷはぁ..........悪い助かった」

 

「お礼は大丈夫。それよりどうして私があなたをここに誘ったと思う?」

 

あえて理由を言わず、コイツが今何を考えてるか聞き出す。

 

「それはさ.....やっぱり、俺の気持ちに答えたいからだろ?人前じゃ言いにくいしな、こんな話」

 

「ふーん.....それで、どうだと思う?」

 

「っ..........正直、無理だと思う.....。俺だって、自覚してんだ。執念深さは自慢だが、あんたには迷惑掛けたと思ってるしな.....。けどこの気持ちは抑えられないんだ!だから頼む!ちゃんと言葉にしてフッて下さい!!」

 

「前にちゃんとフッたじゃん」

 

私はジト目で隣で泣きそうになっている男を見るが、正直それで私のイライラが収まりはしない。長いこと邪魔された鬱憤は溜まっているのだ。

 

「はいはい嫌いです」

 

「そういう適当な返しじゃなくて!もっとこう.....俺の目を見て、付き合えない理由を言ってフッて欲しい」

 

困り顔で注文をつけてくるコイツに面倒くささが込み上げてくるが、それで終わるならもうそれでいいやと思えてきた。

 

私はビニール袋にゴミを詰め込むと隣に置く。今度はしっかりとコイツの方を、目を見つめた。強がったような顔をして目を潤わせているが、綺麗な黒色をしている。

 

「ごめんなさい。私にはお母さんさえ居てくれれば後は何もいらないの。付き合う時間があるなら、それを全て家庭に回したいから.....あなたとは付き合えません」

 

「..........分かった。長い間迷惑なアプローチをしてごめんな。出来るだけ話し掛けない方がいいんだろ?最低限の会話しかしないからさ。もし不快に思ってくれてるなら.....忘れてくれ。じゃあな」

 

「.....分かったわ。それじゃ、私もこれで」

 

コイツは食べきれてないお弁当の片付けに入るが私はとっくに済ませているため、私の方が先に去るという形となった。

 

これまでアイツに溜められた鬱憤は母との日常で地道に解消していこう。私はそう考え帰宅した。

 

 

 

 

あれ以降、私とアイツは完全な他人同士となった。アイツは友達とつるんでおり、私は母との日常を謳歌している。それでもなぜか、胸の中に溜まる嫌な塊は消えてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでくださり誠にありがとうございます!

アンケートをもうしばらく取りたいと悩んでいた矢先、「日記でも書くか」と思い付いたので、これで時間を潰すことに。これが終わるまでが期限としたいと思うので、ご要望バンバン言ってください!
それと、投稿が遅れて申し訳ありませんでした!ゲームのイベントとか体育祭とか部活の大会とかで中々ありつけませんでしたごめんなさい。

それではまた次回でお会いしましょう!ではでは~

新キャラ出すとしたらどんなキャラがいい?

  • やっぱ男子で熱くなりたいよね!
  • いいや女子で癒されたいでしょ!
  • オカマが最強です
  • ロリは正義
  • 人間じゃなくてペットがいい
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