転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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楽観視とは、現状を理解して初めて知るものである。

〈新聖side〉

 

「ん、電気は...ちゃんと点いてるな。しっかし物音が何一つ無いのが不気味だ。さっきの悲鳴で女の子がいるのは確かなのだが...本当に静かだ」

 

引道新聖こと俺は、この屋敷に侵入したのだが、あまりの不気味さに勇敢さは何処へやら、今はもうビビりっぱなしである。脇は汗でびしょびしょだ。勿論需要なんかあるわけない。こんなので需要があるとすれば、それはきっとイケナイ方なのだろう。レベル高過ぎて俺には無理である。

 

 

 

玄関で行儀良く靴を脱いで並べる。性根は腐っても真面目なので、こういうことはしっかりとするのが俺なのだ。

玄関に並べてある靴をみる。自分のを抜いて5足ある。つまり今この家にいるのは五人ということ。...そのうちの1人はさっきの女性で間違いない...。

 

「はぁ、もうホントに怖いって...」

 

いちいち愚痴を吐いていてどうかと思うかもしれないが、愚痴を吐かないとやってられないのだ。ストレスを溜めるのは寿命が縮む事を意味する。よって、文句をいう奴を悪と言うのならば、お前は俺の寿命を縮めている悪なのだ。まぁこうなると、いたちごっこだけどな。

 

手前の右の部屋が目に入る。まずはここらか潰していこうか...。抜き足差し足忍び足で部屋の戸を開ける。

 

「へぇ...ここは和室なのか......んん?」

 

戸を開けて真っ先に来たのは和室特有の臭い。心が休まる草の匂いは今の俺にとって心地いいものだった。

あれを見るまでは.....な。

 

グシャグシャ...グチャグチャグャ.....

 

テーブルの上に並べてある色とりどりな料理の数々。その中央には立派な寿司がおかれていた。あ、ちなみに寿司は好きだが、貝と海老とイカだけはno Thank Youで。

ホント、あれだけは食べると吐き気がしてくるんだよね.....フライ揚げならいけるのに。勿論タルタルソース付きで。

 

さて、そんな事情は置いといて.....テーブルの上にあるその寿司を食べているのは.....人間ではない。では動物かなにかか?.....答えは否。それを獣の如く食い散らかしているのは、クマの『人形』。

ソイツは寿司を食い散らかし終えた後、こちらに包丁の切っ先を向け愉しそうに言った。

 

 

 

 

 

 

ミィツケタァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....し、失礼いたしましたぁー!!」

 

俺は全力で戸を締め、全速力で逃げ出した。

 

ヤバいヤバいヤバい!!あんな超常現象染みたモノに立ち向かえるはずがない!勇敢と無謀の意味を吐き違えるな!俺は弱いのだから、逃げるしかないだろう!?女の子はそのあとに探し出して、ここからおさらばだ!

だからとりあえず..........

 

「逃げるんだよぉ~!!」

 

戦略的撤退だ!俺は、目の前にある階段を上る。そして、後ろを振り向くと.....

 

「ンギャアァァァァァァァァァァ!!!!!きてるぅぅぅ!!!!!鬼ごっこなの!?ごめん俺1抜けた!だから来ないでえぇぇぇぇぇ!!!」

 

情けない声を出しながら元気良く階段を駆け上がる。男としてのプライド?知らない子ですね。命が一番大切ぅ!

 

有り難いことに、ソイツは階段の上りが下手くそで、足止めを食らってるらしい。俺は突き当たりにある部屋のドアノブを回した。

 

ガチャガチャ

 

「はぁ!?ここ鍵閉まってんのかよ!!」

 

何度も試みるがガチャガチャと音が鳴るだけで、開く気は全くしない。ちくしょう!こんな戸を開けられないで、女性の扉(意味深)を開けられるか!

 

後ろからトン、トン、とリズム良く階段を上って来る音が聞こえてくる。戸を開けるのは諦めて、隣の部屋に急いで駆け込んだ。

 

「ひ、開いたぁ!やっt」

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

飛び込んだ部屋のなかで、俺と女の子はおもっきし叫んだ。それはもう叫んだ。今なら合唱際のソプラノ班に入れてもらえる気がする。あ、女の子だらけのグループでやっていける自信なんかありませんでした、プライド捨てるぐらいだしね、テヘッ?

 

「だ、誰ですか、あなたは.....!」

 

怯えた表情で、俺を睨んでくる。その目尻には涙が溜まっていた。滅茶苦茶興奮します。涙目の女の子に睨まれるのって、なんかこう、ドキドキするよね!えっ、しない?そうーですかぁー↑!

 

それはそうと、答えられた質問にはしっかりと答えないと.....俺ホントに不審者だし、ここで少しでも警戒を解いてもらえるようにしないとなぁ。

 

「お、驚かせてすまない。俺の名前は引道新聖。高校2年生で彼女いない歴=年齢だ。...おい何言わせてんだ」

 

「.....私は、姫野.......姫野美琴、です。高校3年生です」

 

あっ、スルーの方向でいくのねりょーかい。...べ、別に寂しくなんかないんだからね!いやん、きもーい!

というか何気に俺より1つ歳上だし...しかも先輩かよぉ。

 

 

 

いや......確かにそうだったな。何を間違えてるんだ俺は。もう判ってるだろ、この現実を。

 

大きな屋敷、女性の転落死、神代家、クマの人形、そして......姫野美琴。

 

あぁーー....マジかぁー。やっぱそういうことかぁ...。

 

どうやら俺は『怪異症候群』の世界に来てしまったみたいだ。......嘘まじで!?そもそも俺は部屋で寝ていたはずなのに、目が覚めたら神代家の敷地で寝ていたとか、これあれだよ。最近ブームになってる転生ものだよ。

 

「.....ん」

 

いや待て落ち着け、落ち着くんだ俺。夢だっていう可能性もある。最近は二次元の世界に行ってみたいとかいう考えが強すぎて、眠っている間に脳が見せている光景なのかも知れない!

 

「......さん、...道さん」

 

けど、目が覚めた直後に自分の顔を思いっきり殴ったしなぁ。...夢じゃないのか?まだ確信が持てんな、やはりここはもう一回殴るべきか。...痛いのは嫌なんだけどn

 

 

 

 

パシン!

 

 

 

 

そのとき、彼女の手が俺の頬を叩いた。それでも彼女はこちらを見つめ、言葉を発する。

 

「聞いてるんですか、引道さん!現実から目を背けないでください!今のあなたの顔は、その...死んでましたよ...」

 

「え、マジで?」

 

死んでたの?俺の顔が...考え事してただけなんだけど...。そういや前に健吾から、「お前、たまに気持ちの悪い顔してるぞ」って、注意されたことがあったっけ。あれマジだったんだ、てっきり構ってもらえなくて拗ねてああいうこと言ってたのかと思ってたわ...。ごめんな健吾。

 

というか.....

 

 

ガシッ!

 

「ありがとうございます!これでハッキリとしました!ヒャッホーウ!これからも末永く宜しくお願いしますね!」

 

「え...え、あ、あの...」

 

姫野先輩にぶたれたおかげで、ここが夢の国じゃないことが証明されたね、ハハッ!ってことは...俺は本当に、ゲームの世界に転生したんだ...!

 

いやーマジか!なんかもう何でも出来る気がしてきたわ!とりま、頑張ってヒロインと仲良くなろう!そしてお近づきになりたいですねぇ...。あぁ~、夢が膨らむんじゃー!

 

「ねね、今のこの状況分かる!?ひとりかくれぼと言う呪術で起こった現象なんだ。だから」

 

「ふざけないでください!!!」

 

そのとき、初めて姫野美琴からの怒りを肌で感じた。

 

「由佳から電話が掛かってきて、心配で見に来たら由佳は死んでるし...おじさんも死んでたし...おまけに人形は襲ってくる...それがひとりかくれんぼ!?呪術!?ふざけるのも大概にしてください!こんな...こんな状況で...うっ、くうぅ.........」

 

 

 

 

 

 

 

......あぁ、そっか。何してんだろ、俺。

死んでも許されるのはゲームの中だけ。たかがゲームだ。死んでもリセットボタンを押せばまたやり直せるリトライな世界だ。

 

だけど今俺がいる目の前の彼女は、生きている。決してコンピューター等ではない。無論、俺もそのうちの1人。走ればしんどいし、叩かれたら痛い。腹も現在進行形で減っている。怪異を除けば、もといた世界とは何も違わない。それをなにか?俺はゲーム感覚でこの世界を満喫しようとしてたのか?確かに姫野美琴は可愛いし、『怪異症候群』の主人公だ。何度も怪異を解決してきた。

 

だかそれはゲームの中での話。現実となった今、イレギュラーな存在である俺が現れたことにより、これから先の展開がより危ないものになってくる。それに、これから先は、多くの死に直面するだろう。

楽観視すると、すぐに殺られる。......目の前にある、タオルで覆われたこの子は恐らく、神代由佳なのだろう。ゲームでは助かっている設定だが、見た感じでは生死が判らず、死んでいるのかもしれない。

 

「......ッ!」

 

その瞬間、俺の身体を再び恐怖が包んできた。しかも今回のは明確な『死』が表れている...。

 

......彼女には本当に悪いことをした。不謹慎にも程がある。何が性根は腐っても真面目だ、堕ちるとこまで堕ちてんじゃねぇか。そんな自分に嫌気が差してくる。

 

謝ろう。謝って許されるかどうかはわからない。それでも、反省しているという気持ちは言わなくちゃいけない。

 

俺は頭を深く下げ、彼女に謝った。

 

「えっ...!?」

 

「すみませんでした。姫野さんの友人が無くなられているのに、不謹慎な事を言ってしまって。遊び感覚であなたをバカにしてすみません。本当に反省しています。......ごめんなさい」

 

言うことは言った。あとは彼女次第だが、今回の非はめちゃくちゃ俺にあるので、何でもするつもりでいる。......本当にすみませんでした。

 

「......いえ、私も少し熱くなりすぎました。ごめんなさい...」

 

静かな部屋に、二人の呼吸する音が聞こえる。さっきのこともあり、気まずくて声を掛けられないでいた。

 

......しばらくすると、姫野さんは俺に質問をしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......引道くんは、どうしてこんなところにいるのですか?」

 

 

 

 

 

 




どうも、今回も読んでくださり誠に有難うございます!

いやー、いくらオフザケ新聖くんでも、ちゃんとしなくちゃねぇ!バカで騒ぐしか脳のない主人公だと、主が許しません!美琴ちゃんを泣かした罪はマジ重いぞ(ちょいギレ)

次はいよいよタイタンの時間だよ!ぜひ読みに来てください!
ではまた次でお会いしましょう!ではでは~
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