転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

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″一般的″に吊り橋効果とは、その場でのみ好感度が上がることを指す

「......え?」

 

口をポカンと開けてこちらを見つめるのは、『怪異症候群』の主人公。兼メインヒロインの姫野美琴さんである。その顔も非常にふつくしい。

 

「えっと...俺なりに考えたんですけど、化け物が現れた所が結構怪しいと思うんですよ。もしかしたら、アイツが何かを持っていたのかもしれないし、隠しているかもしれない。」

 

「そ、そうかもしれないけど...」

 

姫野さんは少し恐れて口ごもる。俺の言ってることはおかしい事ではあるが、決して的外れな考えではない。だがやはり、この考えには思うところがあるみたいだ。

俺は続けて述べる。

 

「俺が思うに、この屋敷から出るにはあの化け物をどうにかしないといけないと思うんです。窓も玄関も、一部の部屋も、恐らく人の力では開かないようになってるはずです。俺は、こんなんでも男です。それなりに力はありますし、窓やドアを強引に開けようと思えば開けられます」

 

「それは、そうなのかも知れないけど...。要するに、引道くんはあの化け物をどうにかしたいんでしょ?」

 

おぉ、話が早くて助かる。姫野さんって、地味に頭良かったんだ...。俺てっきり天然バカだと思ってたよ。あ、でもこれじゃ意味違うね。

 

「はい、最終目的がそれです。それを行うための準備として、こうやって部屋を回っているんですよね。それで、鍵を使って部屋を開けては今こうして探索しています。ですが...ここで一つ、疑問が出てくるのです」

 

「疑問?」

 

姫野さんが首を傾げて考える。

そう、一見部屋が開かないのは化け物によって見えない力でされていると考えるだろう。別にそこは間違っちゃいないし、正解でもある......半分は。

 

「姫野さんが、ドアが開かないのはあの化け物による影響、と考えているのは別に間違いではありません。大切なのはその先です」

 

「その先...」

 

「えぇ、化け物による影響でドアが閉まった。ではなぜ、人間の力では開かない扉を鍵で開けられるのか。ここが疑問です。もし俺が向こうの立場なら、鍵を使っても開かないようなドアにします。...が、あの化け物はそれをしなかった。もしくは出来なかったと捉えるのが正しい。そしてもし後者なら...鍵は、俺達に見つからないよう隠すべきだ。と、考えるのが定石でしょう。そうなると必然的に、あの化け物の出現場所が怪しくなってくる。以上が、俺の考えです」

 

「......驚いた、引道くんって頭いいんだね。さっきの行動からは考えられないよ」

 

それは遠回しに「変態は全員頭悪い」って言ってるのと同じですよ。変態でも頭良いやつは良いんですよ!勉強できるやつもいるし、運動が出来るやつもいる。人を見た目で判断してはいけないよ!メッメッ!

 

まあ、今言ったことの半分はネット考察から拾ってきたんだけどね。ネット民舐めたらあかんわ、あいつら考察力エグすぎてもうネタバレの領域に入ってるもん。マジリスペクトっす!

 

「うん...引道くんが言いたいことはわかった。けど、どうやら頭と体は言うこと聞いてくれないんだよ...」

 

「姫野さん...」

 

「分かってる!しなきゃいけないことなんて!...でもね、私思うんだ。次見つかったら、きっと逃げられないって...ちらつくんだ、由佳やおじさんの姿が脳裏に...私もああなっちゃうんじゃないかって」

 

 

近しい人の死を間近で見た光景は、きっといやと言うほど脳に焼き付いたのだろう。それこそ、これから先トラウマという重りになって付いてくる程に。

 

......さっき自分で言ったばかりなのに、どうやら俺にもゲームとしての感覚がまだ脳に焼き付いているのだろう。

こうして人の死を近くで見ても、まだどこかで「仕方がない」と他人事でいる自分がいる。もうこの感覚はきっと忘れられないのだろう。その事に腹が立つ。

 

今の俺に、姫野さんを励ます資格も権利もない。でも...それが偽物だとしても、人を救えるのだとしたら、きっとその偽物は......正しいものなのだろう。

 

だから俺は、姫野美琴に甘く、勇気づける言葉を掛ける。

 

「......姫野さんが死ぬことを、俺を含め由佳さんもみんなも望んでいません!殺されることが怖いぃ?そんなの俺も同じですよ。見てくださいこの脚を、ビクビクしてますよね?それに比べ、姫野さんの脚は美しいまま、震えてなんかいない。心で俺に勝っているのなら、俺より先に死ぬはずがないじゃないですか!......それに、生きてここを出て、由佳さんを助けたいでしょう?」

 

「っ!!!ゆ、由佳は生きてるの!?」

 

「えぇ、絶対とは言い切れませんが、脈はまだ動いていました。なので、俺達がここをでて救急車を呼べば助かると思います。...重体なので、今も危険なことに変わりはありませんが...」

 

すると、姫野さんは決心が固まったのか自分の顔を両手で叩き、こっちを見つめて言ってきた。

 

「......なら、由佳が諦めていないのに、私が諦めちゃダメだよね!...うん、もう大丈夫。ごめんね引道くん。君のお陰で勇気が持てたよ」

 

「いえ、これぐらいの事ならお茶の子サイサイですよ。それよりも顔...さっき叩いたせいで、赤くなってますよ可愛いですね」

 

「ふえぇ!?」

 

おっとその表情凄く良いですねそそります!顔のほうも見事に手形が付いて面白いですね。流石、俺が見込んだ天然ボケ美少女結婚したい。おい待てストレートすぎるぞ俺、どこのライナーくんだよ。

 

 

けれど...少々汚い手を使ってしまった。由佳さんの事を材料にしたのは流石に屑すぎた。あ、なんか俺に友達が少ない理由がちょっと理解できたかも。...もう少し、人としての行動をしないとなぁ。

 

「さ、そうと決まれば急ぎましょう!化け物が出てきたところはどこですか?」

 

「うん、二階の大広間の和室だよ。えっと...おじさんの死体があって、その奥に血がついてる襖があるの。そこから、あの化け物が出てきた」

 

なるほど、やはりそこは原作道理ってとこか。もしこの話が合っているのなら、そこにあるのは間違いなく『西部屋の鍵』だ。この鍵を手にいれれば、あの部屋でこの状況を説明することが出来る。

 

 

「分かりました、ではそこに向かいましょう」

 

俺達は二階の大広間へと、足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

〈美琴side〉

 

 

初めて見たあなたの印象は、最低なものだった。いきなり部屋に入ってきたと思ったら、宜しくお願いしますだの末永くだの、とりあえず失礼な人だった。

いきなり、ひとりかくれんぼって言われて、しかも楽しそうに言われて...。由佳が倒れている前でのほほんとしたあなたに思わず腹がたって、強く当たってしまった。

 

「ふざけないでください!!!由佳から電話が掛かってきて、心配で見に来たら由佳は死んでるし...おじさんも死んでたし...おまけに人形は襲ってくる...それがひとりかくれんぼ!?呪術!?ふざけるのも大概にしてください!こんな...こんな状況で...うっ、くうぅ.........」

 

こんなこと言う私だけど、ホントはただ吐き出したかっただけだった。由佳やおじさんが死んだという事実を知り、頼る相手もいなく1人寂しくいた私は、きっと相当きていたのだろう。精神的にも酷かったと思う。

 

そんな事を言ったあと、すぐに申し訳ない気持ちになった。いくら酷くても、言い過ぎたと後悔した。

けれど、あなたは言い返すこともなく、真正面から私の言葉を受け止めて謝ってくれた。嬉しかった、私の言ったことを受け止めて、返してくれたことが...。

 

そこからは、あなたに対する質問が始まった。だけど、内容を聞く限り本当に知らない子で、疑いの目が強くなった。それでも本人が嘘を吐いているようにも見えなく、ただただ不思議な人だった。

 

あなたが何者なのか問いただすと、上手くはぐらかされた。けど、言ってることも納得できる節がある分、それ以上は追求しなかった。

けれども、どこか信用できる部分があったのか、自分ではあまり嫌悪感はなかった。だから、なのかな...素直に鍵を見せて、一緒に逃げ出すことを提案できた。

 

そんなことで、油断していた私達を狙っていたのか、あの化け物がドアを開いて入ってきた。

 

「ッ!!!」

 

本当に急だ、急すぎた。だからこそ、上手く体が動かずその場で尻餅をついてしまっていた。そんな私を見て楽しんでいるのか、化け物はゆっくりとこちらに近づいてきた。

 

そんなときだ、いきなり化け物は椅子にぶつかって動かなくなった。

 

(えっ、何が...)

 

そんな事を考えてるといきなりあなたに手を引かれた。いきなりのことで焦った私は、

 

「椅子なんかで効くの!?」

 

なんて言ってしまった。本当はそんな事を言いたいんじゃなかった。ただ一言、ありがとうって言いたかっただけなのだった。けれど、お礼の一言も言えず、ただ歩くだけだ。そんな自分が嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

あなたは本当に不思議な人だった。初めて入ったであろう由佳の家を、さも知ってるかのように歩き出し、暗くて見えない和室でも、難なく仏壇を見つけ出した。頼りになると思った直後に、私が話した「玄関開いてるかもしれない」という言葉を聞いて、置いていかれたときは本当に引いたよ...。

男としてどうなのと言えば、私が悪いような言い方するし、何なの!って、軽く怒ったぐらいだ。

それでも、あなたは私に言ってくれた。

 

「守るものも守れません」

 

普通なら、先程の行動で軽蔑するだろう。殴られても文句は言えない言葉。だけど、私にとっては、とても頼れる言葉でもあった。不意にトキメいてしまったのは秘密...。

 

そこからの行動も不思議だった。迷わず書庫の部屋を開けるのには結構引いたぐらいだ。本当に由佳の知り合いにはこんな人はいなかったと記憶している。

 

書庫と言うだけのこともあり、部屋の中は本で溢れ帰っていた。奥の本棚と本棚の間には入りきらなかったであろう本が積み重なっていた。

 

ふと、あなたの事が気になり目を向けると、何かの本に真剣になっいた。私も気になって、その本を見ると...

 

『超ビッグ、パニパニライフ:ヤンデレ編』

 

それは本と言うよりも漫画であった。それも規制ものである。恥ずかしさで顔が熱くなるなか、私はあなたの顔を思いっきり叩いた。この行動は後悔していないと、今でも自信をもって言える。

 

 

少しして私が行く宛がなくなったと言うと、あなたは少し考えてから、突拍子もないことを言い出した。

 

「化け物が現れた所に行ってみましょう!」

 

「......えっ?」

 

流石の私も、これには反応に困った。けれども、そんな私を置いていくかのように、あなたは話し出した。しかも、内容はしっかりとしており、むしろ反論する必要性がないほどに素晴らしいものだった。

......けれども、それでも私は許容しづらいものだった。

 

おじさんの死が...由佳の死んでいる姿がどうしても脳から離れずにいた。死ぬ恐怖。追いかけられる恐怖を持つ私は、文字通りただのお荷物に過ぎなかった。

 

けれども、それでもあなたはこんな私を励まし、勇気づけてくれた。とても嬉しかった。こんな私を頼ってくれるのが。とても安心した。ちゃんと私の事を考えてくれてるって。

 

会話のなかで、度々混ぜてくるセクハラ、告白じみた台詞も、今となってはあなたがいることを証明してくれる証しでもある。

 

ふざけたことを言いながらも、しっかりと私を見てくれていて、頼り頼られる。恐怖で動けない私の手を引いてくれる。

 

そんな関係が、私の胸に熱を作った。

 

 

 

 

さぁ、次に向かうのはあの化け物が現れた所。恐怖で今も体は震えるけど...あなたなら、由佳も私も......助けてくれるよね?

 

 

「分かりました。ではそこへ向かいましょう」

 

先陣を切ってくれるあなたが、とても頼もしい...。

 




今回も読んでくださり誠に有難うございます!


あ″ーーーーーーー...~sideを作るのって、めちゃくちゃ大変だと、今日気づきました。いやホントに大変...。いちいち前の話見返さなくちゃいけないから、なかなか進まないんですね...

それはさておき...美琴ちゃん、なんか依存してきてません?書いてて思ったんですけど、なんかヤンデレキャラに近づいてきてる気がしてならんのですよね。

それではまた次でお会いしましょう!ではでは~
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