『目は口ほどに物を言う』ということわざがある。由来として、人が喜怒哀楽の感情をとても顕著に表すのが目だということから、何も言わなくても、目つきから相手の感情が分かる、ということから来ている。
しかし、目は口ほどとはよく言ったもんだと改めて感心する。実際に目の当たりにすると、言葉を交わさずとも相手の感情が手に取るように分かるのだ。
「............」
姫野さんにめっちゃ睨まれてます。
あれおかしい。可愛い子から睨まれるのを、俺は趣味の一環としていたはず....なのに、こんなに恐怖で体を支配されるとか、姫野さんってもしかして裏ボスか?裏ボスなのか?おいおい、このゲームいつアプデ来たんだよ。
姫野さんはただひたすらこちらを凝視する。目が合うたびに背中に流れる汗が滝のようになる。なにそれ汚ない。
「ひ、姫野さん?機嫌がよろしくないように窺えますが、何か気に触りましたでしょうか?」
動揺は口に出ており、大して上手くもない敬語で答えてしまった。
姫野さんは俺の言葉を聞くと、その睨みを効かせていた目を止めると、謝りだした。
「ごめんなさい...ちょっと、思うところがあって...でも、もう気にしてないから。怖がらせるようなことしてごめんなさい」
「い、いえいえ!姫野さんがそれで良いのなら、俺は構いません」
怖がらせてる自覚あったのかよ、怖かったけどよぉ!?正直言えば、さっきの緊張でぼうこうが縮んだらしく、すんごいトイレ行きたくなってきた。
姫野さんはそんな俺の様子を見ると、何かを察したのか俺に話しかけてきた。
「そ、その...ついて行って、あげよう...かな......?」
「......」
女性に尿意を心配された挙げ句、トイレについて行こうか宣言。既に俺のガラスのハートにヒビが入ったというのに、心配されたのがJKということもあり、追加攻撃で割られてしまった。
しばらくは立ち直れません...。
「引道くん...どう?」
「してる最中に聞くのはとても失礼ですよ姫野さん」
「っ!?ご、ごめんなさい......!」
おそらく、姫野さんは今ドアの前で顔を赤くしていることだろう。それはもう耳まで真っ赤に。
もちろんこの発言もブーメランでしかなく、俺の顔もとてつもなく赤くなっているに違いないのだ。だって熱いもん。多分リンゴだよ、俺。
しかし、男子のトイレに付いてきて恥ずかしがるとは、緊張感ゼロだな、俺たち。
トイレは一階にあるので、和室で撒いた化け物が居るのではないかと警戒していたが、和室を見ても、アースジェットと料理が散らばっているだけで、ヤツの姿は何処にも見当たらなかった。
一応これでも男子高校生な俺は、このシチュにドキマギしている。なんならもう少し攻めてみてもいいんじゃないかと思うぐらいには、警戒心が緩んできている。
それは姫野さんにも言えることで、俺と同じ心境でなくとも今の状況に安心しているはずだ。
これは良くない傾向だ。今までのヤツの行動を見る限り、こちらが油断しきっている所を図って乗り込んできた。もし油断してなくても、不意を突けるタイミングを狙ってくる。
......ん?いや待ておかしいぞ。なんでヤツは俺たちが油断しきっていることを知っているんだ?タイミングよく襲えたと言えばそれまでだが、そう何度も都合よくいくものか。
ドアの前で出待ちされたのも気に食わん。出待ちするぐらいなら、パソコン見てる最中を狙えばよかったはず............もしかして、ずっと聞いていた?観察されていたのか?それなら出待ちされていたのにも納得がいくが。
だが、ならなぜ油断しているところをこそこそと狙わない。態々笑い声をあげて来るなんて、自分を認知して欲しいと言っているようなものだ。メリットがない。
.....いや、これ以上考えても仕方がない。相手は化け物であり、人間が生み出したモノでもある。感情はあるかもしれないが、それを知る術はない。そもそも顔がクマの人形なのだ。表情なんか変わるものか。
「引道くん、あまりこんなことは言いたくないんだけど...もしかして...お、おっきい、ほう?」
「グハァ!!」
どうやら考え事をしていたら、それなりに時間が過ぎたため、心配になって声を掛けたみたいだ。
というか女の子、それもとびっきり可愛いJKが「お、おっきい、ほう?」なんて言うのは、童貞を殺しに来てますね。なんで男が言ったら下品に聞こえるのに女子が言えばエロく聞こえるんですかね?言葉って不思議!
「だ、大丈夫ですよ、姫野さん。大ではないので...少し考え事をしてたんです」
そう言って手を洗うと、俺はドアを開け廊下に出た。そういえば言っていなかったが、今俺の手元には青色の傘がある。もしヤツが来たとしても、これで撃退するという戦法だ。
「姫野さん、左方向の確認をお願いします。顔を動かさず、できるだけ目だけを動かしてください。俺は右を確認します」
「う、うん...分かった」
少し戸惑いながらも、俺の言ったことに何も言わなかった。
俺と姫野さんは少し雑談をしている。それはヤツに油断していると認識させるため。姫野さんも、俺のこの行動を理解したのか話を合わせてくれる。さすがKY。JKに必要なスキルを満たしているようだ。
俺も左を確認する。...いない、それとも姿を隠しているのか...。すると姫野さんが小声で言ってきた。
「い、いたよ、引道くん!予想は的中みたい」
俺も急かさず目線を左方向に移す。すると、角から包丁の切っ先が出ているのを確認した。
ちなみに、ここでいう右方向はもうひとつのトイレ部屋であり、左方向は和室へと続く廊下である。2階に行くにはここを通らなければならないため、ヤツとは絶対に当たる。
俺は姫野さんに、少し間を開けて後ろを歩かせた。傘を構えて、ゆっくり、ゆっくりと忍び寄る。
やがて、包丁の切っ先が出ている前まで来ると、傘を下に下ろし、地衝斬の構えをする。狩技は習得してないが、真似だけならできる。というか、モンハンしてる人なら、狩技の真似は絶対にしたことがあるだろう。だから恥ずかしくない!と、自分に言い聞かせる。あっ、地衝斬知りたい人はwetube見てね!格好いいから!!
俺は姫野さんに顔を向け頷くと、姫野さんも頷き返してくれた。
覚悟を決め、俺は傘を思いっきり下から上へと振り上げる。
ガチンッッ!
包丁は宙を舞ったらしく、すぐに音を立てて落ちた。
.....落ちた?包丁が宙を舞っt
「危ないっ!!」
突然服を掴まれたと思ったら、勢いよく後ろに引っ張られ、尻餅をついてしまった。
すると、目の前には、壁に包丁を突き刺している、『化け物』の姿があった。
どうやら先程の包丁は、西部屋でコイツが落としたときの物で、それを粘着テープか何かで貼り付けてダミーを作ったみたいだ。
アトチョットダッタノニ
化け物はそういうと、包丁を壁から抜こうとする。が、どうやら勢いよく刺してしまったらしく、半分ほど埋もれていたため、なかなか抜けない。右手が包丁なので、とどのつまり...動けないでいた。
俺が腰を抜かしていると、いきなり手を引かれ立たされる。
そこには、恐怖に脅える少女の姿ではなく...女すら惚れさせることが出来る、凛とした表情で俺を見る姫野さんの姿であった。
「どうしたの!?今のうちに逃げるよ!」
その一言で我に返った俺は、姫野さんの手を離し、化け物を後ろから押さえつけた。
これには姫野さんも驚いたらしく、声を張り上げる。
「な、何してるの引道くん!また私だけ逃がす気!?そんなのもう嫌だよ!」
「いえ、そんなことはしません!姫野さんには、ガムテープを探してきて欲しいんです!」
「ガ、ガムテープ!?どうしてそれを.....っ!?」
どうやら俺のすることが理解できたのか、こちらを見つめてくる。それでも心配なのか、なかなか動かないでいた。
これでは俺の体力も消耗していくだけであり、非常に不味い展開なので、急かすよう姫野さんに言う。
「すみませんが、俺もあまり余裕ないんですよ。だから、急いできてほしいんです!」
「っ!わ、分かった!頑張って堪えてね!!」
そういうと、姫野さんは和室へと入っていった。
実は今のこの言動。決めることが出来ない人相手にとても効果があるのだ。余裕がないことを相手に言いつつその反面、今なら耐えられると意思表示する。大抵の人は直感で読み取るだろう。そこに命令形で急かすとどうなるか。面白いくらいに動いてくれるのだ。
さて...余裕がないのは当たり前のことだが、コイツには聞いておかなければならない事がある。
「おいクソクマ野郎、なんで俺のことを知っている?」
そう、コイツは俺がこの世界の人間ではないことを知っている。普通の人間ならば、まず俺に不信感なんて湧かない。姫野さんを見ればそれはすぐに分かる。
それをコイツはすんなり当ててきた。そのことが物凄く不気味である。怪異だからなのか、それとも別の.....
すると突然、コイツは喋りだした。しかも愉しそうに。
『シリタインダァ~........ジャアオシエテアゲル。ソレハネ、キミノイロガ「無色」ダカラダヨ!」
「.....は?」
いきなり俺の色が無色とか言われたため、変な声を出してしまった。俺は目線を落とし、自分の服を見る。俺は派手な服とかは好まないため、シンプルな色、柄しか着ないのだ。今の俺は、上着が白のTシャツ。ズボンは黒の長めのスポーツズボンだ。どこにも無色なんてものは無い。
俺の行動が面白かったのか、コイツはまた嗤い始めた。
『キャハハ!ヤッパリキミハオモシロイナァ。ナラ、ワカリヤスク、イッテアゲルヨ』
コイツが言うには、生あるものは黄色。死んだ生物は黒色。そして.....怪異などの、非生物は白色をしているんだと。
そう。生きていようが死んでいようが、何かしら色がある。上の物に当てはまっていなくても、色は必ずあるのだそうだ。
そこで、俺の無色だ。基本、無色というものはありえないらしく、もしそれが在るのだとした、それは.....別次元の『ナニカ』だと。それがコイツの言い分だった。
『ドウ?ワカッタカナ?ワカッタナラ、ソノテヲドケテホシイナァ~。ハヤクキミヲ、バラバラニシタインダ!」
そんな事を嬉々として言われても、俺はバラバになるつもりはない。更にコイツに体重を乗っける。
「引道くん!あったよ、ガムテープ!!」
そう言いながら、和室から飛び出してくる姫野さん。息切れをしているのを見ると、やはり結構苦戦していたようだ。
俺はコイツに嫌味ったらしく言った。
「残念お話はここまでだ。今からお前をこのガムテープでガチガチに固定する。その間に、お前を殺る準備を整える。それで終いだ」
化け物をガムテープでガチガチに固定した俺達は、急いで2階の大広間へと来ていた。無論、暖炉に火をつけるためである。
すると姫野さんは、何かを思い出したのか、いきなり大広間を出て、由佳さんの部屋に入った。
そして数秒後、姫野さんは本を何冊か取り出してきていた。そこに疑問を覚え、尋ねる。
「あれ?その本って、由佳さんのでしたよね。なんで、書庫から持ってこなかったんですか?」
すると、何言ってんだこいつみたいな顔をされた。え?俺何かした!?
「何言ってるの?書庫の本を取りに行く暇なんてないよ。それに、由佳が要らなさそうな本も知ってるし」
なにそれ恐い!この人どんだけ由佳loveなんだよ、男からしたらレズはご馳走だが、ここまでくると、引くものがある。うん、とりあえず愛が重いのだけはよく分かった。
シュボッ!
マッチに火をつける。俺はそのマッチを持ち、姫野さんは本を暖炉に入れるぅ.....!
「あ、あぁ!それは!!??」
「あ、これのこと.....?破廉恥だし、要らないから、燃やそうと思ったの」
「いやそれ、俺にはひtu」
「えいっ!」
可愛らしい声とは裏腹に、雑に入れるその姿は不機嫌そのものだった。すると突然、俺のマッチを奪って、暖炉に放り投げた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!俺の『超ビッグ、パニパニライフ:ヤンデレ編』があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
雨が降るなか、俺の断末魔が響き渡った。
そして姫野さんはすんごい笑顔マジで恐いので止めて欲しいですハイ。
今回も読んでくださり誠に有難うございます!!
はい、無事にあの漫画は焼却されました。皆さんもくれぐれ、親や友人にバレないよう気を付けてください!ベットのしたとかテンプレなんでバレエやすいですよ!
さて、ここまで読むと分かると思うのですが、本来のストーリーとは少々外れています。ゴールは一緒で、道中が違うということです。これはわざとこうしてるのであって、意味もなくしたり、いちいち探索の部分を書くのがめんどくさい(汗)とか、そんな理由ではありません。
そこのところ、ご理解頂きますようよろしくお願い致します。
ってことで、締めは新聖くんの断末魔でした!
それではまた次でお会いしましょう!ではでは~