転生は好きな『物語』でした   作:しゃとす

9 / 31
『ひとりかくれんぼ』

過去を振り返ると苦い思い出がたくさん甦る。悲観的に捉えれば、あの時は悪かったな、と思うかもしれないがそこは置いておく。

そして今も悲観的に捉えれば、自分は不幸だと思うことができる。だが、嫌なことはその人にとって不幸なことであって、とどのつまり悪いことなのだ。

別にそう思うのは悪いことではない。次頑張ろう!という気持ちの糧になるし、ストレスを溜まりにくくしたりすることもできる。そう、だから目の前で起こっている事象は俺にとって悪いことであり、不幸なことなのだ。したがって先程にも言った通り、自分のせいではないと考えることで、次頑張ろうという気がおこru

 

「静かにして」

 

「ハイ」

 

「そういうの、いいから」

 

「...ハイ」

 

姫野さんは目の前で燃えている同人誌を眺めている。対して俺は、その光景を見ている姫野さんを見ていた。

 

「もう少し火が回ったら、次の準備をするよ」

 

「イエスマム」

 

「...なに、その話し方...」

 

その話し方もなにも、先程から俺はこうなのだ。目の前で起きている殺戮(同人誌焼却)を眺めるのがどれだけ苦なのか...どうやら俺は目の前の光景を拒み、現実から目を背けることで落ち着きを保てていたらしい。

 

その代わりに姫野さんの顔を見ていたが、それがあまりにも怖かった。人間、本当に怖いものと遭遇した場合、「見たくない」という気持ちよりも、「見たい」という欲のほうが大きいみたいだ。

 

ちなみに俺のこれは見たいである。決して顔が恐いのに目が離せなくなっているというか離したらなんか死ぬ気がするとかそんな理由はない絶対に確信して言えるねウン。

 

「...それで、何をしたらいいの?」

 

「え?何って、ナニですか?」

 

「もう忘れたの...?化け物を前に準備ができたら殺る、って啖呵きってたでしょ?しっかりしてよ...」

 

そういいながら、姫野さんは暖炉のなかを見つめる。

 

そういえば、そんな事を口走ってた気もしなくもない。だって、俺もちょっと頭に血が昇ってて、少し冷静じゃなかった。だからあんなことを言ったのだろう。

 

「まぁ、ありますよ。作戦...」

 

「ほらやっぱり」とジト目で見てくる姫野さんを見つめ返しながら、作戦内容を話していく。真剣に見つめながら話していく。

 

暫くして、話終えた俺は姫野さんをからかうことにした。

 

「見つめながら話していたのに、よく我慢できましたね」

 

「だって、目を背けたら負けな気がして...」

 

頬を赤く染めながらそんな事を言う。おい止めろよ、なんか妙な空気になっちゃうじゃないか。

 

「それはまた、変なところで意地張りますね...」

 

「ふふっ...本当、変なとこで意地張っちゃった」

 

これが化け物の前でなければいいが、意地を張るのならさっきみたいなシチュが好ましいですね。ずっと見つめ合うのって、こう...胸が高鳴るの...乙女か!!

 

ひとりツッコミを虚しくしていた俺だが、暖炉のなかを見ると、丁度よいタイミングで燃えているので立ち上がる。

 

「...それでは、向かいましょうか。アイツのとこに」

 

「うん...!」

 

姫野さんと頷きあった俺は、荷物の再確認をして、そっと襖を開ける。

 

「.....」

 

右にも左にもヤツの姿は見当たらない。やはりガムテープでの固定が効いたのか、あの場から動き出していないのだろう。

 

「姫野さん、後ろを度々確認しながら付いてきてください」

 

「分かった。...引道くんも、ちゃんと...頼むよ...?」

 

「安心してください、俺って実は悪意に敏感なんですよ」

 

そんな軽口を言いながら階段を下りる。今のところは、特に怪しいこともなく、順調そのものだ。

 

「っ.....!」

 

だがやはり、ヤツと対面するのは緊張するため自然と手に力が入る。階段を下りきったところで、姫野さんが肩を叩いてきた。

 

「引道くん、手に力入りすぎだよ...。人形のこと考えすぎているからか、順序間違えそうになってるよ?」

 

「え?このままヤツのとこに行くんじゃなかったっけ?」

 

姫野さんは「やっぱり」と言い、呆れた顔をしながら言う。

 

「先に台所に行って、塩水を口に含んで、コップに入れてから向かうんだよ...?」

 

「あ...あぁ、そうでした...すみません、ちょっと焦っていました。気を付けます」

 

うんうんと頷く姫野さんを見ていると、やはりこの人は心的にも俺に勝っている用にしか見えない。俺よりも肝が据わっている所を見ると、ホントにカッコいい。

 

手に込めている力をほどくと、今度は姫野さんに台所を案内してもらう。勿論このときも警戒は怠らない。後ろをチラチラ確認しながら後ろをついていく。

 

廊下には俺たちの足音しか響かない。...いや、音はできるだけ殺しているので、響くは可笑しいだろうか。響いているのは雨の音だ。結構な豪雨らしく、窓に叩きつけている。

 

姫野さんがドアの前に立つと、俺は傘を構えて控える。ジェスチャーで開けてと送ると、ドアノブをゆっくりと回し、勢いよくドアを開けた。

 

ダダッ!

 

素早く台所に入り、傘を構える。姫野さんには廊下を監視してもらい、安全が分かるまでこの体制を続ける。

 

「...姫野さん、なんかこれ楽しいですね。FPSを連想します」

 

「.....ごめん、ちょっと分からない」

 

「ですよね分かってました。.....オールグリーン」

 

そういうと、姫野さんはキョトンとした顔でこちらをチラ見する。こういったものには結構無知らしい。まぁそれが普通なのだろう。FPSで殺りまくる女の子なんか見たくない..。

 

「オールグリーンってのは、安全がとれた、確保出来たってことです。そっちはどうですか」

 

姫野さんに、遠回しで言ってくださいと伝える。どうやら察したらしく、恥ずかしそうに呟く。

 

「お、オール..グリーン.....これでいい...?」

 

「ご馳走さまです」

 

あっヤッベ、あまりにも可愛すぎて変態的なことを言っちゃったよ。だってしかたないでしょ、恥ずかしそうに俯きながら呟くのって反則だもん。鬼に金棒だよ。

 

じゃなくて!!

 

 

 

 

「おかわりお願いします」

 

 

「引道くん嫌い」

 

どうやら嫌われてしまったようだ。いやそうじゃなくてぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで後は口に含んだまま、ヤツを回収。その場でぶっかけて2階に持っていき、暖炉のなかに放り込む。これでおしまいです。...あの、本当に悪かったので機嫌直してくれませんか?」

 

「...私がコップを持つから、引道くんは先に口に含んで。できたら早く行くよ」

 

ま、またやっちった。いや、今回は俺に非がある。姫野さんを怒らせてしまったのは、煩悩に屈っぷした俺に責任があるので仕方がない。

 

俺は苦笑いをしながら、塩水を口に含む。コップを姫野さんに渡すと、姫野さんも口に含む。あっ、これって間接キス!?...いや、よく見たら俺が口つけた所と反対側につけてる。べ、別に悲しくなんてないんだかんね!?

 

結局はほとぼりが冷めるのを待つしかないのでしょうね...。

 

ササッ!

 

素早く廊下に出て、回りを確認する。手でマルを作ると、姫野さんも駆け足で廊下に出る。

 

そのままヤツのとこに駆け足で向かった。

 

(もうすぐ、ヤツと対面っ!)

さっき姫野さんに注意されたばかりだが、やはり相手は化け物であり怪異でもある。そんなヤツ相手に、気持ちが休まることなどなかった。

 

それでも...と、傘に力を込める。頭をクリアにしていく。

 

今俺がする目的は生きるため。姫野さんを助ける(堕とす)ため。そして.....この世界から脱出するため。

大義名分、理由さえあれば俺は動ける。偽善でもなんでもいい。殺ることさえできれば、それでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁふぁへふぁな!(待たせたな!)」

 

傘を肩に担いで仁王立ちをする。それはコイツに対する威圧でもあり、姫野さんに対するカッコつけでもあった。

 

だって、こんなシーンでこそカッコつけなくちゃ!...え?時と場合を考えろ?こんなときだからこそよ!!

 

化け物は何か言いたそうにこちらを見つめている。というか、、なんか笑ってね?アイツ。ああいや、いつも嗤ってるのはそうなんだけど.....なんか人間味に溢れている笑い方なんだよなぁ。

 

そんな俺に見向きもせず、人形にコップの水を垂らしていく。スルー上手になってません?姫野さん。

 

「...んっ...」

 

髪を手で手分けながら半開きの目で水を静かに吹き付ける姫野さんがとにかくヤバい。というかホントにあなたは無自覚に人を興奮させるんですか大罪ですよ。俺じゃなかったら絶対に襲ってたねうん。

 

全部吹き終わった姫野さんは、食い気味に言った。

 

「私の勝ち私の勝ち私の勝ち!...はぁ...」

 

早口で言ったため、呼吸が間に合わず疲れたそうだ。姫野さんにグッ!っと親指を立てて、俺も人形の前に立つ。

 

...てかよく考えたら、コイツに姫野さんの塩水がかかってるんだよね。ヤバい、はち切れそう。こんなのに俺のを吹っ掛けたら絶対にマズイ。何がマズイってナニがマズイんだ!

いやいやいや、落ち着け俺...今こそお得意の賢者タイムを使うと気じゃないか。沈めろぉ~...。

 

『ヤァーン、ソンナモノヲブッカケナイデ!』

 

「............ガラガラガラ~...ペッ!私の勝ち私の勝ち私の勝ち!」

 

コイツの態度が非常にムカついたので、吐き捨てるついでに喉を掃除しました。手順事態は間違えてないからセーフ...だと思う。

 

「引道くん、終わったね...じゃあ、後はコレをもって運ぶだけ...」

 

「あ、待ってください!俺がコイツを運びます。男の俺のほうが力も強いので」

 

そういって、近くに落としたナイフを拾い上げ、人形の手を切り落とした。そのときの音が、その...ブチィってなったのはマジで驚いたが、ナイフを持たせたままにするほうが危険なので、これも避けては通れないのだ。

 

姫野さんにはその切り落とした手を持ってもらった。念のために、人形を壁から剥がしたあと、もう一回ガムテープでグルグル巻きにし、脇に担ぐ。

 

「さぁ、行きましっ!!??」

 

「っ!?」

 

人形...いや、化け物を担いだ瞬間に、家中の空気が重くなった。それもとびっきり、息をするのが大変なぐらいに。

 

「引道くん...急ご...!」

 

姫野さんは俺の左手を引いてくれる。手を繋いでくれるのは嬉しいが、流石に今の状況では余裕が全くない。

ゲームでも人形を回収したときに、タイムリミットがあったのを思い出した。確か20秒ぐらいだったハズ...!

 

俺達は最短ルートを通っていく。...が、暖炉に近づくにつれ足が重くなってくる。というよりも、前に進みづらくなってきていた。壁を押している感覚である。

 

「い、引道くん...大丈夫...!?」

 

「はい!...姫野さん、こそ...無理しないでくださいね」

 

互いに声を掛け合って、目的地に向かって進んでいく。だが、さっきも言った通り、姫野さんに無理がきたのなら俺がコイツを、責任持って処分するつもりでもいる。

 

 

 

 

苦しい...!辛い...!怖い...!死にたくない...!!

 

頭の中をひたすらにこの言葉が支配する。言葉一つ一つが、俺の背中を引っ張ってくる。それがまた恐い。

 

 

 

「引道くん!もうすぐだよ!が、頑張れ...!」

 

あぁ...そうか、そうだよな。ヒロインが諦めてねぇのに、何で俺が諦めかけてるんだよ...。

姫野さんはそういって、暖炉にたどり着き、人形の手を投げ入れる。

 

すると、さっきよりも更に空気が重くなるのを感じた。脇の下で暴れてはいないものの、このような形で必死に抵抗してくる『怪異』。あぁ...き、キツいねぇ...!?

 

 

 

ドン...!

 

 

 

すると、目の前で姫野さんが膝をつく、胸に手を当てて、苦しそうに呼吸を繰り返す。

 

そのときだ。このクソクマ怪異野郎に対する感情が吹き出る。俺の、憧れの人を傷つけた...。ヒロインを傷つけることは罪が重いのだ。アニメが好きな人ならば誰もが持つ感情を、今この瞬間、俺にも芽生えた。

 

 

 

【殺意】

 

 

 

俺は持てる力を振り絞り、前へと走り出す。それはもう自分ごと暖炉に飛び込むぐらいに。それと同時に、深く空気を吸い込む。

 

そして――

 

 

 

 

 

 

 

「俺のヒロインにぃ!!なあぁぁにしてんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全力で、暖炉の中へ投げ入れる...いや、叩きつけた。

俺も一緒に飛び込みそうになったが、足に力を入れ、なんとかギリギリ踏ん張ることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッッッッッーー!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズのような声が屋敷中に響き渡る。と同時に、押し潰されそうになっていた体も軽くなり、思わず力が抜け、地面に突っ伏す。息が乱れる。

 

「か、はぁ!はぁ!...はぁ...ぐぅ!」

 

それでも姫野さんが心配になり、顔を横に向ける。

 

 

「終わっ.....た。.....そ、そうだ!由香を...由香を助けない...と...うっ.....」

 

「ひ、姫野さん....!しっかり、してください...!」

 

手を前に伸ばしながら、這いずろうとしてまでも由佳さんを助けようとするその執念に驚いた。...が、体の方は力が残っていないらしく恨みがましく前を見つめて、意識を失った。

 

生憎俺は、体力と性力には自信があるので、まだ意識を保てている状態だった。だが、油断すると疲労によって瞬く間に意識を奪われるだろう。

 

朦朧とする意識の中で、何とか頭を働かせる。

 

(なにか...由佳さんは、この後どうなるんだっけ.....あっ、そうだ...確か、あの好かないイケメン野郎に電話したのって.....)

 

丁度そこまで考えたときだった。

 

 

バタンッ!!

 

 

 

「美琴!!...っ!美琴!大丈夫!?どこか怪我は...ない、みたい...気を失ってるだけ、かな...うぅ、痛い...!」

 

いきなり襖を開けてきては、姫野さんに近づき状態確認。安全が分かったところで、自分の痛みも襲ってくる。.....自分のことは二の次かよ。やっぱり、ダイヤモンド級の愛じゃねぇか君たち、ははっ...。

 

 

「あの人形は...もしかして、暖炉の中...?.....っ!?あっ、あなた誰!?」

 

痛みのお陰で頭が冷静になったのか、徐々に周りも見え始めたらしい。が、今の俺にはもう話す気力も体力も何もない。だから目だけを動かし、俺を警戒している彼女を見る。

 

 

 

 

あぁ、やっぱり、美人じゃないか......由佳さんも....。

 

 

 

ごめん、健吾...俺やっぱ体力も性力も根性ねぇわ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は少しずつ意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHAPTER 1 END




はい、ということで...今回も読んでくださり誠に有難うございます!!いやー、9話目でやっと終わりましたよ!第1章が(泣)!!これでその他諸々の探索書いてたら絶対にもう3話は使ってたねウン。



皆さんもひとりかくれんぼをする際は、ちゃんとルールを守って、楽しくドキドキしましょう!責任は取れません。それではまた次でお会いしましょう!ではでは~

...え?健吾のホモルート?絶対にないですね(圧)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。