あ、原作の百年以上前からスタートです。
眉目秀麗。文武両道。才気煥発。
どれもこの私、護廷十三隊二番隊五席にして隠密機動第五分隊『裏挺隊』隊長である
何せ私ときたら、真央霊術院を一発合格。院でも優秀な成績を修め主席卒業。護廷十三隊に入隊後はたった三十年で五席にまで上り詰めたエリート中のエリートなのだから。
それにこの五席という地位も所詮は腰掛け。
数年以内には現任の四席を退けて昇進間違い無しというのが私の見立てだ。(三席以上はちょっと厳しい。喜助さんと大前田副隊長はとっととどっか行ってほしい)
そんなスーパー死神であり隊舎でも女性隊士に黄色い声で迎えられたモテ男でもある私が何をしているかと言うと────
「ハァッ、ハァッ、砕蜂たん……! 今日も良い脚だ……存分に私を蹴りつけて高みに至りたまえ……!」
「寄るな変質者……!」
「グフゥッ❤︎」
この間入隊したばかりの可憐な少女の
あぁ、つい先日まで私に熱を上げていた女性隊士や尊敬の目で見つめていた裏挺隊の隊員達の蔑むような目が辛い。
だがこれもまた砕蜂たんへの愛ゆえの結果だと思うと心地快い……!
「ぶべらっ!」
背筋を疾る法悦に浸りすぎて受け身も取らずに練武場の床に衝突するが、こらはこれで下からの砕蜂たんが拝めて
「そこまで。砕蜂、さがって良いぞ。おぬしは筋がいいのう」
「ハ……ハッ!! ありがとうございます!!」
上座で私と砕蜂たんの手合わせを眺めていた隊長の言葉に感激した様子の砕蜂たんがたまらない。隊長、そのポジション代わって頂けませんか。
「尽八、おぬしは残れ。いくらなんでも腑抜けすぎじゃろ。儂直々に叩き直してやるから感謝せい」
「お言葉ですが隊長。不肖、尽八、この数日間で人生とはなんたるかを悟りこの上なく漲っております。腑抜けというならば先日までの出世欲と名誉欲に取り憑かれ、他者からの評価などという曖昧なものに踊らされていた愚かな私にこそ相応しい!!」
「やかましいわ。ほれ、さっさと立たんか」
呆れたようにため息をつく隊長。
ご理解は得られなかった様子。悲しい。
「仕方ありますまい……喜助さんの関心を蛆虫の巣の住人に取られて満ちぬ隊長の欲求、この私が晴らしてしんぜグプァ!?」
額に青筋立てた隊長にぶん殴られ空中をきりもみ回転する私。
しかし高速回転する視界の中、確かに捉えた一輪の花。
我が愛しき人を見るだけでこんな痛みなどどうでも良くなる。
すなわち────
「砕蜂たん、サイコ────────!!」
「おう、まぁ飲めや」
「あ、どうもです大前田副隊長」
「今は勤務時間外だ、そうかしこまるなや」
結局あの後も稽古に身が入らぬまま隊長にボコボコにされた私。
そんな私を不憫に思ったか説教をしたくなったか、副隊長の大前田希ノ進さんが行きつけの店に連れてきてくださった。
「あのよぉ、俺も人の色恋沙汰にどうこう口を挟むような真似はしたかねぇ。けどな、最近のお前は度が過ぎるぜ?」
どうやら説教の方らしい。
「元々うちの隊は夜一さんがすーぐ仕事ほっぽりだして逃げようとするのを俺とかお前が止めて回してたろ? そのお前がよぉ、ボケる側にまわったら俺一人でどうしろっつーんだよ」
なるほど、大前田副隊長──希ノ進さんの言うことも一理ある。だが──
「お言葉ですが、希ノ進さん……これは色恋沙汰ではありません。私の一方的な愛情、いや、
「一方的っつー自覚はあんのな……」
疲れた顔の希ノ進さんは、自分の杯をグイっと呷ると若干据わった目で私を睨む。
「にしても相手が蜂家の末っ子ねぇ……何もあんな貧相なガキに──」
「破道の一『衝』!」
「ぐあああ!!」
席から吹っ飛ぶ希ノ進さん。
「てめぇ何しやがる!」
「砕蜂たんを悪く言うな!」
「こっちは上官だぞ!?」
関係ないのである。
この心に宿った情熱の炎に従って、私は動くのみなのである。
そう、彼女に出会ったあの日決めたように────
「おい待て勝手に回想に入ろうとすんな謝れや!!」
あれは今期の入隊式が終わった後のこと。
新入隊員と席官達による顔合わせを兼ねた合同稽古の日だった。
隊長格は後ろに控え、我々上位席官が中心となって隊員を指導してまわり、稽古は白打の組手に移った。
隠密機動との掛け持ち隊員も多いだけあり、新入隊員としては中々の粒が揃っていたがそこはエッルィート(巻き舌風)であるこの私。
新入隊員を最小の力で転がして回ってにこやかに良い点と改善点を指導して回っていた。
新人からすれば、五席など雲の上のそのまた上の存在。
そんな方(私だ)が優しく丁寧に指導してくれる。感激と尊敬の目を存分に集めながら悦に入っていた私の前に、彼女は現れた。
「よろしくお願いします」
触れれば折れてしまいそうな小さな体躯。
緊張を隠すように張られた愛らしい声。
童女のようなあどけない顔立ちは、しかし何か強い覚悟を秘めて輝いていた。
──人生初の、一目惚れだった。
気づけば、彼女の前で跪いていた。
「!?」
「……君の、名前は?」
「ソ、砕蜂です。……あの、涯梨殿?」
「砕蜂。名前の響きまで美しいのだね、君は」
ソッと彼女の手を取り、口付けようとする。
「どうか、私と夫婦となってほしハブェ!?」
ぶん投げられていた。
「き、貴様……! 私を愚弄しているのか!?」
さっきまで多少なりとも含まれていた敬意が消し飛んだ蔑みと恐怖の混じった目で睨みつけてくる。
──一目惚れだった。(10秒ぶり、二度目)
「そんな顔も可愛らしいんだね、君は……!」
「ヒィッ! 寄るな変態!」
「ぐぶふぁ柔らかい足裏!」
追撃の踏みつけを顔面に叩き込まれ、至福の痛みに包まれながら意識を失う私。
こうして私と砕蜂、いや、砕蜂たんの出会いは、刺激的に始まったのであった────。
「結局最後まで語りやがった……気持ち悪いわこいつ……」
「なんとでも言ってください。もはやこの気持ち、山本総隊長にも止められませぬ。ホントどうしましょう私。砕蜂たんが可愛すぎて美しすぎて好きすぎて、仕事がなんにも手につきませんがそれすらどうでも良い」
「なんでこんな奴五席に推薦しちまったんだろう俺……」
その件につきましては感謝しております大前田副隊長。
凶悪な顔に疲労を浮かべながら、希ノ進さんは私に指を突きつける。
「いいか、とりあえず忠告しておくがな。これ以上業務に差し支えるようなら降格や裏挺隊の隊長権限剥奪も夜一さんに進言するからな。腑抜けに務められるほど、
すでに相当仕事を溜めてしまっている私に、まだ温情を見せてくれるとは。
顔と態度と身なりの趣味は最悪だが、本当に優しいお方だ。
「感謝します、副隊長。えぇ、私もせっかく手に入れたこの地位をわざわざ捨てるつもりはありません────待てよ、一旦降格すれば砕蜂たんと同じ刑軍に配置換えもあり得る……大前田副隊長! 私やっぱり降格したいです! あれ、大前田副隊長!? いずこですか、大前田副隊長────ッ!?」
──これは、美しき蜂に恋した愚かな
──もし興味をお持ちいただけたなら、どうか酒の肴にでも聞いていってほしい。
──ちょ、希千代くん、『ストーカーの犯罪記録じゃないっすか』とか余計なこと言わなくていいから。
──ほんと、純愛だから。いっぺんの曇りなく愛だから。
──ただ愛にもいろんな形があって私の場合前後左右上下表裏過去未来着衣脱衣いずれの砕蜂隊長も等しく愛したいだけだから。
──あ、砕蜂隊長、違うんですこれは本当にただの隊士日報っていうかほんと気になさることじゃなくてアッ────!?
勢いで書き始めたものの書きたい内容は全部決まってるので、たぶんサクッと終わります。