犬吠埼ちゃんは紫色の物体x作れるってマ???www   作:ハイイロ

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えっ?何って卵焼きを作っただけなんですけど?

「犬吠埼、悪いんだけどこれ洗っててくれない?」

 

「は、はい!」

 

 家庭科の授業、それは生徒の生活力を上げるために取り行われる授業である。ミシンを使って裁縫をしたり、洗濯の方法を学んだりするが一番思い浮かべられるのは調理実習だろう。料理が上手い人が中心となって美味しい料理を作っていく。本来なら苦手な人ができるようにするのが目的なのだがそこは学生、下手な奴は上手い人を手伝うために皿洗いや鍋を持ってくるといった雑用を任されることが多い。

 

 故に親の手伝いで料理が出来る少年、雨宮真司は料理を作っていたし姉に任せっきりで料理が全く出来ない、否食べれるものを作る方が困難というレベルの少女、犬吠埼樹はお手伝いをしていた。

 

「後、何作んなきゃいけないんだっけ……」

「お味噌汁作るのに必要なの用意しておきました!」

「流石勇者部、サポートが助かる」

 

 勇者部、それは人が嫌がることを勇んでやる部活。

 犬吠埼風が作った勇者部はいわゆる人助けをする部活である。活動内容は猫探しから始まり幼稚園で出し物、はたまたうどんを放課後にみんなで食べたりしている。「うどんは女子力を上げるのよ!」とは部長の言葉である。

 料理が出来なくても作る人を手助けすることは出来る。樹は他の班員に迷惑をかけないために自分から調理する事はないがそれでもちゃんと働いている。いい子。

 

 

「おし、完成。これ持ってこうか」

 

 出来上がった料理を更に盛り付けていく。それを他の班員たちと一緒にテーブルへ配膳していく。本日のメニューはお茶碗によそわれた白米、先ほど完成したお味噌汁、そして今回のメイン課題だった卵焼きである。卵料理として他にも溶いて焼くだけのスクランブルエッグと割って焼くだけの目玉焼きと違い溶いた後に薄く延ばしながら巻いていかないといけない卵焼きは慣れないと作るのが難しかったりする。

 

「「「「いただきます」」」」

 

 先ほど完成したお味噌汁はよくできていた。炊飯器ではなく鍋を使ってたかれた白米は少し焦げてしまったが美味しくできていた。卵焼きは綺麗にできたとは言い難いがそれでも食べれるものを作ることに成功していた。

 

 

 

 一人を除いて。

 

 

 

「い、犬吠崎さん。その……無理して食べなくてもいいのよ」

「う、ううん私が作ったんだから私が食べなきゃ……」

 

 犬吠埼樹の目の前に置かれている恐らく卵焼きであろう物体は紫色に染まっていた。調理室に紫色を付けられるものは置かれていない。黒色ならば理解もできよう、醤油を入れまくって焦がせばまぁ黒くもなるだろう。赤色なら七味を大量に振りかければ作ることが可能だろう。

 

 だが

 

 だが

 

 紫色である。古くから高貴な色として扱われていた色、夜が明けて日が昇る前の空の色、作れと言われても簡単には作れないであろう色。それを樹は紫色に染めることに成功していた。

 

 色もスゴイが漂ってくる匂いもスゴイ。焦げた匂いというレベルを超越した異臭。およそ中学生で嗅ぐことのないこの匂いは化学薬品を組み合わせたらこんな匂いになのだろうか。

 

「化学薬品をこっそり使いました」と言われても信じそうになってしまう物体。それはもう卵焼きなどではなく名状し難いナニカだった。

 

「い、いただきます」

 

 皆が見守る中恐る恐る箸でつかみ口に運ぶ樹。普通の人なら食べようとは思わないそれを彼女は勇気を出して食べようとする。その姿は間違いなく勇気ある者、勇者の名にふさわしかった。

 

 こぶりな彼女の口に入っていくナニカ。

 

 口が閉じられ見えなくなる。

 

 小さく口を動かして咀嚼。

 

 瞬間

 

「うっ……」

 

 静かにうめき声をあげて倒れた。

 

「おい! 大丈夫か!?」

「先生呼んでくる!」

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

 知らない天井……いや学校の保健室である。

 

「あら、犬吠埼さん起きたのね。体調はどう?」

「大丈夫です」

「それはよかったわ。ちゃんと料理するときは火を通さないとだめよ」

 

 腐っていない普通の卵で作った卵焼きで食中毒が起こるわけは無いのだが保健室を預かる者として注意するしかなかった。

 火を通さないといけないのであるならみんな大好き|TKG≪卵かけごはん≫で倒れる人続出である。

 

「うっ……気を付けます」

「一応もうちょっとだけ休んでいきなさい」

 

 

 カーテンが閉められたので大人しくベッドに横になる樹。思うのは姉の風のことだ。

 犬吠埼風は両親を失った後女手一つで樹を育てた。妹の樹が料理を作れなかったのも大きい負担になっていただろう。

 そんな彼女は自分の妹を溺愛している、それこそ樹を不幸にするなら世界を滅ぼしてもいいと思ってるくらいには。

 

 だからこそ姉から自立したいと樹は考える。姉が自分のことを考えてくれるのはとても嬉しい。だけど妹心にもっと自分本位で生きてほしいとも思うのだ。

 必要なのは成長を示すことだと思うのだ。

 分かりやすく証明できるものは何だ、そう料理だ。

 そう思って調理実習真面目に受けているが成果は目に見えない。出来るのは料理とは言えないナニカだ。

 

(誰かに直接教えてもらった方がいいのかな……)

 

 一番最初に思いつくのは樹と同じ部活に所属している先輩、東郷美森だろう。彼女も料理が上手でいつも自作のおはぎを差し入れしてくれる。食べる機会は少ないが彼女が作る和食は絶品だ。

 しかしサプライズしたいことを考えると勇者部以外が望ましい。

 

(うーん)

 

 考える樹の頭に浮かんだのは同じ班にいた料理が出来る少年。

 

「お願いしてみようかな」

 

 

 

 

 

 こうして犬吠埼樹の料理修行が始まった。

 目指せ食べれるもの! 頑張れ雨宮真司! 樹が食べれるものを作れるかどうかは君にかかっている!

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