48人目のマスター候補生。
焼却された人類史を正すため、召喚した英霊達と共に7つの聖杯探索を巡った一般人である。人理修復を果たした功績から「開位」を与えられたが、経歴不詳の人間であることには変わりない。
今回、彼/彼女が「人理継続保障機関フィニス・カルデア」に来るまでの記録を断片的に入手。それを再構築し、本人の視点で描かれた話である。

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高校生「藤丸立香」の日常

「……きろ、起きろー、授業中だぞ!!」

「は、はい!」

 

 耳元で怒鳴り声。

 慌てて飛び起きると、目の前に先生の凶悪な顔があった。声色は怒っているし、顔のパーツ一つ一つは夜の街を徘徊していそうな物騒な人みたいなのに、なんだか物凄く呆れ顔をしている。目をこすってみても、目の前にいるのは高校時代の先生だった。

 

「あ、あれ? 先生、なんでここに?」

「なんでもかんでもあるか! いまは授業中で昼寝の時間ではないと何度言ったら理解するんだ!」

「そう言われても……」

 

 ぼんやりする頭を抱え、すみませんと告げる。

 クラスメイトたちにはおなじみの光景で、くすくすと苦笑いをしていた。

 

「居眠り癖さえなくなれば、もっと成績も上がるというのに。はぁ、授業を再開するぞ。

 15世紀初頭、ヨーロッパはアジアとの貿易が盛んとなった。主に胡椒やナツメグ等といった香辛料の取引だな。無論、香辛料だけを求めたわけではなく——」

 

 先生は教科書を読みながら前へ戻り、黒板に文字を書き始めた。

 自分も急いで後を追うようにシャーペンを奔らせる。居眠りタイムに入ってしまう直前の文字はミミズ文字になっていたのを見て、またやってしまったと自分でも苦笑いをした。

 今日はそのあと眠りに落ちてしまうことはなく、チャイムがなると同時に授業が終わった。

 

「——以上のことにより、この時代を総じて『大航海時代』という。

 ここ、必ず試験に出るからな! 日直!」

「起立、礼、ありがとうございました!」

「「ありがとうございました!」」

 

 先生が出て行ったので、ふぅっと息を吐く。

 今日の授業はこれで終わりだった。あとは帰るだけである。担任の先生が来るまでの時間、何をしようかと考える前に、友人が話しかけてきた。

 

「藤丸、お前またやったな!」

 

 友人も先生とよく似た苦笑いをしている。

 

「今日だけで二回。お前、一週間で10回は居眠りしてるぜ? つーか、凶悪で有名な先生の前で熟睡できる神経も分からねぇが、よく平然としていられたな」

 

 怖いもの知らずかよ、と返されたので心外だと言い返す。

 

「怖いものは怖いさ。でも、寝ちゃうんだから仕方ない」

「ある意味、肝が座ってるよな。だから『ぐだぐだしてる』って陰口叩かれてるんだぜ?」

「誉め言葉として受け取ってるよ」

 

 自分のあだ名「ぐだ」は、彼に言わせると蔑称らしいが、自分としては面白いと思っている。

 ぐだぐだしているのは事実だし。

 

「あとで寝ていた時のノートを見せてくれる?」

「当たり前だろ」

 

 友人はにかっと笑った。

 

「藤丸にノートを貸すようになってから、俺の字が上達したんだぜ?」

「なんというか、ごめん」

「謝るなって。ほらよ」

 

 自分の問いかけを予想していたかのように、友人はノートを差し出してきた。軽く礼を言うと今日の部分をざっと一読し、顔を歪めてしまった。

 

「……横文字が多い」

「そりゃ、世界史だからな」

「コロンブスは知っているけど、ヴァスコ・ダ・ガマとかアメリゴとか覚えるのが難しい。あ、でも、マゼランは聞いたことがあるような」

「マゼランペンギンだろ? 名前の由来になってるって説明してたぜ?」

「なになに? 何の話してるの?」

 

 友人と会話に花を咲かせていると、女友達が近寄ってきた。たしか、彼女は日本史選択だったはず。この時間は別クラスで授業を受けていたのだ。

 

「へー、世界史だと悪名高き大航海時代をやってるんだ。

 私のところは明治維新。覚えることが多くて大変なの」

 

 女友達は肩を落とすと、友人が意外そうに眉をあげた。

 

「なに言ってるんだ? 新撰組とか維新の英雄は好きだったんじゃないのか?」

「大好きよ! 沖田総司とか坂本龍馬とか大好き! でも、明治維新って改革が多くて……頭がパンクしそう」

「歴オタだからって、そのあたりに詳しいわけでもないのな。俺にはよくわからねぇ。藤丸もそうだろう?」

 

 友人が言葉を投げかけてきたので、正直に答えることにした。

 

「歴史って苦手なんだ。たとえば、沖田総司が女だったり坂本龍馬がドラゴン連れてたりすれば話は興味が出るかもしれないけど」

「ナンセンス!」

 

 女友達は声高らかに否定した。  

 

「藤丸はアニメの見過ぎよ! 沖田総司は絶対に男! ドラゴンなんてファンタジーだわ!」

「あはは、藤丸ってやっぱり面白いな! そんな発想、俺でも思いつかねぇよ!」

 

 二人に笑われ、こちらも釣られて大声で笑った。

 自分の冗談が通じてよかったと思う。というか、自分自身、沖田総司が女とか坂本龍馬がドラゴンを連れているとか信じていない。でも、坂本龍馬が龍にまたがり「竜馬が来る!」とやったら楽しそうなのに……と、ここまで思ってから、どこかの某日本の童話アニメを連想し、再び噴き出してしまった。

 

「ホームルームを始めるぞ」

「あ、先生が来た。今日って部活あった?」

「なかったと思うから、一緒に帰ろう」

「おうよ! 藤丸、またあとでな」

 

 友人二人に軽く手を振ると着席する。

 先生は連絡事項を一つ二つ伝えると、特に異変は起きることなく終わった。

 

 

 

 

 三人そろって駅まで歩く。

 

 いつもの下校風景。

 さんさんと輝く夏空の下を歩く。

 下校時間の理想としては、涼しい店内で右手にハンバーガー、左手にコーラを持ちながら歓談したいものだが寄り道も校則違反。こっそり破る生徒がいなくはないが、藤丸達三人組はルールをやや守る方だった。

 日常的に買い食いして遊べるほど、お小遣いが貰えていないともいえる。

 

「あーあ、バイトしてぇー」

 

 友人が腕を組みながらぼやいた。

 

「だいたい一か月の小遣いが3000円なんて少なすぎると思わねぇか? バイトしないと遊べないぜ」

「わかるわー、お菓子とか十分に買えないよね……藤丸もそうでしょ?」

 

 同意を求められたので、素直に肯定する。

 

「早く大学生になりたい。大学生になったら、親がバイトしてもいいって」

「藤丸のとこもか!」

 

 友人は分かってるなーと首に腕を回してきた。

 

「大学生になれば、お小遣いなんか気にしなくてすむ! たくさんバイトをして、遊ぶ金をゲットするのだ!」

「ちょっと、二人とも! 遊ぶために大学に行くんじゃないでしょ?」

 

 女友達がいさめるように手を叩く。

 

「将来のために、大学で勉強するんだから」

「意識高い系かよ」

「事実よ! 私、医者になるために大学へ行くの!」

「でも、明日は一緒に秋葉原へ行くんだよね?」

 

 やんわり指摘すれば、女友達の顔が赤くなった。

 

「あ、明日は例外。普段真面目に勉強しているんだから、たまには休んでもいいんだから。

 というか、三人で同じ大学に入るんでしょ? 約束したじゃない!」

「わかってる、わかってる」

 

 申し訳なさそうに笑い返した。

 自分たちが目指しているのは総合大学。彼女は医学部を志望しているが、自分たちの頭は悪くはないが良くもない。

 

「俺は経済学部。藤丸は?」

「それじゃあ、経済学部にしようかな」

「藤丸、人に合わせればいいってものではないのよ」

 

 女友達は口を尖らせた。

 

「藤丸はしたいことってないの?」

「自分は……普通の人生が送れたらいいな」

 

 正直に答える。

 高校を卒業して、三人そろって大学に進学して、そこそこの会社に就職して、可愛くて優しい女の子と結婚して、子どもを育て……モデルケースみたいな人生を送りたいものだ。

 

「海外に旅行したり、犬を飼ったりするのが理想かな」

 

 保護犬を飼ってみたいが、シベリアンハスキーみたいな大型犬も捨てがたい。

 

「藤丸らしいといえば、藤丸らしい夢ね。それに旅行ってのは憧れるわ!」

 

 女友達は幸せそうに呟いた。

 

「大学に合格したら、卒業旅行とかしない? ハワイもいいけど、イギリスとか!」

「あのなー、俺たちはイギリスの文学とか興味ないっての。なんたら王伝説とか授業で十分だっての。ま、旅行ってのには賛成するが。涼しいところに行きたい」

「南極とか?」

 

 ふざけて言ってみる。

 

「南極か! いいな、ペンギンとか見てみたいぜ」

「え、本当に?」

 

 冗談のつもりで言ったのに、まともに受け止められて動揺する。

 そりゃ、一度は行ってみたいかもしれないが、絶対にありえない場所だ。ものすごく寒そうだしお金もとんでもないほどかかりそうである。

 

「南極はやめてよ! せめて、カナダ! カナダでオーロラみたい!」

「わかってるって。いまが暑いから言ってみただけだっての!」

「まあ……その前に、三人そろって大学に合格しないとね」

 

 そういうと、二人とも笑った。

 

「それじゃあ、明日の11時に秋葉原で」

「藤丸、寝過ごすなよー」

「わかってる」

 

 一足先に分岐点。

 友人二人に手を振って、明日の約束を交わす。

 そのまま自分は学習塾。

 授業の補講というよりも大学受験のための塾だ。両親も居眠り癖を理解してくれているので、わざわざ少し高いお金を払ってテレビ式の塾に通っている。つい眠ってしまったとしても、巻き戻して受けることができるので自分向きなのだ。

 

「……大学、かぁ」

 

 モニター越しの授業を受けながら、残りの高校生活を思う。

 明日は秋葉原に映画を見に行くが、それが終わればそろそろ夏期講習。少しずつ受験の足跡が近づいてきているような気がしてきたし、志望校は決まりはしたが学部は決まっていない。

 歴史は苦手なので、史学部は最初から除外。

 女友達のように医学部を目指せるほど頭は良くない。友人と一緒の経済学部系に進むにしても、数学が厄介だ。個人的にはロボット工学とかに興味はあるが、物理に強いわけでもなく、遊びとして好きなことと現実の就職を見据えて進学するのとでは違ってくる。

 

「とりあえず、勉強頑張るか」

 

 

 しっかり受講して、今日は早く寝よう。

 眠り癖のせいで、友人たちを待たせたくなかった。……無理かもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 空は青々と晴れ渡り、夏の日差しがさんさんと肌を焼いてくる。

 いそいで時計を確認すれば、まだまだ朝の時間。寝過ごしたわけではなく、ほっと一息つく。

 

「あら、立香。おはよう、今日は早いじゃない」

 

 身支度を整え、自室を出ると、お母さんが珍しそうに目を見張った。

 

「おはよう。お父さんは?」

「休日出勤。さっき出て行ったわ」

 

 お母さんはいつもの口調で言いながら父親の皿を下げている。

 テーブルには、ご飯とみそ汁と卵焼き。ふわふわでもびちょびちょでもない黄色に白い斑入りの卵焼き。そばには安売りウィンナーが添えられている。ポテトサラダもあったが、コンビニで買ってきたお徳用のもの。

 つまるところ、判を押したようないつものメニューだ。

 

「たまにはパンが食べたい」

 

 箸を持つとご飯を食べ始める。

運動部の兄弟の弁当を用意しないといけないので、米を炊くのは仕方ないと理解しているが、毎朝の味噌汁は正直飽き飽きである。

 

「贅沢いわない」

「はーい」

 

 母の腕前は悪くはない。かといって、良くもない。

 一流シェフでも難関料理学校に通ったわけでもないので仕方ないが、これ以上文句を言って「じゃあ、あんたが作りなさいよ!」と怒られるわけにもいかないので黙々と食べる。

 

「今日の夕飯は?」

「あんたね、まだ朝食も食べ終わってないでしょう?」

「いいじゃん。気になるんだから」

「カレーよ」

「カレーか……!」

 

 感嘆の声をあげる。

 子どものころから大好きなメニューだ。一度だけ林間学校でみんなとカレー作りをした時に「あ、家の味と違う」と驚いたのを覚えている。どちらも甲乙つけがたいほど美味しかったが、個人的には母のカレーが一番おいしい。

 当時、母にそう報告してみた。

 すると、母はくすぐったそうに笑いながら

 

『市販のルーのおかげよ』

 

 と答えてくれた。

 つまり、母の味は市販のルーの味なのである。

 

「母さん、からあげとか入れてみない? コンビニで売ってる串のやつを外してさ」

「総菜のカツを使ったカツカレーにしようと思ったのだけど不満?」

「それがいいです! あれ? でも、どうして?」

 

 まさか、カレー+α案が通るとは……と少し驚いていると、母が何でもないことのように言った。

 

「明日、部活の大会があるんですって」

「なんだ、そういうことか」

 

 つまり、兄弟のためのゲン担ぎ。

 自分はそのおこぼれにあずかるということなのである。おこぼれとはいえ大御馳走だ。友人たちと昼食をとろうと思っていたが、ここは少し腹に余裕を持たせた方が良いかもしれない。

 

「楽しみにしてるからメニュー変えないでね。ごちそうさま!」

「はいはい……って、立香! 食器くらい下げなさい!!」

 

 母の小言が刺さる。

 はいはいとすぐに片付けると歯を磨いたり顔を洗ったりと出かける支度をする。

 

「帰りは何時ころ?」

「6時には絶対に帰ってくる」

 

 6時30分からの芸能人の旅番組も見たいし、7時の動物番組は録画するほど大好きだ。動物の成長や捨てられたペットが人との触れ合いを通して笑顔になっていく姿を見て、いつも目が釘付けになるのだ。

 だから、ついつい募金をしてしまう。

 

「いってきます!」

「はいはい、いってらっしゃい」

 

 母の声を背中で感じながら玄関を飛び出した。

 秋葉原まで行くには早すぎるが、途中の電車で居眠りしてしまったら早く起きた意味がない。この間も電話で目が覚めた時には、秋葉原を遥か通り過ぎて千葉県にいたこともあった。あのときのような事態は二度と起こしてはいけない。

 

 

 あまりにも強く戒めたのか、寝過ごすこともなく秋葉原に到着した。

 

「10時か……」

 

 待ち合わせより、1時間も早い。

 このまま駅前で時間をつぶそうかとも思ったが、いまは真夏。だんだんと日差しが熱くなり、喉がからから干からびてくる。

 

「かといって、店に入るほどのお金はないし……あ」

 

 そのとき、献血バスが目に飛び込んできた。

 車の中は涼しいはずだし、30分くらいは時間つぶせるし、献血の謝礼でお菓子やジュースが貰える。おまけに、献血をすれば困っている誰かの役に立つこともできる。

 

 

 まさに、一石四鳥だ!

 

 

 

 だから、藤丸立香は深く考えることなく献血をすることにした。

 

 

 

「はい、おしまいです。こちらでしばらくお待ちください」

 

 献血自体は、あっさりと終わった。

 これまでに何度かしたことがあるので、おおまかな流れは知っている。問診票も書き慣れていたし、献血カードも持っていた。採血の瞬間は苦手だが、人のためになっているのだと思えば我慢できる。

 

「ふぅ……」

 

 隣のバスに案内され、10分ほどの休憩。

 なんでも、血を抜いたあとすぐに動くと貧血で倒れてしまう人がいるとか。もらったばかりのジュースを飲みながら時計を確認する。

 ちょうど、10時30分。

 友人から「起きてるかー?」とメッセージが入っていたので、「秋葉原で待ってるよー」と返信する。すると、ちょうど入れ替わりに女友達から電話がかかってきた。

 

『藤丸ー? 起きてる?』

「起きてる、起きてる。いま、秋葉原にいるから」

 

 ちょっと声を潜めて答えると、電話の向こうの友達が驚いているのがよく分かった。

 

『えー!? 万年寝坊魔の藤丸が!?』

「寝坊魔とはひどい」

「ちょ、ちょっと、君!!」

 

 苦笑いで返したところで、献血バスに医者が飛び込んできた。ついさっき、献血を担当してくれた男の医者だった。話があるようなので、女友達には「ごめん、一旦切るね」と謝ってから電話を切る。

 

「君ね、君、君! 君に手伝ってもらいたいことがあるんだ!」

「はぁ」

「申し遅れた。私の名前はハリー・茜沢・アンダーソン! 『人理継続保障機関フィニス・カルデア』の職員なんだ!」

「じんり……? あの、医者ではないんですか?」

「医術スタッフではある、末端の末端だが……とにかく、君にはぜひ我がカルデアに来てほしいんだ!」

「えっと……ごめんなさい。これから友達と遊ぶ予定がありまして」

 

 やんわりと断ってみたが、ハリーなる人物は必死に訴えかけてきた。

 

「頼むよ! 君は70億人の人類でもたった50人足らずの稀有な才能の持ち主なんだ! ぜひとも君に来てほしい。というか、君みたいな人材をスカウトするために僕は派遣されたんだ。だから、君に来てもらえないと凄く困るんだよ!」

 

 ハリーは半分涙目になりながらすがりついてくる。

 彼の言っている意味の半分以上が理解できなかったが、本当に困っていることだけは伝わってきた。だからもう一度、時計を確認する。

 10時35分。

 待ち合わせまでには、まだまだ時間がある。

 

「落ち着いてください」

 

 カルデアがなんだかわからないが、赤十字を掲げた医者なのだ。

 きっと、悪い病気の人がいるとかそういった類のものなのだろう。

 

「少しだけならいいですよ」

 

 だから、答えてしまった。

 「10分ほどで終わるなら」と付け足そうとする前に、ハリーは喜びの叫びをあげる。

 

「やったー!! これで、ボーナスゲットだぜ!」

「は、はあ」

 

 神と巡り会えた信徒のような喜びように、ちょっと引いた。やっぱり引き受けなければ良かったかもと後悔がよぎるが、言ってしまったのだから仕方あるまい。

 あはは、と乾いた笑いを浮かべながら、所要時間を聞こうとした、次の瞬間だった。

 

 

「では、君をカルデアに連れて行くよ。

 おい、君。すぐに、レフ教授に連絡を。48人目のマスター候補が見つかったと!」

 

 ハリーがにこやかに言った途端、身体が動かなくなった。指を動かそうとしてもピクリともしない。

 変だな、と思っているうちにアイマスクとヘッドフォンを被せられてしまう。

 

 

 

 何も見えず、音は遮断され、身体の自由も失われ、あんなに今日こそは寝まいと誓っていたはずなのに、まぶたが急速に重くなり、強制的に夢の世界に叩き込まれてしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 11時、秋葉原駅。

 

「おはようー、あれ? 藤丸は?」

「さっきから探してるんだけど、電話にも出ないんだよね」

「あいつのことだから、どこかで居眠りでもしてんだろ。しばらく、ここで待つか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人理焼却まで、あと■■時間。

 

 これは、とあるマスターの備忘録。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




高校生「藤丸立香」の日常を断片的に書いてみたかった。



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