「まさかなぁ、大雄がヒーローに変身するなんてなぁ」
「僕も思ってなかったよ。でも、翼の一言で一歩出せた感じはあるね」
大雄と翼の行く先はバイト先である平野書店。夏樹の実家でもある。
話題は昨日の大雄が変身したアニマに関することだ。
「未だに実感はわかないけどね。昨日のこともVRのゲームなんじゃって思うけど」
どういうと大雄はカバンからドライバーを出した。
「でも、それがあるってことは現実なんだろうな」
「そうかもね。そういえば昨日、あの時別れたけど、デイジーは無事だったのかなぁ」
「そういえばだな。多分追手とかいる気がするしなぁ…」
デイジーに対する心配もありながらも2人は書店へとたどり着いた。
「…どうしてデイジーがここにいるんだ?」
「さぁ、全く僕にも…」
書店に入るや否や2人が声を上げた。どういうわけか、デイジーが普通にそこにいるのだ。
「いらっしゃいませー」
しかも普通に接客応対をこなしている。
「あれ?2人とも今日シフト勤務ないはずじゃ…」
「夏樹、いったいこれは…」
翼は視界にいた夏樹に問い詰める。
「デイジーのこと?それならうちで預かることになったから」
「あ、そうなんだ…って」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
大雄と翼の叫び声が書店中に響き渡ったのは言うまでもなかった。
第2話「決意、爆走!」
「どういうこと?こっちは一切聞いてないんだけど!」
「そうだ!連絡ぐらいしてくれよ!こっちだって行く途中にデイジーが追手とかに狙われていないか心配もしたんだぞ!?」
書店のスタッフルーム、夏樹は大雄と翼から言葉のマシンガンを受けていた。
「ごめん、言おうと思ったんだけど、言うタイミング完全に逃して…」
夏樹は若干項垂れながら言った。
「でも、よく夏樹の父さん許してくれたよね」
「確かにな。もしかしたら電子生命体とか言ったとか?」
「いや、それ言ったらまずいかなぁと思って、お父さんには『日本の生活を研究しにアメリカからやってきた留学生』ってことにはしているよ」
「それ通用する?デイジーって若干僕ら日本人みたいな見た目だし」
「それがすんなりOK出しちゃって。後で母さんがどこの馬の骨とも分かんない外国人の子をって愚痴ってたけど…」
「ふぅ、やっと休憩もらえました~。あ、2人共もいらしていたんですね」
そんなことを言っていたら、デイジーがスタッフルームに入ってきた。
「あ、そういえばデイジーに聞きたいことがあったんだけど」
「なんでしょう?」
「多分察しはついているんだろうけど、昨日のあのギアマリスとかいう怪物とか色々…」
大雄はデイジーに気にかかっていたことを聞いた。デイジーは若干うつむいていた。
「処理落ちの恐れがあるので、言いたくはなかったのですが…。あの敵に対抗する戦士を見つけたことです。私も頑張って話します」
デイジーは敵であるパラノイアのことについて語り始めた。その傍らで夏樹はいつデイジーが処理落ちしてもいいようになのか、右手にファイルを持っていた。
「ギアマリス、あの怪物はマインドギアと呼ばれる生命体やモノに宿る負の精神や心を原動力に動く歯車を核として動いています。それを創り出したのが、私たちの世界・電脳世界を統べていたパラノイアと呼ばれる人工知能です」
「えっ、電脳世界を統べていたのに、なんでそんな事を?」
「私たちにも分かりません。ですがある日、突然パラノイアは電脳世界を破壊すると宣言したのです。その理由も分かりませんが、パラノイアの目的はネットワークに繋がっているありとあらゆるものを混沌に陥れ、現実世界も掌握することだと思われます」
「そんな事やったら、困る人だってたくさん出るのに…。なんでそんなことを…」
大雄はうつむきながら言う。
「私の師であるプロフェッサーでも分かりませんでした。パラノイアが人間世界に侵食し始めると、取り返しがつきません。ですが…。プロフェッサーが託したこのシステムと私たちなら、絶対にできる!私はそう信じています!!」
「デイジー…」
大雄はうつむいていた顔を上げる。しかし…
「夏樹さ…ん…あ…と…は…まかせ…」
デイジーは例によって処理落ちしていた。
「もう夏樹を頼ってやがる…」
「なら遠慮なく…!チェストォ!」
「だからと言ったって限度が…」
そんな翼の言葉をよそに、夏樹は遠慮なくの公言通りにファイルでデイジーを思い切り叩く。
その一瞬、スタッフルームに物を叩いたような鈍い音が響き渡った。
「なんだ?またスタッフルームにゴキブリでも出たのか?」
夏樹の父であり、この店の店長である健介は、その音の正体を知らずにいた。
◇
「ヒィッ!?なんだよお前!?」
とある路地裏、第1ボタンを緩めたYシャツと、ダボダボのズボンを履いた18歳くらいの男子高校生が何者かに詰め寄られていた。
「単なる通りがかりの物だよ。私の実験の被験者になってもらいたい。ただそれだけだ」
そう、詰め寄っていた者の正体はアーサーだ。
「被験者って何だよ!?ちゃんちゃら意味が分かんねぇよ!」
「そう、なら話をオブラートに包もう。君は何か抱えている者はあるかい?」
アーサーはまるで話の話題を変えるかのように男子高校生に呼び掛けた。
「抱えてるもの…」
「そうだ、ヒトというものは皆心に何かを抱えている。君のような若い人間は心に何かを抱え込み過ぎる傾向にある。あくまで私の持論だかね」
「俺は…俺は強くなりたい…。強くなって俺を見下した奴らを見返したい…!」
アーサーから見た男子高校生は、紫と黒の禍々しいオーラを放っていた。
「そうか、ならば…」
アーサーは懐から歯車のようなアイテム・マインドギアを取り出す。
「君の心<マインド>、いただくよ」
「は?お、俺に何を!?」
アーサーの言葉を受けたマインドギアはひとりでに動きだし、男子高校生の体の中に吸い込まれる。それと同時に男子高校生の体はノイズにまみれ、右腕にはかぎ爪を付け。メカニカルなトカゲのような鎧を纏ったリザードギアマリスへと変貌していった。
リザードギアマリスは路地裏から駆け出した。その数秒後、アーサーの耳には破壊の音と悲鳴が聞こえていた。
「それでいい…。混沌こそ、パラノイア様が望む世界の未来。やはりニンゲンは面白い…!」
◇
「…まさかデイジーのいた世界がそんなことになっていたなんてな」
所変わって再び平野書店。翼が呟いた。
「というか、電脳世界だけじゃ飽き足らずに私らの世界まで掌握しようって、どれだけ欲深い人工知能なの、それ…」
「パラノイアは自己解析を繰り返して進化する存在、故に進化を繰り返していくうちにああなったのではと言われています」
その会話を、大雄はただ見ていた。
「僕も、誰かのためになっているのかな…」
大雄は小さく呟く。
「大雄?」
「あ、いや何でもない」
その言葉に翼は反応を示したが、大雄は何でもないように返した。
その時だった、大雄がポケットに仕舞っていたいたライオンサイバーギアからけたたましい程のアラームが鳴った。
とっさに大雄はギアを取り出す。コアの部分にはグリッドで示された地図のようなのと、赤い点が映し出されていた。その横にはその場所の文字が映されている。
「これって…」
「恐らくギアマリスが現れたのでしょう」
「父さんにはとりあえず別の事情言っておくから、ここは任せて!」
「分かった!」
そういうと大雄とデイジーは書店を出ていった。
◇
いつもは人々がで賑わう憩いの場である運動公園。しかし、今は違った。
先ほどの男子高校生が変貌したリザードギアマリスにより、辺りは炎と混乱、悲鳴の渦中にあった。リザードギアマリスが出現したため、辺りの電子機器すら動かない。
リザードギアマリスは、眼前にいた別の高校生に襲い掛かろうとしていた。その時だった。
駆け付けた大雄の蹴りでリザードギアマリスは怯んだ。
「今です、逃げてください」
デイジーは高校生に逃げるように促した。
「邪魔を…するなぁ!」
リザードギアマリスは右腕の爪を白熱化させ、斬撃を大雄に飛ばした。
大雄の周りで爆発が起こる。
「大雄さん!?」
「ふん、誰だか知らねーが…」
デイジーはたまらず叫ぶ。リザードギアマリスは鼻で笑う。しかし…
[ライオンギア・ワイルドオン!]
「止めるんだ、『僕』が、いや、『僕たち』が…」
大雄はドライバーを装着と同時にギアを起動すると同時に展開されるフィールドで斬撃を回避していた。
「マインドギアに呑み込まれた人たちも、デイジーのいる電脳世界の電子生命体たちも…。僕たちで救うんだ!」
「大雄さん…」
[サイバーギア・コネクトイン!]
「そして…パラノイアを止めてみせる!絶対に…!変身!!」
大雄はギアをドライバーに装填、それと同時に左手を右斜め上に振り上げ、右手でグリップを引っ張り、ヒーローになる覚悟を示さんとばかりに「変身」と叫んだ。
頭上と足もとに展開された歯車のようなゲートが回りながらアニマのボディとアーマーが形成されていく。
[百獣無双のライオンハート!ライオンギア・サイバーギアップ!]
ライオンメイルへと変身完了を知らせる電子音声が鳴り響いた。
「吠えろ!アニマルハート!」
アニマはキメ台詞を放つと、リザードギアマリスへと駆け出す。
獅子の力を秘めたライオンメイルは、大雄の決意も相まって猛々しくリザードギアマリスをどんどん追い詰めていく。
「くそっ、何なんだよお前は…!」
追い詰められたリザードギアマリスは爪を荒々しく振るい、反撃に出た、偶然なのか、1発だけアニマに当たり、アニマは後ずさる。
「力が…俺に力さえあればぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
リザードギアマリスの声に反応したかのように、リザードギアマリスから禍々しいどす黒いオーラが溢れ出る。それと同時に周囲の遊具や物を取り込んでいき、巨大なトカゲ・リザードギガマリスへと姿を変えた。それと同時にリザードギガマリスの身体から意識を失ったであろう男子高校生が出てきた。
「デイジー、あれは一体!?」
「バースト態。マインドギアに呑まれた生命体の負の感情がオーバーフローしたときにそうなると言われています」
リザードギガマリスは、アニマとを飛び越え、運動公園の外へと逃げていく。
「げっ、逃げちゃった…。何か対応策とかあるわけ…ないかぁ」
「いや、プロフェッサーのことです。何か方法が…」
デイジーは何もない空間にパネルのようなのを展開した。どうやらそこにアニマのシステムの概要が詰め込まれているみたいだ。
デイジーはパネルを操作しながらあるものを見つけた。そこには「MACHINE GRANDER」という文字とオートバイのグラフィックが映っている。
「これなら!」
デイジーはパネルをタップする。するとバイクのようなワイヤーフレームが出現。光を放ちオートバイ型メカ・マシングランダーのボディを形成していった。
「バイクメカってことか!よし、これなら!」
アニマはマシングランダーに跨り、逃げていったリザードギガマリスを追った。
◇
大きな道路へ逃げたリザードギガマリスはその脚で車だろうがアスファルトだろうが容赦なく踏みつぶしていく、その光景はまるで恐竜パニック映画のようだ。
それを追うマシングランダーを駆けるアニマ。
「邪魔者め、これで…!」
リザードギガマリスは起用に前足で車を掴んでアニマの方向へ放り投げた。車はルーフを下にして派手な轟音とともにつぶれた。
アニマはマシングランダーを華麗に操り、それを飛び越える。そしてアニマルチウェポンを転送。ソードモードへと変形させ、リザードギガマリスへと突撃していく。
踏み潰さんと言わんばかりにリザードギガマリスも脚を動かすが、まるで白バイ警官が操る白バイのスラロームのように翻された。
アニマはリザードギガマリスの眼前に立ちはだかる
「おのれ…どこまで邪魔をすれば気が済む!!」
「僕がヒーローでいる限り、ずっとだ!!」
[ワイルドギア・セットオン!サイバーブースト!]
アニマはライオンサイバーギアをアニマルチウェポンにセットし、ギアを回す。装填を認証した電子音が鳴り、待機音が流れだすと同時にアニマはスロットルを全開、マシングランダーを急発進させた。リザードギガマリスもその巨体を震わせながら走る。
あるところでアニマは急ブレーキをかけた、そこから慣性の法則を利用してアニマは飛び出し、アニマルチウェポンのトリガーを引く。
[ライオン!ソード!ウェポンサイバーブレイク!]
「ライオンブレイブスラァァァァァァッシュ!!」
赤熱化されたブレードでリザードギガマリスを一刀両断。その姿はまるで大きな動物に立ち向かう獅子のようにも見えた。
その一撃を受けたリザードギガマリスは爆散した。アニマは遠くから緊急車両のサイレンの音が聞こえるのを感じた。
「あとは警察の仕事かな…」
そう呟くとアニマは変身を解いた。マシングランダーも変身解除を受けたのか、搭載されているカモフラージュ機能でHonda 400Xの見た目に変わっていた。
「凄いなぁ、電脳世界の技術って…」
大雄はそう呟くと400Xに跨り、デイジーのいる運動公園へと向かった。
だがそれを、物陰からアーサーが見ていた。
「なるほどねぇ、彼がアニマの力を引き継いだか…。尚面白くなりそうだ…!」
◇
大雄が運動公園に戻った時にはすでに警察の規制線が敷かれていた。
「あれ?さっきの人は?」
大雄はデイジーにリザードギアマリスとなっていた男子高校生の容態を聞いた。
「先ほど意識が戻ったらしくて、救急車に運ばれて行きました」
「よかったぁ…」
大雄はほっと安堵した。
「やっぱり、大雄さんはヒーローです!私たち電子生命体やニンゲンを気遣う心。本当に感動しました!」
「いや…人として当然のことだから、とにかく、翼と夏樹が心配しそうだから、戻ろうか」
大雄とデイジーは400Xに乗り、夏樹たちが待つ書店へと帰っていった。
◇
同時刻、廃工場で爆発が起きた。
その爆炎にはガンブレードのような武器を持った謎の戦士が佇んでいた。
「チッ、ハズレか…」
謎の戦士は武器からギアを外すと、少年の姿へと戻った。
「まぁいい、パラノイアへ辿り着くのは俺だけだからな…!」
少年の持つ紫のギアには蜘蛛のグラフィックが描かれていた。
お読みいただきありがとうございました。やっぱり2話はマシンデビューに限る(え
しれっと大雄がバイク乗っていますが、普通二輪免許を持っているという設定があるので安心してください(そこ?)
今回登場した平野書店(主人公サイドの拠点がここです)。外見は飯能市立図書館みたいな感じです。どんなデカイ書店だよって言ったら負けです()
ちなみに夏樹のお父さんですがイメージCVはさまぁ~ずの大竹さんです。ハイ、俺の趣味です()